“狂った”現代社会批判 仏教を例に生き方指南
世の中は狂っている-。ギリシャ語で「愛」を意 味する「フィロ」と、サンスクリット語で「真理」を意 味する「サティヤ」を合わせた「ひろさちや」。この ペンネ-ムで書いてきた数々の自著で、長年こ う訴え続けてきた。昨年出版した「『狂い』のすす めでは、「狂った世の中の常識、物差しにとらわ れず、自分らしく自由に生きよう」などと説き、本 は16万部を超えるヒット作りになった。「何でも カネカネカネで、もうければいい、経済発展のためなら何をやっても いい、会社の都合のためには少々消費者をだましてもいい、という 今の社会のおかしさに気づき、私の考えに共感してくれる人が増え ているのでしょう」これまでに出版した本は、翻訳なども含めて500 冊以上。多くが一般の人たちに分かりやすく仏教を紹介する入門書、 解説書だ。ただ、東大大学院博士課程を修了するまで専攻していた のはインド哲学。気象大学校で哲学を教えていた35歳の時に、仏教 書の執筆を依頼され、「やむを得ず」仏教の勉強を始めたのが、物書 きとなるきっかけだった。「私の子供のころ、天皇制の『いい国』と教 えられてきた日本が、敗戦とともに『おかしい国』とされた。一夜にし て常識が変わる。国というのは信じられない、ということが肌身にしみ 付いて育ちましたから、仏教を勉強しながら、世の中のおかしさを批 判するのが宗教の役割だと、ひしひしと感じたのです」48歳で20年 勤めた大学を辞め、文筆業に専念して24年。本の執筆のほか、多い ときは1年に250回も講演会などで全国を飛び回るような忙しい生活 を続けてきた。「忙しい?私は忙しくはありません。スケジュ-ルが 過密なだけです。『忙』という字は『心をなくす』と書く。『お忙しいです ね』というのは、『心を失っているぞ』と言っているんです」「世の中に 役に立つ人間にならなくてもよい」「道徳は、ばかにした方がよい」 「人生は無意味」。仏教を中心とした宗教の教えを例に取った生き方 指南は、世間にどっふむり漬かった私たちには、ある意味過激だ。 「最近は小学生をはじめ、若い人からも『僕も愛読者です』と手紙をも らう。世の中全体が生きる羅針盤を求めているんですね」。社会の“狂 い”に気づいた読者の後押しを受け、執筆活動にも、ますます力が入 る。大阪府出身で大の阪神ファン。なんと以前には、「勝つか負けるか は、ご縁の関係」と、阪神ファンの心理を仏教の教えで解説した本も 書いた。「阪神ファンは勝ち負けを度外視して楽しめることが、人生論 にも通じるんです。巨人ファンとは違いますよ」。チ-ムの好調さと相ま って、一段と高い笑い声が響いた。
「狂い」のすすめ (集英社新書 377C) 価格:¥ 714(税込) 発売日:2007-01 |
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