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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

税務調査がすんなりと終わった。

2009-12-03 23:17:37 | 予防治療



本日の我が事務所は、いつもの雰囲気とは様変わりであった。
黒っぽいスーツをきちっと着こなした男性5名が陣取った。
3年ごとに行われる税務調査である。
日頃掛かり付けの会計事務所のメンバーと大阪国税局の係官により、国税申告が適正に実施されているかを調査するものである。
いつものことであるが、国税局の担当者は和牛の牧場を調査するのは初めてであるとして、自己紹介があった。
筆者からは開口一番、牛の飼養技術に関してはぺらぺらであるが、税務関連のことについては、全くぺらぺらではないと述べると、案外その様な経営者の方が多いのですよとのことであった。

そして、先ずは牧場が一体何を行っている施設かを訪ねてきた。
詳しい話をするより、手作りのパンフレットを手渡したところ、これで十分理解できると賞賛であった。
法人税申告書等の詳細の中に「去勢牛」とあるが、これは何のことかと尋ねられた。
次に、雌と去勢しかないが、何故雄は無いのかとも。
それらの筆者の説明に対して、それなら何故雄を去勢するのかなど、牛についての素人なら誰もが質問する内容を次々と尋ねられた。
大まかに肥育について説明すると、素牛は何処からどのようにして導入しているかや、仕上がった牛は何処に出荷しているか、価格はどのようにして決まるのかなどと次から次と次第に金銭に関わる無いようについての質問攻めであった。
牛の話から、収入のある堆肥のことについても、生産方法や品質の表示や販売方法などの説明を求められた。
これらの経営の内容についての説明が一段落したら、いよいよ本題の会計士への調査が始まった。
予め、過去3年間にわたる収入と支出に関わる証拠書類をいつでも提示できるように会計事務所から指示されていたこともあり、調査自体は、午前10時から午後4時まで掛かって、概ね終了した。
その間、出荷奨励金は、何処から何のために計上されているのかなどを筆者にも尋ねることあった。
些か緊張していたのは、会計士であったが、ベテランの会計士が、実にそつなく説明を行い、申告書がそのまま理解された。
実は、当会計事務所が畜産関係を担当しているのは当方だけであり、当初は大変手こずったようであるが、既に10数年を経過しているために、その内容把握が当方より詳細に理解されていたことに、いつもながら感心のいたりであった。
一方税務官の方も、どちらかと言えば、初めての業種だけに興味津々であって、パンフレットの美しいリブロースの切断面を見て、牛肉の何たるかが理解できたとして満足げであった。
素人考えであるが、かかる業種について、詳細に知る意欲を示すことで、その経営システムを理解することで、的確な政務調査が履行されるのであろうと理解した次第である。


排ガス規制が牛屋にも

2009-12-01 17:16:57 | 予防治療



環境悪化のために、その改善策として、ディーゼル車に厳しい処置が執られつつある。
写真のマークは、ディーゼル車用排ガス規制適合マークである。
このシールをトラックなどに貼り付けていなければ、大阪府や兵庫県内の道路は走行できないことになっている。
関西では、この両府県が同処置を執っており、どちらかの府県が発行したシールを車に貼り付けていれば、両府県内での走行は規制されない。
大阪南港や神戸港や同食肉市場などへはこのシール無しでは牛を運べないため、この夏頃自家用トラック用にシールを取得するために、大阪府に申請したが、約2ヵ月後に送られてきた。
恐らく大阪府だけでなく、大阪府内に荷物を届けたり積み込んで帰るために必要と言うことで、全国からの申請者があって、認可やシールの発送に手間取っているのであろう。
この処置によって、やや旧型の大型トラックなどは、排ガス規制をクリアできずに、泣き泣きトラックを更新したという話を聞いた。
他府県の家畜運搬業者などは、この規制に掛かるため、他の運搬業者へ仕事を回さざるえないケースもあったようである。
この規制は、我々牛屋にも無関係では済まされなくなった。
地球環境を守ることの重要性が優先した措置であり、問題視することではないが、
利便性や快適生活をエンジョイしてきた科学工業の発展のツケが、いよいよ身近な問題となりそうである。


紅葉を背に牛らが出て行った

2009-11-25 18:09:48 | 予防治療



今日も5頭を食肉市場に見送った。
偶然途中まで、トラックの後を追う形となった。
周りの山々は赤や橙や黄色に染まり、冬の到来を感じさせているが、トラックはその様な紅葉を背に走り去った。
トラックの何の変哲のない後ろ姿を見ながら、ふと気付いたことがあった。
それは、いつも見慣れたトラックのナンバープレートである。
「4129」とある。
「良い肉」の語呂合わせである。
30年前当方のセンターを創設したオーナーが経営の成功に賭けた願いをこめて、10数年前、トラックを更新した時に納入業者に頼み込んで付けたナンバーだったと聞いたことがあった。
他の車にも、「1129」のナンバープレートもある。
恐らく、こうした語呂合わせで新車を導入する同業者も見られることであろう。
昨夜は、そのオーナーの七回忌にあたり、ご親族や業界関係者ら多数が集い偲ぶ会が開かれた。
兎に角、根っからの牛好きのオーナーであったようである。

景気浮上への手は打ってあるのだろうか

2009-11-19 17:28:14 | 予防治療



昨日は鹿児島の子牛価格の低迷について述べたが、肥育サイドから述べれば、この傾向は願ってもない状況である。
しかし、そうとばかり喜んではいられない。
和牛関係者としては、そのために頭数が減り産業が停滞することは、関係者一人ひとりにその影響が降りかかることになるからである。
これらの問題解決には、消費サイドの景気浮上しかない。
消費が伸びれば、それに相応して枝肉相場も浮上し、肥育業界が活気付くことで、子牛相場に反映されることになる。
一にも二にも、政府の景気対策次第である。
生産者は総じて懸命に努力しているというのに、今のままでは、政策に泣かされていると言っても過言ではなさそうである。

農家は薄利多売が宿命

2009-11-10 21:58:54 | 予防治療




終戦後から農業=農協の関係があった。
農家のための農協から、このところは農協のための農家と囁かれるようになっている。
農家は組合員でありながら、農協から物資を買うにもホームセンターなどより高価で買わされているのが現実であり、農家の経営規模が拡大すれば、必然的に経費節減のために農協離れが起きる。
農協は次第に運営に支障が生じ、単位農協や支所などでは、人員整理が行われ、窓口はそのままで少人数でのノルマ作業が現実化され、そのノルマに精神的な軋轢を感じるようになった職員は、農協を離れ、残されたスタッフには益々厳しい状況となっているようである。
その結果、サービス低下に拍車が掛かる。
そのため、本来の営農活動や技術指導が皆無に近い状態であるとも聞く。
ここに1例をあげれば、20kg入りのふすまの価格は、農協関係では1,050円、民間業者はその70%未満である。
農協の場合は、必ずしも現金決済では無いために、これらの価格設定に農家は甘んじているのか、民間価格に無意識なのか理解に苦しむところである。
このような現実のままでの農協は、そう遠くまで持つまいと予想しているのは筆者だけであろうか。
農家は、すべからず薄利多売の生産活動を強いられている。
けれども、農協は農家をフランチャイズとして豊利少売である。
万が一、買わないと売ってやれないとか、トップの鶴の一声で運営されるなど、昔気質の体質が残っているとしたら本末転倒もいいところである。
薄利多売は生産者の宿命であるならば、農協だって薄利多売の経営方針へ転換すべきであり、そのことで農家の利潤がませば、農協の扱い量も増加し、農家からの見返りも増加する。
このような単純な商法が活かされないのが不思議でならない。
その薄利多売商法は、ホームセンターやコンビニなどが企業努力を駆使し、効率的な運営で店舗拡大という形で実績を伸ばしている。
農協の企業努力は、現状ではマイナス思考のまま、不実の一途を辿っているようである。


消費者ならではの出で立ち

2009-11-04 18:02:54 | 予防治療


本日、消費者団体の見学来場があった。
食肉事業関係団体からの依頼であったため、食肉市場を見学する出で立ちでの来場であった。
写真がその物々しく肥育現場には似つかわしい光景であるが、防疫や参加者に安全性をイメージして頂くには、この光景であったことを是としている次第である。
この服装からも伺えるように、食肉を安全に消費できる環境で牛肉の生産が行われているかなどを研修することが目的の企画であった。
その環境を実際見聞きするということが、消費者に理解が得られるであろうと、手作りのパンフレットを50名分準備して見学を積極的に内諾していたものである。
些かの美辞麗句を混じえての説明を行った。
目玉は山懐の一角ながら、周囲に人家や施設などが皆無の閑静で美しい空気と深い山々からの湧き水で牛たちが飼われていること、人が心地よいと思える環境下で飼育するなど家畜への福祉の意識や無農薬など給与飼料の安全管理などを説明したが、参加者にはその安全管理が理解して貰えた様であった。
手間は掛かっても、牛肉の消費拡大のために、今後は避けて通れない企画であることを感じた次第である。


牛だって怒る

2009-10-18 23:24:40 | 予防治療

新政権は、生活者のための政策を売り物に誕生したが、このところ政権のための集票政策だけが目に付く。
新政権の経済対策次第では、年末の景気動向を不安視する専門家の判断があり、それらの見通し次第では、農産物とくに牛肉の消費動向のさらなる低迷が予測される。
それらが現実となれば、諸に第一次産業いじめの政権政策となる。
第一次産業を活気づける農政や消費回復策無くしては、生産活動のやる気を失し、その結果つまりは日本力の低下に至るは、火を見るより明らかとなろう。
昔から、百姓は活かさず殺さずの補助金漬け政策で、第一次産業のやる気を削いできたのは厳然たる事実で、この様な机上の農政の結果が、自給率40%未満という生産力低下に至ったのは周知の事実である。
新政権は、消費者の顔だけに焦点を合わせて、高い集票をものにした。
議員獲得数の弱い農村或いは地方票の掘り起こし作戦に、改革が売り物であったはずの新政権は、旧政権より無策とも思えるあめ玉政策を執ろうとしている。
大多数が米作農家だから、そのためのあめ玉で、集票を期待するなどは、農業の実際に無知な農政としか云いようがない。
政治改革は不可避なことであるが、農政に関しては、政府のやっつけ仕事としか思えない。
その結果は、大規模農家だけが漁夫の利を得て、中小規模の農家の生産意欲を削いでしまう結果になる確率は非常に高いと思われる。
昔から生産者より、流通関係者や小売店の方が利益を得ている傾向がある。
この現状を改革する施策があれば食糧自給率はかなり改善されるはずである。
政府は、農家の顔色ではなく、農業の根本問題を解決する意欲を施策に挑んで貰いたいものである。

筆者が農業高校の生徒であった頃、大した勉強はしなかったが、担任教諭が話した一言を鮮明に記憶してることがある。
上農は草見ずして草を取る。中農は草を見て草を取る。下農は草を見て草取らずと言う諺であった。
つまり、上農は作物をりっぱに育てようと、雑草が生えないうちからしっかり田畑を見回り高い収穫を上げ、中農は生えた雑草に気付いてから仕方なく草取りをするもので、下農は草が生えていても除草する意欲がないという教えであった。
これはものの例えであり、農業も政治も常に上農であるべきであり、やっつけ仕事は下農にも及ばない。

牛の学習には、手助けがいる

2009-10-16 18:20:21 | 予防治療



牛にも賢い奴がいると前述したが、大多数はそうでもないのが現実である。
写真を注視しすると、いい加減学習しろよ!と言いたくなるような画面である。
群飼いなのに飼槽にへばり付くように横たわって昼寝を決め込んでいて、他の牛らが、餌を漁ろうにも邪魔で仕方がない。
一方昼寝中の牛はと云えば、逆に彼らが邪魔で仕方がないのである。
この房ではこういう光景をよく見かける。
牛は、どちらかと云えば習慣性に富み、狭い房では寝る場所が決まっている。
他にいじめられるのにいつも同じ箇所で寝る。
一日中暇を持て余しているというのに、少しぐらい学習しろよと云いたくなる。
いつもその場で寝たら、その都度起こしてしまえば、それが学習になるはずである。




牛周りの生き物たち

2009-09-30 23:27:02 | 予防治療













周囲に民家がないために、施設内には、様々な生き物たちが現れるようになった。
餌を求めてくるのは、鹿・猪・狸・烏・雀・キジバト・鵯で、差ほどの被害を与えないのは猫とイタチぐらいなものである。
あまりに被害が酷いために、畜舎の通路入り口にドアを付けて侵入防止している。
それまで、猪や鹿は、通路に入り粗飼料で遊び、通路一杯に散らかしたり、飼槽内の餌を食べるなどの悪さをして困らせていた。
烏などの鳥類は、それほど被害量は大したことはないが、同じように飼槽内で餌を啄む。
しかし、これらの生き物たちは、餌だけではなく、ところ嫌わず糞尿を垂らし廻り、これが一番の被害である。
餌が汚れることに加えて、鳥インフルエンザのような病気をまき散らしはしないかと心配であるが、幸い、これらの具体的な被害は出ていない。
鳥類の中で大罪を犯すのが烏である。
銃での威嚇などは制限されているために、烏天国である。
あらゆる烏対策を取ってきたが、その全てが不発に終わっている。
せめて安全が確保される場合は、銃の威嚇操作を許可して貰いたいものである。

変わったものでは、季節的な動物であるモリアオガエルやカブトムシにクワガタムシ、何種かのトンボや蝶やスズメバチなども身近な生き物たちである。
その他に、蠅だの蚊だのゴキブリも常連である。




メモ取る学生

2009-09-18 19:19:01 | 予防治療


過日、韓国国営の農業大学校の生徒25名と教官1名、それに通訳として山形大学の教官1名が当センターへ見学研修のため来場した。
学生等は全員が畜産経営の後継者の若者達であった。
当大学の在学期間は3年間で、来場した学生は、全員2年生であった。
当農業大学校は、学費、寮費、海外研修費など一切が国費で賄われ、さらに、韓国は兵役制度があるが、係る学生らは、それも免除され、その代わり6年以上の就農が義務化されているという話であった。
限られた人数ではあるが、自国の農業生産を担う後継者を、国は手厚く育成しているようである。
勿論、我が国でも筑波の農業大学校をはじめ全国の自治体に設置している同様の学校で学ぶ学生には、一般の大学より手厚い処置がなされているようである。
見学に訪れた学生達は、筆者の話を雑談無しで、殊勝に聞き、適宜質問を重ねながら、それらの一部始終をメモに取っていた。
最近には実に珍しい光景であり、些か、説明にも熱が入ってしまった。
凡そ10年以前には、オーストラリアやアメリカの牛飼い達が大型バスで押しかけ、今回と同様のメモを取っていたことを思い出した。
それだけ、目的意識を持って、それを実体験したり知識を得ようとする姿勢があからさまに見えてくる。
日本人の場合、学生にしても畜産農家にしても、最近メモ帳を持参する見学者にはお目に掛かったことがない。
それどころか、赤面した団体が観光バスから降りてくるケースがままある。
これでは、日本の係る産業の将来に、危惧の念を抱かざるを得ない。
今回の見学者を引き受けるには、ある種の覚悟が入った。
それは、こちらが韓国における口蹄疫などの疾患発症事例の有無や新型ウイルスの感染の有無などに無知なこともあり、事後に係るトラブルが発生しないかであった。
仲介者にその旨を伝えて、万全の対応がなされることで、見学を引き受けることにした。
口にはマスク、足には、名前は知らないが、ビニール製のシューズカバーを履いての来場であった。
韓牛について、その能力を訪ねたところ、引率の教官によれば、和牛には及ばないが、徐々に肉質改善されて、日本の4等級程度には至りつつあるが、枝肉量が和牛より平均50~60kg程度小さいとのことであった。
最近は、韓牛の登録システムも整ってきたとも話していた。
中には、実家が600頭の肥育を実施しているという学生もいた。
韓国も経済発展とともに、牛肉の消費が増加し、韓牛の飼育にも熱が入っているように感じた次第である。