★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇サンソン・フランソワのショパン:マズルカ全集(第1番~第51番)

2021-08-16 09:40:13 | 器楽曲(ピアノ)


ショパン:マズルカ全集(第1番~第51番)

ピアノ:サンソン・フランソワ

LP:東芝EMI EAC-70036~7

 ショパンは生涯で60曲にも及ぶマズルカを作曲したが、現在一般に「マズルカ全集」として演奏される曲は51曲である。ショパンのマズルカは、ポーランド周辺各地方の民俗舞踊であるマズル、オベレク、クヤヴィヤクなどに基づいて作曲され、三拍子の第三拍目にアクセントが置かれるのが特徴である。ポーランドのマゾヴィア地方で生まれたためにマズルカという名前が付けられたともいう。ショパンは、日記を書くようにマズルカを作曲したわけだが、本来、土俗的な色合いが濃い曲を、ショパンは芸術度の高い作品にまとめ上げた。ここでショパンは、祖国ポーランドによせる望郷の念を込めると同時に、ショパンのピアノ曲の作曲法の土台とも思えるものが横たわっている。そのため、ショパンのマズルカは、ショパンのピアノ曲の”奥座敷”とも言える作品。51曲が、同じリズムでも、それぞれ違った表情を見せていることは驚くべきことである。このLPレコードで演奏しているには、フランスの名ピアニストのサンソン・フランソワ(1924年―1970年)である。フランソワは、第二次世界大戦後のフランスにおける代表的なピアニストの一人で、主に、ショパンやドビュッシー、ラヴェルなどフランスものの演奏を得意とした。コルトーに見い出され、1936年エコールノルマル音楽院に入学。さらに1938年にはパリ音楽院に入学、マルグリット・ロンの最後の生徒の一人であった。1940年同音楽院を首席で卒業。そして1943年に第1回「ロン=ティボー国際コンクール」で優勝を果たし、一躍その名が世界に知られることになる。しかし、心臓発作で46歳の若さで亡くなった。フランソワは、自由奔放に演奏するタイプのピアニストであり、一旦曲にうまくはまれば天才的な閃きで曲を弾く。このため、特にショパンをはじめとするフランスもので、優れた録音を遺している。一方、「ベートーヴェンは、生理的に合わない」と言い、ドイツものの録音はほとんどないが、唯一、ベートーヴェンのピアノソナタでは名録音を遺している。このショパン:マズルカ全集のレコードでのフランソワの演奏は、一曲一曲を“自家薬籠中の物”として演奏していることがよく聴き取れる。どちらかというとフランソワにしては地味な演奏内容であるが、それだけに一曲一曲に込められた精神的な高みには比類がない。フランソワの演奏で全51曲を聴き終えると、ショパンのマズルカは、ショパンのピアノ曲の奥座敷であるということがしみじみ分かってくるのである。(LPC)


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