対空砲の100年。

2012-01-10 21:03:37 | 軍事ネタ

こんばんは、ゆっきぃです。
2012年に入り、我がブログも7年目。
今日は対空砲について。

対空砲とは、航空機などの空中目標に向けて撃つ砲のこと。
実はこの対空戦闘が史上初めて行われたのは1911年のイタリア・トルコ戦争と言われており、
この戦争中には飛行船による爆弾投下、つまり史上初の航空機による地上攻撃と、
翌年1912年にはこの飛行船に向けて砲を撃ち上げて迎撃する対空戦闘が行われた。
つまり今年の2012年は、飛来する航空機に向けての対空戦闘史を数えて100周年というニッチな記念年であるわけで。
(尚それ以前から弾着観測用の気球などを撃墜する戦術はあった。)

当初は通常の地上用の野砲を空中に向けて撃ち上げていただけであるが、
1914年に勃発した第一次世界大戦では布と木でできた複葉機が大々的に使用され、
とうとう戦争に於いて空軍というものの存在感が発揮されるにつれて、
やがては専用の照準器などを装備した対空砲が開発・配備されることとなった。

第一次世界大戦から航空機技術の急速な発展は目覚しく、1939年に勃発した第二次世界大戦では、
戦争に於ける空軍の役割を側面支援的なものから主力たるものへと変貌させた。
この時代の航空機は全金属製の単翼機が主流となり、高々度を飛行する爆撃機も本格的に開発され、
航空機の持つ破壊力を原始的に爆弾を投下するものから、絨毯爆撃によって一都市を焦土に変えるまでに進化させた。
空軍の重要性が飛躍的に向上するにつれて、それを迎撃する対空砲の役割も重要なものとなっていった。


アメリカ空母艦上の4連装40mm機関砲ドイツ軍のFlak18/36 8.8cm高射砲

この時代の対空砲は役割ごとに2種類ある。
12.7mmや20mm、30mmや40mmの小口径弾を連射して撃ち上げて弾幕を張る対空機関砲と、
75mmや88mm、大きいものでは120mmやそれ以上の大口径砲を撃ち上げる高射砲である。

機関砲は弾が軽いので高々度には届かないが、弾幕によって壁を作ることができる。
これは低高度から侵入する戦闘機や急降下爆撃機相手には有効な兵器だった。
高射砲は連射と小回りが効かないが口径が大きい分、砲弾の重量があり直進性もあるので高々度まで弾を届かせることができ、
また予めセットされた時限信管によって砲弾を空中炸裂させることによりその破片で広範囲の航空機に被害を与えることができた。
これは高々度を飛来する爆撃機などに有効な兵器だった。
(機関砲でも40mmなど比較的大口径のものは時限信管を備えたものもあった。)

第二次世界大戦ではこの機関砲と高射砲が併せて配備され、相互の弱点を補完し合った。
一部では実験的に対空ロケット弾なども開発・配備されたが、まだまだ実用的なものではなかった。

対空戦闘の参考動画。

0:50~より。米艦隊に体当りする神風特攻隊。米艦隊より撃ち上げられる多数の弾幕の軌跡と、空中炸裂する黒煙が確認できる。


対空砲は運搬・設置に時間がかかるのが弱点であったが、
各国軍はトラックの荷台や戦車の車体に対空砲を載せて自走させることにより、
戦車部隊に随伴させて空からの脅威に対抗しようとした。
またアメリカ軍は近接信管を開発し、砲弾の空中炸裂を手動での時限信管頼りではなく、
敵機の接近を砲弾が感知して自動で炸裂するようにした為に命中率が大幅に向上した。


歩兵携行対空ミサイル、FIM-92「スティンガー」艦載される20mm対空システム、CIWS「ファランクス」

第二次世界大戦から70年経った今日では、対空兵器はさらに飛躍的な進化を遂げている。
対空機関砲はレーダーに連動しての自動追尾が当たり前で、接近するミサイルや航空機に対して自動で弾幕を張り迎撃する。
高々度に対する高射砲は廃れた代わりに対空ミサイルが登場し、敵機に対して誘導することで撃墜率は飛躍的に向上した。

現代の対空機関砲と対空ミサイルも、昔の機関砲と高射砲のように相互補完関係にある。
それについては以前に別の記事で詳しく書いたのでそちらを参照。
→ 現代の対空砲について

対空ミサイルは小型のものは歩兵携行型もあるがこれは自衛用程度で、大型のものはさらに高々度・遠距離までをも正確に狙える。
艦載型の対空ミサイルなら短距離用のもので射程30km程度、長距離用のものでは150kmにも達する。
さらにアメリカ海軍や海上自衛隊が配備するイージス艦は対空戦闘に特化した艦であり、
最大で12-24個の目標へ同時にミサイルを誘導することができ、
一度に多数のミサイルや航空機が襲来しても迎撃可能となっている。

現代の対空兵器は航空機を狙うだけではない。
艦載される対空機関砲は、艦に接近する巡航ミサイルや対艦ミサイルを感知して自動で迎撃する。(こういったシステムをCIWSという。)
さらには大型の対空ミサイルで、何百kmも先から降り注ぐ弾道弾を迎撃するMDシステムまでもが完全ではないにせよ開発されている。

CIWS参考動画。



現在も開発中の新兵器、レーザーだのレールガンだのといったものが実用段階に入ろうとしており、
これからも対空兵器は進化していくだろう。

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