★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇絶頂期のエリー・アメリンクが歌うシューマン歌曲集

2020-06-08 09:41:30 | 歌曲(女声)

~シューマン歌曲集~

   きみにささぐ op.25-1
   ことずて op.77-5
   あこがれ op.51-1
   問い op.35-9
   わたしの美しい星 op.101-4
   まつゆき草 op.79-27
   新緑 op.35-4
   時は春 op.79-24
   牛飼いのおとめ op.90-4
   森へのあこがれ op.35-5
   最後の花も枯れて op.104-6
   ジャスミンの木 op.27-4
   ちょうちょう op.79-2
   くるみの木 op.25-3
   てんとう虫 op.79-14
   小さいふくろう op.79-11
   森の語らい op.39-3
   ローレライ op.53-2
   海の妖精 op.125-1
   眠りの精 op.79-13
   トランプ占いの女 op.31-2

ソプラノ:エリー・アメリンク

ピアノ:イエルク・デムス

録音:1967年

LP:テイチク(ハルモニア ムンディ レコード) ULS-3150-H
 
 このLPレコードの帯に「アメリンクの絶頂期の名唱! 声の美しさが抜群!」とあるが、これだけでこのLPレコードの本質をずばり突いていると言ってもいいほどだ。ソプラノのエリ-・アメリンク(1933年生まれ)は、オランダのロッテルダムで生まれ、パリで往年の名歌手ピエール・ベルナックに師事。1958年度の「ジュネーブ国際コンクール」に優勝して以来、世界的な歌手として認められるようになる。数多くのレコード録音を行っており、1965年にはエディソン賞を受賞したほど。一般の歌手とは異なり、アメリンクはオペラの舞台には殆ど立たたず、その活動の場は、宗教音楽や歌曲であり、コンサート歌手として多くのファンを獲得していた。日本では、このようなケースは珍しくはないであろうが、欧米では、オペラ歌手以外で、一流の歌手の座を長らく維持することは、奇跡的なことと言ってもよかろう。アメリンクは、声の質自体が美しく、繊細で伸びやかな歌唱は、宗教曲やリートの世界によく適う。レパートリーは幅広く、モーツァルトやシューベルトのようなドイツ・リートだけでなく、フランスのメロディや、ガーシュウィンやバーバーの英語歌曲のほか、山田耕筰や中田喜直などの日本語歌曲までを原語で歌う。また、宗教曲でも演奏や録音を残している。そんなアメリンクがシューマンのリートから、得意とする21曲の曲目を選び抜き1枚のアルバムにまとめたのがこのLPレコードである。であるからには悪かろう筈もない。シューマンは、作曲家としての道を歩み始めた頃の作品は、全てピアノ曲であった。その後、クララ・ヴィークと結婚した30歳になると、今度は、方向を一転させリートの作曲に没頭することになる。いわゆるシューマンの“歌の年(1840年)”である。シューマンは生涯で200曲以上のリートを作曲したが、その半数がこの“歌の年”に集中している。シューマンの“歌の年”のリート作品は、シューベルトのそれとは異なり、多くが夢見るようなロマンの香りが馥郁と立ちこむ、幻想的な作品が多い。このLPレコードに収録されている半数が“歌の年”の作品であり、あとの半分はシューマン晩年の作品。アメリンクは、それら2つの作品群を美しくも巧みな表現で歌い分ける。シューマンのロマンの香り高いリート作品を、アメリンクの清楚で緻密で、そして美しい歌声で聴いたその瞬間から、もうリスナーは何かマジックにでも掛けられたかのように、その歌声に引き寄せられ、シューマンのリートの世界に誘われることになる。これはもう、夢の世界の中の体験とでも言ったらいいのであろうか。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする