★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ロベール&ギャビー・カサドシュによる四手のためのフランス・ピアノ音楽集

2023-03-09 09:37:20 | 器楽曲(ピアノ)


~四手のためのフランス・ピアノ音楽集~

ドビュッシー:小組曲
サティー:梨の形をした三つの小品
シャブリエ:三つのロマンティックなワルツ
フォーレ:ドリー

ピアノ:ロベール・カサドシュ
    ギャビー・カサドシュ

録音:1959年、フランス

LP:CBS・ソニーレコード SOCM 10

 ロベール・カサドシュ(1899年―1972年)は、フランスの名ピアニストで、パリ音楽院で学び、1931年に首席で卒業。1920年「ディエメ賞」を受賞。カサドシュは、同じくピアニストのギャビー夫人(1901年―1999年)と2人で“カサドシュ・デュオ”を結成し、4手ピアノ(連弾)作品を数多く録音したが、このLPレコードはその中の1枚。ドビュッシーの「小組曲」は、組曲に相応しい作品。4曲のほとんどが舞曲調の情趣を備えており、第1曲「小舟で」、第2曲「行列」、第3曲「メヌエット」、第4曲「バレエ」の4曲が、それぞれ独立した小曲ながら、全体としては組曲的なまとまりを見せ、いわば、ドビュッシー的な革命前夜の作品といえる。この曲は、サロン風の家庭音楽に相応しい、軽やかな旋律が際立った作品に仕上がっている。サティーの「梨の形をした三つの小品」は、実際には7つの曲からできている。これは「三つの小品」を中心に、前後に2曲づつの前奏曲、後奏曲といった曲が付けられているため。当時、サティーはしばしば、曲の形式上の原理の不在を指摘されていた。この作品は、このような批判に対する回答の意味を込めて、サティーが作曲したものであり、サティーの音楽性を端的に示す重要な作品と言える。シャブリエの「三つのロマンティックなワルツ」は、2台のピアノのために書れているが、1台のピアノに、他のピアノが応えたり、エコーを奏したり、といった普通の2台のピアノの作品とは異なっている。1台のピアノでは表現し得ないようなダイナミズム、音の量感を目指す作品となっている。前奏に始まり、ワルツを中心として、締めくくりのコーダが置かれるという伝統的な手法によっており、シャブリエの最も純粋なワルツ作品。フォーレの「ドリー」は、第1曲「子守歌」、第2曲「ニャーオ」、第3曲「ドリーの庭」、第4曲「キティー・ワルツ」、第5曲「やしさ」、第6曲「スペイン舞曲」からなる。後にドビュシー夫人となるエンマ・バルダック夫人の娘のドリーことエレーヌに託して、夫人を賛美した作品と見られている。それに含まれているいずれの曲も、旋律上の創意に富み、また和声上の明快さが著しく、小品ながら完璧な作品に仕上がっている。親しみやすいこの作品は、オーケストラやピアノ独奏用に編曲され、現在でもしばしば演奏される。これらの作品を演奏する2人は、まるで四手が一人のピアニストであるかのような印象をリスナーに与え、その息のあった演奏には驚かされる。(LPC)

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