「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/08/30
ハゲタカ支配=安倍内閣というトロイの木馬
第2126号
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種子法廃止が突然浮上して、審議も十分に行わないまま国会に廃止法案が提出
され、可決されてしまった。
水道法改定案も国会に提出された。
こちらは審議未了で継続審議になったが、臨時国会で法改定が強行される恐れ
が高い。
国内で十分に論議された形跡がないのに、突然、政府から立法提案される。
十分な国会審議の時間も確保せずに法改定を強行してしまう。
誰が、何の目的で、このような行為を指揮しているのか。
きわめて重大な問題である。
種子法については、オールジャパン平和と共生顧問の山田正彦元農水相が
『タネはどうなる?!
-種子法廃止と種苗法運用で-』
(サイゾー出版)
https://amzn.to/2Lsr8nQ
を出版され、詳細を解説くださっている。
これと同様にきわめて重大な意味を持つのが「水道法改定」だ、
拙著『「国富」喪失』(詩想社新書)
https://goo.gl/s3NidA
のあとがきに次のように記述した。
「私たちの命と未来を支える根源的なものを三つあげるとすれば、「水」、
「種子」、「教育」ということになるだろう。
日本では、水を「湯水のように」扱うが、飲用可能な水資源は世界的に希少に
なっている。水は命の源であり、いま、世界における最重要の戦略物資のひと
つになっている。
ハゲタカが、この水に狙いをつけると同時に、ハゲタカにこの水を献上する愚
かな行動が現実のものになり始めている。
「種子」がなければ「果実」は得られない。日本では、コメ、麦、大豆の、主
要農作物について、法律によって公的に種子を管理してきた。
このことによって世界でも賞賛される優れた品種が開発され、広く国民の利用
に供されてきたのである。
ところが、ハゲタカは、この種子にも狙いを定めている。種子の知的所有権を
強化し種子を独占支配しようとする民間巨大資本が、日本においても種子を独
占支配することを目論んでいる。
自国を愛する為政者なら、体を張ってハゲタカの策謀に立ち向かうべきである
が、その為政者があろうことか、ハゲタカの利益のために体を張ろうとしてい
る。本末転倒と言うほかない。」
水と種子は、私たちの命を支える根源的な存在である。
水と種子を利用することは、生命体としての人間の、天から賦与された「自然
権」である。
その「水」と「種子」を私的に独占し、「水」と「種子」への人間のアクセス
を人為的に制限する行為は、天に対する冒涜行為である。
安倍内閣は2013年3月15日にTPP交渉への参加方針を表明した。
政権発足をもたらした2012年12月の衆院総選挙で、安倍自民党はTPP
にどのようなスタンスを示していたのか。
「ウソつかない!TPP断固反対!ブレない!日本を耕す!!自民党」
これが、自民党の選挙用ポスターに大書きされた文字だった。
「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉には参加しない」
という言葉は、コメ、麦、肉、乳製品、砂糖の重要五品目の関税は守ることだ
と理解されていた。
また、自民党は公約として、6項目の事項を明示した。
「わが党は、TPP交渉参加の判断基準を明確に示します」
http://goo.gl/Hk4Alg
TPP交渉参加の判断基準
1 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
2 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
3 国民皆保険制度を守る。
4 食の安全安心の基準を守る。
5 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
6 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
しかし、安倍内閣は主権者に明示した明文の公約を全面破棄するかたちでTP
Pに突き進んできた。
2016年12月には、米国でトランプ政権が発足する直前で、米国がTPP
から離脱すればTPPは発効できなくなることを肯定した上で、国会でのTP
P承認を強行した。
米国をTPPの枠内にとどめることが重要で、米国が参加するTPPの内容を
確定させるためにTPPの承認が必要だと強弁して国会批准を強行した。
しかし、その後、米国はTPPを離脱した。
米国が離脱すればTPPは発効しない。
TPP合意文書には一切手を付けさせぬために早期の日本批准が必要だと主張
していたにもかかわらず、安倍内閣は、その後にTPP合意文書の改定を推進
する先頭に立った。
そして、6項目の公約で明示した「国の主権を損なうようなISD条項」を排
除するのではなく、これを盛り込むことに総力を投入した。
ISD条項はハゲタカ巨大資本が主導すると見られる裁定機関の決定が、国家
の決定の上位に位置することを認める条項である。
このことからISD条項は「国の主権を侵害するもの」であるとして、日本政
府は合意しないと、自民党が公約に明記したのだ。
ところが、そのISD条項をTPPに盛り込むことに安倍内閣は総力を投入し
たのである。
これらの行動から浮かび上がる真実とは、安倍内閣が日本の主権者の利益では
なく、ハゲタカ巨大資本の利益のために行動しているという実相である。
TPP交渉に参加するに際して、安倍内閣は米国政府と二国間協議を行った。
この二国間協議で、安倍内閣は重大な約束を米国政府と結んでしまった。
日米並行協議による決定事項である。
この事前協議で、日本は国益=国民の利益を完全に放棄する約束を米国と結ん
でしまったのだ。
日本が米国に輸出する自動車の関税率を15年から30年にわたって引き下げ
ないことなどを日本政府が確約してしまった。
「自由貿易で日本の輸出が伸びる」というのが、安倍内閣がTPPを推進する
最大の理由であったはずなのに、日本の最重要輸出品目である自動車につい
て、米国の輸入関税率を引き下げないことを、いわばTPP交渉に入る「入場
料」として支払ってしまっていたのだ。
さらに、日米協議で決定されたこの文書のなかに、強烈な「地雷」が埋め込ま
れていた。
タイトルは
「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書
簡」
このなかの「投資・企業等の合併買収 3.規制改革」の項目に以下のように
記されている。
「日本国政府は、2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも
倍増させることを目指す日本国政府の成長戦略に沿って、外国からの直接投資
を促進し、並びに日本国の規制の枠組みの実効性及び透明性を高めることを目
的として、外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求める。
意見及び提言は、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに、検討
し、及び可能な場合には行動をとるため、定期的に規制改革会議に付託する。
日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる。」
「日本政府が、
日本国の規制の枠組みの実効性及び透明性を高めることを目的として、外国投
資家その他利害関係者から意見及び提言を求め、
定期的に規制改革会議に付託し、
規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」
ことが明記されており、安倍内閣がハゲタカ資本の命令に従って「必要な措置
をとる」ことを約束してしまったのである。
種子法廃止も水道法改定も、そして、種苗法の運用改定および法改定検討も、
すべては、この「TPP付属文書=サイドレター」に起因するものであると思
われる。
ハゲタカがハゲタカの要望を日本政府に突き付け、日本政府が規制改革会議で
その要望を検討し、「必要な措置をとる」ことを、日本政府が確約してしまっ
ている。
究極の売国政策である。
国内での十分な検討がまったく行われぬまま、ハゲタカの水面下での工作が、
そのまま立法措置に直結し、日本の諸制度が改変され始めている。
安倍内閣そのものが「トロイの木馬」と化している。
この売国内閣を一秒でも早く退場させなければ、日本国民はハゲタカに収奪し
尽くされることになる。
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