牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

日向ぼっこ

2010-02-04 21:40:10 | 肥育


暖冬の予想が外れて、このところ氷点下すれすれの寒さが続いている。
半月前に南の諸島から導入した子牛らには過酷な環境なのかも知れない。
早朝それらの房を覗くと、真っ白な吐息を吐きながらひとかたまりに固まって座り込んでいる。
南の島では見られない光景だったに違いない。
これらの環境の変化から体調を案じているが、彼らは意外と元気である。
ビタミン剤の投与や導入時の抗生剤の効果もあろうが、青々とした乾草を多給していることもそれらをカバーして体調維持に繋がっているのであろうと判断している。
低温下でも昼頃になれば、僅かばかりの陽射しを求めて全頭が日向ぼっこのために屋外に出てくる。
気持ち良さそうな光景を目の当たりに、溜飲を下げながら彼らに向かってにんまりと触手を求めると一斉にそれに応えてくれる。
至福のひとときでもある。

仕上げ牛の給餌を夕方に(3)

2010-01-07 20:34:27 | 肥育


そこで、仕上げ牛に給餌時間をずらしたとしてのメリットを想像してみる。
これまで、育成期と仕上げ期の管理は担当者がそれぞれ分業しているが、両者を全員で行うことで、その意欲次第では、個々の牛について、育成時からの食欲の有無や健康状態などの特徴を把握できることになり、全ステージに亘り観察や給与設定が効率よくできる。
また、担当者が休暇の度に給与量等の伝達が必要であったが、常に全ての牛を観察し給餌することから、改めての伝達は不要となり、作業がスムースに遂行できる。
多忙時などは、夕方の観察を怠る例も皆無ではなく、午後5時に掛けての給餌は、牛の観察を確実に行うという点ではメリットがある。
そのことで、全員の肥育技術の取得が高まる効果が期待出来るのではと思われる。
問題は、システムの改善を行ってもそのことでの肉質向上などのメリットがなければ、経営に支障が生じることになる。
これらのシステムにより、肥育効果が向上しなければ、無意味な思考といえよう。
時には、途方もなく意外性のある発想でも、結果的には貴重な発想となる場合もある。
要は、無茶でも挑んだ結果如何である。

今日は、終日雪日和であったが、牛らは寒さの中熟睡して係る夢でも見ているのであろうか。

仕上げ牛の給餌を夕方に(2)

2010-01-06 19:03:04 | 肥育

仕上げ牛の給餌を夕方に(2)
筆者もこの給与体系には、これまで述べてきたように、牛の採食行動の本質から考えると得策とは言い難い思いであった。
育成牛については、従来のやり方を踏襲すれば問題はないが、作業効率を優先することで幾種類かの給与間隔に変化が生じれば、思わぬところで食欲が低下する可能性は予測できる。それでは腹づくりを果たし、旺盛な食欲促進を目標にしていることが、達成できない不安がある。
一方仕上げ牛の場合、給餌時間をこれまでより約6時間後にずらすことになる。
これまでも、朝給餌した配合飼料は、夕方に若干残す程度に与えている。
6時間ずらせば、これまでの夕方の食い残しは、朝にその分が残ることになり、当然午前中には食い干してしまうはずである。
朝給餌することで、夜間に入る頃には、第一胃の内容物はかなり発酵が進み下方へと移動しつつあり歩き回る時間帯となる。
ところが、午後3時から給餌すれば、暗くなった頃には、反芻しながら次第に寝付く頃となる。
この時間帯になれば、周囲の産地からは鹿や猪などが畜舎に現れる。
牛はこれらの獣に対しては、敏感に反応し、牛房内で飛んだり走ったりして暴れ出す。仕上げ牛には餌の摂取から差ほどの時間が経っていないことから最も危険な状態を招く恐れがある。
以前、通常の朝給餌の牛であっても同様の事故を起こし心不全を起こした例もあった。
筆者に言わせれば、肥育の何たるかが理解していない発想で、肉質改善の面では、かなりのマイナス効果となるは火を見るより明らかなように思えてならない。
しかしながら、これらの試みも実施してみなければ確実なことは言えないのである。

仕上げ牛の給餌を夕方に

2010-01-05 18:37:33 | 肥育


当センターでは、現在凡そ1,000頭の肥育牛を平均年齢35才7名と26才のアルバイトの8名で管理しているが、畜舎数が15棟のためと給餌作業に自動給餌機等を使用していないために、担当者等が休暇を取れば作業の分担がやや多くなる。
そのために増員して欲しいとの要望が出ている。
しかしながら、このところの管理経費高や相場低迷により、現状では増員する余裕が無い。
作業効率向上を狙い、現状でも十分作業分担は叶であると提案が出た。
これまで育成と仕上げはそれぞれ別々に決まった担当者で運営している。
そこで、従来の作業サイクルを変え、育成舎の給餌を朝からの作業として全員が担当し、仕上げ牛の給餌は午後の3時から全員作業により行うというのである。
このスケジュール通り実施することは、不可能ではないが、仕上げ牛について些か無茶だという意見も出た。
飼料摂取が終了する時間帯は、廻りが薄暗くなるため、夜間の食滞や鼓脹症などの発生が案じられるというのもあった。
習慣性の強い牛等の採食などのサイクルの変化が、一時的には食欲などに影響しないか、それにより仕上げにマイナスの結果と成らないかが気がかりであるという意見も出た。
反面、酷寒時の夜間には、午後からの飼料摂取が体温や覇気を高める効果を期待出来ないかという意見も出た。
(続く)

腰に水が溜まるような肥育牛

2009-12-10 23:42:56 | 肥育


鹿児島の或る肥育センターの社長から話を聞いたことがある。
「肥育牛は、出荷時には腰に水が溜まる様な仕上げをすれば、A5の成績が期待できる」と聞いたことがある。
具体的にどのような水たまりなのかは具体的に聞いてこなかった。
要するに、腰に水が溜まるような牛は、腰幅もあり、堅太りした牛であるらしい。
改めて、当方の仕上げ舎を見て回ると写真のようなうしが、何頭か見られた。
その中の1枚である。
背幅も腰幅もあり、徐々に涸れ始めた牛である。
出荷後の肥育成績が楽しみである。


風邪と言えども

2009-12-06 13:14:20 | 肥育


気温が0~5℃程度に下がり、雨が2~3日続けば牛らにとっても風邪に罹り易い条件が整うことになる。
こちらでも、目下その条件下にあり、連日2~3頭が抗生剤の投与を受けている。
これらの風邪は一過性のため、早期発見で1~2回の処置で回復している。
この処置が後手後手となれば、風邪をこじらせ肺炎を併発することになりかねない。
治療が長引けば長引くほど肥育牛には様々な影響が生じる。
風邪を患っている間やその後に及んで食欲が低下するため、増体が停止したり減少する。この減少分は、健康で同様の増体能力を有する他の牛との間では、取り戻すことの無い体重差となる。
これを無理矢理戻そうとすれば、その増体リズムが崩れるために、体脂肪の増加は著しいが、肉質に於いては、無惨な結果となりやすい。
また、風邪などによる長期疾患では、ビタミン類の消耗が著しく、育成畜では、食欲や増体に影響し、肥育中期以降では、同A欠乏症になりやすく、食欲不振等により、良好な肥育結果は期待できなくなる。
肥育に限らず、牛の疾患には、飼育担当者と獣医師がこまめにタイアップして対処するに限る。

気掛かりな瞼の脱色

2009-11-30 17:28:59 | 肥育



09/3月導入の去勢牛であるが、写真左の牛の瞼に、V/A欠乏症の症状が現れている。
出荷月齢を28ヵ月令と睨んで、自家配合を導入後4ヵ月以前から徐々に給与し始め、5ヵ月目に入る頃には、完全にVAコントロール状態となった。
そのため、後2ヵ月でV/Aコントロールは終了することになる。
若くから、配合で押してきたために、増体成績が良い分、V/Aの消費が多く、恐らく、血中濃度が40Iu/d1以下に下がったためであろうと判断している。
1マス7頭中、瞼の脱色がこれほど顕著な牛は1頭だけであり、ややその気配有りが1頭出ている。
この様な群内でのバラツキは、個体差によるものと思われるが、瞼の脱色だけで、関節の浮腫や視力低下などの症状は診られないことから、これから約3ヵ月間はこのままで経過を見ることにしている。
症状がさらに顕著となれば、別飼いしてVA剤等の投与などしかるべき対策を取ることになる。
これらの状況から同コントロール事態は、順調に経過していると判断している。




手やりと自動給餌装置

2009-11-27 19:27:06 | 肥育



和牛の肥育を行う場合、配合飼料等の給与量で枝肉の善し悪しが決まることは、周知のことであろう。
日本飼料標準肉用牛編を参考に、素牛が増体系であるか、肉質系であるかによって、DGのレベルを決めて、それに見合った飼料設定を行うことも、言うまでもない基本知識である。
飼料設定が行われても、それぞれの肥育センターでは、それらが忠実に実施されているとは限らない。
通常牛を飼う畜主によって、牛の顔色を見ながら給与量を決定し、他人などには任されないというタイプ、その基本理念を理解させマニュアルを設定して、担当者を信用して任せるタイプ、近年では、その全てを人ではなく、自動給餌装置など機械による給与など様々である。
これから、100~200頭程度の規模で肥育を開始するケースでは、是非とも自動給餌機を利用することを進めたい。
肥育を行う過程で、日常の給餌量を常に一定に保つことが非常に重要だからである。
勿論、最初から最後まで一定に与えるというのではなく、日頃の増体速度や健康状態を綿密に観察しながら自動給餌機を旨く使いこなさなければならない。
手やり方式では、一々計量して与えるなどは手間が掛かり、おまけに牛の消化リズムを狂わせ兼ねない。
一般的には、経験的に手箕などに掬った量を適当に把握して、8kgとか10kgなどと与えているケースが多いようである。
しかし、このケースでは、例えば1頭当たりの給与量を100gや500g程度の誤差はほぼ毎日のようにあると断言できる。
この場合、頭数が200頭いれば、その約750日間分の誤差量を考慮するとかなりの不効率となっているはずである。
このことにより、順調な増体を得られないケースは半端ではないと想像できる。
これらを計量器或いは、量単位を把握する自動給餌機であれば、給与量は指示通りほぼ一定される。
日に複数回与えることも十分可能である。
前述したが、日に6回給餌して成績を上げているセンターがあると聞いたことがある。
日に2回以上与えることで、手やりの場合より、凡そ10~20%摂取量が多くなることは、筆者も経験済みである。
省力化と増体効果が機械力に頼れるために、新規参入者には後者の導入が得策と考えている。
薩摩当たりの肥育センターはこぞって同機を導入して、高い5等級率をものにしている。

宮崎県産素牛のクォリティーは

2009-11-12 07:31:16 | 肥育



写真の牛群は、09/02に始めて宮崎県より導入した去勢牛である。
昨日、2房14頭を削蹄して仕上げ舎へ移動した。
導入からおよそ9ヵ月を経過し、育成はまずまずの出来であると判断している。
宮崎県産はどちらかと言えば、但馬系のイメージがある。
これまで但馬牛を素牛としていた肥育生産施設では、但馬牛が潤沢に導入できない代わりに、宮崎県産を導入していると聞いている。
それは、鹿児島県産の増体型にない肉質系であることを期待しての取り組みであるようである。
宮崎県では、元もと九州一円を一世風靡した鳥取系による改良が進められ、65年頃から第1上野、初栄、菊波、秀安などの但馬系が漸次導入されるとともに、70年代からは第7糸桜の産子など島根系などが導入されて肉用種としての宮崎和牛が定着した。
その後、両親が安美土井の産子である岐阜県安福を母方祖父、同様に田尻系の血を引き田安土井を父に持つ安福の産子安平を供用することで、宮崎県産牛は一躍但馬系のイメージが増幅されたようである。
これまで、増体型を主とした素牛で肥育している関係者は、肉質系生産地のイメージ図を先ず兵庫県産、岐阜県産、そして宮崎県産、鹿児島県産などと認識しているようであり、逆に兵庫県などでは、その全てが但馬牛ありきで、その他は一括りで九州産牛的な色眼鏡での認識のようである。
ところがこのところの但馬牛素牛の導入難から、安平などの実績を元に但馬系補欠産地として宮崎県産を候補としているのが現状のようである。
肉質の高級感をクォリティーの一つの要因とされている小ザシは、増体型の鳥取・島根系では、粗ザシが見られ、但馬系は小ザシのイメージが一般的とされている。
このイメージに安平など安福系を導入して改良を展開してきた宮崎県産は、全共効果が拍車となり、小ザシを売り物にしている感がある。
この様なイメージに水を差すようであるが、導入した宮崎県産の子牛登記書を確認する限り、鹿児島県産素牛とほぼ同様な血統なのである。
それらの子牛の3代祖のどこかに安平がかけ合わさっていると云うことである。
写真の牛も、父牛は忠富士(父平茂勝)や福之国(父北国7の8)が大半である。
鹿児島県のそれは、子牛生産地に安平やその産子の繁殖用雌牛が数多く導入されている結果であり、宮崎県は肉質プラス増体能力を重視し、鳥取系や島根系を供用するようになったために、県特有のクォリティが薄らいだ感は否めない。
以前、神戸市のとある肥育センターを訪問した際、場長から「但馬牛は2~3ヵ月長めに乾草を一杯与え、その後の肥育では、我慢に我慢を重ねて配合飼料を抑えて、最高でも7kg程度与え続けないと神戸肉ブランドにはならない。但馬牛と異なり宮崎産は、精一杯餌を与えないとものにならない」と聞いたことがある。
当方では、宮崎産は初の試みでもあり、育成法を如何にすべきかを検討したが、血統内容と神戸の場長の話などを参考に、鹿児島県産素牛と同様に育成することとして、その結果が写真の通りの状況であり、まずまずの経過であると判断している。
体重は550~600kgになろうとしていて、残り1年で200~250kgを上乗せして仕上げたいと思っている。
これらの試みは、素牛が手ごろな価格で導入できるから出来ることでもある。

血液検査値を活かす

2009-11-09 22:55:52 | 肥育

肥育終了時に10頭を採血し、分析した生化学検査値と増体や肉質との関係を明らかに出来ないかと、共済の獣医師に分析を依頼した。
この様な取り組みは、獣医師の分野で既に実施されている。
余りにも頭数が少ないため、確定的な結果は公表できないが、これらの数値から予測できることはある。
例えば、コレストロール(T-cho)の場合、増体に勢いのある牛は数値が高く、採食量が少なく増体速度の鈍い牛は数値が低い傾向にあった。
これらは増体だけでなく、肉質についても同様の傾向があった。
脂肪蓄積量の高い牛は、当然食い込みが優れて増体が良好であることと深い関係があることは知られている。
このように飼料摂取量とT-cho値が深く関係していることを、肥育の経過に活かす目的で、スポット的に数ヶ月おきに採血して、その食い込み量が適量かを判断することも、肥育効率の改善に繋がると睨んでいる。
本来は、それに頼ることのない的確な日常管理技術こそが肝要なのだが、。。。