牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

年よりは危惧する

2012-04-12 01:12:52 | 雑感

TPPについて、日本農業を含め、我が国の畜産関係者の本音はどこにあるだろうか。
関税撤廃には魅力があるという関係者も現存していようが、この撤廃と同時に、係る関係国は自らの国益のために様々な輸入規制の緩和や輸出国の法改正にまで、協議の対象としているという。
身近な問題では、関税撤廃で輸入飼料が安価となれば低コスト化が実現するとか、海外へ高級牛肉の販路を拡大するなどと期待しているケースもあろう。
しかしながら、TPP問題はそのような目先の単純な事象だけを可とし賛成して良いものだろうか。
例えば、現状では和牛の精液や受精卵、生体子牛などは国内産業を守る生産者団体の申し合わせにより、和牛の遺伝子の国外流出を阻止する形が取られている。
しかしながら、TPPが現状のままで国際間合意となれば、アメリカなどは待ってましたとばかりに精液や子牛の買い付けに乗り込んでくることになる。
輸入飼料が安価になるどころではない。
大規模化農業国では、さらに安価な生産費で肥育され、現状の輸入牛肉の価格同然で外国産黒毛和牛の高級肉が店舗で幅をきかす事態は、想像ではなく現実の事態が明白に予測出来る。
その挙げ句、日本では和牛の生産経営が成り立たなくなることが予測される。
それに変わって数年後には、「安福久号」に負けない「King Fukuhisa yankee」が発進されくるかも知れない。
これらのことは、和牛界に限られたことではなく、酪農や養豚や養鶏に留まらず、日本農業全般にも同様に及ぶことになる。
農業者だけでなく、広くTPPの本質を理解した上で、日本の未来への舵取りを見定めていかねば、まさに国家存亡の危機を迎えることになる。
現在の政治や大手産業界は「がんばろう!日本」を唱えながら、日本古来の独自の産業や係る貴重な文化をも切り崩し、子供たちの夢や将来性をことごとく消滅させつつある。
日本政府は国策を謝り、為す術を無くした借金財政とその不況に戦き、すべからず金策の効率化優先で、食糧増産を蔑ろにするという施策一辺倒を踏襲し、聞く耳を持たない一本立て政策を突き進める積もりのようで、決定的な国策の誤りを加速しようとしている。
世界中は農耕地の減少傾向と人口増加により、日に日に食糧危機が迫っているという現実を控え、いつまでも食料輸入が継続されるはずがない。
戦後の日本人は、係る危機を予測できても、その本質を恐がり逸れてばかりである。
その結果が1,000兆円のツケとなった。
食糧問題では同様の人任せ的な温床が、後戻りの聞かない決定的な誤りを選択しつつある。