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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

雌雄の違い

2011-06-04 00:16:23 | 肥育


久しぶりに肥育成績を肉質等級のランクごとに集計してみた。
ランクごとに、導入価格、導入時までのDG、終了時体重、肥育期間中のDG、枝肉重量、枝肉単価、販売価格、個々の牛の差益、BMSno.の各項目を調べた。
その結果、去勢牛については何れの項目についても、ランクの高い順に比例している。
ところが、雌牛の場合は枝肉単価、差益、BMSno.だけが比例しているが、その内容は去勢牛と異なり、バラツキが大きく、その他の項目については、順不同でバラバラな結果となっている。
去勢牛については、結果的に飼料の食い込みさえとぎれなく順調であれば、5等級となり、全ての牛が平均20万円前後の差益が得られる結果でもあった。
雌牛については、増体結果が良好であっても、必ずしも肉質がよいとは言い切れない結果であった。
また去勢牛では有り得ないが、雌牛では仕上げ体重550kgでも5等級となるケースがままあるが、枝肉単価が高くても枝肉重量が小さいために、差益が去勢牛のようには上がらなく、若干のマイナスというケースもあり、雌牛肥育の難しさの一面がある。
そのあたりが素牛選定にかかっていると言っても過言ではない。

肥育と稲ワラ

2010-10-21 21:54:14 | 肥育

肉質が低迷している原因の一つに、肥育飼料の給与法があげられる。

期待したように体幅が出ない。
仕上げ期になってからの食い込みが今一である。
軟便や下痢がちである。
アシドーシスや蹄葉炎に罹りやすい。
肝膿瘍になり易く、肝廃棄が目立つ。
ルーメン絨毛の付着が診られる。
肉色が濃く、サシも今一で枝肉評価が低い。
皮下脂肪が薄すぎる。

以上のような症状が度々起きる場合、ルーメン内環境が正常でないことが考えられる。
その原因として考えられるのは、肥育用配合飼料と粗飼料、とくに稲ワラの給与バランスが崩れていて、配合飼料の給与割合が多過ぎると上記のような症状を起こし易い。
本来、牛は稲ワラや乾草などの粗飼料を消化するために反芻をする。
つまり草食動物であることから、肥育であっても粗飼料の摂取割合がやや高い方が、ルーメン内の環境は正常に保持される。
育成期間の頃から、稲ワラは常に飽食状態とし、配合飼料を漸次増量する給与法を取ることにより、ルーメン内環境が正常に保たれることから、飼料の摂取量は順調に経過し、健康状態を保持できることから、増体や体幅が期待できることになる。
以前、屋外肥育と称した実験の中で、育成期では、乾草(ル-サン)を稲ワラを2~3cmに細切したと同様な状態で、配合飼料(75%)と乾草(25%)に混合して与え、肥育中期からは稲ワラ(25%)に置き換えた混合を、いずれも飽食させたことがある。
この場合、25%の粗飼料は、草草、ワラワラだけを思わせるような状態で、配合が隠れて見えるほどであった。
この場合、育成期も肥育期も実に好んで採食し、増体速度は良好で、体幅に富んだ結果となった。
この給与法を行うことで、正常なルーメン環境が保持され、このような結果となったと判断したものである。
話を戻すと、それにより、下痢なども改善され、枝肉の評価も上がることとなる。

以前国産稲ワラは肉質に問題ありと記述したことがあるが、その原因は、ワラが良質のあまり、V/A含量が高いためか?としたが、国産ワラは細切しないケースでは、その比重が軽すぎるために、実質の摂取量が不足しがちとなることから、上記した内容と同様で、肉質に問題が生じたことも考えられる。
国産稲ワラを利用する場合は、カサの割には軽量であることを認識して、細切などを行う必要がある。

また、増体を期待して摂取量を高めることを述べたが、但馬系の素牛の場合は、育成期からこのように強引すぎた給与法では、体脂肪の蓄積などにより肥育後半に問題を引き起こす可能性がある。











何回見ても心地よい風景

2010-08-25 23:01:36 | 肥育

当地は依然35℃以上の猛暑日が続いている。
牛らの熱中症を案じているが、知らず知らずの間に自らが食欲不振に至るなど、この暑さにはほとほと閉口している次第である。
ところが案じている牛らは意外と元気である。
昼間に舎内を覗けば、写真の通りで、ほとんどの牛らは横たえて休息をとっていて、前述したことがあるように、これらの光景を見る度に、安堵の思いと心地よさを彼らから頂戴しているのである。
今夏は雨が無く、湿度が低いことが牛らには功を奏しているようである。
暫くは、好天が予測されているが、無事に秋を迎えて貰いたいと願っている次第でもある。


夏場の食欲低下対策

2010-08-08 11:54:19 | 肥育


目下猛暑が持続し、熱中症などの発症が案じられる。
猛暑時は、肥育牛の食欲低下が起こりやすいため、様々な対策が必要である。
和牛肥育はV/Aコントロールなどの影響があり、とくに生後22~25ヶ月齢に到達する夏場は肝機能が低下し、食欲が低下する傾向がある。
このような傾向が起これば、V/A欠乏症につながり、増体や肉質などにも影響することが考えられる。
このようなケースでは、肝臓や消化器官などの機能補助効果を期待して、梅雨が明ける頃からパンカルや乳酸菌などを飼料給与時に振りかけることで、効果を上げたことがある。
この月齢に至れば、V/Aコントロールのモデルケースにあるように、血中V/A値を僅かずつ高めることで、食欲低下は改善される。
夏場対策は、基本的には暑さ対策が必要であるとともに、獣医師などに相談することも基本対策であろう。

安眠中なのか気になる

2010-06-16 00:18:02 | 肥育


家畜を管理していれば、いつかはそれらとの決別がある。
彼らの生命を犠牲にしながらの経営でもあると認識し、日頃から常に一抹の思いを持ちながら、尊い畜魂への感謝と供養の日々である。
口蹄疫の感染拡大により、罹患したもの全く関係のないものたちを見送る畜主らの無念さは、如何ばかりかと、日夜思わずには居られない。
このところ、日々の発症件数が数例と一頃よりは減りつつある。
このまま終息へと向かってくれることを願うのみである。


さて、家畜を飼っている畜主にとって、早朝の見回りは、いつもある種の緊張感を抱きながらの巡回である。
繁殖経営であれば、子牛が生まれていたりして、その初対面や無事で生まれたことに感動や喜びを味わうことは多々あろう。
しかし、肥育の場合は、朝の見回りで繁殖での感動を味わうようなことは先ず考えられない。
もしあるとしたら、どのような生き物と関わっていても経験することであるが、ぐったりとして或いはもう助からないと宣告された患畜が、早朝頭を持ち上げて、耳をぴくぴく動かしていたりするものなら、それまでの不安が一蹴され、喜びと感動に変わることである。
家畜との毎日は、罹患しているかいないかの様子伺いに尽きるのである。
写真はまさしく安眠状態の肥育牛の様子であるが、初めにこのような光景が視野に入った時、「よく寝ているな」などと思うことなど一度もないのが実感である。
「おいおい! 息しているか?」と大きな腹容の鼓動を確かめることになる。

雌の肥育は難しい

2010-03-08 21:59:43 | 肥育



今回から雌牛の飼育割合を若干増やすことにして、導入頭数の約30%を雌子牛とした。
導入雌子牛は去勢牛に比し、やや肥満気味である。
最近は南西諸島から来る子牛の大部分がかなりスリムになり、飼いやすくなってきたが、雌牛については尾枕着きでやってくる。
一般的に雌牛は飼いにくいとされているが、その一因に、雌牛は体脂肪に関しては早熟性とされており、そのことが肥育を難しくしている。与える栄養が去勢牛並みでは、確実に肥満となり、体形は小格となる。そのため育成期には去勢牛より長めに乾草などの給与期間を延ばさざるを得ない。
脂肪が蓄積する以前に腹作りし、体長や体高など発育を伸ばしてから配合飼料などを食い込ませねば結果は期待出来ない。
TDN値の低い飼料を用いているケースが多いようである。

生化学的検査値を参考にする

2010-03-04 23:55:21 | 肥育



育成時にDGやTDN値などが、目標値に達していない増体型が交配されている肥育牛は、往々にして体幅に欠け背や腰幅が出ずに、DGが思うように伸びない。
その結果、仕上げ体重が精々750kg止まりとなり、背厚が7cm前後で歩留まり基準値もぎりぎりAランクに踏みとどまる程度となる。
プロの牛飼いであれば、飼料給与時に食い込み量とその勢いを察知して、肥育のレベルが判断できるはずである。
それらの傾向を詳細に把握するには、生育の段階に於いて採血して、栄養に拘わるアルブミンやコレステロール値などを調査するのが手っ取り早い。
これらの数値を目安として給与設定などを臨機応変に対処すべきと考えている。
また、全頭について実施するには、費用が莫大にかかるので、極一部をピックアップして数ヶ月おきに実施して、それらの検査値の傾向を参考にすることになる。
いずれにしても費用が嵩むので、家畜保健所や家畜共済連などに相談して、具体化するように直談判するしかない。
肥育状態が今一つであり、何か問題点が無いか調査して貰いたいとか、サンプルとして調査研究用に提供するなど理由は様々あるはずである。
今一つは、餌屋さんにスポンサーになって貰うことである。
常に、肥育状態を科学的に把握しておくのも効率的な方策でもある。

ミーティング

2010-03-03 19:33:31 | 肥育


和牛肥育を行う上で、導入後の約5~6ヶ月間の育成期間が重要なポイントとなる。
導入後の飼い慣らしを注視して、乾草を食い込ませることも重要なポイントである。
次に育成用配合飼料をどこまで与え、肥育配合に切り替えるかもポイントになる。
これらを旨く取り入れて、5ヶ月が経過した時点での去勢牛は、1日当たりの増体量を1.1kg とし、平均体重450kgにすることで、その後の肥育が順調に経過する。
この目標値に持って行くには、期間通算で1日1頭当たり粗蛋白(CP)1.1kg、可消化養分総量(TDN)6.3kgを摂取させねばならない。
これらの目標を達成させるには、順調な食い込みが不可欠である。
それには①導入1週間目には乾草を4kg程度を食い込ませる。
②導入間もない頃から育成配合などを多量摂取させず、徐々に増量して食いこませる。
③導入後4ヶ月目頃から肥育配合を混ぜて与える。
これにより、摂取養分の目標値は達成できる。
その後の10ヶ月間は、肥育配合を最大限飽食させ、最後の5~6ヶ月間は徐々に摂取量を低下させ、小ザシを増やし、皮下脂肪などの体脂肪を落とすことを念頭に仕上げることになる。
これは日頃、担当の若者達に話している大まかな内容である。

出荷間際

2010-03-01 22:11:45 | 肥育



出荷間近の黒毛和種去勢牛である。
仕上がり具合はまずまずであろうと判断している。
毛艶もこの程度涸れてくれば、もしかしたら満足できる結果が得られるのではと手前味噌の評価となる。
生体牛を評価することは、経験的に実に当てにならないものである。
しかし、毛並みが黒々としてしているよりは、この程度の仕上がりであれば肉質特に肉色は期待できると予想している。
育成時より食欲が良好で、仕上げ期にも一定した食い込みを経過し、ここ2~3ヶ月間は食い込みが徐々に徐々に落ちてきている。
後1~2ヵ月で30ヵ月令となり、いよいよ出荷の予定である。

美味しい牛肉生産

2010-02-12 23:44:23 | 肥育
不飽和脂肪酸が多ければ、風味豊富で美味しい牛肉が生産されるとのことで、多くの肥育関係者は少なからず意識しているであろう。
この不飽和脂肪酸には、味と深く拘わっているオレイン酸割合を多くすべしとしている。
それには前期からTDN値が低くDCP値の高い配合飼料を与えると良いと言い、それを実践している組合組織があったり、糟糠類の割合を多くすればいいなども聞く。
何れにしてもそれが確実か否かは、定かではない。
最近はオレイン酸云々をブランド化の条件にしている箇所があったりで、それらの手法を口外しないケースもある。
何れにしても、さらに美味しい牛肉を目指すには自らそれらを試すしかない。
筆者らは肥育に不可欠な穀類・糠類と5 %未満の補足飼料は何れもバランスよく配合しているが、牛肉の味については評価頂いている。