★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇サンソン・フランソワのショパン:ポロネーズ集

2021-06-24 09:47:49 | 器楽曲(ピアノ)


ショパン:ポロネーズ第1番
          第2番
          第3番「軍隊ポロネーズ」
          第4番
          第5番
          第6番「英雄ポロネーズ」

ピアノ:サンソン・フランソワ

LP:東芝EMI EAC‐70038

 これは、フランスの名ピアニスト、サンソン・フランソワ(1924年―1970年)がショパンのポロネーズ6曲を収録したLPレコードである。ポロネーズとは、マズルカと並んでポーランド起源の舞曲またはそのための曲の形式をいう。もとはテンポがゆっくりな4分の3拍子のポーランドの民族舞踊であったが、その後、一つの様式となってヨーロッパで流行した。舞曲は、三拍目の最後に挨拶をして締めくくられるため、三拍目の初めの拍(弱拍)で終結する。もとは民俗的なものではなく、貴族の行進から始まったといわれ、16世紀後半にポーランド王国の宮廷で行われた。その後ヨーロッパ各国の宮廷に取り入れられ、フランス宮廷からポロネーズの名が広まり、純器楽曲としても作曲されるようになっていく。ショパンは、民族的意識に立ったマズルカやポロネーズのピアノ曲を数多く書き残しているが、マズルカが、ショパン自身の日々の心を映し出す小品であったのに対し、ポロネーズはショパン独特の芸術的な美意識を映し出した華やかな比較的大きな作品としてつくられていった。ショパンは、全部で16曲のポロネーズを作曲したが、このLPレコードでは、その内、6曲が収められている。第1番は、1834年から翌年にかけて作曲された。舞曲としての性格が薄れ、ショパン独自のスタイルが既に出来つつある作品。第2番は、第1番と同じ年につくられたが、対照的に陰鬱な感情に満ちている曲。規模も大きくなり、後の幻想ポロネーズを予感させる作品。第3番「軍隊ポロネーズ」は、1838年から39年の間にマジョルカ島でつくられた作品。第4番は、1838年にマジョルカ島で書かれた。ルビンシュテインはこの曲を「ポーランドの没落を描いたもの」と評したという。第5番は、マジョルカ島から戻った1840年に書かれた作品。第6番「英雄ポロネーズ」は、1842年、ショパンの創作意欲が旺盛な時期に書かれた作品で、ロシアの圧政に打ち克つべき勇気を奮い起こさせるヒロイズムに満ちている。LPこのレコードでのサンソン・フランソワの演奏は、フランソワ特有のテンポ・ルバートが存分に発揮され、これに加えて、他の奏者にはない独特のアクセントがリスナーを掴んで離さない。力強い表現の一方で繊細なタッチが実に有効に生かされている。この演奏を聴いていると“フランソワ・マジック”とでも言えるような世界が出現し、知らず知らずのうちにリスナーを幽玄の彼方へと誘ってくれるようだ。やはり、天才にしか許されない閃きが、その背後に隠されているとしか表現のしようがない演奏内容だ。(LPC)

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