従者・スチュワートがドアを開けて、脇に退いた。
俺は執事・ダンカンを従えて応接室に入った。
室内の者達が立ち上がって俺を迎えた。
テーブルの左側には初対面の客人六名。
右側には家臣のウィリアムと、・・・女達。
どうしてここに彼女達が・・・。
聞いてないよ、この場に居合わせるなんて。
驚きで足が止まりそうになったが、努めて冷静を装った。
俺は上座の椅子に腰を下ろした。
背後にダンカンが立つ。
スチュアートが入室してドアを閉める。
俺はダンカンを振り返った。
何故か、目を逸らされた。
スチュワートに視線を転じた。
彼にもまた目を逸らされた。
どうやら二人とも彼女達の存在は承知らしい。
口止めされていたのだろう。
俺はウィリアムに尋ねた。
「粗方の説明は終えたのかい」
「はい」
俺は客人六人を見回した。
一癖も二癖もありそうな顔ぶれだ。
俺が六人の値踏みをしていると、六人も俺を値踏みしている目色。
初対面だからお互い様。
俺はニコヤカに言った。
「みんな、腰を下ろして。
お茶を入れ替えてもらおう」
呼ぶより早くメイド達が入って来た。
俺にお茶が運ばれ、皆の手元のお茶が入れ替えられた。
俺は心を鎮める為にお茶を飲んだ。
んっ、熱いっ、苦い、それが良い。
まあ、それはさて置き、彼女達を見た。
冒険者パーティ『プリン・ブリン』のメンバーが顔を揃えていた。
キャロル、マーリン、モニカ、シンシア、ルース、シビル、シェリル、ボニー。
俺、呼んでないんだけど・・・。
ウィリアムの隣のシンシアが口を開いた。
「ダンタルニャン佐藤子爵様、単刀直入に言うわね。
人手が足りないなら真っ先に私達に声をかけるべきでしょう。
そうは思わない」
どこから聞き込んだのだろう。
俺はウィリアムに目を遣った。
ここでも逸らされた。
「私達は冒険者仲間でしょう」ルースが言う。
「違ったかしら」シビルも加わった。
俺は躊躇いがちに答えた。
「まあ・・・、そうだよね。
でもね、今回は薬草採取じゃないんだよ。
貴族様が相手の喧嘩。
それも王族の侯爵様二人が率いる賊軍。
巻き込みたくないから声をかけなかったんだ。
そこんところ分かってよ」
シンシアがにこやかに言う。
「失礼を承知で言わせてもらうわ。
貴方が私達をどう思ってるか知らないけど、
私達三人は貴方を弟の様に思っているの。
私達はその弟が困っているから手を貸すの、悪い・・・」
年長組の考えは分かった。
そこでシェリルとボニーの主従に目を転じた。
代表してシェリルが言う。
「寮にお手紙ありがとう。
お陰で実家に面子が立ったわ。
兵力を整え次第、王妃様の下に駆け付けるそうよ。
本当にありがとう。
・・・。
代わりにと言っては何だけど、ここで私達二人が力になるわ」
言葉足らずと思ったのか、ボニーが補足した。
「お嬢様は成人に達していないので、お家の軍には加われないのです。
ダンタルニャン様、何卒こちらに加えてもらえないでしょうか」
俺は年少組を見た。
キャロル、マーリン、モニカ。
俺とは同年齢で同学年。
こんな子供達に血を流す現場に立ち会わせるのは・・・、
大人としてどうなんだろう、出来ないよね。
えっ、俺も子供。
キャロルが代表して言う。
「私達は商家の子供よ。
私もマーリンもモニカも家は継げないけど、商いで生きて行くつもりよ。
商いは戦いよ。
金銭だけでなく、実際に血も流れるわ。
キャラバンや行商だと魔物や山賊対策が必要だし、
街中の商いでも夜盗やならず者への対策は必須なの。
・・・。
今回の件は丁度いいわ。
対人戦が経験できるんだから。
だからお願い、私達も加えて」
「私も」マーリン。
「私も」モニカ。
三人に懇願された。
俺の判断は揺れた。
シンシア達は立派な大人。
シェリル主従にも目はつむれる。
でもキャロル達は子供・・・。
その点が・・・、三人の目が・・・。
「分かった。
皆に力を貸してもらいます。
ただし指示には従う事、いいですね」
仲間達が笑みを浮かべて互いを見遣る。
俺は改めて仲間達を見回した。
「来てくれて、ありがとう」
俺は客人六名に目を遣った。
「申し訳ない。
仲間内の話が先になってしまった」軽く頭を下げた。
左側の上席の男が笑顔で応じた。
「気にしないでください。
すでに私達は雇われた身ですから。
あっ、遅れました。
私は傭兵ギルドの紹介で参りました。
傭兵団『赤鬼』の団長で、アーノルド倉木と申します。」
隣の男。
「『赤鬼』の副団長のドリフです」
更にその隣。
「『赤鬼』の会計係のジュードです」
四人目。
「私は冒険者ギルドの紹介で参りました。
冒険者クラン『ウォリアー』の団長で、ピーター渡辺と申します。
傘下のパーティ五つを率いて参りました」
五人目。
「『ウォリアー』の副団長のテッドと申します」
六人目。
「『ウォリアー』の会計係のウォルターと申します」
生真面目そうな六つの顔が並んでいた。
ウィリアムがどういう基準で選んだのかは聞いていない。
任せるられるところは任せて、最終責任は当主である俺がとる。
それで良いと思う。
俺は頷くように六人を見回した。
「君達を歓迎するよ。
受諾してくれて、ありがとう。
遅れたけど、私が当主のダンタルニャン佐藤子爵です。
見た通りの子供だけど、心配はいらないよ。
周りの大人達が優秀だからね」
俺は執事・ダンカンを従えて応接室に入った。
室内の者達が立ち上がって俺を迎えた。
テーブルの左側には初対面の客人六名。
右側には家臣のウィリアムと、・・・女達。
どうしてここに彼女達が・・・。
聞いてないよ、この場に居合わせるなんて。
驚きで足が止まりそうになったが、努めて冷静を装った。
俺は上座の椅子に腰を下ろした。
背後にダンカンが立つ。
スチュアートが入室してドアを閉める。
俺はダンカンを振り返った。
何故か、目を逸らされた。
スチュワートに視線を転じた。
彼にもまた目を逸らされた。
どうやら二人とも彼女達の存在は承知らしい。
口止めされていたのだろう。
俺はウィリアムに尋ねた。
「粗方の説明は終えたのかい」
「はい」
俺は客人六人を見回した。
一癖も二癖もありそうな顔ぶれだ。
俺が六人の値踏みをしていると、六人も俺を値踏みしている目色。
初対面だからお互い様。
俺はニコヤカに言った。
「みんな、腰を下ろして。
お茶を入れ替えてもらおう」
呼ぶより早くメイド達が入って来た。
俺にお茶が運ばれ、皆の手元のお茶が入れ替えられた。
俺は心を鎮める為にお茶を飲んだ。
んっ、熱いっ、苦い、それが良い。
まあ、それはさて置き、彼女達を見た。
冒険者パーティ『プリン・ブリン』のメンバーが顔を揃えていた。
キャロル、マーリン、モニカ、シンシア、ルース、シビル、シェリル、ボニー。
俺、呼んでないんだけど・・・。
ウィリアムの隣のシンシアが口を開いた。
「ダンタルニャン佐藤子爵様、単刀直入に言うわね。
人手が足りないなら真っ先に私達に声をかけるべきでしょう。
そうは思わない」
どこから聞き込んだのだろう。
俺はウィリアムに目を遣った。
ここでも逸らされた。
「私達は冒険者仲間でしょう」ルースが言う。
「違ったかしら」シビルも加わった。
俺は躊躇いがちに答えた。
「まあ・・・、そうだよね。
でもね、今回は薬草採取じゃないんだよ。
貴族様が相手の喧嘩。
それも王族の侯爵様二人が率いる賊軍。
巻き込みたくないから声をかけなかったんだ。
そこんところ分かってよ」
シンシアがにこやかに言う。
「失礼を承知で言わせてもらうわ。
貴方が私達をどう思ってるか知らないけど、
私達三人は貴方を弟の様に思っているの。
私達はその弟が困っているから手を貸すの、悪い・・・」
年長組の考えは分かった。
そこでシェリルとボニーの主従に目を転じた。
代表してシェリルが言う。
「寮にお手紙ありがとう。
お陰で実家に面子が立ったわ。
兵力を整え次第、王妃様の下に駆け付けるそうよ。
本当にありがとう。
・・・。
代わりにと言っては何だけど、ここで私達二人が力になるわ」
言葉足らずと思ったのか、ボニーが補足した。
「お嬢様は成人に達していないので、お家の軍には加われないのです。
ダンタルニャン様、何卒こちらに加えてもらえないでしょうか」
俺は年少組を見た。
キャロル、マーリン、モニカ。
俺とは同年齢で同学年。
こんな子供達に血を流す現場に立ち会わせるのは・・・、
大人としてどうなんだろう、出来ないよね。
えっ、俺も子供。
キャロルが代表して言う。
「私達は商家の子供よ。
私もマーリンもモニカも家は継げないけど、商いで生きて行くつもりよ。
商いは戦いよ。
金銭だけでなく、実際に血も流れるわ。
キャラバンや行商だと魔物や山賊対策が必要だし、
街中の商いでも夜盗やならず者への対策は必須なの。
・・・。
今回の件は丁度いいわ。
対人戦が経験できるんだから。
だからお願い、私達も加えて」
「私も」マーリン。
「私も」モニカ。
三人に懇願された。
俺の判断は揺れた。
シンシア達は立派な大人。
シェリル主従にも目はつむれる。
でもキャロル達は子供・・・。
その点が・・・、三人の目が・・・。
「分かった。
皆に力を貸してもらいます。
ただし指示には従う事、いいですね」
仲間達が笑みを浮かべて互いを見遣る。
俺は改めて仲間達を見回した。
「来てくれて、ありがとう」
俺は客人六名に目を遣った。
「申し訳ない。
仲間内の話が先になってしまった」軽く頭を下げた。
左側の上席の男が笑顔で応じた。
「気にしないでください。
すでに私達は雇われた身ですから。
あっ、遅れました。
私は傭兵ギルドの紹介で参りました。
傭兵団『赤鬼』の団長で、アーノルド倉木と申します。」
隣の男。
「『赤鬼』の副団長のドリフです」
更にその隣。
「『赤鬼』の会計係のジュードです」
四人目。
「私は冒険者ギルドの紹介で参りました。
冒険者クラン『ウォリアー』の団長で、ピーター渡辺と申します。
傘下のパーティ五つを率いて参りました」
五人目。
「『ウォリアー』の副団長のテッドと申します」
六人目。
「『ウォリアー』の会計係のウォルターと申します」
生真面目そうな六つの顔が並んでいた。
ウィリアムがどういう基準で選んだのかは聞いていない。
任せるられるところは任せて、最終責任は当主である俺がとる。
それで良いと思う。
俺は頷くように六人を見回した。
「君達を歓迎するよ。
受諾してくれて、ありがとう。
遅れたけど、私が当主のダンタルニャン佐藤子爵です。
見た通りの子供だけど、心配はいらないよ。
周りの大人達が優秀だからね」
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