俺は朝寝坊した。
そこをメイド二人に襲われた。
浴室で丸洗いされた。
得意気にメイド長・ドリスが言う。
「さあさあ、お着換えしましょうね」
もう一人のメイド・ジューンが良い笑顔。
「うっふふふ、これにしましょうね」
登校してクラスに入った。
通学路ばかりでなく、クラスも何時もの空気だった。
児童の集まりだから騒々しいが、昨夜の件は話題になっていない。
押収した物を王宮の上空から撒き散らしたが、
全てを近衛軍が回収したとは思えない。
風で、王宮区画から外に飛ばされた物もあった。
事態の推移は、近衛軍も含めた拾い主の思惑しだいだ。
どう動くか楽しみだ。
黙殺されたら、されたで、それも面白い。
その理由を探れば、新たな何かが出て来る筈だ。
授業は滞りなく終わった。
下校は、何時もの様にキャロル達が一緒だ。
女児達を引き連れての帰り道、街中の空気に不穏な色を感じ取った。
・・・、萌芽、・・・。
これは俺が当事者だからだろう。
それは決して罪の意識ではない。
心底で楽しんでいる自分を確認した。
まあ、それはそれ。
悪党共を蹴散らすのは夜のお仕事。
昼間はお子様伯爵を演じよう。
それが務めというものだ。
屋敷に戻ると俺達はお着換えタイム。
俺は執事長・ダンカンに付き添われて自室へ。
女児達は自分達が勝手に占有した部屋へ、当然の顔で入って行く。
それに文句を言う使用人はいない。
この屋敷では俺よりも女児達が優遇されていた。
うっ、解せぬ。
このお着換えタイムに、俺にダンカンが付き添うのは何時ものこと。
ダンカンは、スケジュールが詰まっている俺を考慮して、
僅かな時間も見逃さずに報連相してくれる。
報告、連絡、相談。
執事の家系に生まれただけにソツがない。
「ダンタルニャン様、王宮やその周辺で変事が起こりました」
隠蔽する奴がいたかどうかは知らないが、これで事態が進行する。
後は公的機関に丸投げだ。
その本心を隠して、伯爵を演じた。
「どうしたんだい」
「ペミョン・デサリ金融を覚えてらっしやいますか」
ペミョン・デサリ金融、当家の主立った者ならつい最近の事なので、
一度は耳にしているだろう。
それも悪い意味で。
「ああ、覚えているとも、それが」
「そこの内部より重要書類が流出した様です」
「流出・・・、都合の悪いと言う意味かい」
「はい、詳しい事はただいま調査中ですが、
宮廷では騒ぎになっています」
ポール細川子爵家からの情報もあるのだろう。
「分かった。
・・・。
ねえ、ダンカン、人手は足りてるかい」
ダンカンは疑問の眼差し。
「ええと、どういう意味ですか」
「伯爵になって、その手の裏事情を調べる事が必須になってきた、
そう感じる様になったんだ。
その点をどう思う、執事長として」
当然、うちは新興のお貴族様だから、当初から人手が足りない。
これまでは、その足りない所はポール殿に頼って来た。
それが寄親の伯爵様になってしまった。
そう何時までも頼れないだろう。
「はい、私も不足していると認識していますので、
それなりの経験者を探してもいます。
ですが、これが難しいのです」
「どこが難しい」
「信用に値するかどうかです」
確かに。
そこは丸投げするか。
「その手の、裏の人材確保は決定だ。
ダンカン一人で悩まず、カールとも相談してくれ。
意外とアドルフも顔が広いようだ。
二人は美濃だから、行って来ると良い」
着替えを終えて集合場所に向かった。
馬車寄せが近い一角、庭先の四阿だ。
既に女児達が揃っていた。
当初のメンバー、キャロル、マーリン、モニカ。
押し掛けで、何時の間にか居付いたシェリル京極。
そしてその守役のボニー。
それまで参加していた大人組の三人、
シンシア、ルース、シビルは不参加、正確には除隊扱い。
三人揃ってアルファ商会の取締役に就任したので、
冒険者どころではなかったのだ。
人の雇用や、商品の手配等々、商売に奔走せざるを得なくなった。
結果、大人はボニー一人になった。
これに各所よりクレームが来た。
「生徒ばかりではないですか、それはいけません」
「女子ばかりではないですか、ハーレムですか」
「魔物を討伐してるではないですか、危ないですね」
「伯爵様としての職責を果たして下さい」
「せめて大人を増やして下さい」
俺は万事豆腐だった。
外には四角四面に、ハード対応。
内には柔らかく、ソフト対応。
要するに、外野の声を聞く耳はない。
何しろうちのメンバーは複数のスキル持ちばかり。
この所の一連の騒ぎで大きく成長した。
全員が探知スキルに開眼した。
武技スキルにしてもそう。
槍士が二人、剣士が一人、弓士が一人、盾士が一人。
だからといって誰も満足はしていない。
それぞれが得意の武技を伸ばそうと躍起になっていた。
つまり、実戦あるのみ。
実戦でこそスキルが伸びるし、新たな開眼もある。
でも積極的に魔物討伐をやる訳ではない。
薬草採取のついでに、魔物を返り討ちにするだけのこと。
何事も出会いが大切なのだ。
下校後なので、そんなに時間はない。
伯爵家の馬車で今日の採取場所に向かった。
俺は、その馬車の中でサンドイッチを軽く摘まんで、
ドリンクに手を伸ばした。
飲みながら尋ねた。
「今日の薬草は」
手を止め、キャロルが答えてくれた。
熱冷ましだと言う。
修業に必要な分を手元に置いて、残りをギルドに売るのだそうだ。
彼女達三人はぶれない。
当初の目標の薬師へまっしぐら。
その過程で魔法の一つも覚えると。
学業しだいでは上級の学校へ進み、宮廷職員募集試験に挑むとも。
羨ましいくらいに真っ直ぐだ。
一方のシェリルも真摯に武芸に励んでいた。
女性騎士として独り立ちしたいと願っていた。
イヴ様との面識から、その半分は適えられていた。
守役のボニーはそんな彼女に終身仕えるつもり。
うちの女性達は覚悟が違う。
対して俺は、幸運ばかりが舞い込んで来る。
はあ、・・・。
そこをメイド二人に襲われた。
浴室で丸洗いされた。
得意気にメイド長・ドリスが言う。
「さあさあ、お着換えしましょうね」
もう一人のメイド・ジューンが良い笑顔。
「うっふふふ、これにしましょうね」
登校してクラスに入った。
通学路ばかりでなく、クラスも何時もの空気だった。
児童の集まりだから騒々しいが、昨夜の件は話題になっていない。
押収した物を王宮の上空から撒き散らしたが、
全てを近衛軍が回収したとは思えない。
風で、王宮区画から外に飛ばされた物もあった。
事態の推移は、近衛軍も含めた拾い主の思惑しだいだ。
どう動くか楽しみだ。
黙殺されたら、されたで、それも面白い。
その理由を探れば、新たな何かが出て来る筈だ。
授業は滞りなく終わった。
下校は、何時もの様にキャロル達が一緒だ。
女児達を引き連れての帰り道、街中の空気に不穏な色を感じ取った。
・・・、萌芽、・・・。
これは俺が当事者だからだろう。
それは決して罪の意識ではない。
心底で楽しんでいる自分を確認した。
まあ、それはそれ。
悪党共を蹴散らすのは夜のお仕事。
昼間はお子様伯爵を演じよう。
それが務めというものだ。
屋敷に戻ると俺達はお着換えタイム。
俺は執事長・ダンカンに付き添われて自室へ。
女児達は自分達が勝手に占有した部屋へ、当然の顔で入って行く。
それに文句を言う使用人はいない。
この屋敷では俺よりも女児達が優遇されていた。
うっ、解せぬ。
このお着換えタイムに、俺にダンカンが付き添うのは何時ものこと。
ダンカンは、スケジュールが詰まっている俺を考慮して、
僅かな時間も見逃さずに報連相してくれる。
報告、連絡、相談。
執事の家系に生まれただけにソツがない。
「ダンタルニャン様、王宮やその周辺で変事が起こりました」
隠蔽する奴がいたかどうかは知らないが、これで事態が進行する。
後は公的機関に丸投げだ。
その本心を隠して、伯爵を演じた。
「どうしたんだい」
「ペミョン・デサリ金融を覚えてらっしやいますか」
ペミョン・デサリ金融、当家の主立った者ならつい最近の事なので、
一度は耳にしているだろう。
それも悪い意味で。
「ああ、覚えているとも、それが」
「そこの内部より重要書類が流出した様です」
「流出・・・、都合の悪いと言う意味かい」
「はい、詳しい事はただいま調査中ですが、
宮廷では騒ぎになっています」
ポール細川子爵家からの情報もあるのだろう。
「分かった。
・・・。
ねえ、ダンカン、人手は足りてるかい」
ダンカンは疑問の眼差し。
「ええと、どういう意味ですか」
「伯爵になって、その手の裏事情を調べる事が必須になってきた、
そう感じる様になったんだ。
その点をどう思う、執事長として」
当然、うちは新興のお貴族様だから、当初から人手が足りない。
これまでは、その足りない所はポール殿に頼って来た。
それが寄親の伯爵様になってしまった。
そう何時までも頼れないだろう。
「はい、私も不足していると認識していますので、
それなりの経験者を探してもいます。
ですが、これが難しいのです」
「どこが難しい」
「信用に値するかどうかです」
確かに。
そこは丸投げするか。
「その手の、裏の人材確保は決定だ。
ダンカン一人で悩まず、カールとも相談してくれ。
意外とアドルフも顔が広いようだ。
二人は美濃だから、行って来ると良い」
着替えを終えて集合場所に向かった。
馬車寄せが近い一角、庭先の四阿だ。
既に女児達が揃っていた。
当初のメンバー、キャロル、マーリン、モニカ。
押し掛けで、何時の間にか居付いたシェリル京極。
そしてその守役のボニー。
それまで参加していた大人組の三人、
シンシア、ルース、シビルは不参加、正確には除隊扱い。
三人揃ってアルファ商会の取締役に就任したので、
冒険者どころではなかったのだ。
人の雇用や、商品の手配等々、商売に奔走せざるを得なくなった。
結果、大人はボニー一人になった。
これに各所よりクレームが来た。
「生徒ばかりではないですか、それはいけません」
「女子ばかりではないですか、ハーレムですか」
「魔物を討伐してるではないですか、危ないですね」
「伯爵様としての職責を果たして下さい」
「せめて大人を増やして下さい」
俺は万事豆腐だった。
外には四角四面に、ハード対応。
内には柔らかく、ソフト対応。
要するに、外野の声を聞く耳はない。
何しろうちのメンバーは複数のスキル持ちばかり。
この所の一連の騒ぎで大きく成長した。
全員が探知スキルに開眼した。
武技スキルにしてもそう。
槍士が二人、剣士が一人、弓士が一人、盾士が一人。
だからといって誰も満足はしていない。
それぞれが得意の武技を伸ばそうと躍起になっていた。
つまり、実戦あるのみ。
実戦でこそスキルが伸びるし、新たな開眼もある。
でも積極的に魔物討伐をやる訳ではない。
薬草採取のついでに、魔物を返り討ちにするだけのこと。
何事も出会いが大切なのだ。
下校後なので、そんなに時間はない。
伯爵家の馬車で今日の採取場所に向かった。
俺は、その馬車の中でサンドイッチを軽く摘まんで、
ドリンクに手を伸ばした。
飲みながら尋ねた。
「今日の薬草は」
手を止め、キャロルが答えてくれた。
熱冷ましだと言う。
修業に必要な分を手元に置いて、残りをギルドに売るのだそうだ。
彼女達三人はぶれない。
当初の目標の薬師へまっしぐら。
その過程で魔法の一つも覚えると。
学業しだいでは上級の学校へ進み、宮廷職員募集試験に挑むとも。
羨ましいくらいに真っ直ぐだ。
一方のシェリルも真摯に武芸に励んでいた。
女性騎士として独り立ちしたいと願っていた。
イヴ様との面識から、その半分は適えられていた。
守役のボニーはそんな彼女に終身仕えるつもり。
うちの女性達は覚悟が違う。
対して俺は、幸運ばかりが舞い込んで来る。
はあ、・・・。
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