尖閣諸島を巡る海空戦について

2012-09-24 18:06:54 | 軍事ネタ

中国メディア「日本との軍事衝突の可能性、非常に高い」
http://0taku.livedoor.biz/archives/4297900.html



尖閣諸島を巡る情勢は緊張を増している。
これだけ騒がれていれば普段は政治に関心がない人でも、
さすがに中国との戦争が有り得るかも知れないと感じるようで、
俺の周囲に於いても「もし中国と戦争になったら?」の話題が多く出るようになった。

もし第二次日中戦争が現実となった場合でも、その戦争の形態は様々だ。
尖閣諸島の奪い合いだけの限定的武力衝突に終始するのか、本土をも巻き込む総力戦となるのかで全く想定が変わってくる。
総力戦となれば核戦争に発展する危険性も高くなるが、さすがに尖閣諸島だけの為にそこまでやる覚悟は中国政府にもないだろう。
なのでまずは尖閣諸島だけの奪い合いになるだろうと予想できる。




もし尖閣諸島を巡って中国と開戦すれば、その主戦場は海と空である。
この場合在日米軍の存在を抜きにしても、海上自衛隊の装備の質量は世界第二位の戦力であると言っても差し支えない。
イージス艦を6隻とそれを含んで水上艦を48隻保有しているし、潜水艦も16隻ある。
日本の海上戦力の特徴は常に新型を配備して旧式艦を早期退役させているので、
艦艇の数が少なく見えても全体の質的には諸外国よりも精強である。

対して中国海軍は数だけなら海自のそれよりも2倍以上の規模を有するが、旧式艦が多く単純に数だけで戦力差を計ることはできない。
ただしサンバーンなどの旧ソ連製の超音速対艦ミサイルを保有する点には注意しなければならず、
こういった種類の超音速対艦ミサイルは通常の対艦ミサイルよりも2倍か3倍程度速く飛翔し、
その速度はマッハ3前後に達するものもあるので迎撃が難しい。
これを大量に発射されれば海自艦艇にも大きな損害が出る可能性が高い。


また中国は旧ソ連製の空母「ワリヤーグ」を今年度から戦力化する予定であるので、これにも注意しなければならない。
現代では海戦といっても艦艇同士が砲打撃戦をする可能性はそう高くなく、通常は敵艦隊への攻撃は戦闘機からの空中発射型対艦ミサイルで行われる。
艦隊同士で彼我の射程内に突入し撃ち合えば双方に被害が出るが、戦闘機なら敵艦隊に対艦ミサイルを発射した後、
敵からの対空ミサイルが届く前に一目散に脱出すれば良いので、その高機動さで敵艦隊に対して一方的に攻撃できるからだ。

そういった戦いの場合、"海上の移動飛行場"である空母を保有する方が有利だ。
日本側のF-2やF-15といった戦闘機も沖縄から尖閣諸島へは十分に届く距離だが、距離が遠ければ往復に時間がかかる。
より戦場に近い場所から戦闘機を飛ばせた方が、1機ごとの時間単位出撃回数(軍事用語でソーティという)は増やせる計算になるので攻撃機会は増える。
ただし中国海軍には空母の運用ノウハウがなく、どの程度の戦力として出てくるかは未知数である。


今日は海上戦力のことだけを書いたので、次回は尖閣を巡る航空戦力について書こうと思う。
尚、下記はスペースが余ったので書いただけの余談であり、本題とはあまり関係ない。




面白い話だが海戦で意外にも艦艇同士の打撃戦の可能性が低いというのは本当で、
尖閣諸島を巡る戦い、すなわち現代海空戦を想定する上で、前例の一つとしてフォークランド紛争を取り上げることができる。
これはアルゼンチン軍とイギリス軍が島の領有権を巡り対立した事件で、上陸しての地上戦も行われた本格的な戦争である。

本土から離れた島を取り合ったので当然主戦場は空と海で、アルゼンチン艦隊とイギリス艦隊が対峙したが、
この海戦に於いても艦艇同士の打撃戦は一度も行われていない。
アルゼンチン艦隊はイギリス空母を沈める為に出撃するも、待ち伏せしていたイギリス原潜に阻まれたので、
アルゼンチン側は戦闘機に積んだ対艦ミサイルと航空爆弾でイギリス軍艦隊を攻撃した。

航空爆弾とは文字通り、戦闘機から投下する爆弾である。
これを敵艦にぶつける為には高度な技量が必要で、もちろん敵艦に肉薄しなければならないのでとても危険な戦術だったが、
アルゼンチン側は対艦ミサイルを5発しか保有していなかったのでやらざるを得なかった。
戦闘機が爆弾を抱えて敵艦に迫る図はまるで太平洋戦争のようである。
しかしアルゼンチン戦闘機隊の攻撃は功を奏し、イギリス軍艦隊は6隻が撃沈され、他12隻にも命中弾を与えるという大損害を受けた。


このフォークランド紛争については以前にも詳しく記事を書いたので、
尖閣諸島を巡る海戦を考える上で興味があれば参考にしてもらいたい。
第二次フォークランド紛争?

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