尖閣諸島を巡る航空戦力について

2012-09-26 21:32:26 | 軍事ネタ

前回記事の尖閣諸島を巡る海空戦について では海上戦力のことを書いたので、
今日は航空戦力について。

ついでに知人のpesくんが9月23日の小松基地航空祭に行き、
戦闘機の写真を撮ってくれたのでそれを使わしてもらいつつ。
そんな彼のブログはこちら。  Photo Log


現在、航空自衛隊には3種の戦闘機がある。
最も数が多く主力のF-15は約200機、最新型のF-2が約90機、老朽化したF-4が約60機である。
これらおおよそ約350機の戦闘機が日本の空を守っている。




戦闘機の仕事は第一に制空であり、敵戦闘機に打ち勝ち航空優勢を確保し、敵爆撃機の侵入を阻止しなければならない。
その点に於いてF-15は優れた戦闘機で、アメリカで長年主力戦闘機の座を守っており、
より最新型のステルス戦闘機F-22が出てくるまでは世界最強の能力と実績を有する戦闘機と見られていた。
アメリカや世界市場では爆撃など多任務に対応できるよう再設計されたF-15Eが主力となったが、
F-15の制空専用機としての空戦能力はまだまだ信頼に足るものである。

航空自衛隊の200機という数はアメリカに次いで世界2番目であり、
F-15を輸入ではなくライセンス生産しているのはアメリカ以外では日本が唯一である。




F-2は日本とアメリカで共同開発された戦闘機であり、アメリカの軽量戦闘機であるF-16をベースとしている。
2000年から配備開始された空自の最新型であり、対艦攻撃・対地攻撃能力を付与された多用途戦闘機である。
重量がある対艦ミサイルを4発同時に搭載することができ、低空飛行時の運動性能も高い為に、
日本に接近する敵艦隊への攻撃や、地上戦の航空支援はF-2が主力となる。




F-4はベトナム戦争期にアメリカで運用されていた艦上戦闘機であり、日本に導入されてからも30年以上が経過する老朽機である。
性能的にも既に先進的とは言いがたく機体寿命も迫っている為に、航空自衛隊ではF-4を代替する次期戦闘機選定(F-X) を行なっており、
それはステルス戦闘機であるF-35が最有力候補とされている。 当ブログ関連記事 → 今度こそF-XはF-35に決定か
現在空自では偵察機型のRF-4を除き、戦闘機任務に就いているF-4は2個飛行隊のみにまで減勢している。


F-15やF-2は世界的にも優れた性能を有するが、大きな問題を抱えている。
それは改修更新の遅さだ。
空自は中距離対空ミサイルの更新が世界的にも遅れている。

戦闘機が空戦をする際に搭載するミサイルは主に2種類、短距離対空ミサイルと中距離対空ミサイルがある。
短距離ミサイルは赤外線誘導で優れた運動性能を持ち、多くは射程が15~30km以内のもので、
実際に敵戦闘機と視程内戦闘、いわゆる"ドッグファイト"をする際に必要なものだ。

中距離ミサイルはレーダー誘導方式で長射程を有し、多くは40km以上から100kmに達するものもある。
これは視程外戦闘、"BVR"と言われるが、要するに目視も出来ない距離にいる敵機をレーダーで捕捉し撃墜するものである。
この中距離ミサイルとして空自はAIM-7スパローAAM-4の2種類を保有している。




AIM-7は旧式のミサイルでセミアクティブ・レーダー・ホーミング方式と言い、発射から命中するまで機首レーダーで目標を捉え誘導しなければならない。
つまりどういうことかというと、発射してから自機は満足に機動することができず、命中するまで自機の鼻先で敵機を捉え続けなければならない。
これは敵からミサイルを発射された際、こちらが回避機動をとればこちらのミサイルは敵に命中せず、
逆に命中させる為に回避機動を取らなければ自分も撃墜されてしまうことを意味する。

より新型のAAM-4はアクティブ・レーダー・ホーミング方式であり、これは発射さえしてしまえば自機が誘導する必要がない"撃ちっ放し"能力を有している。
現在先進国では中距離ミサイルとしてはこのアクティブ・レーダー・ホーミング方式のミサイルが主流であり、
AAM-4はAIM-7に比べ射程も2倍近く延伸されているという。 (正確な数字は非公表だが事実なら100km以上となる。)
国産のAAM-4は他国のものよりも優れた能力を発揮することが実験で確認されているも、
その優れた能力と引き換えにこのミサイルの装備には戦闘機自体にも大きな改修という負担が必要となっている。


つまり数で優る中国空軍と戦うならAIM-7よりも断然優れた性能を有するAAM-4が必須となってくるが、
空自で現在AAM-4が運用できるF-15は30機程度、F-2に至っては10機にも満たない。
搭載機数的には旧式のAIM-7がまだまだ主流となっているのが現状だ。
一応F-15もF-2も今年度より年間10機前後ずつの改修予算がついているが、
空自は優れた戦闘機隊を有するように見えて、先進国としては搭載武装はお粗末と言わざるを得ない。

中距離ミサイルの性能で劣っていれば、圧倒的にリーチと命中力で劣っていることを意味し、航空優勢の確保と生残性にも大きく影響してくるだろう。
戦闘機戦力だけでいえばAIM-7よりも先進的な中距離ミサイルを運用する、中国空軍はおろか韓国空軍に対してすらも絶対的優位とは言えないのが現状である。


もっとも自衛隊は単体で戦うわけではなく在日米軍の存在は大きいものだが、
日本という先進国の規模に比して空自の戦闘機戦力の時代遅れ感が目立っているのも確かだ。

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