~ドメニコ・スカルラッティ:ソナタ集~
嬰ハ短調 L.256(K.247)
ト長調 L.388(K.2)
ハ長調 L.457(K.132)
ト短調 L.386(K.35)
変ホ長調 L.142(K.193)
ヘ短調 L.171(K.386)
ヘ短調 L.475(K.519)
イ長調 L.483(K.322)
ロ短調 L.33 (K.87)
ハ長調 L.255(K.515)
ヘ長調 L.278(K.437)
ピアノ:クララ・ハスキル
LP:日本コロムビア(ウェストミンスター) OW-8057-AW
これは、ドメニコ・スカルラッティ(1685年―1757年)のチェンバロのためのソナタ集を、名ピアニスであったクララ・ハスキル(1895年―1960年)がピアノで演奏したLPレコードである。ドメニコ・スカルラッティは、イタリアのナポリに生まれ、スペインのマドリードで没した作曲家。同年にはJバッハとヘンデルが生まれており、後にいずれもがバロック音楽の大輪の花を咲かせることになるが、ドメニコ・スカルラッティは、ナポリ楽派の祖とまで言われるまでになった人物。ドメニコ・スカルラッティは、ナポリで教会付き作曲家兼オルガン奏者となったが、音楽を教えていたポルトガルのバルバラ王女がスペイン王家に嫁いだため、ドメニコ・スカルラッティもマドリードへ行き、王妃の作曲家として騎士の位を受け、25年もの間をスペインで過ごすことになる。オペラや宗教曲も書いたが、チェンバロのための練習曲を数多く書いた。それらはソナタと呼ばれているが、ソナタといっても現在のピアノソナタとは大きく異なり、いずれも短い練習曲風小品といった趣の曲だ。これらの曲は、現代のピアノで弾いても、現代風に生き生きと光り輝くといった性格を持っている曲であるため、現在でもたびたび演奏される。一曲一曲が独特の個性を持ち、いずれも軽快なテンポで一気に弾かれる。こんなところが、現代人の感覚にも合うのかもしれない。これらのソナタは、1910年に、アレッサンドロ・ロンゴが整理番号を付けて出版したものがロンゴ版(L番号/545曲)、また、ラルフ・カークパトリックが整理番号を付けて出版したものが、カークパトリック版(K番号/555曲)として知られている。ピアノのクララ・ハスキルは、1895年にルーマニアのブカレストに生まれる。10歳でパリ音楽院に入学。15歳で最優秀賞を得て卒業した後、ヨーロッパ各地で演奏旅行を行う。フランスを活動の拠点としていたが、ユダヤ系であったためスイスに出国。第二次世界大戦後は、スイスとオランダを拠点とするようになった。 1950年以後に、脚光を浴び始める。豊かな感受性に加え、鋭い感受性がハスキルの演奏様式の特色となっていた。しかし、 ブリュッセルの駅で転落した際に負った怪我がもとで急死した。スイスでは1963年より「クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール」が開かれている。ここでのクララ・ハスキルの演奏は、彼女の持ち味を存分に発揮し、天上の音楽を弾くがごとく、典雅にして美しく展開され、時が経つのも忘れるほど。リスナーは、夢幻の空間を彷徨うような、至福の一時を味わうことができる。(LPC)