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木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

books178「同時通訳」松本道弘著(角川学芸ブックス)

2010年06月27日 21時34分46秒 | books
角川学芸ブックス 同時通訳
松本 道弘
角川学芸出版

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帯には
同時通訳のパイオニア・西山千を通して知る通訳の現場から、コミュニケーションの本質に迫る!
 達人が語る同時通訳の世界!

とあるように西山千さんを紹介することを通して同時通訳のなんたるかを語ろうという本です。
かなり個性の強い文章なのでちょっととっつきにくい感じですが、手話通訳を目指す人にもとても勉強になると思います。
<もくじ>
第1章 同時通訳とは
 同時通訳は翻訳マシーンではない
 日本の同時通訳の黎明期と主な通訳者
  「あなたは話す人の気持ちを全然意識していない。もし、その人の国を思う情熱とか、危機感が感じられないのだったら、通訳なんかやめてしまいなさい。」と体を震わせて叱るのです。(『通訳ブースから見る世界』原不二子著)

 同時通訳をディベートに結びつける小松達也
 同通業界はプロレスの世界か
 戦後日本での英語
 通訳の現場
 同時通訳は、「道」か「術」か
 通訳と翻訳
 通訳者はコンピューターではない。一つの言語を他の言語に、機械的に転換するのが役目ではない。言葉で埋めてはならない空間がある。それが遊びである。翻訳者でも遊びが必要、いわんや通訳者においてをやだ。「声に表情がない。」「スピーカーの顔を見て、通訳しなさい」と、即興性と非言語コミュニケーションのスキルを重んじられたのも、言葉とシンボルを繋ぐ、イメージ力を強調されていたのだ。

 同時通訳と逐次通訳
 同時通訳は瞬間芸
第2章 通訳者の心得
 同時通訳の8つのポイント
 通訳の真髄
 通訳者は語学力よりも情報力
 西山名人が女子大生に与えた忠告に「語学力」という概念は入っていない。あくまでも情報力と、常識である。コモンセンスは、単に人々が共有する情報ではなく、良識を含む知恵のことだ。気配りも資格のうちの一つだ。

 名人の口癖がある。You must understand first.
 (まず、よーく理解しなさい。)

 通訳者になぜ、速読とディベートが必要か。それは言語より情報だ。


 通訳者に必要な英語力
 通訳者に求められている英語力とは、まず受信能力ではないだろうか。一を聞いて十を知る。その語感は多読と多聴から生まれる。

 メモの取り方
 西山名人は、文章にすれば3ページになる内容でも1枚のスケッチにすればまとまるから、メモとは絵であるべきだと仰る。
 金山氏も同時通訳のプロであっただけに、メモを地図だと位置づけられておられ


 さまざまな名人たちの通訳に学ぶ
 「言葉を訳さず、ロジックを訳せ」

 同時通訳は女の世界
 「通訳よりまず、思考訓練が大切だ。自分の頭で考えることがなくて、人の頭の代弁ができるだろうか。」
 肯定的なのか否定的なのか、論理の流れを瞬時に捉え、うまく整理するディベート思考が要なのだ。


 難訳語
 異言語の化学的結合、これが物理的結合を重んじる他業者の教えとは決定的に違う。
 名人の口癖。「理解せずに、訳してはいけません。同時通訳者でも、"You must understand first." これを忘れてはいけません。理解できるまで待ちなさい。」


第3章 同時通訳者になる
 同時通訳者になる
 同時通訳けものみち
 「松本さん、いっしょにやりませんか?」
 アメリカ大使館入館
 入館後の学習
(逐次通訳には、思考する時間がある。)ところが、同時通訳となると、思考というプロセスが奪われるから、二つの言語、文化、思考過程を同時に使い分けなればならない。英語を話す時と、日本語話す時とでは、思考回路が違うのですよ、瞬間に切り替える時間が要るのです、というのが名人の口癖であった。同時通訳をするということは、二つの思考回路を自由自在に切り替える技術のことだ。」

 逐次通訳で学ぶ
 翻訳の達人
 日本一の同時通訳者を目指す
 「同時通訳日本一になって恩返しします。」
第4章 西山千に学ぶ同時通訳術
 通訳者とは?
 通訳の正確さと発言者の心得
 通訳者になるには
 通訳者の語学力
 通訳術の習得法とメモの取り方
 通訳者の落とし穴
 誤解とくいちがい
 通訳者のあるべき姿
第5章 西山千という通訳者
 出会い
 通訳者はどうあるべきか
 表の白州次郎と裏の西山千
 西山千の英語は音楽だ
 通訳者に必要な音感
 西山流コミュニケーション術
 スミマセンの意味
 罪か恥かを超越する眼
 二つの祖国を持つ名人の不幸
 西山千の言葉
第6章 現代の同時通訳
 IT時代の同時通訳者たち
 同時通訳とディベートは二卵性双生児
 新崎隆子を育てたのはディベート
 同時通訳者は本来一匹狼
 プロ通訳は自己責任
 翻訳とは何か
 名人・西山千の風姿
あとがき
西山千略歴
西山千の主な著書
西山千の主な翻訳書

books177「からたちの記」佐江衆一著(講談社文庫)

2010年06月23日 21時00分19秒 | books
からたちの記―女剣士道場日誌 (講談社文庫)
佐江 衆一
講談社

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久しぶりに佐江さんの本を読みました。
マイ・フェイバリット作家の佐江衆一さんです。
副題が「女剣士道場日誌」とあるように、里絵さんという女剣客が主人公のお話です。佐江さんの文章はホントに「清冽」な印象を受けます。
最初に佐江さんを知ったのは1985年1月31日の読売新聞 夕刊「文化」欄の『車内暴力を考える』という記事でした。
それ以来、そんな多作な方ではないので、たまに気がつくと著書を買い求めていますが、今回のお話は「剣の道を極める」というものでした。
そして、それが同時に「人生を極める」ことにつながっていながら、肩の力の抜けた「自然体」な感じでそこが佐江さんのとっても素敵なところです。
<裏表紙の解説>
東北の小藩、志津野藩の剣術指南役に嫁いだ女、里絵。江戸育ちの目に映る美しい山河の陰にも、御家騒動の芽はあった。世継ぎ争い、公儀の介入…。家中二派に分れた抗争の渦中に巻きこまれた夫と舅に仕えつつ、彼女は技を磨く。あたたかい心と確かな眼を得た女剣客の成長を描く清冽なロマン。


books176「ぐるりのこと」梨木香歩著(新潮文庫)

2010年06月17日 23時14分37秒 | books
ぐるりのこと (新潮文庫)
梨木 香歩
新潮社

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先日読んだ「西の魔女が死んだ」といっしょにブックオフで250円で買ってきましたが、自分としてはこちらのエッセイに強く惹かれました。
今、もう一度最初からじっくり読み直しています。
<もくじ>
向こう側とこちら側、そしてどちらでもない場所
境界を行き来する
隠れたい場所
風の巡る場所
大地へ
目的に向かう
群れの境界から
物語を

books175「通訳のジレンマ」水野真木子著(日本図書刊行会)

2010年06月13日 21時14分28秒 | books
通訳のジレンマ―通訳になりたい人と通訳を雇いたい人のためのコミュニケーション論
水野 真木子
日本図書刊行会

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以前、手話通訳士養成講座の受講生に対する「推薦書」をみんなで選んだときに私の尊敬するSさんが選ばれた本です。
実際に手話通訳を経験する中で理解できる部分もかなり多いので、通訳経験のない受講生にとってどこまで理解できるかどうかはちょっと未知数ですが、この本の副題にもあるように「通訳になりたい人と通訳を雇いたい人のためのコミュニケーション論」として手話通訳者を目指している方、また登録試験に合格され「これから手話通訳者として頑張るぞぉ~!」という方などに是非読んでいただきたい1冊です。
<もくじ>
第1章 インサイダーとアウトサイダーのジレンマ
 (1)業界用語は怖い
   「ホット ウォーターじゃないよ!」
   バナナに色を塗る?
   リングって何?
 (2)内部情報と通訳者
   そこは訳したら困るじゃないか!
   アリスって誰?
   たった200個?
 (3)不可解な話は通訳者のせいじゃない
   理解できなくてもかまいません
   悪いのは、通訳者? それとも…
 (4)法廷通訳事情
   聞き手不在?の法廷
   ホストかホステスか
 (5)困ったスピーカー
   発音も発言の一部です
   普通の英語、普通でない英語
   まとめのきかない同時通訳
   心のおもむくままに
   英語になる表現と、ならない表現
第2章 透明人間と解説者のジレンマ
 (1)「解釈する人」としての"interpreter"
 (2)個人の持つフィルター
   semantic picture(意味の映像)
    電話がないのに「電話盗聴器」
    ナイフはどうやって「当てられた」のか
   通訳者の思い込み
    "plain"と"plane"
    「ペトロール事件」
   意味を測る個人的尺度
    「お若いですね」
    「従業員の問題」とは
 (3)文化・社会のフィルター
   単語の意味のギャップ
    「石」と"rock"
    "succession"は「継続」か「継承」か
    「平行線」と"parallel"
    「煮る」と「焼く」
    「殺す」と「死なせてしまう」
   言葉のイメージのギャップ
    レモンちゃんはイヤなやつ
    「わが太陽」
    足を洗う
    ニンジンとムチ
    「僕、くやしい」
    キリッとした顔
   文章構造のギャップ
    「ママといっしょにいたいの」
    「そして、渡したのですね」
    "I am a cat"
第3章 人間と道具のジレンマ
 (1)通訳者はあくまでも媒体
   本当は知ってるのに
   話し手のうっかりミス
   一生を左右する言い間違い
 (2)目立ってはいけない通訳者
   通訳者が敬遠されるとき
   通訳者が誤訳すると
 (3)「一人とんで」の境遇
   SPと通訳者
   通訳者の食事は…?
 (4)自己表現の場はどこに
第4章 通訳者になりたい人へのアドバイス
 (1)技術を磨く
   「訳す」ことからの発想の転換
   「カン」を養う
    知識を増やす
    流れに乗る
    論旨の反映としてのメモ
 (2)精神を磨く
   動じない心
   柔軟な心
    思い込みをなくす
    自分の主義にこだわらない
    予想外の事態への対応
    聞き手の立場に立つ
   決して失わない「自分」
最終章 さまざまな通訳者、さまざまな人生
 (1)通訳ガイドから通訳者へ
 (2)通訳…緊張と充実の落差
 (3)司法通訳との出会い
 (4)大学非常勤講師、そして通訳論研究へ
 (5)さまざまな通訳者たち

books174「『こころ』はどこで壊れるか-精神医療の虚像と実像」滝川一廣&佐藤幹夫(洋泉社新書)

2010年06月13日 17時41分00秒 | books
「こころ」はどこで壊れるか―精神医療の虚像と実像 (新書y)
滝川 一廣,佐藤 幹夫
洋泉社

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久しぶりに「この人すごい!」と思う方に出会いました。滝川一廣さん。裏表紙の経歴を見たら姉貴の娘の通ってる大正大学の教授とのこと。彼女に確認したら「カウンセリング研究所」にいるかも・・って。「その先生の講演会あったら是非教えて!」と頼んだのですが、2009年からは学習院大学におられるようです。残念。
〔もくじ〕
序章 「こころ」とはなにか
 いま、なぜ「こころ」なのか
 私が精神科医になったわけ
 「こころ」とはなにか
 「こころ」は病むものなのか
第1章 「こころ」はどうとらえられてきたのか
 精神医療の内実はどこまで変わったか
 投げつけられる言葉
 病理はどう分類されてきたか
 気質と病質の問題
 「ボーダーライン」について(1)どのような概念なのか
 「ボーダーライン」について(2)その内実は
 「ボーダーライン」について(3)その治療は
 「人格障害」、このデリカシーのないネーミング
 時代と病態
第2章 DSMは「分類」のためのマニュアルにすぎない
 警察に行けば「非行」、病院へ行けば「行為障害」
 分類は「診断」ではない
 精神科医は「正常-異常」の線引きに、安易に加担しないでほしい
 「DSM」とはなにか
 「DSM」のカラクリ
 神戸・少年Aについて
 <境界例>を夫婦にたとえてみれば
 かつてわたしは「ADHD」(注意欠陥多動性障害)だった?
第3章 精神医療と犯罪
 精神鑑定の出発の理念について
 精神鑑定は濫用されていないか
 精神鑑定はどこまで信頼できるか
 レーガン大統領暗殺未遂事件
 精神鑑定の実際と作られるイメージ
 脳と犯罪に因果関係はあるか?
 再び「ADHD」について
第4章 発病と診断と治療をめぐって
 発病のきっかけは
 治療とはなにか
 相談と治療
 カウンセリングを実際に
 治療することと眠り
 腕のいい治療者の打率は?
第5章 思春期犯罪の神話はがし
 犯罪の語り手の変容-精神科医の仕事とはなにか?
 酒鬼薔薇事件について
 バスジャック事件と町沢発言について
 ナイフ少年や暴力少年を強制入院させたらそれでよいのか?
 少年の凶悪事件は増えているか?
 理由なき殺人、衝動殺人と言われるが
 過去の犯罪例から
 「キレやすさ」と動機について
 思春期のメンタリティと犯罪
第6章 思春期問題への家族論的アプローチ
 <性>と<食>-摂食障害の治療について
 摂食障害の心理的メカニズム
 食と家族
 葛藤や対立を共有するために
 彼女たちはなにに躓いているのか?
 二人関係の病-家庭内暴力について
 受け止めることと立ちはだかること
 男に引きこもりが多いわけ
 父親は<男>のモデルになりうるか
 引きこもりは日本の映し鏡?
終章 「こころ」はどこで壊れるか
 現代社会に特有のキツさ
 「こころ」のための処方箋?
 「こころ」はどこで壊れるか

books173「言葉ってなに?」影浦 峡著(現代企画室)

2010年06月13日 16時27分38秒 | books
子どもと話す 言葉ってなに?
影浦 峡
現代企画室

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先日、市民講座を聴いた影浦先生の本です。現代企画室の「子どもと話すシリーズ」の一つとして中高生を対象として「やさしく」書かれています。
例によって抜き書きします。
「小学校にあがるときくらいまでに生活の中で身につけた言語を生活言語とか一次言語とよび、それ以降の、読み書きもふくめてもっと意識的に身につける言語を学習言語とか二次言語とよんで、はっきり区別することもある」16P
「母語は規則を通して教わるものではない。そうじゃなくて、母語を身につけることが規則や約束を身につけることなんだ。」25P
「私は日本に来て10年以上になるけど、ここでしているような会話を日本語できちんとできるようになったのはこの3、4年くらい。それまでは、それなりの雑談はできたけど、社会や政治の話はけっこうむずかしかった。たとえばNGOで活動していると、打ち合わせのときだけじゃなくて、お酒を飲むときでも複雑な話が出てきたし。そういう話にもついて行けるようになったのは、じつは、日本語で本をたくさん読み始めてから。
だから、さっき言ってた生活言語と学習言語の違いみたいなものは、日常会話といってる会話の中にもあるんじゃないかしら。それで、いまここでしているような会話は、学習言語みたいなものに近くて、そういう会話の力をつけるためには、本を読むのがかなり大切だと思う。」29P

手話の場合は、書かれた「本」というものがないからやっぱ「DVD」とかビデオでいろんなろう者の手話の語りを「読む」っていうことがとっても大切なんだろうね。
「日常会話を流暢にしたいから会話中心に学習すればよい、というのは短絡的すぎるんだ。
人が言葉を話すときには、積極的知識と消極的知識というのがある。積極的知識というのは自分が使える範囲、消極的知識というのは他人が使ったときに自分が分かる範囲と考えればいい。この消極的知識がどのくらいあるかは、じつは、自分が積極的にどのくらい言葉を使えるかに大きく関係している。会話でぺらぺら話すというのは積極的知識だけど、その力をじゅうぶんつけるためにはちゃんとした基盤が必要になる。」
「表面の会話だけ練習するのを会話の学習っていうならば、それで会話がうまくできるようにはならない。」33P
「『ネイティブとの楽しい会話が大切』、『簡単な気持ちを表現するところから』っていうのは、何となくそれらしく聞こえるけど、それだけじゃやっていけないよね。」
「ふつうに日常会話と言っても、いまの世の中では、多くの場合、読み書きにかなり支えられているのは事実だから、読み書きをきちんと勉強するのは大切だということになる。」35P

ちょっとピントがずれてるかもしれないけど、聴者が手話を身につけていくには「ろう者と共通の話題」をたくさん持つようにすることがすごく大切な気がしています。例えば自分がどんなに音楽が好きでも、ろう者への自己紹介で「私は音楽が好きです」で終わっちゃったら、それでろう者との会話がはずむとはちょっと考えにくい。「私は洋画も好きです」ってことなら「最近、どんな映画見た?」って会話につながっていくし、日聴紙や県ろうあ協会の機関誌を読むのもそうした共通の会話の「知識」を持つことで、「ろう者の話題について行ける」背景知識を持つことにつながるのだと思います。
「欧州共同体では、複数言語主義という考え方を強調している。ネイティブのレベルを目指すよりも、さまざまな場で必要なコミュニケーションをそれなりに行えるように複数の言語をマスターすることを目標にするんだ。」43P
この一文を読んで感じたのだけれど、日本語対応手話あるいは中間型手話っていうのは、『複数言語主義』的な考え方に立てばそれなりに社会の中に「手話を認知」させるのに役立ったし、何よりも聴者が習得しやすいという大きなメリットがあったと思う。
その一方で手話通訳者に求められる「翻訳すべき対象としての言語」はやっぱり「日本手話」なんだと思う。手話通訳者は当然のことながら「ネイティブのレベル」を目指して勉強する必要があるのに、地域の手話奉仕員養成講座で教材とされているのが多くの場合「最低限必要な会話のできる中間型手話」であることが、県の養成講座を受講した受講生たちの戸惑い(地域で教わってきた「日常会話できる程度の手話」と、読み取り通訳しなければならないろう者にとっての「日常会話手話」のギャップの大きさ)につながっている気がする。
「ある言葉を自由に使うというのは、頭の中に、じゅうぶん豊かな数の単語と、それを組み合わせて自由に文を作り出す規則があって、それを使って、無限に文を作り出すことができるということ。」60P
「読み書きのポイントは、いくつかある。いろいろな単語を覚えて頭の中の辞書を強化することと、複雑な文法を使いこなせるようにすることが第一のポイントかな。第二は、会話だけだと場面や文脈が日常生活に限られてしまうけど、より多様な場面や状況を想像しながら言葉の使い方を身につけること。じつは、もうひとつある、これまでほかの人が書いたり話してくたことのうち、記録されてきた言い回しや表現になじむこと。だね。」62P

ちょっと話が飛躍しますが、全国ろうあ者大会に参加する意義の一つに、全日ろう連の幹部が今話題になっている様々な用語をどう手話表現するかを実際に目で見て確かめるということがあると思います。それが運動用語などの手話表現スタンダードになっていくと思うのです。特に今時の大会にはパソコン字幕が出るので、参加しているまわりの地方ろう者は字幕の日本語と幹部の手話表現を見比べて「ああやって表現するんだぁ~」と確認している様子が見受けられました。
それにしても「言葉ってなに?」といことを解き明かすのはとても難しいことなんですねぇ~。だから「手話ってなに?」「日本手話ってなに?」ってことがなかなか理解不能であることもやむを得ないわなぁ~などと妙に自分に免罪符を与える根拠にこの本をしてしまっている自分がいます。

books172「西の魔女が死んだ」梨木香歩著(新潮文庫)

2010年06月08日 23時36分39秒 | books
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
梨木 香歩
新潮社

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映画が見たくて先に原作を読んでしまった。
73ページ
「ありがたいことに、生まれつき意志の力が弱くても、少しずつ強くれますよ。少しずつ、長い時間をかけて、だんだんに強くしていけばね。生まれつき、体力のあまりない人でも、そうやって体力をつけていくようにね。最初は何も変わらないように思います。そしてだんだんに疑いの心や、怠け心、あきらめ、投げやりな気持ちが出てきます。それに打ち勝って、ただ黙々と続けるのです。そうして、もう永久に何も変わらないんじゃないかと思われるころ、ようやく、以前の自分とは違う自分を発見するような出来事が起こるでしょう。そしてまた、地道な努力を続ける、退屈な日々の連続で、また、ある日突然、今までの自分とはさらに違う違う自分を見つけることになる。それの繰り返しです。」
という一文が気に入りました。
手話もそんな感じがします。

books171「関東大震災」吉村昭(文春文庫)

2010年06月04日 22時29分33秒 | books
関東大震災 (文春文庫)
吉村 昭
文藝春秋

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映画「2012」を見て、この「関東大震災」を読んだら、たとえ一時的にせよ絶対防災意識がかなり高まると思います。
<もくじ>
「大地震は六十年ごとに起こる」
 1.群発地震
 2.今村説対大森説
地震発生-20万の死者
 3.大正12年9月1日
 4.激震地の災害
 5.東京の家屋倒壊
 6.本所被服廠跡・3万8千名の死者
 7.浅草区吉原公園・娼婦たちの死
 8.避難場所・上野公園
第二の悲劇-人心の錯乱
 9.”大津波””富士山爆発”流言の拡大
 10.朝鮮人来襲説
 11.自警団
 12.列車輸送
 13.新聞報道
 14.大杉栄事件
 15.大杉事件と軍法会議
復興へ
 16.死体処理
 17.バラック街
 18.犯罪の多発
 19.大森教授の死

books170「高熱隧道」吉村昭(新潮文庫)

2010年05月24日 23時16分49秒 | books
高熱隧道 (新潮文庫)
吉村 昭
新潮社

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黒部ダムシリーズ第3弾は、黒部第三発電所建設工事を描いた『高熱隧道(こうねつ ずいどう)』とても面白くてあっという間に読破。
「岩盤最高温度165度という高熱地帯に、トンネル(隧道)を掘鑿(くっさく)する難工事」「犠牲者は300余名を数えた」「トンネル貫通への情熱に取り憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威」
私はトンネル工事の難しさにも感心したが、それ以上に「予測のつかぬ大自然の猛威」に驚いた。泡(ほう)雪崩(なだれ)が5階建ての宿舎を一瞬で580メートル先の山の斜面に吹き飛ばし、70名を超える犠牲者が出たという話は俄には信じがたい気がして、私自身もしばし呆然という気持ちになりました。

books169「黒部の太陽」木本正次(信濃毎日新聞社)

2010年05月18日 22時38分51秒 | books
黒部の太陽
木本 正次
信濃毎日新聞社

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あの「クロヨン・ダム」を描いた「黒部の太陽」を読みました。ホントは石原裕次郎の映画を見たかったのですが、DVDを買おうとするとボックスセットしかなかったのでとりあえず原作を読みました。
とっても面白かったです。原作は昭和39年に書かれた新聞小説とのことですが、その前年に7年の歳月をかけて完成した黒部ダム建設工事の苦労を書かれたわけですから、当時はたいへんな注目を集めたのではないでしょうか。
当時の熱気がそのまま伝わってくるような文章で一気に読んでしまいました。