゛まるかん人゛プラトーク

元気とキレイを追求すると、人生は楽しく過ごすことと・・・!?

はなし抄「冬眠状態」の子供たち。まずは朝ご飯を食べよう

2010-06-02 19:46:02 | 人物100選

東海大学体育部教授 小沢 治夫さん

100_7692_2

筑波大学付属中・高という学校で、保健体育教員を25年間やっておりました。当時はサッカ-部の監督です。30年前は、授業中に寝ている生徒はゼロでした。先生が授業をやっていれば、生徒たちはみんな聞いていたものです。ところが、20年ぐらい前からなんか駄目なんです。じっとして聞いていられない。怒ると泣いちゃう。男子高校生がですよ。

◇  ◇  ◇

元気がなくなってしまっているんです。どうしてなのか。体がおかしいのではないのかと考え、生徒の血液検査をやってみたんです。そうしたら(血液中で酸素を運搬する)ヘモグロビンが足りない生徒が42%です。こんなに貧血がいるのかと。脳の温度が下がると眠くなってしまいます。そこで脳に近い場所である鼓膜の温度を測ってみたんです。朝食抜きは、みんな体温が低く、朝食をとっているのは体温が高かったんです。つまり、寝てしまう子供たちには、理由があったんです。貧血になっちゃう、低体温になっちゃう。こうした「冬眠状態」の子供たちは小学校、中学校、高校、大学のどこにでもいるのです。しかも、小学校から大学に進むにつれてどんどん増えていくんです。体温が高いグル-プと低いグル-プに「通学意欲はありますか」とアンケ-トもしてみました。すると、体温が低いグル-プで通学意欲があるのは、わずか4分の1です。体力も学力も朝飯を食べている方が抜群にいい-。次々とそうした研究発表をやっていきました。その結果、文部科学省のワ-キンググル-プのメンバ-に呼ばれました。朝食をたくさん食べている生徒ほど、各教科の点数が高いことが文科省も分かり、「早寝早起き朝ごはん」キャンペ-ンの根拠になっているんです。日本の子供たちに何が起きているのか分からず「起きてろよっ」とついやってしまいがちです。しかし、子供が起きていられない体だとしたら、やるべきことは、怒ることではない。まず体を治すことなんです。朝、強い光を目に入れると、14~16時間後に「メラトニン」が出て、自然に眠くなるんです。メラトニンというのは脳の「松果体」という部分から出る眠りを誘うホルモンなんです。このメラトニンのサイクルは今、世界中で狂っています。原因はテレビの深夜化、携帯、ネットというニュ-メディアです。電子的なツ-ルによって、みんな夜更かしをしてしまう。こうしてメラトニンサイクルが狂ってしまったのです。風車というのは、全体に風が当たっても回りますが、1枚の羽根に息を吹きかけても回るんです。習慣を変えれば行動が変わる。行動が変われば、態度が変わり、豊かさが変わります。風車のようにうまく回っていくのです。なんでもすべてをやろうとするのではなく、まずは朝食を食べれば、力を発揮できる。力を出せば、心地よい疲れで湯船につかって、ぐっすりと眠れる。そうすれば、また朝ご飯を食べる。学力も気力も体力も上がっていくということです。それぞれやることがある。でも、どれかをやれば必ず成功する。これを私は「風車理論」と呼んでいます。

◇  ◇  ◇

今、「日本の若者はダメだ」と言われていますが、それは私たち大人の責任だろうと思います。「それはダメだ」と明確に言わないからです。私たちは子供にモデルを示す大人です。しかし、そうした大人が極めて少なくなったのです。子供の問題は私たち大人の問題です。大人が頑張って、子供にモデルを示して育てていかなければならないのです。

※おざわ・はるお 1949年、静岡市生まれ。75年、東京教育大大学院体育学研究科終了。78年から25年間、筑波大付属駒場中・高で保健体育教諭を務める。2003年から北海道教育大釧路校教授。07年から現職。専門は発育発達学など。

コメント    この記事についてブログを書く
« 自殺者6割薬過剰摂取 | トップ | コメ収量4割増の遺伝子 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人物100選」カテゴリの最新記事