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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

いつも揃って

2009-01-09 23:46:24 | 肥育



朝餌投与直後の肥育育成舎の風景である。
70頭余りの子牛たちが、一斉に粗飼料を摂取するために飼槽に頭を沈めている。
後方の房内には、1頭の牛の姿がない。
これぞ、飼い主にとって理想の給餌風景である。
このことは、以前にも書いたが、朝からこの様子を目の当たりにすれば、自然に牛飼いの牛飼いたる喜びを味わう瞬間である。

低コスト生産

2008-12-16 23:05:02 | 肥育



肥育素牛を50~60万円で導入し、如何に効率よく低コスト生産が出来ないものかと日夜思考を巡らしている。
肥育の上での低コスト生産は、先ずは素牛価格を抑えることにある。
乳雄やF1牛を導入するから、低コストも実現する。
それらの肥育成績を鑑み、和牛用の配合飼料よりカロリーやエネルギーの少ない安価な飼料が利用できる。
ところが、高価な和牛の場合、その潜在能力を引き出そうとするため、低コストを意識しても実現はなかなか難しい。
現況のように和牛肥育の大多数が赤字状態の時、低コストが実現出来なければ、如何にしてその赤字を縮小するかである。
先ず、肥育期間の短縮、そのためには仕上げ時期を早める肥育法を取り入れなければならない。
育成時の栄養状態を高め、早期に体脂肪の蓄積を促すことで、仕上げ期を早める。
この場合、肉質は良くなるが、牛の発育が抑制されるため、枝肉重量が500kgに満たない。
肥育期間を短縮すれば、仕上げの要素である肉の締まりやきめ、肉や脂肪の色や光沢など熟度が浅く、腿抜けも少ない。
それらの肥育法へ移行した場合の飼育コストと枝肉評価や販売価格を予測しながら、今後の一つの選択肢として取り組まざるを得ないのかと、その判断に苦慮している。
肥育期間を短縮するには、総体的に肉量肉質の低下は免れず、しかも肥育牛特有の疾患などの発症率も高いことが予想される。
この様な現状下で、今朝の新聞報道はトウモロコシの価格が下落したという、コストダウンに繋がる朗報である。




稲わら効果

2008-12-08 22:45:44 | 肥育




素牛導入時に、市場名簿から得られる情報を出場牛と照らし合わせて、予め予定している導入頭数を確保するための品定めをする。
そのほかのデーターとして、過去に導入した牛に、出場牛の母親の能力を判断できる兄弟牛がいれば、大体の能力の見当を付けて、目星を付ける。
そのように吟味して導入し、肥育した結果、全く見当違いと言うことがある。
その原因の一つに、肥育途中にビタミン等の欠乏症状を来した場合である。
それらの症状が出れば、先ずその対策として、欠乏したものを補給する。
その結果、体調が正常になれば、それまで以上に食い込みが改善され、仕舞いには、増体が一向に止まらず、なかなか仕上がらない。
挙げ句の果て、筋間脂肪が多く、ロース芯面積が小さめで歩留基準値がAランクぎりぎりとなる。
勿論、BMS値も6~7止まりである。兄牛は、10~12だったというのに。
もう一つ原因が考えられる。
それは、粗飼料が考えられ、稲ワラが輸入禁止され、平成20年3月までオーストラリア産のウィートストローやバーリーストローを約3年間使用してきた。
その間は、総体的に肉質が今一で、血統を吟味した牛も、BMS値で2~3ランク下がった。
そして、輸入禁止が解けて暫くした平成20年3月から輸入稲わらに変えた。
その結果、先月当たりから、稲ワラ効果が現れ始め、従来の飛び級的な成果が得られるようになった。
稲わら以外の乾草などの給与法は、全頭に等しく施していることから、稲ワラの利用は、本来潜在する肉質能力を、麦わらなどより効率よく引き出されていると判断している。

乾草を食い込む

2008-11-20 19:46:57 | 肥育


運動場で動き回り、腹を空かすのか、乾草を良く食い込む。
昨日記述したが、同じ導入間もない子牛たちである。
与えているのはオーツヘイとビール粕を主とする発酵飼料のみである。
乾草は約3~4kg、発酵は約2~3kgを食い込んでいる。
この食い込みは、生産地によりその量は明白に異なっている。
奄美諸島の牛は、実に良く草を喰う。
関西のある生産地の導入牛は、DGは大きいが、なかなか草を食い込まない。
挙げ句、最も大きい体重で導入するが、仕上がり体重は、最も小さい。
つまり、腹づくりが出来ないからである。
それだけではなく、ルーメンアシドーシスにも罹りやすい。
この様な子牛たちは、乾草を与えると、初手から飼槽の草を押しのけ、底辺に口を入れ込み実(み)物を探し始める。
子牛配合を探し求めるのだ。
子牛配合が肥育様に与えられていたためである。
奄美諸島の牛たちは、ややキャシャに見えるが、乾草を食い込むために、写真のようにぱんぱんの腹容となり、飼う側も実に満足げに育てることが出来る。
生産者サイドでも、この様な肥育状況を、是非理解して頂きたいと切望している次第である。

導入牛の運動

2008-11-19 19:43:29 | 肥育


導入後数日経てば、写真のように運動場に解放させる。
今月上旬に奄美諸島から導入した去勢牛群である。
導入牛は導入後3~4ヵ月間運動場に出して、足腰を鍛えている。
今朝は降雪があってもいいような寒波が押し寄せた。
周囲の山々も一段と色づき、本格的な冬の訪れである。
写真の牛らは、約半月の間に、20℃前後の気温差に見舞われたことになる。
運動場に出す牛たちは、運動量が多いため、意外と寒さには強い。
しかし、運動量が少ない舎飼いの牛らは、気温の変化のために風邪などに罹りやすい。
そのため、肥育牛舎は、寒風を塞ぐための冬囲いの作業にかかった。
新築牛舎はその備え付きであるが、従来からある畜舎は、どちらかといえば、夏向きの畜舎のために、冬囲いが必要となる。
開いたままの窓を閉めたり、北向きをコンパネで囲ったりが主な作業である。

主題は、導入牛を運動させる必要があるか否かである。
運動させることによるエネルギーの浪費があるために、効率の高い飼育法ではない。
されば、なぜ?ということになる。
日常運動させることは、①健康維持と基礎体力および強健性を養う②足腰を強靱にする③斑のない食欲を促す④性格が温順となるなどである。
導入時から仕上げまで、舎飼いの場合より、疾病率は明らかに少ない。
疾病率が低いことから、仕上げまで順調に増体する。
2ヵ月毎に素牛を導入しているが、春夏秋冬約80%が運動場付き育成舎で育成している。
神戸肉のように、枝肉重量が470kg以内とされている場合は、運動をさせる必要はない。
九州産で、増体能力が高い場合は、その能力を遺憾なく発揮させるには、運動が功を奏することになる。


仕上げ期の上手な2頭飼い

2008-11-01 00:00:18 | 肥育


肥育の育成期が終われば、仕上げ期にはいる。
房当たり5~6頭の群飼いで、育成期も仕上げ期も同じ房で肥育するのが最近の傾向である。
その方が、総じて手間いらずであることと、導入時から同房と言うことで、牛たちがお互いが幼なじみ風で慣れていて、競合が少ないからでもある。
畜舎の備えや労力に余裕があれば、2頭飼いや3頭飼いの方が監視や個々の牛の飼料管理がし易い。
2頭飼いの場合は、慎重に牛を選定しないととんでもないことに成りかねない。
2頭がそれぞれ体重差があったり、体型に差があったりすれば、次第に2頭の間には、余計に体重差が生じる。
それは、2頭間に強弱関係があり、日々房内でストレスを感じ、そのはけ口に弱牛をおもちゃにするため、弱牛は次第に摂取量が減り、体重差が出て、ひどい場合は、100kg以上にも成るケースがある。
これでは、肥育の失敗である。
2頭それぞれ、平均して順調に増体することが当然ながら目標である。
それぞれを2頭ずつに分ける場合、次のようなことを留意点として振り分けている。
①に体形と体重が同様であること
②に口の大きさが同様の大きさで、もの食いの程度が同様と判断した牛同志であること
③に背丈がほぼ同じであること
④に突き癖や神経質なのは、同様のタイプを一緒にする
⑤に決めかねる時は、父牛が同じ牛同志を同房とする
⑥2頭ずつにして不具合が生じるようであれば、出来るだけ早期に入れ替えを行うなどである。

写真のように角のタイプが異なっていても、差ほど問題はないようである。
この2頭はお互いに角のタイプは異なるが、体形はほぼ同様で、順調に増体している。
角は、牛個々の角の動かし具合や癖で形は変形するため、性格とは無関係のようだ。
肥育牛は、繁殖牛のように、制限給餌ではないので、本来はおおらかな性格をしている。

給与直後は牛の後側に回る

2008-10-21 00:16:17 | 肥育


生後月齢20ヵ月令までの畜舎で撮った写真である。
給与作業が終わって間もない時間である。
何も後ろに回らなくても飼槽側から撮っても良いのだが、前から見る光景は、全てが餌を食い込んでいること事態を確認するに過ぎない。
ところが、後ろに回ってこの光景を見ることで、畜主は様々なことで、納得することがある。
例えばこの畜舎は、左右11房で、平均5頭づつ入れるから、左右55頭が一列に並ぶ。
この55頭の後躯が一列に揃って並ぶ光景を眺めることで、畜主はかなりの充実感を満喫できる瞬間なのである。
畜主の精神状態を正常にさせる光景でもある。
それは、この光景が全てではないが、この光景こそが牛を肥育しているという実感を得られる瞬間でもある。
牛の肥育の基本は、食欲が常に一定して滞らないことにある。
牛の後方を見回る時、1~2頭がぼーっと立ちすくしていたり、無気力に座っていたりすると、何らかの疾患や体調異常を疑うことになる。
そうなると、心底穏やかでは済まされない。
牛の後方に廻ることで、牛体の異常や牛の糞の状態(下痢や血便などは臀部周囲を汚す)を確かめたり、牛床の状態やウォータカップの故障や汚染状態を確かめる。
そして満足感を楽しむのが牛飼いの極意なる。


肥育よもやま話

2008-10-11 00:05:01 | 肥育
遺伝子の話を前述したが、数年前、折角パソコンを導入したからには、全牛のDATAを肥育成績を含めて入力し、あらゆるDATA項目と肥育成績について、何らかの傾向を掴み、それを基に素牛導入の参考資料にしようと、無い知恵を駆使したものである。
BMS値7以上を過去にさかのぼり抽出し、その血統を調べ、母牛とその持ち主を一覧に出す。
同一地域から、年間約500頭とその他約100頭のDATAがあれば大体の目安は拾える。
 個体識別、性別、産地、生年月日、導入日、導入時体重、導入価格、繋養舎、血統の詳細、兄姉の肥育成績、母牛のDATA、生産者、産次、肥育成績の詳細など個々のDATAを入力している。
どこの産地でも、血統的には、遜色のないものばかりであるが、数頭を保有する生産者で、どの母牛もBMS値が9以上に至る素牛を生産するケースがあったり、常に2~3等級で終わる素牛を生産しているケースもある。
それらのDATAを参考に、セリ値を設定すれば、どのような素牛でも問題はない。
全てが上物というわけにはいかないのが現状であるから、それらを見越して値付けすればよいことになる。
過去にBMS値が8以上の成績になった牛の弟妹牛は、確実に競り落とすことにもしている。
しかし、7割り程度は、交配父親が他牛に変更されている。
肥育の結果が、1年未満ででるなら良いが、生後30ヶ月掛かれば、このような傾向もやむを得ないのかもしれない。
BMS値が8以上あった弟妹牛の7割りは、兄姉牛より成績が下がっている。
それは、父牛との相性が異なるためであろうと判断している。
しかし、概ね上物にランクされている。


優れた肥育者の取り組み

2008-10-09 20:56:54 | 肥育
肥育牛を立派に仕上げるこつはないかと聞かれることがある。
そのこつがあれば、何も苦労することはない。
以前、そのような確立した飼い方があれば、導入するたびに、どの牛にもコピー状態で対処すればよいと記述したことがある。
その通りであるが、人でも兄弟姉妹、ましてや双子の関係であっても、遺伝子は同じでも、顔付や背の高さも異なり、性格もそれぞれ異なる。
同様に、家畜、特に牛だって同様なのである。
その異なる形質を有する素牛に、コピー状態で飼うことは、その肥育成績にかなり差が生じてもおかしくはない。
そのように考えれば、素牛個々の能力を見極める審査眼を会得し、その牛にあった飼い方をするしかない。
日本でも有数な肥育成績の実績を上げている牧場では、1日1回の配合飼料の給与では、個々の摂取量が把握できにくいことと、飼槽が汚れることによって摂取量が一定しないため、給餌を数回に分けて与えているという。
極端な方法としては、朝昼夕だけではなく、夜中の12時頃まで、点灯し、夜中にも給与しているというのである。
給与量を高めることと、その都度牛の状態がたしかめられることから、牛毎の給与量の適量を決めることが出来るので、給与量にムラが無くなり、常に一定量を摂取させることによって、良質の枝肉を生産しているという。
とりもなおさず、仕上げ期の給与量のコントロールについても、複数回給与することにより、順調に仕上げることが出来ているようである。
肥育牛を立派に仕上げるこつは、配合飼料を少量ずつ何回にも分けて与えることで、消化器官もストレスを受けることなく、健全な状態で、消化するため、効率よく増体し、体脂肪の蓄積も過多にならないということである。
生き物を同列に於いて機械的に管理するよりも、自らの頭脳と腕と足をフルに使うことで、目的は達成されると信じている。

良く草を食い込む牛たち

2008-10-08 15:42:12 | 肥育


写真は、昨日と同じである。
この牛たちは、同じグループの牧場で生まれ、生まれた時から生後20ヵ月令まで、同房で管理している。
生後6~7ヵ月令で肥育場に導入して管理している。
これらの牛のことは以前にも書いた。
写真のように、粗飼料を実に良く食い込んでくれる。
今では、高価な主産地の導入牛より、品質の高い枝肉となっている。
だから優秀な牛たちなのである。
生後4ヵ月目から粗飼料主体で育成して、肥育場に来てからも生後15ヵ月令まで同様に粗飼料で腹づくりする。
その成果から、雌牛はほぼ5等級で、去勢牛は4等級の上位から5等級を占めている。
血統はと言えば、九州系の一流の精液を交配してはいない。
主として、家畜改良事業団の若雄?最新売り出しの種雄牛の精液を利用している。
母牛群は、肥育素牛用に南西諸島から導入したものの中から、ランダムに繁殖用に供用している。
登録検査では、何故か約80頭の全てが、80~81点の範囲に収まっている。
(この登録検査値事態を話題にしたいが、主題が異なるので主題に戻る。)
この点数からも判るように、九州主産地で供用されている一流の母体群ではない。
離乳から暫くして粗飼料を多量摂取するために慣らし、そして多給しているため、血統を超えた体脂肪の蓄積能力を遺憾なく発揮しているものと判断している。
出荷して内臓を検知すると、この様に肉質の良好な牛は、消化器官が他に比し、かなり大きいことが実証されている。
つまり、良い肉牛は、腹づくりによって出来上がっているのである。
雌牛の方が、好成績である理由については、前述した。