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なぜ、恒大集団が経営危機に至ったか? 亡命政治学者が語る中国経済の今【何清漣氏インタビュー 前編】

2022年01月12日 06時00分18秒 | 日記

なぜ、恒大集団が経営危機に至ったか? 亡命政治学者が語る中国経済の今【何清漣氏インタビュー 前編】

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画像:hxdbzxy / Shutterstock.com

中国不動産大手の恒大集団が経営危機を迎える中、本誌2022年2月号では、「激震間近、中国経済 逃げ遅れるな、日本企業!」と題した特集において、中国の不動産危機の背景や中国経済の今後の見通しに迫りました。

 

本欄では、アメリカに亡命した中国人の政治経済学者に、中国恒大集団の債務不履行の背景にある、「中国政府の意図」について伺いました。前編は、中国政府の産業政策と恒大トップの思惑について取り上げます。

 

「政府の支援を得られる」という恒大トップの誤解

 

政治経済学者

何 清漣

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(ホー・チンリェン)1956年、中国・湖南省生まれ。上海復旦大学で経済学修士を取得。深セン法制報で記者生活を送り、中国社会科学院の特約研究員を務めた。政治経済学の視点から共産党統治の構造的病癖と腐敗の根源を暴く言論を貫き、2001年にアメリカに亡命。現在はボイス・オブ・アメリカのコラムニストとして精力的に発信を継続している。著書に『中国現代化の落とし穴』(草思社)などがあり、共著に『中国─とっくにクライシス、なのに崩壊しない"紅い帝国"のカラクリ』(ワニ・プラス)がある。

 

──中国では国有企業が優遇され、いざとなれば中央銀行が無制限融資を行って経済成長を遂げるというMMTに近いことを続けてきたため、「経済は維持できる」と他国の投資家も信じていました。しかし、中国恒大集団が一部債務不履行に陥るなどして、これまでの経済成長は「蜃気楼」だったという実態が明らかになりました。何博士は今の不動産市場をどう見ていますか。

 

何清漣氏(以下、何): 中国政府はこれまで一貫して、公有制を主な経済指針として堅持していました。国有企業はあらゆる形態の企業の中でも「共和国の長男」と呼ばれています。

 

1990年代、朱鎔基(しゅ・ようき)首相の任期中には、国有企業に対し抓大放小(大をつかんで小を放つ、つまり大企業は国家が掌握し、小企業は市場に任せる)という現代企業制度改革が実施されました。エネルギー、交通、通信、水力・電力などの公共部門において多くの独占型巨大企業を育て、それらの国有企業は、中国経済と人民生活の「安全を保障するもの」とみなされたのです。

 

中国の銀行システムの主体は国有ですから、中国政府にとっては「国有銀行が『共和国の長男』である国有企業に貸付を行って支える」ということは、極めて当然のことです。

 

以前、中国の言論環境が厳しくなかったころのことですが、銀行貸付の対象は効率の低い国有企業に偏っており、その後、その貸付が銀行の不良債権となったため、中国経済学界から非難されてきました。

 

 

恒大トップの「行き過ぎた自信」、止められなかった拡大路線

何: それでは、中国恒大集団のこの案件において、国有銀行が同社に対する貸付を停止することは非常に理不尽なことなのでしょうか? これは具体的に分析すべきことです。

 

私は、これは中国恒大集団トップの許家印氏の、中国経済と不動産市場に対する判断の誤りが招いたことだと考えています。

 

中国恒大集団は1996年、まさに中国不動産業界が繁栄真っ盛りの時期に創業されました。許家印氏は対外的なイメージとして、「恵まれた政治的人脈を有しており、本人が中国人民政治協商会議の成員である」というものを作り上げています。このことが彼に行き過ぎた自信をもたらし、彼は「時代の趨勢の影響を受けずにいられる」と考えて、いつストップボタンを押すべきか分からなくなったのです。

 

中国恒大集団の発表によれば、2016年末の同社傘下の恒大地産の資産総額は9268億元(約15兆円)でしたが、負債総額は8655億元(約14兆円)で、受け入れ保証金を差し引いた負債比率は82%となり、永久債1160億元(約1.9兆円)を計上後の純負債比率は445%でした。

 

実のところ、習近平国家主席は17年以降、中国は成長エンジンを安定的かつ持続可能な分野にフォーカスし直す必要があると言及していました。そして、不動産市場の投機的発展を制限すべきで、すでにバブルを圧縮しつつあると何度も言っていたのです。

 

にもかかわらず、中国恒大集団はそれに逆行して規模を拡大し、積極的な投資戦略を導入・実施したのです。

 

 

「中国政府は恒大を救う」という誤解

何: 中国恒大集団は3回の手順を経て、計1300億元(約2.1兆円)の戦略的投資を導入し、永久債1160億元(約1.9兆円)を償還しました。同社はさらに、レバレッジを引き下げて、純負債比率を約70%まで下げようと努め、18~20年には実現するだろうと表明していました。

 

しかし結果は思うようにいかず、ついには20年、中国中央銀行が定める3つのレッドラインを踏んでしまいました。つまり、受け入れ保証金を差し引いた負債比率が総資産の70%以下、自己資本に対する純負債比率は100%以下、現金が短期負債に対して100%以上の3点です。

 

中国恒大集団は明らかにこれらのレッドラインを超えてしまったため、中国国内で資金調達を行うことは非常に難しい状況となりました。

 

外国資本が中国恒大集団に大量の融資を行う場合には、以下の判断によります。すなわち、「同社の許家印氏の政治的人脈によって、膨大な外貨準備高を保有する中国政府が手を緩める」ということです。

 

私は21年、ウォール・ストリート・ジャーナル紙やフォーブス誌など、米メディアのさまざまな評論を読みました。そのどれもが、「中国政府は中国恒大集団を救うべきで、必ず救わなければならない」という記事を載せてはいるものの、「中国政府が中国恒大集団の借入に信用保証を提供した」と言及しているものはありませんでした。

 

つまり、中国政府が中国恒大集団のために債務を償還することはないし、それは国際ルールに反してもいないのです。

 

中国不動産市場はもっと早くに破綻すべきだったのであり、私は09年に中国経済が転換する最後の機会だと指摘したことがあります。もし、あの時に痛みを忍んで中国が不動産市場をリーディング産業とするのをやめ、経済構造を再構築していたならば、中国経済の状況は現在よりずっと良くなっていたことでしょう。(続く)

 

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【関連記事】

2021年8月号 習近平は敗れるか? 経済と中国軍の弱点を見抜け

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自衛隊が南シナ海で日本版「航行の自由作戦」を実施、読売が報道 中国に遠慮したささやかなけん制にすぎない

2022年01月12日 05時58分17秒 | 日記

自衛隊が南シナ海で日本版「航行の自由作戦」を実施、読売が報道 中国に遠慮したささやかなけん制にすぎない

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画像:viper-zero / Shutterstock.com

《ニュース》

菅前政権下の2021年3月から複数回にわたり、海上自衛隊の護衛艦が、中国が領有権を主張する南シナ海の人工島や岩礁の近海を航行し、中国をけん制していたと、11日付読売新聞が報じています。

 

《詳細》

海自艦が航行したのは、昨年3月と8月の計2回。いずれも、中国が主張する「領海」の外側で、接続水域に当たる海岸から12~24カイリ(約22~44キロメートル)内でした。他国軍との訓練の行き帰りなどの際に実施され、当時の菅首相にも報告されていました。

 

「航行の自由作戦」とは、海洋に関する国際法に違反する国に対し、米軍が艦艇や軍機などを派遣して、違反する国の主張を黙認しないことを明示する活動です。米国防総省がこれを行い、国務省が外交的に抗議するという役割分担がなされています。

 

日本は、アメリカによる航行の自由作戦の実施を支持してきましたが、中国からの反発などを懸念して、参加を控えてきました。読売新聞は、今回の南シナ海航行について、日本版『航行の自由作戦』とも言える活動だと伝えています。