本日の我が事務所は、いつもの雰囲気とは様変わりであった。
黒っぽいスーツをきちっと着こなした男性5名が陣取った。
3年ごとに行われる税務調査である。
日頃掛かり付けの会計事務所のメンバーと大阪国税局の係官により、国税申告が適正に実施されているかを調査するものである。
いつものことであるが、国税局の担当者は和牛の牧場を調査するのは初めてであるとして、自己紹介があった。
筆者からは開口一番、牛の飼養技術に関してはぺらぺらであるが、税務関連のことについては、全くぺらぺらではないと述べると、案外その様な経営者の方が多いのですよとのことであった。
そして、先ずは牧場が一体何を行っている施設かを訪ねてきた。
詳しい話をするより、手作りのパンフレットを手渡したところ、これで十分理解できると賞賛であった。
法人税申告書等の詳細の中に「去勢牛」とあるが、これは何のことかと尋ねられた。
次に、雌と去勢しかないが、何故雄は無いのかとも。
それらの筆者の説明に対して、それなら何故雄を去勢するのかなど、牛についての素人なら誰もが質問する内容を次々と尋ねられた。
大まかに肥育について説明すると、素牛は何処からどのようにして導入しているかや、仕上がった牛は何処に出荷しているか、価格はどのようにして決まるのかなどと次から次と次第に金銭に関わる無いようについての質問攻めであった。
牛の話から、収入のある堆肥のことについても、生産方法や品質の表示や販売方法などの説明を求められた。
これらの経営の内容についての説明が一段落したら、いよいよ本題の会計士への調査が始まった。
予め、過去3年間にわたる収入と支出に関わる証拠書類をいつでも提示できるように会計事務所から指示されていたこともあり、調査自体は、午前10時から午後4時まで掛かって、概ね終了した。
その間、出荷奨励金は、何処から何のために計上されているのかなどを筆者にも尋ねることあった。
些か緊張していたのは、会計士であったが、ベテランの会計士が、実にそつなく説明を行い、申告書がそのまま理解された。
実は、当会計事務所が畜産関係を担当しているのは当方だけであり、当初は大変手こずったようであるが、既に10数年を経過しているために、その内容把握が当方より詳細に理解されていたことに、いつもながら感心のいたりであった。
一方税務官の方も、どちらかと言えば、初めての業種だけに興味津々であって、パンフレットの美しいリブロースの切断面を見て、牛肉の何たるかが理解できたとして満足げであった。
素人考えであるが、かかる業種について、詳細に知る意欲を示すことで、その経営システムを理解することで、的確な政務調査が履行されるのであろうと理解した次第である。