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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

優れた仕上げは優れた枝肉に繋がる

2009-07-21 18:57:49 | 肥育







2枚の写真は、同じ牛であるが、上は先月16日に貼り付けた写真であり、腰部の状態を撮ったもので、下は同じ牛の体幅を撮ったものである。
そして、今月3日に紹介した枝肉は、この生体写真の牛である。
肥育牛の仕上がり状態が優れているとして紹介した写真の牛が、その説明通りの成果が見られたため、その事実をタイトルに表し紹介した次第である。
該牛の詳細内容は既に記述したので、事実だけに留めた。

情報収集で技術を高めよう

2009-07-10 17:49:31 | 肥育




疲れきってのせいか、トラックからなかなか降りようとしない。
それでも先頭の牛が飛び出せば、後続も一気に降りてきた。

今回の導入牛は、去勢牛が48頭で雌は10頭であったが、去勢牛の平均体重は270kg台で平均のセリ価格は40.3万円、雌牛は235kgで33万円であった。
やや小格の粒揃いであったが、1~2頭発育に難ありの牛がいた。
願わくば、市場での平均体重がDG1kgの230kg前後で揃えば言うこと無しであるが、現状では不可能な状態である。
この価格帯であれば、これから20ヵ月先に出荷した際、枝肉相場が現状維持で、何とか赤字にならないで済むのではと予測している。
それも、上物率が75%での胸算用である。

先般開催の食肉市場でのイベント時に、他のグループの出荷牛が30頭程度上場されていたが、2~3等級が4割程度いた。
それらは雌雄様々であり、枝肉重量の平均は450kgであったが、平均セリ価格は1,250円位であった。
要するに、56万円余/1頭に過ぎない。
もし、素牛代金が60万円であったとしたら、素牛台割れで物材費その他の約50万円余が丸々赤字と言うことになる。
一環経営であればまだしも、赤字にならなかった出荷牛は、0又は1頭程度に過ぎなかったはずである。
セリ時の名簿によれば、血統は遜色ないもので占められ、生後月齢も28~32ヵ月令であった。
相場の低迷も大きな要因であるが、現状の格付け結果が好転しない限り、競り値も好転しない。
枝肉を拝見した限りでは、上物狙いを意識しているようではなく、肥育技術が一定のレベルに達していないと判断せざるを得ない状況であった。
高価な経済動物を製品化するには、相場低迷期であっても、大損しないような手だてを常に意識しなければ、今時のような苦しい結果に繋がる。
我が国では、消費者や流通業者などが期待する上物肉の生産は、肥育現場で、牛に餌を潤沢に与え、大きな体重を確保するだけでは、なかなか実現し難いのである。
これまで幾度か述べてきたように、良好なる枝肉の生産技術を修得することによって、満足な結果が得られるはずである。
是非、和牛の肥育を手掛けておられる生産者は、そのことを真剣に意識して頂きたいものである。
情報化の時代は、その様な技術を簡単に入手出来るようになった。
今や一匹狼は時代遅れであり、手当たり次第に目的の情報を入手して、一歩ずつでも技術向上に努めるべきである。
具体的には、食肉市場に出荷している同業者からの情報収集や、餌を納めているメーカーやJA関係者にアタックするのも如何だろうか。
また、手前味噌になるが、これまで述べてきた肥育法について、取りまとめたものを次号の肉牛ジャーナル「和牛コラム」に掲載の予定である。
我が国の和牛産業は、個々の生産者の健全な経営があって始めて、子牛生産及び肥育生産分野の活性化に繋がるはずである。





堅肥り

2009-06-17 22:26:41 | 肥育


肥育後半にいたった牛の肥り具合について、よく「まだゆるい」とか「若い」などと聞くことがある。
そのゆるい牛については、系統の影響もあるが、一般的に仕上がり状態が未熟な牛のことである。
月齢や体重が一定の仕上げ状態にあっても、ゆるい牛は、端的には、肥育の失敗であろうと判断している。
この様な牛は、体脂肪の蓄積割合が高く、皮下脂肪が厚く、筋間脂肪つまりカミが大きいとされるため、ロース芯の面積が小さく、そのため歩留基準値も72%におよばず、Bランクになる。
一方、このランクの枝肉は、サシの入り具合も今一で、肉色も赤く、BCS値が5程度になる。
何故この様な失敗作に終わるかであるが、その幾つかの要因を列挙すれば、
①ビタミンAコントロールが的確でない。
②粗飼料と濃厚飼料の給与に一定の方式がとられていない。
③生後20ヵ月以降にビタミンA欠乏症状が出て、同剤を補給したことにより、体調の回復により、肥育末期に至っても食欲が肥育中期程度に回復するなどである。

肥育が問題なく、順調に経過し、末期には次第に堅肥りし、中期の順調な増体期に現れる体全体の勢いみたいな症状が、食欲の減退とともに次第に衰えて、てかてかした体毛も、毛艶を無くして次第に涸れてくるのが一般的である。
この様な牛は、サシはともかく、肉色BCS値は3程度となり、肉のきめやしまりも良くなり、つまり上がりの良い枝肉となる。
牛体がゆるい去勢牛は、陰嚢脂肪を見れば、容量も大きく、赤みを帯び、まだ勢いがあると感じる。

写真の牛のように、身体全体が、良く締まり、腰のあたりに水が溜まるような窪みが出来るくらいであれば、締まってきたなと言う具合である。




肥育牛の休息

2009-06-06 00:25:07 | 肥育







肥育が中盤に入り、最も増体する頃になると、この様なビックリするような光景を見かける。
慣れない頃は、牛には余計なことであったろうが、鼓脹症ではないかと疑い起こしてしまった経験がある。
この様相は、決して病的ではなく正常な肥育牛の寝姿なのである。
むしろ、増体状況が好転している得意な姿でもある。
食って呑んで反芻が一段落すれば、この状態になるは理想的な肥育牛の日常サイクルの一齣に過ぎないのである。
これが肥育末期の頃になっても、この様な寝姿では少々問題である。
第一、仕上げ時にこの様に食欲があって、ひっくり返るほどの勢いがあっては、まだ仕上がっていない証拠みたいなものである。
肥育末期の頃になれば、体重も800kg前後となり、次第に食い込み量も減少し、牛の動きも俊敏さが欠けてくる。
仕上げ期の牛がこの様な体勢を取ることは、寝起きがままならず、起きあがろうとする動作をやたらと繰り返すが余り、心臓や呼吸器等に圧迫がかかり体調の不調を来たし、非常に危険が伴う原因になり易いのである。
肥育牛の管理は、そのステージ毎の食い込みや体調の変化の特徴を常に把握して監視を行うことが肥育担当者の常識でもあり、不可欠で重要な技術でもある。
とくに肥育末期は、過剰な肥満状態のために、事故の発生如何は紙一重の状態なのである。

雌雄同群

2009-03-16 22:37:44 | 肥育



写真は繁殖部門から搬入した生後約7ヶ月令の子牛たちである。
毎月5~6頭が搬入されるが、今回は去勢牛3頭、雌牛3頭の6頭である。
生後4ヶ月令頃から、粗飼料(乾草)を飽食させているだけに、搬入後も乾草の食い込みが実に良好である。
月齢が、市場より導入するよりも約2ヶ月若いために、乾草の飽食期間を7~8ヶ月間行うなど、これら特有の飼い方をしているが、結果的にそれが功を奏している。
これらは、雌雄同群としているが、雌牛の方が気丈に餌の摂取能力が高く、次第にボリューム感を増し、肉牛タイプとなる。
一方去勢牛は、体高などの発育は良好であるが、ボリューム感が今一となる。
その結果、雌牛の肥育成績は、去勢牛より良好である。
去勢牛の場合は、体重当たりの飼料摂取量の割合が少ないためであり、雌牛と同様な摂取割合に至るまで、摂取効率を高めることが必要である。
同じ施設から搬入されても、雌雄を別々に飼育した場合、雌の方が優れるとは言い難い結果となる。
この場合、雌雄同群だからの効果のようである。
雌雄を同群とするのは、生後約20ヶ月令までである。


種雄牛の成績は安定性が一番

2009-03-15 22:22:36 | 肥育
           今売れ筋の安福久号の産子(母の父は平茂勝号)

今から6~7年以前、平茂勝号の産子が導入されれば、しめた!と思ったものである。
それまでの神高福号や忠福号などとは、若干異なる結果が出始めたからである。
異なる結果とは、その大部分がBMS no.5以上で、それ以下が滅多に出なかったと言うことである。
素牛導入上で、この様な結果が見込めることは、大変重要なことである。
この様に、常に上物にランクされる産子を生み出す種雄牛こそが、安定していて、優れた種雄牛であると判断できる。
平茂勝号の場合は交配雌牛との相性に左右される度合いが少なかったことが伺われる。
種雄牛の産子の成績については、平茂勝号のようなタイプもあれば、その相性によっては極上の成績を見るが、2~3等級も出るといったような成績がバラツクものもいる。
むしろ、このタイプが一般的であって、それ以下の種雄牛は論外であろう。
過去に活躍した種雄牛はその時点では、光っていた訳であるが、高齢となれば、それらの成績は自然に右下がりの傾向を示す。
全国的に改良に貢献した平茂勝号にしても、その傾向は同様に推移している。
それは、枝肉の格付が時代とともに、その見方に変化があることと、子牛も産次が多くなれば肥育成績が右下がりになるのと同様な遺伝的退化が有るのかも知れない。
また今では、年々優れた種雄牛が造成されているはずなのに、BMS no.12を獲得するには、至難の業である。
その様な理屈を例えとするならば、安福号のクローン牛が再生されたが、果たして、当時の安福同様な成果をもたらすかは、興味津々である。


安心安全な牛肉生産を考える

2009-03-09 23:42:06 | 肥育
肥育用導入牛は疾病無しで、順調に発育し増体することが、優れた肉量および肉質に繋がる。
そのために、肥育現場では、下痢や肺炎などにかからないための試みを行っている。
導入直後から、整腸剤や抗菌剤や乳酸酵母剤を半年間与えたり、磁石をルーメン内に飲み込ませるというのもある。
また、獣医師の指示書の下で抗生剤を投与する例もあるという。
抗生剤は長期に投与することは、副作用や体内残存の問題があるために、精々1週間程度の投与となる。
この様に、疾病に至ることのないように、予防的な処置を行う傾向をしばしば聞く。
しかし、食肉生産を目的とする家畜へのこの様な傾向を、諸手をあげて是とし難いものがある。
当方では、これまで薬品による予防処置は、導入時にヘモフィルスワクチンとテラマイ筋注ぐらいである。
導入直後は、乾草を飽食させることと前期配合・発酵飼料・ふすまを適量与えることで、体調強化を狙った飼い方を行っている。
その結果、前期発育中の牛たちは、写真に見るように、近付いてシャッターを押しても、安心した様相で満足げである。
この姿に飼い主は大いに満足である。


風邪に罹る牛

2009-02-23 22:32:46 | 肥育


導入して1週間目の今朝、2頭の去勢子牛に風邪症状が出て、体温41℃を越しぼーっとして食欲が無い。
獣医師は午前中に抗生剤、ステロイド剤、解熱剤を筋注し、処置は2日間続けるとのことであった。
風邪の牛は、導入以降の乾草摂取量が少ない牛であった。
導入から風邪による発熱や下痢、強いては肺炎などに至れば、発症から治癒するまで、その間は増体しないどころか、減量しかねない。
肥育牛の飼育期間は限られているが、これらの疾患にかかることでその間の増体停滞または減量分を取り戻すことは出来ずに終わることになる。
それだけでは無く、その疾患により肝臓やその他の器官に蓄積されているビタミン類も無駄に消費され、挙げ句その後の肥育の段階では、ビタミンA欠乏症となりやすい。
肥育管理するには、そのことを念頭に導入後の5ヶ月間は良質乾草の多量摂取やビタミンAED剤等の補充を的確に行う必要がある。
風邪に罹れば、上記のような欠乏症に至らないために、出来るだけ早期に回復させる必要がある。
こちらでは、導入以降に乾草を順調に食い込まない場合は、食い込む量まで乾草を控えめにして、徐々に増量するが、その間ビール粕発酵飼料で体調維持のための調整用に徐々に加えている。
それでも、罹る牛は罹る。
子牛育成用飼料主体で飼われてきた導入牛が、乾草給与主体の管理に変わることで、ルーメン内微生物の生息環境に異常な変化が起こり、体調を損ねてしまったことが、引き金となり風邪などを罹患したものと思っている。


素晴らしきかな牛飼いども

2009-02-22 16:42:00 | 肥育


今週出荷の肥育成績一覧表を休憩室の机の上に置いた途端、一人の従業員が「3週続けてや!」と奇声をあげた。
当方では、毎週8頭ずつを出荷しているが、彼の担当している仕上げ舎から、3週続けて1頭ずつ出荷した。
その3頭が何れも5等級もしくは5等級に匹敵する黒字を出したからである。
その結果を感嘆している彼の姿を見て、筆者も思わず「よっしゃ!」と声を上げた。
担当者が、その成績を常に意識してくれ、その結果に満足している状況こそが、畜主の最大の喜びでもある。
日頃は口数の少ない彼であるが、常日頃から肥育の成果を意識していることだけで、担当者としては及第点である。
前述したように、他の従業員も同様に一覧表をその都度見ながら、その結果に気を掛けている。
素晴らしい連中である。
それだけに、牛たちも同様に感じてくれているはずである。

出荷を迷う

2009-01-21 14:10:56 | 肥育


多数頭の肥育牛がいると、様々な疾患などが発症する。
その都度、治療すべきかそれとも出荷するかでその判断に窮することがままある。
治療する場合は、疾病が回復可能の程度にあるか否か、それまでの発育具合や月齢などが判断材料になる。
生後20数ヶ月例になっている場合は、肥育牛特有の疾患の場合が多い。
ビタミンA欠乏症、脂肪壊死症、低カル症、鼓脹症等々のケースが多い。
これらの疾患の場合は、治療し回復しても、肥育結果は往々にして芳しくない。
そのため出荷を計画することになる。
その他の疾患の場合は、抗生剤などを用いることで体内残留が制限されるケースもあり、万が一の場合(回復しない)を考慮して出荷するケースもある。
今朝は、生後30ヶ月令で750kgの雌牛が、後肢がやや腫れて歩行に支障を来し、食欲不振となりなかなか立ち上がりにくく成っているのを発見した。
本日は定期の出荷日で、6頭の出荷が準備されていたため、体不調の牛の同様の決断に迫られ、結果的に6頭の出荷牛の内、最も元気そうな牛と交代して出荷することとした。
基本的には、出荷時の生後月齢が、28ヶ月令以降であれば、出荷途中や市場での繋留中に事故のない様、危険性を考慮して早めに出荷するようにしている。
今朝のような事態になることは良くあるが、それらの処置については、臨機応変に判断し、対応することが結果的に得策である。