★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ゲザ・アンダのシューマン:交響的練習曲/幻想曲

2022-04-14 09:41:43 | 器楽曲(ピアノ)


シューマン:交響的練習曲
      幻想曲

ピアノ:ゲザ・アンダ

録音:1963年5月14日~17日、ベルリン、イエス・キリスト教会

LP:ポリドール SE 7810(ドイツ・グラモフォン MGW 5225)

 ピアノのゲザ・アンダ(1921年―1976年)は、ハンガリーのピアニストであり、その全盛時代には圧倒的支持を受けていたので、年配のリスナーにとっては、きっと忘れることのできないピアニストの一人であろう。このLPレコードを改めて聴いてみるとその自然な音の運びと、美しいピアノの音色に思わずうっとりとしてしまうほどなのだ。このくらいピアノの持つ魅力的な音と、リズム感とを的確にリスナーに聴かせることのできるピアニストは、そうざらにいるものではない。決して大上段に振りかざしてピアノ演奏をするわけではないのだが、その圧倒的な存在感は聴くもの全てを魅了するといっても過言ではないほど。このLPレコードでは、シューマンの若い時期のピアノ曲の傑作である「交響的練習曲」と「幻想曲」とが収録されている。2曲とも言ってみれば派手な曲ではないが、如何にもシューマンらしいロマンの香りが濃く漂う秀作である。「交響的練習曲」は、シューマンの才能が今花開いたといった感じの若々しい変奏曲集である。このLPレコードを聴き終わった時の爽快感は、ピアノの音がむせ返るようであり、他に例えようもないほど。曲は、1837年の初版のほか、1852年の改訂版、さらに1835年1月15日と記されたオリジナル版があるが、現在は1837年の初版で演奏されることが多い。ゲザ・アンダのキラリと光るピアノ演奏が強く印象に強く残る録音だ。一方、「幻想曲」は、当初ピアノソナタとして書き始められ、最終的に幻想曲として完成された作品であり、このため、この「幻想曲」はピアノソナタといってもいいほどの力作で、リスナーは、より一層深遠なロマンの香りに酔いしれることができる。深い深い森の奥でピアノを聴いているようでもある。ここでのゲザ・アンダのピアノは、シューマン特有のロマンの世界をリスナーの前に繰り広げると同時に、劇的な展開でも充分な説得力を持つ。2曲とも正に名演。ゲザ・アンダは、ハンガリー・ブタペスト出身のピアニスト。王立ブダペスト音楽院で学び、19歳でリスト・フェレンツ賞を受賞。第二次世界大戦中はベルリンに留学するが、1943年にスイスに亡命(後にスイス国籍を取得)。ベートーヴェンやシューマン、ショパン、リスト、ブラームスを得意とし、特に同胞であるバルトークの作品には力を注いだ。なお、ゲザ・アンダは、国際的なピアニストを輩出することで知られる「ゲザ・アンダ国際ピアノ・コンクール」として、その名が遺されていることからも分る通り、これからも人々の記憶から忘れ去られることはないであろう。(LPC)

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