「植草一秀の『知られざる真実』」
2017/04/30
安倍政治の終焉と主権者政権の樹立
第1730号
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安倍昭恵氏が事実を語ればすべてが終わる。
安倍晋三氏は2月17日の衆院予算委員会質疑で
「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。
もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います。」(議事録251)
「繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。」(議事録255)
と答弁している。
したがって、安倍昭恵氏が、森友学園の小学校用地取得問題に
「関与した」
ことを証言すれば、安倍首相は首相と議員を辞任しなければならなくなる。
メディアは森友事案の報道を減らし、この危機をもみ消す対応を続けているが、最終的には安倍昭恵氏が事実を語り、安倍首相は辞任に追い込まれることになるだろう。
日本政治刷新の時機が近付いている。
1993年、2009年に政権刷新が実現したが、いずれも短期間で既得権勢力の逆襲で崩壊に追い込まれた。
三度目の正直で、次の政権刷新によって、本格政権を樹立し、日本政治を本当の意味で刷新しなければならない。
日本では敗戦後のGHQによる日本民主化政策の成果として日本国憲法が制定され、1946年には革新政権が樹立された。
しかし、1947年に米国の外交政策が大転換して、対日占領政策は
民主化から非民主化へ、
反共化=思想弾圧
に大転換した。
革新政権は破壊され、対米隷属の父と言える吉田茂による統治が樹立された。
その後、石橋湛山や鳩山一郎など対米隷属から一線を画す首相が誕生したが、米国の工作により政権は破壊され、対米隷属の日本政治が植え付けられてきた。
2009年の鳩山由紀夫政権の誕生は、日本の主権者が対米隷属からの脱却を選択した意義深い政治刷新だったが、日本支配を堅持しようとする米国は総力を結集してこの政権を攻撃した。
その後、米国傀儡の菅直人政権、野田佳彦政権を経て、現在の安倍晋三政権が樹立されたのである。
日本の政治刷新とは、
米国・官僚・大資本が支配する日本政治を
主権者国民が支配する日本政治に
改新することである。
安倍一強などと言われているが、状況は一瞬に似て激変する。
政治刷新が目に見えてこないのは、主権者国民の前に明確な選択肢が明示されていないからである。
主権者国民の前に、新しい政権の選択肢が示されれば、日本の主権者は必ず正しい選択をするはずである。
お隣韓国では、5月9日に大統領選が実施される。
共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)氏と国民の党の安哲秀(アン・チョルス)氏とによる事実上の一騎打ちの選挙になっている。
韓国では保守派による政権と革新派による政権が10年単位で入れ替わる変遷を示してきた。
盧泰愚(ノ・テウ)氏、金泳三(キム・ヨンサン)氏の保守政権10年ののち、
金大中(キム・デジュン)氏、盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏の革新10年の政権を経て、
李明博(イ・ミョンバク)氏と朴槿惠(パク・クネ)氏の保守9年半
が続いてきた。
日本よりははるかに政治の変動性が大きいのが韓国である。
米国は韓国に反米政権が誕生することを強く警戒している。
与党セヌリ党の朴槿惠(パク・クネ)大統領が弾劾、罷免されたことから、野党「共に民主党」の文在寅氏の次期大統領就任が有力視されたが、選挙戦終盤にかけて「国民の党」安哲秀氏が支持を急伸させた。
安哲秀氏は中道候補だが、米軍によるミサイル防衛システムであるTHAAD配備に賛同するなど、親米傾向を強く示している。
北朝鮮情勢の緊迫化が喧伝されているが、韓国大統領選で反米政権の誕生を阻止するために、米国が各種の工作活動を展開していることが影響しているとの見方を否定できない。
その安哲秀候補だが、テレビ討論で保守勢力との結託についての疑惑を突かれ、急速に支持を低下させている。
このまま進めば文在寅氏が新大統領に選出される可能性が高いが、このことは、5月9日に向けて、さらに朝鮮情勢の緊迫化が「演出される」重要な原因になり得る点を見落とせない。
日本では北朝鮮がミサイル発射実験を行うと、地下鉄を止めて、これを大きく報道するという珍現象が観察されている。
安倍政権は北朝鮮情勢を政治利用している面が強い。
さらに言えば、北朝鮮が日本の安倍政権に対して、さまざまな緊張を「演出」する「協力」を行っているとの仮説も否定し切れない。
米国最大の産業である「軍産複合体」にとって、
「地政学リスク」
は生命線である。
戦乱がなければ巨大な軍事産業を維持することはできない。
北朝鮮などの核武装があるから、核武装を解除することもできない。
米ロの関係が改善し、主要国以外が核保有をしなければ、核廃絶も現実味を帯びる。
しかし、軍事産業にとって、この種の緊張緩和は悪夢である。
冷戦の時代は軍備拡大の大義名分があった。
しかし、冷戦が終了して、この大義名分がなくなった。
そこで「演出」されたのが、
2001年9月11日の「同時多発テロ」である。
各種資料、証拠映像は、「同時多発テロ」が米国による自作自演の「演出」であった疑いを示唆している。
ブッシュ大統領は
「イラン、イラク、北朝鮮」
を
「悪の枢軸」
と表現し、
「テロとの戦い」
を新たな大義名分として掲げたのである。
米国はイラクに侵略戦争を仕掛け、その延長上に、
イスラム国
が創設された。
シリア、イスラム国などを中心とする中東と
北朝鮮を軸とする極東
が
軍事産業が生き残るための生命線となっている。
日本で安倍政権に不祥事が発生するとき、
沖縄で重要な選挙が実施されるとき、
韓国で重要な選挙が行われるとき、
北朝鮮が必ず動く。
その動きは、安倍政権や安倍政権が従う米国にとって有利な選挙結果をもたらす方向である。
北朝鮮を動かしている本当の司令塔がどこにあるのかについても、一般常識とされる考え方を疑っておく必要がある。
韓国における国内の対立図式は、
親米VS反米
保守VS革新
反中VS親中
親大資本VS親労働
旧世代VS新世代
というものである。
9年半続いた、
親米・保守・反中・親大資本・旧世代
の勢力による政治支配が、
反米・革新・親中・親労働・新世代
の勢力による政治に刷新される可能性が高まりつつある。
日本の安倍政権にとっては、韓国の政治刷新は極めて大きな脅威になる。
日本でも政治刷新を実現させる必要性が高まっているが、そのためには、日本の新世代が、日本政治の問題点を正しく認識する必要がある。
森友事案は政治腐敗の典型的現象であり、このような事象に対して、特に若い世代が強い関心を持つべきである。
格差拡大によってとりわけ若い世代の主権者が下流に押し流されている。
その現状を是正するには、政治刷新が必要不可欠なのである。
市場原理にすべてを委ね、格差拡大を放置する政治から
市場原理の問題点を認識して、すべての主権者に保証する最低水準を引き上げる生存権重視の政治に転換させるには、
主権者が選挙で判断を示すしかない。
日本においても主権者が適正に選択できる状況を生み出さねばならない。