★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ウィーンの名手たちによるブラームス:ホルン三重奏曲/クラリネット三重奏曲

2020-06-01 09:35:42 | 室内楽曲

ブラームス:ホルン三重奏曲
      クラリネット三重奏曲

<ホルン三重奏曲>

フランツ・コッホ(フレンチ・ホルン)
ワルター・バリリ(ヴァイオリン)
フランツ・ホレチェック(ピアノ)

<クラリネット三重奏曲>

レオポルド・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・クワァルダ(チェロ)
フランツ・ホレチェック(ピアノ)

発売:1964年

LP:キングレコード:MH-5173
 
 LPレコードの音は、自然の滑らかさ、しかも温もりのある音質特性であるのが何より素晴らしい。ある人は「レコード以外の音が水道水とするなら、レコードの音は、こんこんと湧きいずる深い山峡の自然水のようだ」とLPレコードの音を評している。そんなLPレコードには、室内楽とはとりわけ肌合いが良さそうである。今回は、知る人ぞ知る的な曲とでも言える、室内楽の取って置きの名曲、ブラームス:ホルン三重奏曲とクラリネット三重奏曲の2曲がカップリングされたLPレコードである。これは晩秋か冬の夜に聴くのが一番似合いそうだ。しかも、演奏しているのが、当時、名人と謳われたフレンチ・ホルンのフランツ・コッホとクラリネットのレオポルド・ウラッハなので申し分ない。ヴァイオリンには、ウィーン・フィルのコンサートマスターを務め、バリリ弦楽四重奏団の主宰者でもあったワルター・バリリが加わっている。ブラームスは、ホルンを使った曲は、このホルン三重奏曲以外に作曲していないようであるが、決してホルンを軽視しいていたわけではなく、むしろ、交響曲や管弦楽曲などでは、ホルンを効果的に使っている。このホルン三重奏曲はブラームスが1865年5月に作曲した室内楽曲。この頃、ブラームスは、バーデン・バーデンで過ごしており、自然の中を散策していた時に、牧歌的なホルンに霊感を得て作曲したと言われている。ホルン、ヴァイオリン、ピアノという編成で演奏される全部で4楽章からなる曲。全体に牧歌的で、柔和で、ロマンの香りが漂う室内楽となっている。このレコードでのフランツ・コッホの演奏は、ブラームスの室内楽の特徴である、内省的で渋い表情がよく表わされている一方、フレンチ・ホルンのほのぼのとした雰囲気を辺り一面に漂わせ、室内楽の醍醐味を存分に味わせてくれる。ブラームスは晩年を迎え、創作意欲の減退を感じていたが、1891年のある日、クラリネットのリヒアルト・ミュールフェルトの優れた演奏を聴く機会があり、これで霊感を取り戻し、クラリネットの室内楽を一気に5曲書き上げることになる。その第1曲目がクラリネット三重奏曲だ。このLPレコードで演奏しているレオポルド・ウラッハ(1902年―1956年)は、ウィーン・フィルの団員として以外にも、室内楽でも活躍した伝説のクラリネット奏者である。このLPレコードでの演奏は、比類のない演奏技巧に加え、ブラームスの室内楽に欠かせない、奥行きのある深々とした演奏内容が、他の奏者では到底まねのできない境地にまで達していることが手に取るように分かる。(LPC)

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