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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

肥育経営どうなる

2008-07-09 19:34:35 | 肥育

飼料難がらみもあって、飼料の高騰に歯止めが掛けられない状況が続いている。
飼料だけかと思っていたら、鋼材も急騰し、畜舎の新築や立替もままならない状況である。
黒毛和種を扱う肥育センターにとって、由々しき状況である。
この難局をどのようにして乗り切るかが、経営者の悩みの種であろう。
平均60万円の素牛を出荷する頃には、枝肉相場はどのようになっているだろうかと、掌に冷や汗をかきながら寝床に向かっている畜主の姿が目に浮かんでくる。
全ての飼育経費を算出すれば、現状では、45万円は掛かっている。
素牛代を加算すれば、105万円でトントンである。
経費を5万円減らすには、約4ヵ月短縮しなくてはならない。
そうなると、枝肉の仕上がり具合が気になる。
それでも100万円で販売しなくてはならない。
少なくても枝肉重量を500kgに持って行くとして、枝肉単価は、2,000円を確保しなければならない。
それには、A-4のピンでなければならない。
現状では、かなり厳しい相談になりそうだ。
だから、ピンの素牛ではなく、中程度に留めておけば、45万円程度の素牛代となる。
そうなると85万円で何とかなる。枝肉単価は1,700円で良いことになる。
大損はしなくて済むはずである。




文句の付けようがない

2008-07-05 00:09:51 | 肥育


写真の肥育牛は、文句の付けようがないくらい、素晴らしい体型と肉付きと増体能力を発揮している。
血統は第2平茂勝号、金幸号、金鶴号である。
血統も文句の付けようがない。
後は、文句の付けようのない枝肉を待つだけである。
血統と言えば、黒毛和種に限れば、今や、日本中その大部分の牛は文句なしの血統を持ち得ている。
だから、どの牛もA-5を格付けされ得る能力を持っているはずである。

枝肉格付けの現状について前述したが、同格付け創設時のモデル写真と現状との間にかなりのギャップがある。
(社)日本食肉格付協会では、そのモデルの最新版を平成20年5月に発行した。
それによると、創設時のシリコン製モデルは基本的に生かすとし、現状で実施されている格付けレベルの写真を並載し、その写真が基準となる旨の説明が成されている。
当初との判定基準のづれは否めないが、ここに改めて、リアルな写真として明示されたことは、関係者にとって、かなり見易い基準となった。
筆者が、「美味しい牛肉(2)~(12)でオリジナル写真として示したレベルとほぼ近いものである。
今回は、シリコンではなく、生の写真であることが、非常に重要な要素として興味が持たれるところである。
今後当該関係者には、枝肉とこの写真を見比べて、それぞれのランクを決める目安が出来たことになる。

一方、黒毛和種の脂肪交雑は、関係者の努力により、年々その蓄積程度を高めてきた。
上記したように、国中を優れた種雄牛の精液が飛び交うようになり、かかる肉質レベルは向上しつつ、性一斉もここ数年で一段と高まる気配である。
同協会の英断で示されたこの基準が、年ごとに変化することの無いよう見守って参りたい。




食い込みが良ければ心が弾む

2008-07-03 22:38:37 | 肥育


牛を育てることは、子供や孫を育てるのと同じで、食欲旺盛であれば自ずと安心できる。
食欲が良かったり、少し抑え気味であったりでは、肥育はうまくいかない。
前述したように、常にコピー状態で変化のない飼い方の継続が一番なのである。
以前、生後約30ヵ月令で体重500kgで発育不良の雌牛を出荷したらBMS値が11と言うのがあった。
所謂、シケ牛の類であった。この牛は育成の頃から配合飼料の級与量は常に5kg程度あった。
この給与量を育成期から仕上げ期までコンスタントに給与した結果が、発育は良くなかったが肉質は記述の通りとなったのである。
つまり、給与量を上げたり下げたりするやり方は、経験的にも肉質に関する限り好成績に繋がっていない。
食欲が良く、順調であれば肉量肉質とも好成績で、飼う人間もストレス無しで順調に儲かるはずである。

仕上がりました

2008-07-02 23:57:24 | 肥育


生後月齢が30ヵ月令を過ぎ、十分仕上がり出荷待ちの去勢牛である。
背中の辺りの毛の光沢が無くなり、フケが溜まり、食い込みも次第に勢いが無くなった。
俗に言うところの涸れた状態である。
予想体重は、850kgで枝肉重量は550kg、肝心の肉質はせめてBMS no.10を目論んでいる。
この牛の父は勝忠平、母の父は紋次郎、母の母の父は安福165の9であり、この牛の兄牛は、父が平茂勝であったが、BMS no.11であった。
勝忠平は平茂勝の子になるが、33%の割合で兵庫系の遺伝子を保っている。
要は母親との相性が良いかどうかである。


生産現場ではA-5なんて

2008-06-30 20:15:14 | 肥育


今日はA-5の肉ですき焼きにしようか!なんて言ってみたいものだ。
つまりは消費者ではなく、生産者サイドでは、なかなかA-5レベルの牛肉に有り付けない。
何もお金を出せばチャンスはあろう。
けれども、自ら生産したものは、高級であればあるほど"もったいない"思いにかられるものだ。
本来なら、りっぱな商品であるかは、生産者自身が食味し、自信が有ればお客さんに勧め、買って貰おうと言うことになる。
しかし、農家的志向は昔から零細であったことが、身に付いてしまい、自ら試し食いするくらいなら売ってしまえの志向なのである。
自信を持って生産し、自信を持って販売できるような強い精神状態を養うのも、生産基盤を拡大する上で不可欠なことでもある。


肥育用配合飼料

2008-06-29 20:19:50 | 肥育


前述したが、肥育飼料について、他所ではどのような配合飼料を使用しているであろうかと、興味津々の御仁が多々おられるようである。
肥育飼料は、何処のセンターでも大差ない飼料を使用しており、基本的には穀類50%、ふすまなど糠類35%、その他に産業副産物などが含まれているはずである。
要は、内容ではなく、前中後各期の粗飼料と濃厚飼料の使い分けであったり、配合飼料をどのステージで多量与えるか、少なく与えるかなどを一工夫しているかいないかである。
それにより、若干の成果の差が現れるかも知れない。
増体能力を高めながら肉質を良くする与え方を工夫するかであろう。

写真は肥育用配合飼料である。何処のセンターでも同様の写真しか撮れない。
穀類では、黄色トウモロコシを30%以上使用することは、カロチンなどの影響から、脂肪の色がその割合が増す毎に黄色が濃くなる傾向がある。
また、マイロを15%以上混ぜれば尿結症を発症しやすくなる。
これは同症の結石の成分であるリン酸マグネシウムが他の餌に比し、マイロには多く含有しているためである。

肥育配合も例外なく、価格の高騰で今後の肥育経営に大きな懸念材料として覆い被さってきている。
鹿児島などでは、穀類の自給生産を本格的に取り入れようとする畜産農家が出始めたというニュースを見た。
代替え飼料や自給生産や飼料米の利用など、真剣に考慮すべき時代に至った観がある。

肥育育成期用の餌

2008-06-28 20:11:53 | 肥育

肥育センターにより、与える飼料の種類は、まちまちである。
扱う飼料が同一の飼料会社であれば、それらの肥育センターは似通った飼い方を行っていよう。
古いタイプの肥育センターでは、上物を期待して独自の飼い方を行い、その飼い方を他に知らそうとしない例がままある。
しかし、数千頭以上の大規模経営者たちは、時流に合わせ、情報収集による技術の確立を目指していて、餌とか肥育法などについて聞かれれば企業秘密だなどの声は聞こえてこない。
国内のどこかで自らに必要な情報源があれば、臆することなく出掛けるという具合である。
それが掛かる産業の発展に繋がり、強いては自らの経営にプラスになることを認識されておられるからである。

写真は、著明な肥育関連飼料会社製の肥育前期用の配合飼料である。
穀類が50%、そう糠類30%、その他20%の内容で、その他の中にヘイキューブが若干混合され、カロチン含量を増し、嗜好性が考慮されている。
これらには、写真にあるようにペレットが数種混ぜてあるが、その内容については、明らかにされていない。
当然、具体的な内容が公表されるべきであろう。
肥育育成用配合飼料は、写真とは異なる仕上げ配合と同様な形状のものもある。
育成の場合は、子牛の骨格等発育を促すため、多少タンパク質の割合を高くしたものとなっている。

この飼料を仔牛に給与されているケースが、生産履歴等で多々ある。
この飼料は、肥育飼料であるので、子牛育成用ではない。
メーカーもそれぞれの飼料を発売している以上、それらの指導は徹底して頂きたい。
買ってもらってからのことは、お客次第だからでは無責任というものである。




元睾丸で仕上がり状態を判断する

2008-06-26 22:34:36 | 肥育
                 写真1


                  写真2


                  写真3


                  写真4

神聖なるブログに卑猥な写真を掲載したが、これも牛の肥育では見逃すことの出来ないファクタの一つである。
去勢するために元睾丸の内部は、脂肪の塊となる。
肥育期間を4段階に分け、4段階に入っても増体が非常に盛んであれば、写真1の様にその勢いが元睾丸にも現れる。
逆に、体不調により食い込みが次第に細ると、写真2の様になりやすい。
時には、去勢時の方法如何で、肥育が進んでも、元睾丸の所在を認めがたい形になる場合がある。
元睾丸を確認できないのが写真3である。
雌の形のようだが、歴とした去勢牛で、その周囲を見ると適度に肥育過程を経ているように判断できる。
肥育が進むと体脂肪が次第に増えるが、この過程は体上線から体下線方向に蓄積し、最後は、胸底や下方へぶら下がっている元睾丸辺りに蓄積する。
この元睾丸へ脂肪が蓄積するのは、配合飼料を多量摂取するためで、体脂肪が必要以上に蓄積する度合いにより個体差があり、元睾丸は大小様々な大きさになる。
そして、仕上げ時期には、牛体自身が涸れてくるように、写真4のように、元睾丸も若干涸れた感じとなる。
これくらいが、適度な大きさと涸れ具合である。
大きさは、肥育期間中の餌の食い込み量が判断でき、涸れ具合は、体脂肪が減じ、枝肉基準値が高くなることを示唆している。
さらに、元睾丸を触手することでも、仕上がり具合が予測できる。適度の硬さが良い。どの程度と言われても、触り慣れることにより判断できるようになる。


情報が経営を助ける

2008-06-22 21:25:22 | 肥育



近年肥育される黒毛和種の雌雄の出荷割合は、去勢牛が約60%、雌牛40%となっている。
このうち去勢牛は、約60%以上が上物として取引されている。
このことを念頭に置き、素牛を導入することは重要なことである。
単純に考えれば、子牛相場が肥育成績に深く関わっていると踏めば、子牛相場の中程度以上の素牛を導入すれば、その殆どが上物に仕上がるという計算である。
しかし、その相場は、買参人である自らが決めているという事実がある。
相場が子牛の品質を正確に物語っていれば問題はない。
前述したが、その能力を予測するには、血統であったり、その組み合わせの相性の良し悪しであったり、どのような飼料を摂取し、その発育状態はどうか、子牛を育てている生産者の取り組みはどうか、病歴の有無、参考となる肥育成績のデータの有無とその結果を生かせるかなど、様々な情報により、買参人自体が子牛相場を一歩一歩正確なものへと導くことが自らの肥育生産の成功へ大きく影響する。
それらの情報をもとに、競られる子牛の価格を個々に値付け出来る技術がそれらに大きく影響する。
肥育頭数を単純に確保するのと、上記の根拠を念頭に置くのとでは、経営感覚に雲泥の差が生じるはずである。


寝る牛は肥る(2)

2008-06-14 12:46:13 | 肥育






餌を摂取し、水を飲み、反芻が終わると、次は2枚の写真のように熟睡するのが肥育牛の「喰っちゃ寝」のサイクルである。
これくらい一斉に熟睡してくれることは、肥育の管理がうまくいっている証拠でもある。
だから、この時間に畜主などが畜舎を覗くなどは、愚の骨頂なのである。
牛を見回るのは、朝一番と餌の摂取時、飲水時が良いことは前述した。
筆者は、猫の如くそーっと差し足で、しかも、シャッター音などを消去した状態で撮影に挑んでいる。
結構気を使っているんだ!