蒲田耕二の発言

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電蓄の音

2017-10-10 | 音楽

恒例のフェアで、思いっきりとんがった面白いスピーカーを見かけた。横幅が2メートルもあろうかという巨大なホーン・スピーカー。ドライバーを1個、使用しているだけでツイーターもなく、現在主流のワイドレンジ・スピーカーとは真逆を行く設計だ。

で、出てくる音は当然、ナロー・レンジ。すっきり伸びきって遙かな天上に吸い込まれていくような弦の高音などは聴きたくても聴けない。

ところがその狭いレンジで再生されるヴォーカルが、なんとも温かくて密度が濃くて輪郭が明快で、もうふるいつきたくなるぐらい魅力的なんだよね。

デモの再生音源にはオレの大嫌いなCDを使用していたが、CDのあのギスギス険しい響きが和らいで、ナット・キング・コールなんか文字どおりのベルベット・ヴォイスだった。

体験に基づいて言うと、ワイド・レンジのスピーカーは概して中音域の響きが薄い。だからオーケストラの再生にはいいが、ヴォーカルはどことなく存在感が希薄になる。それと正反対の音色のスピーカーだ。

いわば50年代の電蓄の音、復活。ハイスペックの最新型スピーカーでカラスやエディット・ピアフを聴いても録音の不備ばかり目立ってしまうが、こういうスピーカーだと古い録音が生き生きよみがえる。歌に血が通う。

しかし、スペックからも音質からもコストからも(ホーンとドライバーで計300万近いとか)巨大なサイズからも、こんなスピーカーの商品化はありえないだろな。出展者のオッサン、商売しに来たんじゃない、自慢しに来たんだとうそぶいていたそうな。

オーディオは、こうじゃないとね。オーディオの良し悪しは結局、個人的主観なんだから。

真空管オーディオ・フェアは、都心のイベントホールで開催される大規模なフェアと違って、愛好家の個人的趣味が色濃く反映されるイベントである。そこに独自の魅力があるのだが、この特異なスピーカーのおかげで今年は特に楽しませてもらいました。

話変わって、猿之助がセリに衣装を取られて骨折。当人は元気そうで何よりだが、半世紀以上の昔に宝塚で起きた惨劇を思い出す。

なんという名前だったか、娘役の女優がステージにせり上がる途中か降りる途中、大きく開いた落下傘型のスカートのワイヤが機械に引っ掛かり、徐々に彼女の胴体を締め上げ、ついには上下真っ二つに切断した。無論、彼女は死亡した。

あんな事故があったのだから安全対策は強化されているはずだが、それでもまだ個人の用心に委ねられている部分が結構あるんだね。もっとも、演劇界ではあれが唯一の死亡事故だそうだが。

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