★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇バレンボイム指揮イギリス室内管弦楽団のモーツァルト:ピアノ協奏曲第24番/第18番

2021-06-14 09:39:14 | 協奏曲(ピアノ)


モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番/第18番

ピアノ・指揮:ダニエル・バレンボイム

管弦楽:イギリス室内管弦楽団

LP:東芝EMI EAC‐70235

 モーツァルトのピアノ協奏曲第24番は、1786年に作曲された短調のピアノ協奏曲であり、短調のピアノ協奏曲は、ほかに第20番とこの曲の2曲だけである。悲劇性を持った情熱的な作品で、ベートーヴェン的な作品と称される場合もある。一方、ピアノ協奏曲第18番は、1784年に作曲された曲。1785年にモーツァルト自身がこのピアノ協奏曲を演奏し、この演奏会には、息子の様子を見にウィーンに来ていた父レオポルトに加え、皇帝ヨーゼフ2世も臨席しており、その出来栄えを絶賛したという。このLPレコードで、ピアノ独奏および指揮を行っているのがアルゼンチン出身でその後イスラエルに移住したダニエル・バレンボイム(1942年生まれ)である。1952年に、バレンボイムはピアニストとして、ウィーンとローマにおいてヨーロッパ・デビューを果たす。その後世界各地でピアノ演奏会を開催し注目を浴びる。ピアニストとしての名声を確固たるものとした後に、1966年からイギリス室内管弦楽団とモーツァルトの交響曲録音を開始し、指揮者デビューを果たす。1970年代からは、指揮者としての本格的な活動を開始し、1975年から1989年まではパリ管弦楽団音楽監督として活動する。1991年より2006年までシカゴ交響楽団音楽監督を務めた。1981年にはバイロイト音楽祭に初めて招かれ、以後継続的にバイロイトで指揮を執った。2012年からは、スカラ座の音楽監督を務めている。このLPレコードのモーツァルト:ピアノ協奏曲第24番でのダニエル・バレンボイムのピアノ演奏および指揮は、如何にもバレンボイムらしい、丸みを持った優雅な雰囲気を醸し出した演奏内容に大きな特徴を持つ。この曲は、短調であるため、他の多くの演奏が悲劇的な要素をことさら強調する。バレンボイムは、そのようなことに一向に構わず、ゆったりとマイペースで厳かに曲を進行させていく。ピアノタッチは粒が揃い、限りなく美しい。それらがいずれも力強く、男性的美感が全体を覆い尽くす。この結果、一般的言われるこの協奏曲の悲劇性が陰をひそめ、代わりにいつものモーツァルト特有な快活な雰囲気が顔を覗かせる。全体としては、がっちりとした構成感が実に見事であり、聴き応えは十分。一方、モーツァルト:ピアノ協奏曲第18番の演奏は、感性にぴたりと合うのか、実に生き生きと演奏している印象が非常に強く残る。バレンボイムのピアノは、相変わらず粒がそろって美しいが、それに加えイギリス室内管弦楽団の伸び伸びとした演奏が見事であり、理想的なモーツァルトのピアノ協奏曲の世界を描き切っている。(LPC)


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