金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(テニス元年)17

2023-05-28 09:06:32 | Weblog
 俺Vsエボニー&アピス。
敵は、魔物とそれに騎乗するランクAの剣士。
それだけで充分なのに、これに夜勤の衛士達がわらわらと湧いて来た。
日勤の衛士達も叩き起こされてる模様。
それらが寝起き姿で、武器片手に、こちらに駆けて来る。
何とも締まらない。
 俺は、石像の肩に腰掛けた状態でそれらを見守った。
さて、大騒ぎになった。
これは想定外、想定外過ぎた。
どうする俺様、思わず石像の頭を叩いた。

 エボニーがアピスを宥め、ゆっくり歩を進めて来た。
剣を肩に担いで、空いた手でアピスの首を摩りながら。
実に余裕のある態度。
しかし、視線だけは俺から外さない。
 ほう、落ち着いて見ると、好い女。
剣士というラッテルではなく、娼婦というラッテルが相応しい。
そんな女が舌なめずりしながら俺を見上げた
「逃げ場はない、大人しく投降しろ。
さすれば私が侯爵様に、寛大な処置をお願いしよう」

 携行灯を持って来た衛士達が、石像の足下とその周辺を照らした。
遠光器も二つ来た。
前後から強い光を浴びせられた。
こうなると普通の賊なら、いちもにもなく意志を削がれるだろう。
けれど俺は違う。
 石像の首を抱える様に、腕を回した。
回した腕に魔力を注ぐ。
ここで大切なのは、イメージ。
締め落とす。
そして、一気に首元から削いだ。

 ゴロンと石像の頭部が、エボニーとアピスの足下に落下した。
息を呑んで包囲していた者達が硬直した。
ただ一人、エボニーは違った。
弾けるような笑い。
「ふぁっふぁっははは。
これは面白い。
あくまでも抵抗するのね。
降りてらっしゃい、白黒つけるわ」
 相棒のアピスが俺を睨んで吼えた。
可愛いぞ、唾かける牛クン。
ステーキに格上げしてやろうか。
 
 さてさて、どうする俺様。
転移で即行サヨナラ出来る。
しかし、それでは拙い。
転移できる存在として知れ渡る。
国都中で話題沸騰だ。
 俺は風魔法を起動した。
全ての携行灯と遠光器をロックオン、打ち上げてからのホーミング誘導。
それにエボニーが即座に反応した。
大声で怒鳴った。
「攻撃魔法だ、総員備えよ」
 盾持ちは盾を前に翳す。
魔法使いは防御魔法を展開。
スキルに恵まれなかった者達はその二者の陰に隠れた。

 残念だよ君達。
俺様に対抗できると考えた時点で君達の負けは確定なんだよ。
風槍・ウィンドスピアを放った、GoGo。
 上に放った風槍が放物線を描いて、標的へ向かって行く。
視線の動きから、視えているのはエボニーのみ。
その彼女が再び怒鳴った。
「ウィンドスピアだ」
 言葉尻に重なる様に複数の破壊音が発生した。
全弾命中。
全ての灯りが消えて、再び辺りが闇に閉ざされた。
残ったのは夜空の明かりのみ。
この間隙を俺は見逃さない。
重力魔法で石像から飛び降りた。
正しくは優雅に舞い降りた。
舞姫の気分。

 無粋な奴がいた。
ただ一騎、エボニーとアピス。
俺の着地点に正確に突っ込んで来た。
お前達は暴走トラック、否、異世界トラックかっての。
 驚きはしたが、対処のしようはあった。
水魔法の盾・シールドを正面へ張った。
案の定、エボニーがそれを読んでいた。
得意の風魔法を起動し、アビスに纏わせた。
勢いを殺さずに突っ込んで来た。

 シールドが破壊された。
同時にアピスを防御していた風魔法も壊れた。
凄まじい衝撃で俺は態勢を崩した。
そこをエボニーの剣に襲われた。
剣自体は届かないが、派生した刃風が伸びて来たのだ。
ただの刃風ではない。
殺傷力を秘めた物。
辛うじて魔法杖で受け止めた。
手が、腕が痛い、骨折しそう。

 とっ、そこへアピスの唾が飛んで来た。
両足を踏ん張って刃風を受けるので精一杯。
躱せる余裕はなかった。
ローブの胸に当たった。
くっ、くっさい、臭い、臭い、鼻が曲がる。
慌ててバックステップ、バックステップ。
それで臭いから逃れられる訳ではないが、更にバックステップ。
 幸い、明かりは夜空の月と、星々のみ。
庭園に駆け込んだ。
木陰でローブを虚空に収納した。
虚空の復元能力に期待しよう。

 臭跡を辿ってアピスとエボニーが庭園へ接近して来た。
衛士達がその後を付いて来た。
今度は完全武装の騎士達も加わっていた。
あ~、なんてこったい。
エボニーが怒鳴った。
「どこにも逃がさないぞ。
観念して投降しろ、悪いようにはせん」

 俺はローブがないのでシャツ姿。
それでもって庭園から出た。
皆の視線を集中させる為にゆっくり進み出た。
今だ、光魔法を起動した。
エボニーが同僚達に注意喚起した。
「総員備えろ」
 全方位に向けて、フラッシュ、フラッシュ、フラッシュの大サービス。
全員が一時的に視覚を失ったかどうかは知らないが、
俺は再び庭園に駆け戻った。
 目撃者のいない所を探した。
綺麗に整えられた藪を見つけた。
整えられた藪・・・。
いいか、飛び込もう。
飛び込んで、ようやく転移起動。

 高々度から視覚を強化して真下を見た。
大勢が倒れるか、膝を付いていた。
完全に機能不全と見ても差し支えない。
エボニーもその一人。
アピスは、・・・離れた箇所で伸びていた。
さて、どうしてくれよう。
この恨み、アピスの唾で鼻が回復してないのだ。

 本館の真上に移動した。
この高々度から雨を降らすか。
水魔法を起動した。
周辺の魔素を力技で水へ変容させ、結合させ、
思い切り大きな水の塊を作り上げた。
早い話が100メートルプール二杯分。
それを降らした、否、落下させた、・・・かな。


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