「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/11/29
金融市場の目まぐるしい変化を正確に読み抜く
第2200号
ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2018112916280850159
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株式市場が乱高下を示している。
拙著『日本を直撃する「複合崩壊」の正体』
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では、2018年初以来の波乱相場の背景を解説している。
さらに、2019年の金融市場を洞察するための点検事項を包括的に検証して
いる。
また、個人の資産防衛術について極意を提示している。
シリーズ2017年版『反グローバリズム旋風で世界はこうなる』
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はサブタイトルを
「~日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ! ~」
とした。
2017年は日米株価が急騰した。
トランプン大統領が就任し、グローバルな株価上昇が広がった。
シリーズ2018年版『あなたの資産が倍になる』
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では、2018年金融市場の波乱を予測した。
2018年は1月末以来、内外金融市場の波乱が続いている。
日米株価は10月初めに年初来高値を更新し、NYダウは史上最高値を更新し
た。
しかし、その後に急落を演じた。
日経平均株価は10月2日に24448円の高値を記録したのち、10月26
日に20971円へと下落した。
しかし、その後は11月8日に22583円の高値を記録したのちに下落し、
11月21日に21243円まで下落、その後に反発して11月29日には、
一時22400円台まで値を戻した。
猫の目のように目まぐるしい市場変動が繰り返されている。
私が執筆している会員制レポート『金利・為替・株価特報』=TRIレポート
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
は、これらの株価変動を的確に予測してきている。
詳細は同レポートをご高覧賜りたい。
10月初旬からの株価急落は中国株価の下落が引き金を引いた。
上海総合指数は下値節目の2638ポイントを下回ったのだ。
連動して主要国の株価が急落した。
しかし、「高値波乱」局面で株価は一本調子の下落を続けるわけではない。
急落の後に急反発することも多い。
このあたりが金融市場分析の難しいところだ
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
では、この短期変動をきめ細かく予測し、ほぼ予測通りの現実が生じている。
株価下落の主因は三つある。
米国金融引き締め
米中貿易戦争
日本増税
である。
この基本要因に変化がなければ、2019年に向けて株価に下方圧力がかかり
やすい状況が持続する可能性が高い。
ところが、11月21日以降には、この三つの要因の一部に重要な変化が生じ
た。
『金利・為替・株価特報』2018年11月26日発行号(11月21日執
筆)はタイトルを
「米利上げ政策転換あれば目先は相場反転も」
とした。
その変化が現実化して株価が反発している。
金融市場変動の先行きを見通すことは容易ではない。
しかし、金融変動のメカニズムを正確に把握し、変動要因の変化を的確に洞察
できるなら、金融変動の先を読むことも可能になってくる。
資産防衛が重要な現代において、経済金融情勢を的確に分析して金融変動の先
行きを洞察する重要性が増している。
トランプ大統領は選挙戦のさなかから、選挙後も、大統領就任後も一貫してメ
ディアから攻撃され続けてきた。
米国議会には100日間のハネムーンと呼ばれる風習がある。
大統領就任後の100日間は、大統領提案に敬意を払うという習慣だ。
主権者が選挙で選出した大統領であるから、その大統領の政策提示には敬意を
払う必要があるとの考えに基づくものだ。
ところが、トランプ大統領にはこの風習が適用されなかった。
その理由を考える必要がある。
メディアを支配しているのは誰か。
そして、その支配者にとってトランプ大統領というのはどのような存在である
のか。
これが、この謎を解くカギである。
メディアを支配しているのは巨大資本である。
巨大資本とは金融資本、軍事資本、多国籍企業である。
グローバルに活動を展開し、利潤極大化を追求する、いわゆるハゲタカ資本の
ことである。
このハゲタカ資本がトランプ大統領を攻撃していることになる。
トランプ大統領は金融資本、軍事資本と緊密な関係を有するが、多国籍企業の
支配下には入っていない。
トランプ大統領は多国籍企業にとってのご馳走であるTPPから離脱した。
ハゲタカ資本の支配下に入らない米国大統領であるから攻撃を受け続けている
のである。
トランプ大統領は11月6日の中間選挙を乗り越えた。
上院の共和党多数を維持したから、大統領弾劾は容易ではない。
大統領弾劾には上院の3分の2以上の賛成が必要になる。
しかし、共和党は下院過半数を失った。
弾劾裁判の発議は下院が行う。
民主党はトランプ大統領のロシア疑惑について、議会の権限を活用して追及を
強めると考えられる。
2019年にかけての世界経済、金融市場にトランプリスクが依然として大き
くのしかかることになる。
10月初旬以降の内外株価下落の大きな背景にFRBの金融引き締め政策があ
る。
FRBは昨年12月から3月、6月、9月と、3ヵ月ごとの利上げを実行し
た。
FRB議長に就任したパウエル氏はトランプ大統領の意向を受けて、ハト派政
策を実行するのではないかと警戒されたが、この懸念を払拭するかのように利
上げをコンスタントに実施してきた。
そして、12月19日のFOMCで本年4回目の利上げが実施されると見込ま
れてきた。
米国の利上げ継続が米国経済を減速させ、世界のマネーフローにおける米ドル
への資金回帰を促し、新興国、資源国経済にダメージを与えることが懸念され
てきたのである。
ところが、10月初旬以降の株価下落を受けて、FRBの政策対応に変化が生
じる可能性が浮上し、米国金融政策に関する先行き見通しが変化し始めてい
る。
株価下落をもたらしてきた主因の一つである米国金融政策運営に微妙な変化が
観察されているのである。
G20会合では米中首脳会談の開催が予定されている。
米中貿易戦争がさらに拡大するのか、それとも、米国と中国との間で何らかの
緊張緩和が実現するのか。
大いなる注目が必要である。
日本の消費税増税は安倍内閣の存続にかかわる重大問題である。
2019年10月の消費税率10%を断行するなら、日本経済は撃墜され、安
倍内閣は消滅することになるだろう。
いわゆる「毒をもって毒を制する」展開になる。
安倍首相はこのことを警戒して、変則球を用意し始めた。
2019年10月に実質的に、消費税率をいったん5%に引き下げる政策を提
示し始めたのである。
キャッシュレス決済を行える国民だけに減税を提供するなら、減税の恩恵に浴
すことができない主権者から猛反発が生じる。
したがって、全面的に消費税率をいったん5%に引き下げる政策が提示される
可能性がある。
これで、来年の国政選挙を乗り切るとの判断からかも知れない。
しかし、これと引き換えに2010年7月から消費税率を10%に引き上げる
なら、日本経済が重大にかく乱されることになる。
安倍内閣の消費税政策が混迷を深める気配を強めているのだ。
これらのすべての状況を精密に分析して、2019年の金融変動を考察してゆ
く必要がある。
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