★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ジャン・マルティノン指揮フランス国立放送局管弦楽団 の フローラン・シュミット:「詩篇47」/「サロメの悲劇」

2020-10-01 09:46:51 | 管弦楽曲

フローラン・シュミット:「詩篇47」
              「サロメの悲劇」

指揮:ジャン・マルティノン

管弦楽:フランス国立放送局管弦楽団

<詩篇47>

ソプラノ:アンドレア・ギオー
オルガン:ガストン・リテーズ
合唱指揮:マルセル・クーロー
合唱:フランス国立放送曲合唱団

<サロメの悲劇>

合唱指揮:ジャック・ジュイノー
合唱:フランス国立放送局女声合唱団

LP:東芝EMI EAC‐40126

 フローラン・シュミット(1870年―1958年)は、フランス作曲界の大御所であった人であるが、日本ではあまり知られてはいない。ただ、このLPレコードの「詩篇」と「サロメの悲劇」だけは、代表作として現在でもCDの新譜がリリースされている。この2曲を聴くと、我々が抱く優雅で繊細なフランス音楽とは異なり、どちらかというとベルリオーズの「幻想交響曲」やオルフの「カルミナ・ブラーナ」のような劇的な力強い感じの曲に近い。それもそのはずで、名前から想像できる通りに、シュミットにはドイツ人の血が流れており、生まれたのもドイツに近いブラモンという所。シュミットは、1889年にパリ音楽院に入学し、デュポア、ジュダルジュ、マスネ、フォーレらに師事。世代的には、シェーベルクに近いが、作風は保守的であり、当時フランスでは“アンデパンダン(独立独歩の人)”と呼ばれていたという。このLPレコードに収録された2曲は、そうしたシュミットの作風を代表する曲で、古典的な手法に加え、壮大なオーケストラ作品となっている。「詩篇47」のテキストは、旧約聖書47番で、管弦楽、オルガン、合唱と独唱のために書かれた。一方、「サロメの悲劇」は、「詩篇47」が作曲された後の1907年に書かれた。「サロメの悲劇」とは、新訳聖書のマルコ伝に出てくる話で、ワイルドなどの戯曲で知られる。ヘロディアスは、夫を捨て、娘のサロメを連れてユダヤ王のヘロデと一緒になるが、予言者ヨハネはヘロデの行為を激しく非難する。ヘロデの誕生日に舞を舞ったサロメは、ヘロデから褒美は何なんなりとの申し出に、ヨハネの首と答え、その結果、盆の上にヨハネの首が乗せられ運ばれてくるという話。このLPレコードで、これら2曲を指揮しているのが、フランスの名指揮者ジャン・マルティノン(1910年―1976年)で、イスラエル・フィルハ音楽監督、シカゴ交響楽団音楽監督、フランス国立管弦楽団首席指揮者・音楽監督などを務めた。 ジャン・マルティノンもドイツ系の血が流れていたとのことで、シュミットの作品との相性がいいことが、このLPレコードの演奏から聴き取れる。2曲の演奏とも、透明感ある指揮ぶりで、全体がすっきりとした印象を受け、分かりやすい表現に大いに納得がいく。しかも、オーケストラから発散される力強いエネルギーは、ドイツ系オーケストラに少しも引けを取らないどころか、ドイツ系オーケストラでは表現が難しい、妖艶で不気味な「サロメの悲劇」の雰囲気が、じわじわと伝わってくる。これはもう、この曲の決定盤と言ってもいいのかもしれない。(LPC)

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