★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇サンソン・フランソワのラヴェル:組曲「クープランの墓」/組曲「夜のギャスパール」

2023-03-02 10:08:05 | 器楽曲(ピアノ)


ラヴェル:組曲「クープランの墓」
           
         前奏曲
         フーガ
         フォルラーヌ
         リゴードン
         メヌエット
         トッカータ

      組曲「夜のギャスパール」
         
         水の精
         絞首台
         スカルボ

ピアノ:サンソン・フランソワ

LP:東芝音楽工業 AB 7055

 このLPレコードには、ラヴェルの代表的なピアノ組曲2曲が、サンソン・フランソワ(1924年―1970年)の見事なピアノ演奏で収録されている。幾多あるラヴェル:組曲「クープランの墓」および組曲「夜のギャスパール」の録音の中で、これほど鮮やかに演奏された例は、今日に至るまでほとんどないとさえ思われるような見事な出来栄えだ。この2つのピアノ組曲は、まず、その題名のユニークさ故、なかなか忘られない。「クープランの墓」のクープランとは、バロック時代の作曲家であるフランソワ・クープランのことであり、「墓」と言うのは、フランソワ・クープランを想いつつ作曲したと言う意味である。さらに、「クープランの墓」の「墓」の味は、第1次世界大戦で一緒に訓練を受け、戦死した5人を偲んで作曲したという意味もあり、単なるバロック音楽へのオマージュだけではない深みのある内容に、聴くものは一層引き付けられる。また、「夜のギャスパール」は、19世紀前半の詩人ベルトランの詩集「夜のギャスパール―レンブラント・カロー風の幻想曲」から霊感を得て作曲したもの。この「夜のギャスパール」は、この曲がなかったならば、ドビュッシーの「前奏曲集」は生まれてこなかっただろう、とさえ言われるほどの曲で、詩のイメージをそのままピアノ曲いっぱいに封じ込めた傑作となっている。そんな2曲をサンソン・フランソワは、鮮やかなテクニックでダイナミックに、そして限りなく詩的に弾きこなし、ピアノ音楽の極上の香りをリスナーの届けてくれている。今となっては誠に貴重なLPレコードではある。サンソン・フランソワは、フランス人の両親の間にドイツで生まれた。ショパンやドビュッシー、ラヴェルなどの演奏を得意とし、第二次世界大戦後のフランスを代表するピアニストの一人である。アルフレッド・コルトーに見出されて、1936年にエコールノルマル音楽院に入学。1938年にパリ音楽院に入学後はマルグリット・ロン、イヴォンヌ・ルフェビュールに師事。1940年に同音楽院を首席で卒業した。1943年第1回「ロン=ティボー国際コンクール」で優勝。1947年にアメリカデビューを飾り、その後は世界各地で演奏活動を行い、世界的名声を得ることになる。ただ、終生フランス音楽をレパートリーとして、ドイツ音楽に対してはほとんど演奏も録音も行わなかった。ドビュッシーのピアノ作品全集を完了する直前、46歳の若さで心臓発作のため急逝した。(LPC)

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