牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

JAS認定を考える

2008-08-19 22:29:36 | 雑感


野菜や食肉などの安全性を求めるために、生産段階から流通までの安全管理等を、第三者機関による認定や検査などにより生産履歴に漏れのない記録が要求される所謂JAS認定制度がある。
同認定を受け、安全性が保持されることによる付加価値は、消費者への信頼性を得ることと、かかる手間を代償とした付加価値は存在するが、消費者のニーズにより一定した効果は期待できない可能性がある。
食肉卸売会社の社長によると、牛肉においても販売店や量販店等から同認定を受けている牛肉の引き合いが徐々に増加しつつあり、今後さらに加速しそうだとの話を聞いた。
因みに、国内では、乳用種やF1などは北海道・東北地方で同認定された牛肉が流通し、通常1kg当たり1,700~1,800円程度のものが2,000円程度で流通していると聞いた。
一方和牛の同認定には、大きな壁がある。
それは、生産履歴を事細かに記録する必要性から、肥育素牛を子牛市場から導入することにそのネックがある。
現在子牛市場に出荷する際、子牛登記とともに購買者に手渡している生産履歴では、日常的な飼育法や疾病記録が具体的でなく、その内容がJAS規格では資料不足であり、認定の対象となっていない。
市場単位の全ての子牛出荷者、肥育場、食肉市場や食肉加工場、さらに食肉卸業と販売店の全てが同規格に沿った安全性が保証された飼養法や食肉処理が行われていて、それらの全てが記録に残され、その全ての過程を定期的に第三者機関が検査して合格することにより、同認定牛肉が誕生することになる。
よって、同認定に限ると、現在の子牛市場からの素牛導入法はその対象外となっている。
家畜市場を通さないで、特定の子牛繁殖施設と肥育場および食肉処理関係箇所で同認定に基づく検査や記録が整えば、同認定は可能である。
また、子牛生産から肥育までを行う一環経営であれば、これも認定の対象になる。
ただ、同認定を受けるためには、毎日の詳細で膨大な記録が必要であることと、第三者機関による同認定のための初度経費や現地検査にかかる旅費や滞在費と検査費用が年に1~2回必要となるため、小頭数での認定では、係る経費率を考慮するとペイしないなどの問題点もある。
肥育牛を年間約50頭出荷する一環経営の牧場が、食肉処理までを実施するとして、この春同認定を受けた。
同牧場で認定牛を出荷するまでは、少なくとも2年余りを要するが、同認定の効果のほどが待たれるところである。