モーツァルト:ファゴット協奏曲K.191
コゼルー:ファゴット協奏曲
ウェーバー:ファゴット協奏曲Op.75
ファゴット:ミラン・トゥルコヴィッチ
指揮:ハンス=マルティン・シュナイト
管弦楽:バンベルク交響楽団
録音:1972年1月8日~9日、29日、バンベルク、クルトゥーアラウム
LP:ポリドール(ドイツグラモフォン) SE 8010
これは、ファゴット協奏曲を3曲収めた珍しいLPレコードだ。ファゴットは、低音部を受け持つ木管楽器。似た木管楽器としてはオーボエがある。オーボエは、オーケストラの音合わせに使われるなど、人間に声に近く、それだけに馴染み深い感がする。一方、ファゴットは、低音部を受け持つだけに、その存在は比較的地味である。一種近寄りがたい雰囲気も漂わせる一方、時々おどけるような表現にも使われる場合もあり、さらには歌わせるような場面ではその実力を如何なく発揮し、オーケストラには欠かせない楽器となっている。モーツァルト:ファゴット協奏曲K.191は、1774年頃に作曲された、モーツァルト唯一のファゴット協奏曲。全部で3つの楽章からなり、ファゴット演奏の優れた技巧を要すると同時に、フランス趣味のギャラントな作品に仕上がっている。次の曲は、コゼルー:ファゴット協奏曲。コルゼーという人はハイドンとほぼ同世代のハンガリーの作曲家である。生涯の大半をプラハの教会で過ごし、52曲のミサ、それに400曲近い宗教曲を残している。ファゴット協奏曲は、マンハイム楽派から影響を受けた作品。3曲目は、ウェーバー:ファゴット協奏曲。ウェーバーは、ドイツオペラの伝統を継承しつつ、有名な「魔弾の射手」によってドイツ・ロマン派のオペラ様式を完成させた作曲家として知られ、「舞踏への勧誘」などの器楽曲も遺している。モーツァルトの妻コンスタンツェは、父方の従姉にあたる。ウェーバーのファゴット協奏曲は、ファゴットの音域や表情の多様な変化が巧みに捉えられた作品に仕上がっている。このLPレコードでファゴットを演奏しているミラン・トゥルコヴィッチについて、このLPレコードのライナーノートで石井 宏氏が次のように紹介している。「エールベルガーなきあと現在のウィーンのファゴットのナンバー・ワンに数えられているのがミラン・トゥルコヴィッチ(1939年生まれ)である。このLPレコードに最初に針を落とした時、私は、思わず、エールベルガーの再来かと、一瞬耳を疑ったものだった。彼は、1967年(28歳)以来、名門ウィーン・フィルハーモニーのソロ・ファゴットとして活躍しており、その名は世界各国の土の上に印されている」。このLPレコードでのミラン・トゥルコヴィッチの演奏は、如何にも軽々とファゴットを吹いていることに驚かされる。品格があり、しかもその奥行きの深い表現力は、ミラン・トゥルコヴィッチがファゴットの第一人者であることを強く印象付けられる録音だ。20年ほど前よりは指揮者としての活動を展開。(LPC)