金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(大乱)201

2021-01-31 10:52:35 | Weblog
 ベティ王妃は西門に本陣を構えていた。
奥の陣幕に諸将を集め、情勢を検討していた。
本来であれば元帥である国王陛下がいて、
左右に近衛大将と近衛参謀長が侍り、招集した各隊よりの報告を聞く。
しかし、今、その三名の姿はない。
国王陛下は真っ先に魔法攻撃を受け、
その地で反乱軍に身柄を拘束され、以後の安否も所在も不明。
大将と参謀長は未だ現れず。
 ベティの左には国王の最側近であったポール細川子爵。
右には、かつてバイロン神崎とエリオス佐藤の一件を担当した中佐、
現在は近衛軍大佐のアルバート中川子爵がいた。

 カーティス北畠家公爵軍を偵察して来た近衛軍中尉が報告した。
「南門を掌握し、こちらに向かっています。
兵力はおよそ2000。
公爵軍には傭兵が多い様に見られますが、
一部に国軍や近衛軍の隊旗も散見されます」
 代わってバーナード今川家公爵軍を偵察した近衛軍中尉。
「こちらは北門を掌握し、同じくこちらに向かって来ています。
兵力はおよそ3000。
こちらも傭兵が多く見られ、国軍や近衛軍の隊旗も散見されます」
 ベティが諸将を見回して口を開いた。
「どういう訳で国軍や近衛軍の隊旗が散見されるの」
 ポール細川子爵が宥める様に答えた。
「公爵世代は兵力を有しませんが、
次代が子爵として領地を賜った際、家臣集めに困らぬ様に、
事前に退職・退役した者を雇用するのを許されているのです。
その関係で国軍や近衛軍は無論、役所とも深い繋がりがあります」
 ベティは不承不承頷いた。

 一人の少佐が味方の現状を報告した。
「我らの現有兵力を説明します。
この西門、表に一個中隊。
こちら側、正面に二個大隊、左翼に一個大隊、右翼に一個大隊、
遊撃として後方に三好侯爵様ご一統の混成部隊、およそ1000。
計3250です。
状況によっては表の中隊を引き剥がし、投入します」
 もう一人の少佐。
「東門の毛利侯爵様や佐々木侯爵様方も似た様な兵力です」
 ベティは確認した。
「近衛の兵力は一万ほどと聞いていました。
少々、数が少ないですね」
 アルバート中川大佐が説明した。
「第一にワシバーンの襲撃です。
多くの負傷者が出ています。
そして反乱軍に加わった離反者。
これに少々ですが、去就を明らかにしていない部隊があります」
「大将や参謀長がそれだと・・・」
「確認は、していません」苦り切った表情。

 ベティは溜息つきながら一同を見回した。
「国軍の助勢は」
 ポール細川が言う。
「頼んでいません」
「どうして・・・」
「今なら王宮区画だけの戦闘ですんでいます。
もし、これに国軍を加えるとなると、
勝手に走る部隊が出る懸念があります」
「それは・・・」
 アルバート中川が説明した。
「上級部隊は信用できますが、個々の部隊は信用なりません。
指揮する尉官クラスは平民の将校が多いのです。
出動命令を受領した途端、反乱軍に加わるかも知れません」
「貴官は国軍を信用していないのですね」ベティがもっともな質問。
「そうではありません。
昨今、自由平等の思想が広がっています。
それに平民の尉官クラスが影響を受けています。
まずは古い体制の打ち壊し、それから新たな秩序の創世、
そう謳っています。
・・・。
今回の騒動は壊すには打ってつけかと思い、憂慮しているのです」

 それまで聞き役に徹していた評定衆の一人が立ち上がった。
三好一族の総帥・ロバート三好侯爵。
「となれば我等、古い世代の出番だな。
・・・。
王妃、ご安心なされよ。
既に手は打ってあります。
国都に在住している三好一族に招集をかけております。
それとは別に国元へも使者を走らせております。
・・・。
我等だけではない筈です。
東門を任されておる毛利一族も同様にしておりましょう。
他の評定衆も勿論、同様でしょう。
・・・。
ここは耐えて、耐えて、時間を味方にすれば良いだけのこと。
国軍を無理して引き込む必要はありません。
国軍には外郭の治安維持を命じ、我らに反乱軍の鎮撫を命じて下され。
さすれば打ち砕き、陛下を取り戻しましょう」

 アルバート中川大佐が疑問を呈した。
「随分と準備がよろしいですな。
事前に反乱をご存知であったとか・・・」
 途端、三好一族の一人が気色ばみ、ドッと立ち上がった。
「ふざけるな、聞き捨てならん。
こちらも既に一族に戦死者が出ている。
お前、どういう意味でものを申している。
訳次第によっては切り捨ててくれる」

 ロバート三好が呆れ顔で仲裁した。
「双方とも落ち着け」
「しかし総帥・・・」
「大佐の疑問ももっともだ。
・・・。
我等は王宮にいて反乱軍に掛かりきりだった。
外との連絡もつけようがなかった。
その場を切り抜けるのに必死で、頭も回らなかった。
それが翌日には手回しよく準備が整っている。
誰しも疑問に思う、それは当然だ。
・・・。
大佐、答えは小僧にある。
ポール細川子爵が現場に連れてきていた小僧だ。
お子様子爵のダンタルニャン佐藤子爵と言えば分かるだろう」
「ええ、確かに、それらしい子供がいました。
それが・・・」
「奴が王宮から外郭に抜け出し、
評定衆の主だった家に状況を知らせる書状を出した。
それを読んだ各家の執事が適切に動いた。
我らが知ったのは今朝遅くだ。
知った時には全ての手配がすんでいた。
そういう訳だ」

 アルバート大佐は素直に頭を下げた。
「申し訳ありません。
勘違いしていました」
「よいよい。
お主の家からの兵力は如何した」
「宮廷子爵なので250が限度です。
そこで冒険者ギルドや傭兵ギルドに声をかけ、
せめて倍にしてから、西門に寄越す様に執事に申し伝えました」
「500か、それは無理だろう。
他の貴族達も動いているだろうからな」


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