金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(大乱)202

2021-02-07 07:34:31 | Weblog
 従者・スチュワートがドアを開けて、脇に退いた。
俺は執事・ダンカンを従えて応接室に入った。
室内の者達が立ち上がって俺を迎えた。
テーブルの左側には初対面の客人六名。
右側には家臣のウィリアムと、・・・女達。
どうしてここに彼女達が・・・。
聞いてないよ、この場に居合わせるなんて。
驚きで足が止まりそうになったが、努めて冷静を装った。

 俺は上座の椅子に腰を下ろした。
背後にダンカンが立つ。
スチュアートが入室してドアを閉める。
俺はダンカンを振り返った。
何故か、目を逸らされた。
スチュワートに視線を転じた。
彼にもまた目を逸らされた。
どうやら二人とも彼女達の存在は承知らしい。
口止めされていたのだろう。

 俺はウィリアムに尋ねた。
「粗方の説明は終えたのかい」
「はい」
 俺は客人六人を見回した。
一癖も二癖もありそうな顔ぶれだ。
俺が六人の値踏みをしていると、六人も俺を値踏みしている目色。
初対面だからお互い様。
俺はニコヤカに言った。
「みんな、腰を下ろして。
お茶を入れ替えてもらおう」

 呼ぶより早くメイド達が入って来た。
俺にお茶が運ばれ、皆の手元のお茶が入れ替えられた。
俺は心を鎮める為にお茶を飲んだ。
んっ、熱いっ、苦い、それが良い。
まあ、それはさて置き、彼女達を見た。
 冒険者パーティ『プリン・ブリン』のメンバーが顔を揃えていた。
キャロル、マーリン、モニカ、シンシア、ルース、シビル、シェリル、ボニー。
俺、呼んでないんだけど・・・。
ウィリアムの隣のシンシアが口を開いた。
「ダンタルニャン佐藤子爵様、単刀直入に言うわね。
人手が足りないなら真っ先に私達に声をかけるべきでしょう。
そうは思わない」
 どこから聞き込んだのだろう。
俺はウィリアムに目を遣った。
ここでも逸らされた。
「私達は冒険者仲間でしょう」ルースが言う。
「違ったかしら」シビルも加わった。

 俺は躊躇いがちに答えた。
「まあ・・・、そうだよね。
でもね、今回は薬草採取じゃないんだよ。
貴族様が相手の喧嘩。
それも王族の侯爵様二人が率いる賊軍。
巻き込みたくないから声をかけなかったんだ。
そこんところ分かってよ」
 シンシアがにこやかに言う。
「失礼を承知で言わせてもらうわ。
貴方が私達をどう思ってるか知らないけど、
私達三人は貴方を弟の様に思っているの。
私達はその弟が困っているから手を貸すの、悪い・・・」

 年長組の考えは分かった。
そこでシェリルとボニーの主従に目を転じた。
代表してシェリルが言う。
「寮にお手紙ありがとう。
お陰で実家に面子が立ったわ。
兵力を整え次第、王妃様の下に駆け付けるそうよ。
本当にありがとう。
・・・。
代わりにと言っては何だけど、ここで私達二人が力になるわ」
 言葉足らずと思ったのか、ボニーが補足した。
「お嬢様は成人に達していないので、お家の軍には加われないのです。
ダンタルニャン様、何卒こちらに加えてもらえないでしょうか」

 俺は年少組を見た。
キャロル、マーリン、モニカ。
俺とは同年齢で同学年。
こんな子供達に血を流す現場に立ち会わせるのは・・・、
大人としてどうなんだろう、出来ないよね。
えっ、俺も子供。
キャロルが代表して言う。
「私達は商家の子供よ。
私もマーリンもモニカも家は継げないけど、商いで生きて行くつもりよ。
商いは戦いよ。
金銭だけでなく、実際に血も流れるわ。
キャラバンや行商だと魔物や山賊対策が必要だし、
街中の商いでも夜盗やならず者への対策は必須なの。
・・・。
今回の件は丁度いいわ。
対人戦が経験できるんだから。
だからお願い、私達も加えて」
「私も」マーリン。
「私も」モニカ。
 三人に懇願された。

 俺の判断は揺れた。
シンシア達は立派な大人。
シェリル主従にも目はつむれる。
でもキャロル達は子供・・・。
その点が・・・、三人の目が・・・。
「分かった。
皆に力を貸してもらいます。
ただし指示には従う事、いいですね」
 仲間達が笑みを浮かべて互いを見遣る。
俺は改めて仲間達を見回した。
「来てくれて、ありがとう」

 俺は客人六名に目を遣った。
「申し訳ない。
仲間内の話が先になってしまった」軽く頭を下げた。
 左側の上席の男が笑顔で応じた。
「気にしないでください。
すでに私達は雇われた身ですから。
あっ、遅れました。
私は傭兵ギルドの紹介で参りました。
傭兵団『赤鬼』の団長で、アーノルド倉木と申します。」
 隣の男。
「『赤鬼』の副団長のドリフです」
 更にその隣。
「『赤鬼』の会計係のジュードです」
 四人目。
「私は冒険者ギルドの紹介で参りました。
冒険者クラン『ウォリアー』の団長で、ピーター渡辺と申します。
傘下のパーティ五つを率いて参りました」
 五人目。
「『ウォリアー』の副団長のテッドと申します」
 六人目。
「『ウォリアー』の会計係のウォルターと申します」
 生真面目そうな六つの顔が並んでいた。

 ウィリアムがどういう基準で選んだのかは聞いていない。
任せるられるところは任せて、最終責任は当主である俺がとる。
それで良いと思う。
俺は頷くように六人を見回した。
「君達を歓迎するよ。
受諾してくれて、ありがとう。
遅れたけど、私が当主のダンタルニャン佐藤子爵です。
見た通りの子供だけど、心配はいらないよ。
周りの大人達が優秀だからね」


コメントを投稿