★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ハインツ・ホリガーのモーツァルト:オーボエ協奏曲/R.シュトラウス:オーボエ協奏曲

2022-04-21 09:59:17 | 協奏曲


モーツァルト:オーボエ協奏曲
R.シュトラウス:オーボエ協奏曲

オーボエ:ハインツ・ホリガー

指揮:エド・デ・ワールト

管弦楽:ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

発売:1979年

LP:日本フォノグラフ(フィリップスレコード) 18PC-12(6500 174)

 オーボエは、人の声に最も近い楽器とも言われ、特にその高音域の音の調べが、例えようもないほどの甘美さを備えている木管楽器である。哀愁のあるその牧歌的な音色を聴いていると、とても人間味溢れる楽器であることを思い知らされる。そんなこともあってか日本では、演歌などでも使われることも少なくないようだ。しかし、演奏するにはなかなか難しい楽器であるということもあってか、フルートやトランペットなどに比べて、何となくマイナーな楽器の座に甘んじることが多いように思われる。そんな魅力的ではあるがいつもは地味な存在の楽器に、一躍、主役を演じさせるのがオーボエ協奏曲の存在なのである。このLPレコードは、かつてオーボエ奏者として一世を風靡した、スイス出身のハインツ・ホリガー(1939年生れ)が、全盛時代にモーツァルトとR.シュトラウスのオーボエ協奏曲を録音したもの。ハインツ・ホリガーは、オーボエ奏者としてのほか、指揮者さらには現代音楽の作曲家としても活躍。ベルン音楽院とバーゼル音楽院、さらにパリ音楽院で学んだが、オーボエは名オーボエ奏者のピエール・ピエルロ(1921年―2007年)に師事したという。オーボエのソリストとしては、1959年「ジュネーヴ国際音楽コンクール」や1961年「ミュンヘン国際音楽コンクール」で第1位を獲得し、国際的に名声を得ることになる。ホリガー木管アンサンブルを自ら主宰して、主にバロック音楽を録音。また指揮者としては、ヨーロッパ室内管弦楽団を指揮してシェーンベルク作品集の録音も残している。作曲家としては、初期の作品はブーレーズからの直接の影響を受けた「魔法の踊り手」や「七つの歌」のような1960年代の前衛音楽の秀作から、16年の歳月をかけて作曲した代表作「スカルダネッリ・ツィクルス(ヘルダーリンの詩による、ソロ・フルートと小管弦楽、混声合唱とテープのための)」などの作品がある。このLPレコードに収められているモーツァルト:オーボエ協奏曲とR.シュトラウス:オーボエ協奏曲の2曲のオーボエ協奏曲の演奏とも、ホリガーのオーボエの演奏は、完璧な演奏技法に裏づけされたものだけに、リスナーは思う存分その曲の持ち味を味わうことができる。モーツァルトの典雅さの極みともいえる雰囲気のオーボエ協奏曲、さらにはR.シュトラウスが音楽人生の後半生に行き着いた、安定した曲づくりが心地よい新古典派的なオーボエ協奏曲の真髄を、それぞれ存分に楽しむことができる貴重なLPレコードとなっている。(LPC)

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