俺の周辺は朝から騒がしい。
表門から屋敷警備の責任者である小隊長・ウィリアムの声が聞こえた。
「君たちは右へ」
「君たちは左へ」
ガヤガヤ、ガチャガチャ、ドタドタ・・・。
日の出と共に傭兵団『赤鬼』三十四名が屋敷に入って来た。
遅れじと冒険者クラン『ウォリアー』五パーティ三十八名も現れた。
ウィリアムが傭兵ギルドと冒険者ギルドに期間限定の依頼を出したら、
幾つかのチームが推薦された。
彼が面接して選んだのは、この二チーム。
当然、俺は最後に面談して了承した。
五日間期間限定の屋敷の防衛。
これに冒険者パーティ『プリン・プリン』も強引に割り込んできた。
その彼女達は昨夜より、この三階に宿泊中。
本来なら別館のメイド寮に泊まってもらうのが正解なのだが、
そちらには現在、イヴ様御一行が泊まっていた。
木を隠すなら森。
イヴ様御一行を隠すならメイド寮。
秘密なので仲間達の目からも隔離する、それしかない。
その肝心の仲間達だが、こちらも朝から騒々しい。
大人組と子供組で部屋を分けたのだが、全員が女子。
「化粧しないの」
「えっ、戦うのに化粧・・・」
「身嗜みは当然でしょう」
「それより早く洗面所を空けなさいよ」
「先にトイレにしなさいよ」
「顔を洗わせてよ」
姦しい。
俺は耳を塞ぐことにした。
屋根から念声が聞こえた。
『朝から五月蠅いわね』
『パー、五月蠅い、五月蠅いプー』
アリスとハッピーも朝から元気だ。
『女の子の朝は特にね』
『なにそれ、差別・・・』
『ピー、差別っペー』
『違う、区別だよ』
『下の男の群れはなんなの・・・』
『プー、男、男っパー』
面倒臭い。
『女の子も混じっている筈だよ』
『でもあれらは完全に分類的に男でしょう』言い切った。
『ポー、男、男っピー』
『酷い、それこそ差別だよ』
『男臭くなるわね』
『ペッペッ、男、男臭いっペー』
忘れていた。
スライムのハッピーの性別はメスだった。
『そんなことより、二人に質問です。
ダンジョンの用事は終わったのですか』
簡単に済む用事ではなかった筈だ。
『馬鹿ね。
ダンジョンに行く訳ないでしょう』
『パッパッ、馬鹿、馬鹿っパー』
良い訳にもなっていない。
『行くって言ってたじゃないか』
『嘘よ』
『プーペーポー』
アリスが意外な事を言う。
『教えてあげる。
南門を占拠しているのはカーティス北畠家公爵軍100ほど。
前線に出ているのは2000ほど。
北門を占拠しているのはバーナード今川公爵軍200ほど。
前線に出ているのは3000ほど』
『プー、調べたっペー』
事前に二人には人間の争いに関わらぬ様にと釘を刺したが、
完全に無視された。
『なにやってるの』
『片手間に調べてあげたのよ。
有り難く感謝なさい』
『ポー、感謝、感謝っポー』
俺は思わず、知らず、声を上げた。
『関わっちゃ駄目って言っただろう』
『怒らない、怒らない。
怒ると皺が増えるわよ』
『ペッペッ、皺々っ増えるっペー』
脳筋肉のアリスは俺を無視して話を続けた。
『国王陛下だっけ、あれは死んでたわよ。
北門で棺桶に入れられてるわ』
『パー、棺桶、棺桶獲って来るっペー』
ハッピーなら体内に収納できる。
獲る気満々。
『それは放置していいよ』
『いいの、遠慮してるの』
『ピー、獲る、獲るっ収納っペー』
『遠慮はしてない。
遺体は王妃の軍が奪い返す必要があるんだ。
その為に大勢が戦っている訳だからね』
『訳が分からないけど、それじゃ放置決定ね』
『ポッポッポー』
アリスは報告を続けた。
『次は王妃の軍ね。
王妃は西門にいるわ。
続々と味方が集まって7000近いわね。
東門にも味方が集まっているわ。
こちらは6000ほどかしら』
『パー、攻撃してっパー、散らすっパー』
明らかにハッピーの語彙力が上がっている。
これでは面倒臭い度数が跳ね上がりそう。
っと、ドアがノックされた。
「入ります」朝食の時間だ。
「分かった」
メイドのジューンが入って来て、にこやかに俺を見る。
「おはようございます」
「おはよう」
「下で用意は整っています」
俺は追い出される様にして部屋を出た。
カーテンが開けられ、続いて窓が全開にされる音。
廊下を歩く俺にアリスが続けた。
『どちらも今日中に決着をつける気でいるわ。
ダン、巻き込まれないようにしてね』
『ポー、巻き込まれちゃ駄目プー』
『そのつもりだよ。
亀の様に首を引っ込めてるよ』
『それが無難ね』
『パー、亀だよ、亀だよ、噛む噛むプー』
『二人はこれからどうするの』
『空から国都観光するわ』
『観光ピー、観光ピー』
缶コーヒーに聞こえてしまい、思わず苦笑い。
『手出し無用だよ』
『分かってる。
上から人間の無様な様子を見ているわ。
でも、ダンが危ないとなったら駆け付けるわよ』
『駆け付けるペー、駆け付けるポー』
遠ざかる二人の魔波。
王宮方向に向かっている。
情報収集を続けるのだろう。
それに俺は感謝した。
『ありがとう』
表門から屋敷警備の責任者である小隊長・ウィリアムの声が聞こえた。
「君たちは右へ」
「君たちは左へ」
ガヤガヤ、ガチャガチャ、ドタドタ・・・。
日の出と共に傭兵団『赤鬼』三十四名が屋敷に入って来た。
遅れじと冒険者クラン『ウォリアー』五パーティ三十八名も現れた。
ウィリアムが傭兵ギルドと冒険者ギルドに期間限定の依頼を出したら、
幾つかのチームが推薦された。
彼が面接して選んだのは、この二チーム。
当然、俺は最後に面談して了承した。
五日間期間限定の屋敷の防衛。
これに冒険者パーティ『プリン・プリン』も強引に割り込んできた。
その彼女達は昨夜より、この三階に宿泊中。
本来なら別館のメイド寮に泊まってもらうのが正解なのだが、
そちらには現在、イヴ様御一行が泊まっていた。
木を隠すなら森。
イヴ様御一行を隠すならメイド寮。
秘密なので仲間達の目からも隔離する、それしかない。
その肝心の仲間達だが、こちらも朝から騒々しい。
大人組と子供組で部屋を分けたのだが、全員が女子。
「化粧しないの」
「えっ、戦うのに化粧・・・」
「身嗜みは当然でしょう」
「それより早く洗面所を空けなさいよ」
「先にトイレにしなさいよ」
「顔を洗わせてよ」
姦しい。
俺は耳を塞ぐことにした。
屋根から念声が聞こえた。
『朝から五月蠅いわね』
『パー、五月蠅い、五月蠅いプー』
アリスとハッピーも朝から元気だ。
『女の子の朝は特にね』
『なにそれ、差別・・・』
『ピー、差別っペー』
『違う、区別だよ』
『下の男の群れはなんなの・・・』
『プー、男、男っパー』
面倒臭い。
『女の子も混じっている筈だよ』
『でもあれらは完全に分類的に男でしょう』言い切った。
『ポー、男、男っピー』
『酷い、それこそ差別だよ』
『男臭くなるわね』
『ペッペッ、男、男臭いっペー』
忘れていた。
スライムのハッピーの性別はメスだった。
『そんなことより、二人に質問です。
ダンジョンの用事は終わったのですか』
簡単に済む用事ではなかった筈だ。
『馬鹿ね。
ダンジョンに行く訳ないでしょう』
『パッパッ、馬鹿、馬鹿っパー』
良い訳にもなっていない。
『行くって言ってたじゃないか』
『嘘よ』
『プーペーポー』
アリスが意外な事を言う。
『教えてあげる。
南門を占拠しているのはカーティス北畠家公爵軍100ほど。
前線に出ているのは2000ほど。
北門を占拠しているのはバーナード今川公爵軍200ほど。
前線に出ているのは3000ほど』
『プー、調べたっペー』
事前に二人には人間の争いに関わらぬ様にと釘を刺したが、
完全に無視された。
『なにやってるの』
『片手間に調べてあげたのよ。
有り難く感謝なさい』
『ポー、感謝、感謝っポー』
俺は思わず、知らず、声を上げた。
『関わっちゃ駄目って言っただろう』
『怒らない、怒らない。
怒ると皺が増えるわよ』
『ペッペッ、皺々っ増えるっペー』
脳筋肉のアリスは俺を無視して話を続けた。
『国王陛下だっけ、あれは死んでたわよ。
北門で棺桶に入れられてるわ』
『パー、棺桶、棺桶獲って来るっペー』
ハッピーなら体内に収納できる。
獲る気満々。
『それは放置していいよ』
『いいの、遠慮してるの』
『ピー、獲る、獲るっ収納っペー』
『遠慮はしてない。
遺体は王妃の軍が奪い返す必要があるんだ。
その為に大勢が戦っている訳だからね』
『訳が分からないけど、それじゃ放置決定ね』
『ポッポッポー』
アリスは報告を続けた。
『次は王妃の軍ね。
王妃は西門にいるわ。
続々と味方が集まって7000近いわね。
東門にも味方が集まっているわ。
こちらは6000ほどかしら』
『パー、攻撃してっパー、散らすっパー』
明らかにハッピーの語彙力が上がっている。
これでは面倒臭い度数が跳ね上がりそう。
っと、ドアがノックされた。
「入ります」朝食の時間だ。
「分かった」
メイドのジューンが入って来て、にこやかに俺を見る。
「おはようございます」
「おはよう」
「下で用意は整っています」
俺は追い出される様にして部屋を出た。
カーテンが開けられ、続いて窓が全開にされる音。
廊下を歩く俺にアリスが続けた。
『どちらも今日中に決着をつける気でいるわ。
ダン、巻き込まれないようにしてね』
『ポー、巻き込まれちゃ駄目プー』
『そのつもりだよ。
亀の様に首を引っ込めてるよ』
『それが無難ね』
『パー、亀だよ、亀だよ、噛む噛むプー』
『二人はこれからどうするの』
『空から国都観光するわ』
『観光ピー、観光ピー』
缶コーヒーに聞こえてしまい、思わず苦笑い。
『手出し無用だよ』
『分かってる。
上から人間の無様な様子を見ているわ。
でも、ダンが危ないとなったら駆け付けるわよ』
『駆け付けるペー、駆け付けるポー』
遠ざかる二人の魔波。
王宮方向に向かっている。
情報収集を続けるのだろう。
それに俺は感謝した。
『ありがとう』
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます