★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇若き日のピリス、モーツァルト:ピアノソナタ第8番/幻想曲ニ短調/ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付き」(日本録音盤)

2024-07-01 09:49:16 | 器楽曲(ピアノ)

 

モーツァルト:ピアノソナタ第8番        
       幻想曲ニ短調        
       ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付き」

ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス

録音:1974年1月~2月、イイノ・ホール(東京)

LP:DENON OX‐7054‐ND

 マリア・ジョアン・ピリス(マリア・ジョアン・ピレシュが正確な表記。1944年生まれ)は、ポルトガル出身の女性ピアニスト。1953年から1960年までリスボン大学で作曲・音楽理論・音楽史を学んだ後、西ドイツに留学。1970年に、ブリュッセルで開かれたベートーヴェン生誕200周年記念コンクールで第1位。この間に、個人的にケンプの薫陶を受ける。室内楽演奏にも力を入れ、1989年よりフランス人ヴァイオリニストのオーギュスタン・デュメイと組みツアーを行う。モーツァルトのピアノ・ソナタ集の録音により、1990年に「国際ディスク・グランプリ大賞」CD部門受賞。2008年には、NHK教育テレビの番組「スーパーピアノレッスン」の講師を務めるなど、教育活動にも多くの功績を残している。このLPレコードは、「1975/1976ADFディスク大賞」を受賞した「モーツァルト:ピアノソナタ全集」の中の1枚であり、記念すべき録音だ。ピリスのモーツァルト演奏は、清潔感に溢れたもので、私にとって、モーツァルトのピアノ演奏から、ピリスを外しては到底考えられない。ピリスのモーツァルト演奏がスピーカーから音が流れ出すと、辺りの空気が一瞬緊張したかのような錯覚を起こすほどだ。少しの過剰な演出もなしに、これほどの効果をリスナーに届けられるピアニストはそうざらにはいない。テンポは、比較的ゆっくりとしており、音質は、硬めではあるが、硬直したものでなく、その背後には常に歌心が寄り添っているので、長く聴いても疲れることは微塵もない。ピリスはこれまでしばしば来日しており、生の演奏を聴く機会も多くあった。この録音当時は、ピリスの若々しさが前面に溢れており、爽やかさが匂い立つようでもある。流石に近年の生の演奏は、人生経験を積んだピアニストしか表現できないような深みが込められているたが・・・。そして、改めて今、ピリスの若き日に日本で録音したLPレコードを聴いてみると、青春のほろ苦さが込められたような新鮮な演奏が、リスナーの胸を揺さぶらずにおかない。ピアノソナタ第11番だけとっても、これほど正統的でピュアな演奏するピアニストは、今、世界中探したってどこにも居ないだろう。そのピリスも2018年をもって引退を表明し、日本では2018年4月に各地で行われた日本ツアーが最後の演奏会となってしまった。ただ、教育活動は今まで通り今後も継続するという。(LPC)


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