「植草一秀の『知られざる真実』」
2014/09/30
それでも埋立申請承認撤回が沖縄知事選争点になる
第973号
ウェブで読む:http://foomii.com/00050/2014093001064023207
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10月7日(火)午後6時から、
沖縄県那覇市国際通りにある
てんぶすホール(てんぶす那覇4F)
http://www.tenbusu.jp/shisetsu_riyou/access/index.html
でシンポジウム
「埋め立て承認撤回なくして 辺野古は守れない!」
が開催されることになった。
基調講演をさせていただく。
主催はNPO法人:ピースメーカーズ・ネットワーク
http://goo.gl/e38hzF
ピースメーカーズ・ネットワークサイトより、シンポジウムの案内を転載させ
ていただく。
10月7日(火)
緊急提言
「埋め立て承認撤回なくして
辺野古は守れない!」
シンポジウム:植草一秀(基調講演)・真喜志好一・喜納昌吉
開場:18:00
開演:18:30
終演:21:30
会場 那覇市 てんぶすホール
入場無料
主催:NPO法人ピースメーカーズ・ネットワーク
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11月に行われる沖縄県知事選をめぐり、
県内はもとより国内で現在広く議論になっている問題点である、
辺野古埋め立て承認の撤回・取り消しについて取り上げます。
植草一秀氏がブログで問題提起した、
辺野古の基地建設に反対するのであれば、
埋め立て承認の撤回を公約にしなければおかしいという点について、
議論を深めます。
基調講演をしていただく植草一秀さんは
「辺野古に基地を造らせない!そのために何を為すべきか」の視点から、
核心は「辺野古海岸埋立申請承認撤回」にあると判断され、
ご自身のブログ
「知られざる真実」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
にて発信してこられました。
その他のパネラーの方は
長く辺野古の問題に先頭に立ってかかわってきた、
建築家で市民運動家の真喜志好一さん、
承認の撤回・取り消しを掲げて知事選に立候補することを表明した、
音楽家で民主党県連代表の喜納昌吉さん
を予定しております。
辺野古をめぐる状況には多くの問題点が含まれておりますが、
それらは沖縄のみならず、日本の未来をも左右するものです。
ぜひ会場へお運び頂き、議論の輪のなかへご参加ください。
私は9月10日に菅義偉官房長官が、辺野古米軍基地建設問題は、
「過去の問題」
「仲井真知事の埋立申請承認がすべて」
との主旨の発言を受けて、これが民主主義を冒涜する発言であるとの批判を展
開してきた。
同時に、菅官房長官発言は、辺野古米軍基地建設問題の核心が
「埋立申請承認」
にあることを、政府を代表して発言したもので、極めて重大な言質を与えるも
のであることを指摘してきた。
ブログ、メルマガでの私の主張に対して、9月10日にピースメーカーズ・
ネットワークより、沖縄でのシンポジウム開催の打診があり、この打診に前向
きな回答を提示したことから、今回のシンポジウムが開催されることになった
ものである。
私の視点は、2009年の鳩山政権の誕生以来、辺野古の米軍基地建設問題
が、沖縄基地問題のひとつの象徴としてクローズアップされてきたなかで、沖
縄県民の総意により、辺野古の海岸を破壊して米軍基地を建設することを阻止
することの重要性を何よりも重視する点にある。
今回知事選では、この問題を最重要の争点に位置付け、沖縄県民に対して、具
体的かつ実効性のある、曖昧さを残さない公約を明示し、その上で県民の判断
を仰ぐことが何よりも大事だと考えている。
辺野古米軍基地建設阻止を求める陣営は、統一候補として翁長雄志氏の擁立を
決めたが、翁長氏は「埋立申請承認撤回」を確約していない。
沖縄県民が、本当に辺野古米軍基地建設を阻止しようとするなら、翁長氏に
「埋立申請承認撤回」確約を求めるのが当然の流れである。
翁長氏がこの確約を示さないことから、喜納昌吉氏が知事選出馬に名乗りを上
げられた。
現状を踏まえれば、喜納氏の行動は、極めて有用かつ意義あるものであると考
える。
知事選においては、当然のことながら、本当に辺野古米軍基地建設を阻止しよ
うと考える県民の投票は一本化しなければならない。
そのことを前提に、いかに具体的かつ実効性のある明確な公約を選挙前に明示
するか。
この問題を中心に考察を深めたいと考えている。
辺野古に基地を造らせないことを真剣に考える一人でも多くの沖縄の人々と、
じっくりと考察を深めたいと考えている。
何度も指摘していることだが、9月10日の菅義偉官房長官の記者会見での発
言によって、11月16日の沖縄県知事選の具体的な争点の核心が激変したの
である。
菅官房長官は、知事の「埋立申請承認」こそ、辺野古基地建設の核心であるこ
とを明示したのである。
この発言の意味は深長である。
「大失言」をしてしまったのか、それとも、計算し尽くした「布石発言」を示
したのか。
その見定めが重要である。
計算し尽くした「布石発言」とはこのようなものだ。
菅氏は、辺野古基地建設阻止陣営が統一候補として翁長雄志氏を擁立したこと
を確認した。
そして、翁長雄志氏の公約に
「埋立申請承認撤回」が盛り込まれなかったことを確認した。
そのうえで、辺野古基地建設問題の核心が知事による「埋立申請承認」である
ことをあえて明言した。
その大前提は、翁長氏陣営が「埋立申請承認撤回」を公約として提示すること
は絶対にないというものである。
菅官房長官が公式の記者会見で、
「知事の埋め立て申請承認がすべて」
と発言し、翁長雄志氏は知事選出馬に際して、
「埋立申請承認撤回」
を公約に掲げなければ、
仮に知事選で翁長雄志氏が知事に選出されても、辺野古米軍基地建設を中止す
る必要はないことになる。
記者会見で述べたように、
「粛々と工事を進める」
ことが正当化される。
この図式を確立するために、菅氏が計算し尽くしたうえで、9月10日発言を
示したというのが、ひとつの仮説なのである。
これに対して、「大失言」の可能性とは何か。
菅義偉氏は、翁長雄志氏が「埋立申請承認撤回」を確約しないことを確認せず
に、「埋立申請承認がすべて」と発言してしまったケースである。
この発言後に、知事候補者が「埋立申請承認撤回」を確約し、沖縄県民が「埋
立申請承認撤回」を確約する候補者に投票を集中させて、この候補者が当選す
ると何が生じるのか。
その新知事が安倍政権に対して、「埋立申請承認撤回」を行なえば、辺野古米
軍基地建設を強行する根拠を安倍政権は失うことになるのだ。
その最大の根拠が、菅官房長官発言自身になるのである。
これを「大失言」と表現したのである。
この経緯を踏まえれば、翁長雄志陣営は、願ってもない大チャンスを手にした
ことになる。
官房長官が「埋立申請承認がすべて」と発言したのである。
この発言を逆手に取れば、
「辺野古に基地を造らせない」
という公約が、圧倒的に確実性を増すのである。
「埋立申請承認」を撤回しても、政府が訴訟に持ち込む可能性はあるだろう。
それでも、菅官房長官が明言したように、「埋立申請承認がすべて」であるな
ら、「埋立申請承認撤回」は、圧倒的に力強い実効性を発揮することになるの
である。
逆に、新知事が埋立申請承認を撤回しないなら、菅官房長官が明言し多様に、
辺野古米軍基地建設は「粛々と」実行されてゆくことになるのである。
この文脈、論理、経緯を踏まえれば、辺野古基地建設阻止を公約に掲げる翁長
雄志氏陣営が取るべき行動は明白である。
「埋立申請承認撤回」を明確に掲げることが、当然の行動になるはずなのだ。
ところが、ここから先がミステリーなのだ。
9月13日に出馬記者会見を行った翁長雄志氏は、頑なに、「埋立申請承認撤
回」確約を拒絶したのである。
上記の文脈、論理、経緯を踏まえれば、翁長氏が「埋立申請承認撤回」確約を
拒絶する理由は存在しないはずである。
それにもかかわらず、翁長氏は頑なに埋立申請承認撤回確約を拒絶した。
記者の質問のほぼすべてがこの点に集中したが、翁長氏は撤回確約を拒絶し
た。
拒絶するだけでなく、この点を衝いた記者に、「逆切れ」する対応を示したの
である。
今世紀最大のミステリーと言っても過言ではない。
そのミステリーの謎解きのカギを握るキーワードが、
「腹八分、腹六分での結束」
である。
翁長氏は何度も、
「腹八分腹六分の結束だから撤回確約できない」
との主旨の発言を示した。
「腹八分腹六分の結束」
とは一体何を意味するのか。
ここに謎を解くカギがあるのだ。
それは、翁長氏支持陣営に、辺野古米軍基地建設容認派が潜んでいるというこ
とではないのか。
「埋立申請承認撤回」を確約すると、辺野古米軍基地建設容認派の意向に反す
ることになる。
しかし、「埋立申請承認撤回」を確約しないのに、辺野古米軍基地建設阻止を
求める勢力が結束できるのはなぜなのか。
それは、仮に辺野古米軍基地建設を阻止できなくても、沖縄県政の実権を握る
ことができれば、それで納得できるということではないのか。
あくまでも、ミステリーの謎解きのための仮説だから、真実が明白になってい
るわけではない。
しかし、あまりにも「不透明」であることは間違いない事実である。
私が問題提起し、喜納昌吉氏が出馬表明したことで、埋立申請承認撤回問題が
クローズアップされつつあることは事実である。
そして、この問題は菅義偉官房長官が明言したように、辺野古米軍基地建設問
題のまさに核心である。
ところが、もうひとつ奇妙な現象が広がっている。
沖縄の優れたメディアである琉球新報社などが、この問題に強い光を当てない
ことである。
沖縄国際大学に転出した前泊博盛氏などは、埋立申請承認撤回の重要性を指摘
するが、琉球新報自体は、これまでのところ、この問題のクローズアップを慎
重に回避している印象が強い。
たしかに、翁長雄志氏支持体制は、問題の核心である「埋立申請承認撤回」問
題に踏み込めば、ガラス細工のように崩壊してしまう恐れがあるのだろう。
仲井真弘多氏から県政の実権を奪取できる可能性が高まっているこの時期に、
このガラス細工を崩してしまうのはもったいないとの感情が働くのは理解でき
なくもない。
しかし、沖縄知事選の最大の争点に掲げられているのが辺野古米軍基地建設阻
止問題なのである。
その問題の核心について、曖昧なまま前に進もうとするのは、あまりにも欺瞞
に満ちていると言わざるを得ない。
万が一、沖縄県民が辺野古基地建設阻止の意思で翁長雄志氏に投票を集中した
にもかかわらず、知事選後に埋立申請承認撤回が実行されずに、辺野古米軍基
地建設がなし崩しで進行するなら、県民の投票は無に帰すことになる。
知事選を主権者の明確な意思を反映する機会にするためには、選挙前に公約の
明確化を図ることが必要不可欠である。
これは喜納昌吉氏が良いとか悪いとかという次元の話ではない。
翁長雄志氏陣営の問題であるのだ。
9月10日の菅義偉官房長官発言を契機に、埋立申請承認撤回問題が11月1
6日の沖縄県知事選最大の争点に浮上したことは間違いない事実である。