テレマン:フルート、弦楽と通奏低音のための組曲イ長調
(フルート:セヴェリーノ・ガッツェルローニ)
ヴィオラ、弦と通奏低音のための協奏曲ト長調
(ヴィオラ:チノ・ゲダン)
3つのヴァイオリン、弦と通奏低音のための協奏曲ヘ長調
<ターフェルムジーク第2集第3番>
(ヴァイオリン:フェリックス・アーヨ/アルノルド・アポストーリ/
イタロ・コランドレア)
弦楽合奏:イ・ムジチ合奏団
チェンバロ:マリア・テレサ・ガラッティ
LP:日本ビクター(フィリップス) SFL‐8564(802・864・LT)
イ・ムジチ合奏団は、1952年にローマの聖チェチーリア音楽院の卒業生12名が集まって結成された、バロック音楽を中心とした室内弦楽合奏団である。ヴィヴァルディの「四季」の録音は、当時大ベストセラーとなり、クラシック音楽ファンでなくても名前が知られたほどの存在であった。ラジオ放送から流れるバロックの曲の大半がイ・ムジチ合奏団の演奏であったことを思い出す。そのイ・ムジチ合奏団がテレマンの名曲を録音したのが今回の一枚。テレマンは、バッハより4年早く北ドイツのマクデブルグで生まれた。その当時は、バッハよりテレマンの方が人気が高かったことで知られる。このLPレコードのライナーノートで服部幸三氏は、当時の有名な詩人ヨハン・クリストフ・ゴットシェトの次のような言葉を紹介している。「テレマンは、ただ音楽の専門家だけに面白く思えるような回りくどい難しさを避け、快いひびきの変化を重んじる。そして、これ以上に賢明なことはあろうか?なぜなら、音楽は本来人を楽しませるものだから、額に皺寄せて聴いたあげく、不承不承ながら感心するような作品を書くひとよりも、聴き手に快い感情と満ち足りた思いを抱かせるような人の方が、より賞賛に値するのだ」。これらの言葉は、何かバッハを皮肉っているようにも受け取れる。それだけ当時のテレマンの人気が高かったということだろう。このLPレコードでのイ・ムジチ合奏団のテレマンの演奏は、正に一部の隙のない完璧な名演を聴かせている。何と表現したら適切なのか分らないような豊穣でしかも輝かしい音がリスナーの目の前に悠然と展開する。至福の一時とはこのことなのかな・・・とも思えるような最上の演奏なのである。中でもフルート、弦楽と通奏低音のための組曲イ長調が絶品。ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681年―1767年) は、後期バロック音楽を代表するドイツの作曲家で、対位法を主体とする後期バロック様式からホモフォニーによる古典派様式への橋渡しをした作曲家であった。1721年、北ドイツのハンブルクに居を構えた。ここでテレマンは、教会のための音楽とオペラ劇場の作曲家として活活躍することになる。1732年に、バロックの器楽合奏曲のあらゆる形式を網羅した「ターフェルムジーク」の出版を予告すると、100人を超えるドイツの諸侯と音楽家だけではなく、北はオスロやコペンハーゲン、南はパリやリオン、さらに海を越えたロンドンからも注文が殺到したというほどの人気を誇った作曲家であった。(LPC)