ラフマニノフ:独唱、合唱と管弦楽のための詩曲「鐘」
指揮:キリル・コンドラシン
管弦楽:モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
合唱指揮:アレキサンドル・ユルロフ
合唱:アカデミー・ロシア共和国合唱団
独唱:エリザヴェータ・シュムスカヤ(ソプラノ)
ミハイル・ドヴェンマン(テノール)
アレクセイ・ボルシャコフ(バリトン)
発売:1977年
LP:ビクター音楽産業
ラフマニノフの独唱、合唱と管弦楽のための詩曲「鐘」は、米国の小説家で詩人のエドガー・アラン・ポーの詩を、ロシア象徴主義の詩人、コンスタンチン・バリモントがロシア語に訳したテキストに基づいて作曲された。人間の一生の移り行く姿が、トロイカに付けられた小さな鐘や寺院の様々な鐘の音に導かれながら表現される。当初は通常の交響曲として作曲されたため、“合唱交響曲”という名称が付くこともある。第1章「誕生」(銀の鐘が若さの輝きを歌われる)、第2章「結婚」(聖なる婚礼に鳴り響くのは金の鐘)、第3章「不幸」(激動の騒乱を告げる真鍮の警鐘)、第4章「死」(鉄の鐘が告げるのは弔いの悲しみ)―からなる。この曲の作曲のきっかけは、ラフマニノフのもとに未知の女性から送られてきた手紙の中に入っていたエドガー・アラン・ポーの同名の詩であったという。この曲は、ポーの詩をもとにしたためか、どことなくミステリアスな雰囲気が漂う。なお、ラフマニノフの「鐘」というと、全部で5曲からなるピアノ曲「幻想的小品集」作品3に収録されている「前奏曲 嬰ハ短調」作品3-2の「鐘」が有名であるが、この「鐘」とは全く別の曲。指揮のキリル・コンドラシン(1914年―1981年)は、モスクワ音楽院で学び、1960年からはモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任、1976年までそのポストにあった。同管弦楽団を指揮して、世界で初めてショスタコーヴィチの交響曲全集を録音したことでも知られる。その後、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の常任客演指揮者に就任する。1967年モスクワ・フィルと初来日した後、1980年には再来日してNHK交響楽団を指揮したこともある。アカデミー・ロシア共和国合唱団は、1990年に創立され、1942年にアカデミー・ロシア共和国合唱団に発展的改組された。モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団は、1951年に創立された。当初の名称はモスクワ・ユース管弦楽団だったが、1953年に改称された。1960年からキリル・コンドラシンを音楽監督に迎えた。「チャイコフスキー国際コンクール」本選のオーケストラとしても有名。このLPレコードの演奏内容は、誕生の祝福、そして晴れがましい婚礼、さらに重々しい日々、最後に悲しい死と、人の一生を象徴する各場面がそれぞれ的確に表現されており、その一つ一つが深みがある演奏で聴くものを圧倒する。特に後半へ向けての迫力は、聴いていて手に汗するほどだ。(LPC)