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木のつぶやき

主に手話やろう重複の仲間たちのこと、それと新聞記事や本から感じたことを書き込んでいきます。皆様よろしくお願いします。

「日本語-手話辞典」の改訂作業進む

2010年09月26日 22時42分04秒 | sign language
2010年9月22日付けの茨城新聞にこんな記事が・・。
わぁ~あの分厚くて重くて持ち運びにくいの改訂するんだ。
全面的にウェブに移行させたりはしないんだろうか?
あるいはiphoneソフトにするとか・・。
記事は辞書の改訂と「新しい手話」作りの議論がごっちゃに書かれている気がするし・・。
「懐が痛む」で数時間の議論ですか・・。まぁ「研究所」ですから、そういうもんなんでしょうねぇ。
でも、さすがにもうあのバカ高い辞書買う人、よっぽど「懐に余裕のある人」しかいないように思うのだけれど・・時代が大きくデフレに触れていること、またIT化が進行していることを認識されているのだろうか? それとも日立製作所の手話アニメーション・システムでやるのかな? でもあれもなんだかインストール面倒くさそうで、「裁判員手話」のデータ落とした切りになっています。日立製作所ももう少し小回りが利くとなぁ~。IT庶民には敷居が高い。
それと、医療用語の「インフルエンザ」はいいとして、「インターネット」は今さら「IT用語」とも言えないでは?せめて「ツイッター」とか「フェイスタイム」とかネェ。
私は「新しい手話」は「新語(新しく時代に登場した用語)」に限定しちゃってもいいんじゃないかと思う。かつ、「スピード」を重視して毎月日本手話研究所ホームページに掲載するような形が良いと思う。
「日本語-手話辞典」の紙ベースの改訂版は、全日ろう連の出版事業赤字につながるのでは?・・・なんて余計なお世話でした。
でもウィ・ラブ・パンフの利益は何に使うんだ?って声が上がってる中で、こういう記事はいかがなもんでしょうか?などと要らぬ心配をしてしまいました。
手話辞典、十数年ぶりに大改訂
「懐が痛む」どう表現?/手話辞典、新語も登場


 全国で約120万人が使用していると言われる手話。年々新しい単語が生まれる一方で、日本語特有の微妙なニュアンスの表現に迷うケースも多い。誰もが理解し、使える手話を目指し、十数年ぶりに大掛かりな辞典の改訂作業が進んでいる。
 ▽例文入り
 「胸を指さした後、手のひらを揺らし『痛い』とやったらどうか」
 「それだと『胸が痛い』になっちゃう」
 京都市右京区の研修施設。大学教授や特別支援学校の元教師らが会議室で、手の動きを交えながら意見を交わす。
 テーマは「懐が痛む」。「いっそのこと、お金を捨てるしぐさにしようか」。議論が数時間に及んでも、結論はなかなか出ない。

 集まったのは教材づくりなどを手掛ける「日本手話研究所」(京都市)の検討メンバー。「実際の会話で役立つように」と世界で初めて単語と例文を並べて掲載し、1997年に編さんした「日本語―手話辞典」の改訂作業を進めている。

 「懐が痛む」は「手持ちのお金が少なくなる」という意味だが、「出費がかさんで苦しい」とのニュアンスも含む。辞典を監修する米川明彦(よねかわ・あきひこ)梅花女子大教授(55)は「単語をつなげただけでは、全然違う意味に取られることがある」と一筋縄ではいかない難しさを打ち明ける。

 ▽IT、医療用語も
 手話の起源は定かではないが、聴覚障害者が身ぶり手ぶりで“会話”していたものがそのまま定着したり、学校教育用に人工的につくられたり、いくつかのパターンがあるとされる。国によって言語が異なるように、手話の形も国や地域によってさまざまだ。
 日本では1878年に手話を使って授業を行う「京都盲唖院」を設立。その後聴覚障害者の団体や手話サークルが各地にできた。
 1969年に全日本ろうあ連盟(東京)が国内で初めて全国共通の手話表現をまとめた単語辞典「わたしたちの手話」を発刊。しかし「飲む・のむ」のように「酒を飲む」「薬を飲む」「息をのむ」など用例が多岐にわたる単語では、使い方に戸惑うことがあった。

 日本手話研究所が手掛ける改訂版は来春に発刊される。掲載数は97年版より約2割増え、約6千の単語と1万以上の例文になる予定。「インターネット」(左手で握りこぶしをつくり、小指を立てた右手で周りを1周させる)、「インフルエンザ」(小指を立てた右手を口に当て、せきをする)など、ITや医療の専門用語も加える。

 欧米では多くの企業や行政機関が専門の手話通訳者を置いているが、日本は限られたボランティアなどに頼っているのが実情。同研究所長で、自身も聴覚障害のある高田英一(たかだ・えいいち)さん(77)は「辞典を通じて手話を身近に感じ、勉強する人が増えてほしい」と期待を込める。
(共同通信社)

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その14)

2010年09月20日 16時07分59秒 | sign language
いま、なぜ「ウィ・ラブ・コミュニケーション」運動なのか?
(財)全日本ろうあ連盟 事務局長の久松三二さんのお話しを振り返りながら考えてきました。
これから「ウィ・ラブ」パンフを普及するときに、どんな風に呼びかけたら良いのでしょうか?
合い言葉は
「情報・コミュニケーションは生きる権利」
ということになるのかな。
久松さんは、キーワードとして
①コミュニケーション
②手話は言語
③差別と合理的配慮

の3つを挙げられました。
①は、様々な福祉サービス等をコミュニケーションのバリアなく受けられる環境を整備するという署名の第3項目に相当するのでしょうか。
②は、障害者基本法や新たな「障がい者差別禁止法」において「言語」や「コミュニケーション」「情報」の定義を明記するという署名の第1項目に相当するでしょう。
そして署名運動では第2項目として「情報・コミュニケーション法」(仮称)を創設することをうたっています。
今回の運動の難しさは、「手話を言語として障害者基本法や新たな『障がい者差別禁止法』『障がい者総合福祉法』で位置づけてください。」とだけではいかない点かもしれません。
盲ろう者や中途失聴・難聴者と共に運動を進めて行くための共通の言葉は「コミュニケーション・情報」という抽象的な言い方になってしまうところが難しいですね。
最後にもう一度、署名内容を転記しておきたいと思います。
【要望項目】
1.手話を「言語」として定義することをはじめ、障害者基本法障害者差別禁止法において「言語」、「コミュニケーション」、「情報」についての定義、権利規定を明記し、聴覚障害者の基本的人権として、社会のあらゆる場面で情報とコミュニケーションを保障する法整備をおこなってください。

2.法整備にあたっては、障害者の情報・コミュニケーション施策の基本となる「情報・コミュニケーション法(仮称)」を創設してください。

3.障害者自立支援法に代わる新しい「総合福祉法(仮称)」の制定において、障害の程度によらず、すべての聴覚障害者が必要とする福祉サービス、相談支援、当事者支援事業をコミュニケーションのバリアなく受けられる環境を整備してください。

これらの要望点をもっと一般市民にわかりやすい、優しい言葉で言い換える必要があると強く思っています。

最後にこのような勉強の機会を与えてくださった東京都手話通訳問題研究会と講師の久松三二さんに深く感謝の意を表したいと思います。たいへんありがとうございました。

ここで学んだことを地元のウィラブ運動に生かしたいと思います。

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その13)

2010年09月20日 15時15分44秒 | sign language
「We Love コミュニケーション」運動の理解のための久松さんのお話も大詰め。最後は
「情報・コミュニケーション法と障がい者総合福祉法について」でした。

私も今回の署名活動の2点目「情報・コミュニケーション法を創設して下さい。」という要望は、具体的にどんな法律を求めているのかが今ひとつピンと来ません。
このレジュメには
1.情報・コミュニケーション法(仮称)
(1)全ての聴覚障害者(ろう者、中途失聴者・難聴者、盲ろう者等の重複障害者)が求める言語とコミュニケーションによる支援を保障する法律
 ①手話通訳者の養成、国家資格化、専門職としての設置、地域格差のない派遣制度
 ②要約筆記者の養成・認定制度、地域格差のない派遣制度
 ③盲ろう者向け通訳・介助者の養成・認定制度、地域格差のない派遣制度

(2)聴覚障害者(ろう者、中途失聴者・難聴者、盲ろう者等の重複障害者)が、手話、文字、光、振動等、聴覚以外の方法で情報や公共施設、交通機関等にアクセスするための法律

(3)情報アクセス、交通、放送、公共機関、ホテル・旅館、教育、職場、病院、政治参加、司法等


2.障がい者総合福祉法(仮称)
では、
(1)聴覚障害者の特性を理解し、その求める言語とコミュニケーションで直接、相談支援する制度。
(2)コミュニケーションのバリアなく必要な福祉サービスを受けられる仕組み
(3)聴覚障害者情報提供施設を核として、入所施設、通所施設等の社会資源の整備
(4)聴覚障害者のエンパワメントに関する事業等

 私なりの理解としては、
 今の地域生活支援事業の①相談・支援、②福祉サービス(これは自立支援給付かな?)、③情報提供施設、④エンパワメントに関する事業については、障害者自立支援法に代わる障がい者総合福祉法で規定し、
 地域生活支援事業の中でも⑤コミュニケーション支援事業だけを旧自立支援法から切り離して新しい「情報・コミュニケーション法」を創設して欲しいという考え方であるように感じました。

 かなり乱暴に切り分けると手話(通訳)がサービスの手段の一つ(一部)でしかないものは障がい者総合福祉法で、手話通訳自体(そのもの)がサービスとなるものは新たな「情報・コミュニケーション法」で、というような考え方なのでしょうか。
 ホントは質問したかったのですが、東京都の企画だったので遠慮してしまいました。

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その12)

2010年09月20日 14時21分36秒 | sign language
久松さんの講演も後半に入ってきて、どうも居眠りしていたわけではないのですが、いまひとつメモが少なくなってきて再現性が低くなってきています。仕方がないので、取りあえずレジュメを丸写ししておきます。
次のテーマは
「障害者自立支援法の問題~コミュニケーション支援~」
1.障害者自立支援法は、個別に福祉サービスを提供するための法律。サービスを受ける障害者に一定の負担を求める仕組み。
2.コミュニケーションは、「お互い」に話し合うもの。聴覚障害者と手話を知らない健聴者を支援するサービスを聴覚障害者だけが負担することは容認できない。
3.コミュニケーション支援は、聴覚障害者が健聴者中心の社会から排除されないための基本的人権
4.コミュニケーション支援事業は、利用者に利用料負担を求めないことを運動の中心テーマとして取り組んだが、一部に有料化の地域がある。
5.障害者自立支援法の地域生活支援事業は総合補助金。コミュニケーション支援関係の事業に使える予算の地域格差が大きい。
6.市町村がサービスの主体。市町村を越える社会生活・社会行動には対応が難しい。
7.都道府県派遣事業の廃止、広域派遣ができない。派遣範囲、回数等に制限がある。手話通訳設置が増えない。手話通訳者養成の講師不足と負担が増加。
8.総合補助金から義務経費に変えることを要求。都道府県派遣事業を必須事業とする。手話奉仕員と手話通訳者養成事業の必須化も要求。

このあと、「手話通訳者派遣事業の実施状況【都道府県別】」のグラフが示された。実施率は74.1%とのこと。

しかし、手話通訳者設置事業の実施状況【都道府県別】」となるとぐっと実施率が下がって27.6%に過ぎない。東京都でさえ平均以下となる。

 これだけ都道府県によって格差があると、今後の手話通訳制度の問題を考えていく上でもなかなか議論がまとまりにくいのではないかと思う。
 設置の実態を都道府県別の〔設置+派遣〕の予算額で比較したらもっと問題点がはっきりするだろう。

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その11)

2010年09月20日 10時50分44秒 | sign language
久松さんのレジュメは、このあと
障がい者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」
の説明に進みました。
 このあたりはどうもあんまり覚えていないので、取りあえずレジュメを転記しておきます。
「1.基礎的な課題に対する改革の方向性」
(1)地域で暮らす権利の保護とインクルーシブな社会の構築
(2)障害の捉え方
(3)障害の定義
(4)差別の定義
(5)言語・コミュニケーションの保障
(6)虐待のない社会づくり
(7)障害の表記
(8)障害者及び家族の実態調査
【ろうあ団体の主張】
→言語・コミュニケーションの保障を!
 これまで、手話、点字、要約筆記、指点字等を含めた多様な言語の選択やコミュニケーションの手段を保障することの重要性及び必要性は省みられることが少なかったため、それらの明確な定義を伴う法制度が求められる。

「2.基本的考え方」
(1)「権利の主体」である社会の一員
(2)「差別」のない社会づくり
(3)「社会モデル」的観点からの新たな位置づけ
(4)「地域社会」を可能とするための支援
(5)「共生社会」の実現
「3.個別分野における基本的方向と今後の進め方」
(1)労働及び雇用
(2)教育(インクルーシブ)
○障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。
○手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る。
(3)所得保障等
(4)医療
(5)障害児支援
(6)虐待防止
(7)建物利用・交通アクセス
(8)情報アクセス・コミュニケーション保障
○障害の特性に配慮した方法による情報提供が行われるよう、関係府省が連携し、技術的・経済的な実現可能性を踏まえた上で、必要な環境整備の在り方について、障害当事者の参画も得つつ検討し、平成24 年内にその結論を得る。
○放送事業者における現状の対応状況、取組の拡充に係る課題等を踏まえ、平成22 年度内に、災害に関する緊急情報等の提供について、放送事業者に対する働きかけ等の措置を検討する。
○国・地方公共団体による災害時の緊急連絡について、あらゆる障害の特性に対応した伝達手段が確保されるための具体的な方策の在り方について検討し、平成24 年内にその結論を得る。
【ろうあ団体の主張】
→国及び地方公共団体は、障害者が選択するコミュニケーション手段を使用することができるよう必要な施策を講じなければならない。
 ①情報バリアフリーの取り組み
 ②災害時における緊急情報等の提供

(9)政治参加
○障害者が選挙情報等に容易にアクセスできるよう、点字及び音声による「選挙のお知らせ版」について、今年執行予定の参議院選挙において全都道府県での配布を目指す。政見放送への字幕・手話の付与等については、関係機関と早急に検討を進め、平成22年度内にその結論を得る。
○投票所への困難なアクセスや投票所の物理的バリア等を除去するための具体的方策として、投票所への移動が困難な選挙人の投票機会の確保に十分配慮するとともに、今年執行予定の参議院選挙において、投票所入り口の段差解消割合が100%(人的介助を含む。)となるよう、市町村選挙管理委員会の取組を促す。
(10)司法手続き
○刑事訴訟手続において、あらゆる障害の特性に応じた配慮がされるための具体的方策について検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。
○司法関係者(警察官及び刑務官を含む。)に対する障害に関する理解を深める研修について、障害者関係団体の協力を得つつ、その一層の充実を図る。
(11)国際協力
「4.横断的課題における改革の基本的方向性」
 1-①.「障害者基本法」の抜本的改正
      (H23年に法案提出をめざす)
 1-②.改革集中期間における推進体制
 2.  「障害を理由とする差別の禁止法」(仮称)等の制定
      (H25年に法案提出をめざす)
 3.  「障害者総合福祉法」(仮称)の制定
      (H24年に法案提出、25年8月までの施行をめざす)

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その10)

2010年09月20日 10時24分45秒 | sign language
障がい者制度改革推進会議を契機に始まったもう一つの検討の場が、
総務省の
障がい者に係る投票環境向上に関する検討会
です。
久松さんのレジュメによれば
1.総務省自治行政局選挙部管理課長の主宰による検討会
2.検討内容
(1)第1検討チーム;政見放送への字幕及び手話通訳の付与
(2)第2検討チーム;点字及び音声による選挙情報の提供
(3)第3検討チーム;投票所へのバリアフリーなどの投票環境の改善
3.ろうあ連盟からの委員;松本正志理事
 その他;士協会、全難聴、内閣府、NHK、民放連、
 オブザーバー;全通研
4.毎月一回開催、年度内に意見をまとめる。(総務省会議室)

とのこと。
 久松さんは「なんで全通研が含まれないのか自分としては不満。士協会の代わりに全通研に参加してもらいたいくらい。交渉してやっとオブザーバー参加が認められた。」とおっしゃっていました。政見放送の手話通訳配置問題を通じて、日本手話通訳士協会はずっと総務省との交渉窓口があったから自然に士協会に声がかかったということだと思いますが、久松さんとしてはご不満だったようです。
 このあたりに全通研という団体の性質の難しさがあると思います。全通研は障害当事者でもなければ手話通訳「者」の専門家集団でもないので、「どういう立場から参加してもらうか」についての意味づけが難しいと思うのです。「政見放送」の手話通訳を基本的に「手話通訳士」が担っている以上、士協会を委員に含めるのは私は当然の流れだと思います。
 ただ、その政見放送への手話通訳挿入を実現したのは全日本ろうあ連盟と全通研という二つの運動団体なわけですから、全通研も委員にという久松さんの考えも自然なことだと思います。
 全通研は法人化にあたり定款に目的として
「(目的)
第5条 本会は、手話及び手話通訳、ならびに聴覚障害者問題についての学習・研究活動を行い、手話にかかわる人々の組織化を図るとともに、財団法人全日本ろうあ連盟の運動をはじめとする聴覚障害者運動と連帯し、もって聴覚障害者福祉と手話通訳者の社会的地位の向上をめざすことを目的とする。」

 としていますので、「聴覚障害者福祉と手話通訳者の社会的地位の向上をめざす」という意味で「投票環境向上」のための委員の資格が十分にあるのではないかと思います。

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その9)

2010年09月20日 09時14分53秒 | sign language
 久松さんの講演は続きます。
 「その3」で書いたように障がい者制度改革推進会議が6月に第一次意見書を出したことによって、各省庁も具体的に動き始めています。
 その一つが文部科学省に設置された
特別支援教育のあり方に関する特別委員会です。
 すでに3回の会合が開かれていますね。
 久松さんのお話では、
1.委員会メンバーは27名
 (障害者3名;乙武洋匡さん、石川准さん(視覚障害)、久松さん)
 (その他制度改革推進会議構成員;大久保さん(手をつなぐ育成会・知的障害団体)、清原さん(三鷹市長))
2.全日本ろうあ連盟からの委員は、久松三二さん
3.毎月一回開催、12月まで(文科省講堂)
4.2010年12月までに意見をまとめる
 とのこと。
 この委員会は知的障害や発達障害関連が中心で、教育の専門家ではない久松さんは影響力がない、受け身になってしまう、軽く見られてしまうとおっしゃってました。
 しかも障害者権利条約では「インクルーシブ教育」が標榜されているので、ろうあ団体が要望している『ろう学校のあり方』とか、『ろう学校教員の問題』などは、議論になりにくいようです。確かに「どの子も地域の普通学校へ」っていう流れの中では厳しいモノがありますねぇ。
【主な議題】
1.総論
2.就学相談、就学先決定のあり方及び必要な制度改革について
3.2.の制度改革の実施に必要な体制・環境整備について
4.障害のある幼児児童生徒の特性・ニーズに応じた教育・支援のための教職員の確保及び専門性の向上のための方策
5.その他関連事項(進路指導、職業教育・就労支援)

 私は情報を持たないのですが、ろう教育を専門とするろうの大学教授(准教授)っていうと誰になるんでしょうか? すぐに名前が出てこないですねぇ~確かに。筑波技術大学の大杉さんは?
 大杉さんの専門を調べようと思ったらこんな面白いサイトがありました。
 あの人検索スパイシー
 http://spysee.jp/%E5%A4%A7%E6%9D%89%E8%B1%8A/1058828/
 「大杉豊の相関図」、面白いですねぇ~。
 この中で教育関係っていうと森壮也さん?・・私的には筑波大学の末森明夫さんなどいいと思うんですけどねぇ~。筑波大学付属ろう学校(筑波大学附属聴覚特別支援学校)には、こうした会議の委員に適任なろう教師はおられないんでしょうか?

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その8)

2010年09月20日 00時05分12秒 | sign language
2.総合福祉部会について
やっとレジュメの1枚目裏に移るのですが、内閣府の「障がい者制度改革推進会議」の下に厚生労働省に「障がい者制度改革推進会議 総合福祉部会」が設置されました。
こっちはメンバーが55名もいるため進行・取りまとめも難しいようです。ろう者関連では、(財)全日本ろうあ連盟の教育対策部長の西滝憲彦さん(大阪)が委員として出席され意見を提出さているとのことでした。
【開催状況】
第1回10/04/27 * 部会の運営等について
        * 障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要な対策について
第2回10/05/18 * 障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要な対策について
第3回10/06/01 * 障がい者総合福祉法(仮称)の実施以前に早急に対応を要する課題の整理(当面の課題)(素案)について
第4回10/06/22 * 障がい者総合福祉法(仮称)制定に向けた論点整理
第5回10/07/27 *「障害者総合福祉法」(仮称)の論点について(法の理念・目的・範囲、障害の範囲、「選択と決定」(支給決定))
第6回10/08/31 * 「障害者総合福祉法」(仮称)の論点について(支援(サービス)体系、地域移行、地域生活の資源整備)
第7回10/09/21 * 「障害者総合福祉法」(仮称)の論点について(利用者負担、報酬や人材確保等、その他)

 以上のように「障害者自立支援法」に代わる新しい「障害者総合福祉法」についての議論が進められているようです。久松さんのレジュメでは「来年度(平成23年度)中に総合福祉法案を国会に提出する」とのこと。
 ちなみに第18回障がい者制度改革推進会議に提出された「資料1 推進会議と部会等の進め方関連資料」では、以下のようになっています。
【総合福祉部会2010年から2011年活動スケジュール(案)】

 これを見ると
(1)2010年6~9月の4 回(6 月22 日、7 月27 日、8 月31 日、9 月21 日)⇒新法の論点についての共通理解を委員間で深める
(2)2010年10~12月の3 回⇒第1期作業チームによる検討案についての情報共有と合意形成
 ①法の理念・目的
 ②障害の範囲と選択と決定
 ③支援体系
(3)2011年1月~3月の3回⇒第2期作業チームによる検討案についての情報共有と合意形成
 ①地域移行
 ②地域生活資源整備
 ③利用者負担
 ④報酬体系 等
(4)2011年4月~7月の4回⇒新法の骨格整理を行う
(5)2011年8月⇒新法の骨格提言

 となっています。
 この中に聴覚障害者の求める制度内容を盛り込んで行くため「We Love コミュニケーション」パンフなんですねぇ~。きわめて短期勝負、っていうか、実質10月からパンフ普及開始して、はがきが戻って来て、署名と一緒に集約して、「こんな国民の声があります!」って集約して、推進会議に提出って、ホントに間に合うのか?という不安も感じます。
 2011年4月からの『新法の骨格整理』じゃ遅すぎるから、「年内にどこまでやれるか」っていうスピードが求められる気がします。10月~12月の3ヶ月が勝負ですな!
 スケジュールの切迫性を訴えて短期間で運動を盛り上げるっていうのはアリじゃないでしょうか。

【参考】
障がい者制度改革推進会議総合福祉部会意見書
提出委員名:西滝憲彦(財団法人全日本ろうあ連盟)
障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要な対策について
1.利用者負担について
①基本的には、障害者本人のみの所得に応じた負担の仕組みに変えるべきです。障害基礎年金のみが収入の障害者にとっては、年金から負担金を徴収されることは苦しいものがあり、無料にするべきと考えます。
②地域生活支援事業におけるコミュニケーション支援事業においては、利用者に負担を求めないことを法律に明記して下さい。また、利用者負担を導入する地域に対し、早急に取りやめるように働きかけて下さい。
<病院、学校等、聴覚障害者と健聴者とのコミュニケーションを支援(保障)する当該事業は手話を言語とする聴覚障害者と音声言語をもつ健聴者との間の双方のコミュニケーションを円滑にするためのものであり、応益・応能に係わらず利用者負担はなじみません。
 また、私たちは手話が音声言語と対等の扱いをされるよう、社会的・法的な認知および手話通訳が権利として保障されることを強く求めています。手話通訳派遣事業は基本的人権として全額公費で保障することが必要です。>

2.都道府県事業にコミュニケーション支援事業を必須事業として組み入れて下さい。
・コミュニケーション支援事業が市町村実施の事業であるため、市外への手話通訳・要約筆記派遣が認められないという問題が生じています。
・県全域から集まる聴覚障害当事者団体の会議・研修・行事等の活動についてもコミュニケーション支援事業が必要です。
・司法・医療・相談支援等の専門性の高い手話通訳・要約筆記等のニーズは市町村では対応できません。市町村や都道府県の区域を超えた手話通訳者、要約筆記者の派遣などが必要になることもあります。
・上記のように、市町村単位の事業では対応が困難であり、負担が必要とされることがあります。
<これに対応するため、各都道府県単位で、全市町村の登録手話通訳者の相互派遣のネットワークの構築と、全都道府県間での、登録手話通訳者の相互派遣のネットワークを構築する必要があります。また、聴覚障害者及び聴覚障害当事者団体の負担がないよう、市町村代行事
業としてではなく、都道府県コミュニケーション支援事業を必須事業として実施して下さい。>

3.市町村・都道府県の手話通訳設置事業、コミュニケーション支援事業、それに係る手話通訳者養成・研修事業等の人材確保のための事業を含めたコミュニケーション関連事業全てを義務事業とし、それにかかる予算を確保して下さい。
・都道府県・市町村の裁量事業であることから、その財政事情によって市町村ごとに事業実施の有無、事業内容(派遣と養成の回数・時間、派遣項目等の制限)に格差が生じています。
・コミュニケーションを保障する当該事業は、福祉サービスを受ける前提となる事業です。この基幹事業が市町村によって実施に格差が生じることのないよう、事業の実施を義務化し、実施するための予算を確保してください。
・地域生活支援事業(市町村)の必須事業である「コミュニケーション支援事業」は、手話通訳設置事業、手話通訳者派遣事業、要約筆記者派遣事業の3事業が一つの括りとなっており、市町村としては3事業の中の1事業を実施していれば、コミュニケーション支援事業は実施したとカウントされます。
 しかし、手話通訳者派遣事業のみで要約筆記者派遣事業がなければ、難聴者あるいは中途失聴者への情報・コミュニケーション保障は成立しません。
 また、手話通訳設置事業は県庁・市町村等公的機関に手話通訳者を設置する事業です。福祉課や福祉事務所で相談・書類申請等するときに、ろう者が手話通訳者を依頼し同行するのではなく、いつでも県庁・市町村役場等に設置された手話通訳者によりコミュニケーションが保障される必要があります。それが県民・市民サービスの前提です。また、派遣事業と連携して実施する必要性があります。
 手話通訳設置事業、手話通訳者派遣事業、要約筆記者派遣事業の3事業は市町村が実施を選択するようなものではありません。3事業それぞれを義務事業とすべきであり、全自治体で実施するように働きかけて下さい。
・手話通訳養成事業(入門課程~基礎課程)は、全市町村で実施すること、手話通訳者養成事業(基本課程~実践課程、及び研修事業)は全都道府県で実施するようにして下さい。

4.障害程度区分の抜本的な見直し
 ろう重複障害者及び盲重複障害者については、他の身体障害者とは全く違った支援特性があります。聴覚障害者本人の意思を尊重し、その障害特性、生活実態、コミュニケーション環境の実態などがきちんと反映されて、必要なサービスが受けられるよう抜本的な見直しが必要です。障害当事者及びろう重複障害者施設・盲重複障害者施設の実態調査と意見を十分に踏まえて進めて下さい。

5.相談支援体制の強化
 聴覚障害者と同じ言語・コミュニケーション手段を持ち、聴覚障害の特性、生活実態、社会的背景等を理解している者を設置し、専門的に相談支援できる体制を確立することが必要です。相談支援事業は、自立支援法で規定するサービス利用の出発点ですが、相談支援事業を実施する窓口には手話によるコミュニケーション保障する制度がありません。
 現在は、国の制度によらない自治体独自の事業による「ろうあ者相談員」や聴覚障害者情報提供施設の職員等が極めて不十分な条件の中で関わっています。
 聴覚障害者を手話、筆談等により専門的に相談対応・支援できる者、または手話通訳士(者)を配置し、聴覚障害者への相談支援が十分に適切に行われるようにすることが必要です。
・ろうあ者相談員を国の制度として創設し、相談支援事業に位置づけること。
・聴覚障害者情報提供施設が都道府県レベルの「相談支援センター」を担う位置づけとし、そこに聴覚障害者の相談支援事業を行える専門的知識を有する相談員を設置すること。及び、聴覚障害者情報提供施設の運営費補助金に、相談支援にかかる人件費の加算を行うこと。
・市町村すべてに聴覚障害者に対し専門的に相談対応・支援出来るよう、資格を持つ手話通訳(士)者を配置すること。

6.ろう重複障害者に配慮したグループホーム、ケアホームなど社会資源が絶対的に不足しています。ろう重複障害者のための施策づくりが必要です。
 また、現在、ろう重複障害者のための施設が33 箇所設置されていますが、どこの施設も赤字におびえながら運営しております。施設に入所した障害者が自己負担する経費もあり、定員割れに苦しんでいる状態があります。安定した施設経営ができるよう施設運営への補助金などについて抜本的な改正を求めます。
(1) 有期限事業(就労移行・自立訓練事業)終了後の、施設体系の移行の際には障害福祉計画による数量制限について柔軟な取扱をしてください。
 就労移行支援事業などの有期限の事業について、期限終了後一般就労できなかった利用者の行き場について考える必要があります。又、新規利用者の予測及び、定員の確保の目途が立たないため、就労移行事業の定員を減らして、就労継続B型や入所支援などの事業を選択するケースが多く出てくると思われます。しかし現在の規定では、都道府県の障害福祉計画によっては事業所指定を認めないことができるとなっています。有期限事業が定員変更して移行する場合はこの規定から外すなどの対策を早急にしてください。
(2) 日中活動のみの通所事業所にも入院時支援加算を算定してください
 現在施設入所支援・グループホーム・ケアホームなどに利用者の入院時の支援に対する加算制度がありますが、日中活動のみの事業所は対象となっていません。
 通所施設の利用者が必ず家族などの支援が受けられる訳ではなく、障害者のみの単身世帯、障害者同士の夫婦世帯、家族と同居していても両親が高齢な家庭など様々な理由で家族の支援が受けられず、通所事業所が入院時の様々な支援をしているケースが多くあります。
 また、聴覚障害のため通訳などの支援が必要な利用者の中にはで家族がいても通所施設職員が病院に同行し通訳などの支援を行っています。また、利用者の入院時については、コミュニケーション支援事業では臨機応変な対応できないことや、利用者本人を良く知った支援者でないと充分な支援が行えないこともあり、日割りで報酬が算定されませんが通所施設職員が支援を行っているケースが多くあります。
 早期に日中活動のみの事業所にも通院支援を行った時には入院時支援加算を算定してください。
(3) 入院時の付添い費用や個室利用に対する助成制度を創設してください。
 重度重複聴覚障害者が入院した場合、常時、生活支援、コミュニケーション支援が必要とされ、病院から付き添いを条件に入院が許可されることが非常に多くなっています。
 また、音に対する認識がないことから同室者とトラブルになるケースが多く、個室利用を余儀なくされることが多い状況です。
 また、全国的にろう重複障害者施設数が尐ないことから、遠方からの利用者が多く、家族に付き添いを求めることが困難となることがほとんどです。
 このような理由により、付き添いや個室利用の費用負担が預貯金の少ない利用者にとってはさらなる負担を課すこととなります。
 したがって、付き添い費用や個室利用についての補助制度の創設をしてください。

10(7?).障害福祉サービス等に係る報酬・基準改定について
(1) 「生活介護」「施設入所支援」等の報酬が定員区分によって単価が変わることのない様、一律となるよう見直しをしてください。
①利用定員が大きくなると報酬単価が安くなる
②障害者(ろう重複障害者)の多様な福祉ニ-ズに答え必要な事業拡大を行ってきました。今後もろう重複障害者に対して専門的な援助実践が可能となるような事業を積極的に拡大したいと考えているが、事業を拡大すれば逆に報酬単価が下がり経営が厳しくなる状況では、新たな事業は推進できません。
(2) 「施設入所支援」についての夜間、土・日曜日の職員配置基準を明確にすると同時に必要な職員が配置できる報酬単価の大幅な引き上げを行ってください。
①施設利用者のGH・CH等への地域移行が進む中で、利用者の重度化と高齢化が顕著になってきました。同時に、利用者同士の相互協力や集団力が低下し職員と利用者間のマンツ-マンの援助場面が増えてきました。
②平日の日中活動場面だけでなく、夜間、土・日曜日の暮らしの場面において、現状の配置基準や報酬では必要な職員が配置できず、安全確保と命を守ることすらできない状況です。余暇活動の実施を含め暮らしの場と言えるものとは程遠いのが実態です。
③利用者の高齢化と同時に必然的に親の高齢化が進み、緊急の際などに家族の協力が期待できないのが現状です。親・家族の協力が得られない重度の利用者が入院した場合、当然病院から24 時間の付添が入院受け入れの条件として出されます。現状の職員配置では、一泊すら職員が付けない状況です。
(3) GH・CHの「小規模加算」「夜間支援体制加算」を、利用者の安全確保のため、平成22年度以後も引き続き実施してください。
①平成20 年度までの経過措置とされている加算を継続してください。
②現在、上記の補助金額はGH(CH)運営費全体の約15%以上を占めています。もし廃止されれば存続の危機に直面します。
③上記の補助金が実施されている現状であっても、人件費が安価であるため世話人の確保、ましてや正規採用・夜間配置が困難です。増設による施設利用者の地域移行を進めたくてもできません。(自立支援法に掲げている地域移行を進めることが不可能)
(4) 「施設入所支援」「GH・CH」の暮らしの場についての国の考え方を明確にし、必要と考えられる職員配置基準を明確にしてください。併せて、家族や後見人のいない利用者について、最終的に誰が責任を持つのか(権利保障・擁護等)を明らかにしてください。
①現状の「成年後見人制度」では、財産の管理・契約時の立会い等の範囲で終始しているのが現状です。
②今後、暮らしの場、特に「施設入所支援」の事業を利用する利用者は重度化し、事業所の役割と責任、専門性はますます重くなるのは必至です。
(5) 平成20 年度までの経過措置とされている報酬の「90%保障」については、22 年度以降も継続されるよう切に要望します。
①現状の定員区分による報酬額の分類や単価の低さのために、現状のままでの移行は20%以上の減収が予測され施設の存続ができません。
(6) 児童デイサービスⅡ型について
①現在、児童デイサービスⅡ型においては障害程度区分を導入しないことにより、一律に報酬単価が低く抑えられています。単価基準となっている定員10 人に職員配置2人では、障害児童の安全確保すらできないことから、I 型なみの単価を要望します。
②聴覚・ろう重複児・者はコミュニケーションができる場を求め、遠方から来所されています。
 遠方の利用者のために送迎加算(燃費、車両管理費、運転手の人件費)が必要です。
③児童デイサービスⅡ型を市町村事業としないでこのまま事業形態を続けることを強く要望します。特別支援学校は市をまたいだ校区を持つことが多く、現在の形態が最も使いやすいと考えます。
④児童デイサービスにおいても、聴覚・視覚の加算を検討して下さい。
(7)重度訪問介護の単価について
 1,600 円/hは低すぎるため、事業所として健全な運営ができないため、単価の改善をお願いします。

11(8?).「情報・コミュニケーション法」(仮称)を創設して下さい。
聴覚障害者の障害特性とニーズに応じたきめ細かい支援を整備していくためには、「情報・コミュニケーション法」(仮称)が必要です。
基本的な視点は下記の通りです。
①障害者権利条約を踏まえ、手話が音声言語と同等に尊重されること、手話の言語的な研究・普及を進めること。
②ろう者だけでなく、難聴者・中途失聴者、盲ろう者等の重複障害者を含めて、すべての聴覚障害者が、身体障害者手帳を持っているかどうかに限らず、その人が求める言語とコミュニケーションによる支援を保障していくこと。
③コミュニケーション保障のための制度については、
・手話通訳者と要約筆記者の養成カリキュラム改訂、盲ろう向け通訳・介助員の養成カリキュラム策定、それぞれの養成事業に必要な財源の確保
・手話通訳士の国家資格化、要約筆記者の新たな資格認定制度の実施
・専門的な手話通訳者の市町村への設置
・手話通訳者、要約筆記者、盲ろう向け通訳・介助員の都道府県レベルと市町村レベルの役割分担による派遣事業の必須事業化、また、派遣条件、謝礼単価等の全国統一等について、全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国盲ろう者協会のそれぞれが厚生労働省に提言または要望している内容にそって再構築すること。
④相談支援については、直接、聴覚障害者が使用する言語・コミュニケーションにより専門的に対応、支援できる者の養成と資格認定、設置をすること。
⑤入所、通所施設が聴覚障害者の使用する言語・コミュニケーションが保障されることなど、聴覚障害者が真に利用できる社会資源の確保について定めること。
⑥情報については、放送、公共機関、交通機関、ホテル・旅館、教育、職場等、社会のあらゆる分野での手話、文字、光、振動等の聴覚以外の方法による情報を提供しアクセシビリティの保障をすること。
以上

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その7)

2010年09月19日 21時35分26秒 | sign language
さて、(その5)障害者基本法の見直し、そのもととなった(その6)国連・障害者の権利条約とおさらいをしてきてようやく久松さんの講演会レジュメに話が戻って来ました。
そもそも私がこんなにムキになって「おさらい」しているのは、今回の「We Love コミュニケーション」パンフレット普及&署名運動って、どういう運動なんだろうか?ということを知りたいからでした。
改めて署名要望3項目を記しておくと

【要望項目】
1.手話を「言語」として定義することをはじめ、障害者基本法障害者差別禁止法において「言語」、「コミュニケーション」、「情報」についての定義、権利規定を明記し、聴覚障害者の基本的人権として、社会のあらゆる場面で情報とコミュニケーションを保障する法整備をおこなってください。

2.法整備にあたっては、障害者の情報・コミュニケーション施策の基本となる「情報・コミュニケーション法(仮称)」を創設してください。

3.障害者自立支援法に代わる新しい「総合福祉法(仮称)」の制定において、障害の程度によらず、すべての聴覚障害者が必要とする福祉サービス、相談支援、当事者支援事業をコミュニケーションのバリアなく受けられる環境を整備してください。】

 ここまでのお話しは、要望事項1の障害者基本法のついてということになります。
 久松さんが委員として参加されている障がい者制度改革推進会議は、今年2010年の1月12日に第1回が開催され以降だいたい月2回のペースで開催され、すでに19回の会合が重ねられています。それらは内閣府の「政策統括官 共生社会政策担当」の障がい者制度改革推進本部のホームページに各回の審議内容と資料が公表されています。
【障がい者制度改革推進会議について】
第1回 H22.01.12 * 推進会議の運営について、* 今後の進め方について
第2回 H22.02.02 * 障害者基本法について
第3回 H22.02.15 * 障害者自立支援法、総合福祉法(仮称)について、* 障害者雇用について
第4回 H22.03.01 * 雇用について、* 差別禁止法について、* 虐待防止法について
第5回 H22.03.19 * 教育について、* 政治参加について、 * 障害の表記について
第6回 H22.03.30 * 司法手続きについて、* 障害児支援について、* 医療について
第7回 H22.04.12 * 交通アクセス、建物の利用について、* 情報へのアクセスについて
            * 所得保障について、* 障害者施策の予算確保に向けた課題について
第8回 H22.04.19 * 団体ヒアリング
第9回 H22.04.26 * 省庁等ヒアリング(法務省、文部科学省、教育関係団体、総務省)
第10回 H22.05.10 * 省庁等ヒアリング(厚生労働省、総務省、国土交通省)
            * 「障害」の表記について
第11回 H22.05.17 * 省庁ヒアリング(外務省)、* 今後の取組みについて(内閣府)
第12回 H22.05.24 * 第一次意見取りまとめに向けた推進会議の問題意識の確認
第13回 H22.05.31 * 内閣府地域主権戦略室との意見交換、* 第一次意見の取りまとめについて
第14回 H22.06.07 * 第一次意見の取りまとめについて

 そして6月7日の第14回会議で「第一次意見」が取りまとめられました。
 その後、
第15回 H22.06.28 * 第一次意見に関する結果報告について
          * 今後検討すべき議題とスケジュールについて
第16回 H22.07.12 * 有識者ヒアリング(司法へのアクセス、虐待防止)
           児童の権利に関する条約に基づき日本から提出された報告の審査について
          * 障害のある女性について
第17回 H22.07.26 * 意見交換等(文部科学省特別支援教育課、教育関係団体(校長会等))
第18回 H22.08.09 * 今後の推進会議の進め方等
第19回 H22.09.06 * 障害者基本法の改正について、* 合同の作業チームについて

 という形で障害者基本法の改正についてすでにまとめの段階に入ってきているわけです。
 このうち、第18回には資料2で、(福)全国盲ろう者協会の門川紳一郎委員からつぎのような意見が出されています。

【理由書】
平素は盲ろう者をはじめ、全国の障害者の福祉向上のためにご尽力賜り、御礼申し上げます。
さて、去る7月12日の推進会議にあたり、「コミュニケーションと情報保障」について資料を準備いたしました。事務局より、資料の提出は次回推進会議でとのご指示をいただきましたので、ここに改めて資料提出、ならびに配布のご承諾をお願い申し上げます。
意見書の提出を希望する理由としまして
・障害者基本法における議論の中でも、コミュニケーションと情報の保障について、全体的に議論が不足していること
・障害者基本法にはコミュニケーションと情報に関する条項、規定が設けられていないこと
・障害者基本法では言語としての手話に関する規定が設けられていないこと
等、改めて議論をしておくべきではないかと考えるためです。
それでは、よろしくお願い申し上げます。

障害者基本法その他の議論について
門川紳一郎
 本法律では、コミュニケーションと情報保障についての規定がなされていない。コミュニケーションと情報保障は、重要な基本的人権の一つであり、障害者の社会生活、ならびに日常生活において、最低限保障されなければならない分野である。従って、コミュニケーションと情報の保障ついては基本法に盛り込まれるべきではないかと考える。
 また、障害者の権利条約第2条「定義」では、コミュニケーションの手段や様式が示されており、第21条「表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会」では、意見を述べたり情報へのアクセス等についての権利が保障されている。このことからも、コミュニケーションと情報の保障が、いかに重要な分野であるかが理解できるだろう。
 また、聴覚障害者の言語である手話についても、基本法の中に規定を設けるべきであると考える。つまり、手話は日本語と共に言語であり、だれもが当たり前に使うものと認識されなければならない。その他、点字をはじめとする文字も一種のコミュニケーション手段として理解されるよう規定を設ける。
 以上のことから、コミュニケーションと情報の保障について、障害者基本法に設けるべき条項を、以下提案する。
1.コミュニケーションの手段と様式の選択の保障
 障害者が自らに適したコミュニケーションを選択する権利を保障すること。コミュニケーションとは社会との対話のために欠くことのできないものであり、主な手段として、以下のものが挙げられる。
2.コミュニケーションの手段
 手話、触手話、その他の形態の手話、点字、点字を応用したもの、文字を応用したもの、要約筆記、テクノロジーを活用した要約筆記等、補聴システム、わかりやすい表現、その他、障害者のコミュニケーションに必要な方法と手段を含む。
3.言語
 言語は、人対人、あるいは人対社会がコミュニケーションをする過程において、媒介となるもので、音声による言語の他、非音声言語、そして手話がある。
4.情報の保障
 聴覚的や視覚的な情報を得ることのできない障害者には、情報の保障が義務付けられるべきである。聴覚障害者に対しては音声等の聴覚的情報を保障するために通訳者が、視覚障害者に対しては視覚的情報や歩行をはじめとする移動を保障するためにガイドヘルパーが必要である。盲ろう者に対しては、聴覚的情報および視覚的情報を提供すると同時に、移動についても保障する通訳・介助員の存在が必要不可
欠である。また、人的な支援だけでなく、例えば点字や拡大文字といったその障害者に応じた媒体での物的な支援も保障されるべきである。
5.情報保障のための合理的配慮
 国、地方公共団体、そして国民は、すべての障害者に対して、障害のない人と等しく情報が提供されることを心がける。
 また、わかりにくい表現は、障害者当事者にわかりやすい表現に置き換えるなどの技術的な工夫を行う。同様に、障害者からの発信が他者に伝わるよう、あらゆる手段を利用して保障する。
6.以上のことを踏まえ、障害者基本法に明確な規定を設ける。
 障害者の権利条約を参考に、コミュニケーション、言語、等々の定義を設け、障害者基本法全体に反映させる。

 さらに19回には久松委員から追加資料として「言語・情報・コミュニケーション保障作業部会設置の要望」が出されました。
「言語・情報・コミュニケーション保障」に関する作業部会の設置の要望
 平素はろう者を初めとする障害者のためにご尽力いただき厚く御礼申し上げます。
 表記の件、「言語・情報・コミュニケーション保障」について、第二次意見書に反映されるよう法制度の整備について審議するための作業部会を設置する必要があると思います。
 ご審議いただきますよう宜しくお願いいたします。作業部会設置の必要性についての理由は以下の通りです。

(1)「言語、情報保障およびコミュニケーション保障」を推進する立場からみた障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)への評価について
 視覚障害者、聴覚障害者、盲ろう者、言語障害者などの障害者の完全な社会参加を実現し真に自立した生活を営むうえで重要なのは、「言語・情報・コミュニケーション」のバリアフリー問題である。この「言語・情報・コミュニケーション」の言葉が、障がい者制度改革推進会議の第一次意見書に盛り込まれた。具体的には、「基礎的な課題に対する改革の方向性」の8つの項目の中の一つとして、「障害の定義」や「差別の定義」と並んで「言語・コミュニケーションの保障」が入り、さらに「個別分野における改革の基本的方向と今後の進め方」の11の項目の一つに「情報アクセス・コミュニケーション保障」が入った。
 「言語・コミュニケーション保障」では、「これまで、手話、点字、要約筆記、指点字等を含めた多様な言語の選択やコミュニケーションの手段を保障することの重要性及び必要性は省みられることが少なかったため、それらの明確な定義を伴う法制度が求められる。」
と記載されている。また、「情報アクセス・コミュニケーション保障」では、「障害者は、すべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするため、必要な情報及びコミュニケーションが保障される権利を有する。障害者も、障害のない人と同様に、表現の自由や知る権利の下で、情報サービスを受ける権利を有しており、自ら必要とする言語及びコミュニケーション手段を選択できるようにするとともに、障害者が円滑に情報を利用し、その意思を表示できるようにすることが不可欠である。国及び地方公共団体は、障害者が選択するコミュニケーション手段を使用することができるよう必要な施策を講じなければならない。」とまとめている。
 これまでの国や地方公共団体の施策は、障害者自立支援法の下でコミュニケーション支援事業が市町村の必須事業として位置づけられているものの、手話通訳者派遣事業、手話通訳設置事業、要約筆記者派遣事業の三つの事業のうち一つでも実施していればコミュニケーション支援事業を実施したことになるので、全国の市町村において未実施の事業が多く地域格差問題の代表的な事例としてこれまでにも度々指摘されている。また予算措置でも、コミュニケーション支援事業の総額が移動支援事業の総額の十分の一程度という地域が多く十分な予算措置がとれていない状況にある。国や地方公共団体においてコミュニケーション支援事業への理解が絶対的に不足している中、第一次意見書にて権利として保障すること、法制度として整備すること、義務として必要な施策を講じることをとりまとめ提言したことの意義は極めて大きく画期的なことである。
(2)多様な言語、多様なコミュニケーションについて
欧州や米州では「公用語」あるいは「言語」はなじみのある言葉として定着しているが、日本人にはなじみがない。学校で日本語は国語として、従来は、少数民族の存在を顧みることなく、日本は単一民族国家として教えられてきたために多くの日本人にはなじみがなく言語感覚が薄いのである。欧米諸国は多民族国家なので国内に多くの民族語があり公用語政策がその国の重要な施策となっている。そういう背景もあって手話を公用語の一つとして法制度を整備している国は多い。国連・障害者権利条約の立役者であるドン・マッケイ元議長が、自身の出身国であるニュージーランドの障害者制度の特徴を「手話言語法
(2006年制定)」であると明言したように、その国の障害者施策を語るうえで障害者差別禁止法と同じように手話言語法の制定を大きな特徴としてあげることができる。日本ではろう学校が口の形を読み取る「口話法」を採用し「手話」を排除したために、「手話」は「手
真似(てまね)」と呼ばれ蔑まれていた時代が長く続いた。手話を言語として認知し国語(日本語)と同じように法制度(公用語政策)を整備することが今後の大きな課題になる。
 また、コミュニケーションについても障害者権利条約での政府仮訳では「意思疎通」と訳されているが、日本では意思の伝達という狭い意味に解釈される傾向が強い。本来のコミュニケーションは、意思の伝え合い、双方向性という性格をもつものであり、この特徴を理解しないと、手話通訳はろう者を支援するために必要なのではなく、ろう者とコミュニケーション(会話)をする相手にも必要なのだとの意識を持つことが難しい。欧米ではそのコミュニケーションの特徴をよく理解しているので、裁判所、病院、学校など公的機関にて手話通訳を配置することが当然のこととして整備されている。
 また、耳が聞こえにくい人のコミュニケーションの手段は、その聞こえの度合い、聞こえにくくなった時期によって様々であること、目が見えにくい人も同様に、見えなくなった時期、見え方の度合いによって点字を必要とするのか、拡大文字を必要とするのか、拡大機器を必要するのか様々であること、盲ろう者に至っては、盲ろう者一人ひとりによってコミュニケーション手段のニーズが異なることを理解している人は少ない。
 このように、多様な言語、多様なコミュニケーションがあり、それを必要とする人がいることを理解することは、権利として保障し、法制度として整備し、義務として必要な施策を講じることを進めるうえで大切なことである。
(3)第二次意見書への期待
 今後、障害者基本法の抜本的な見直しを行うにあたり、総則にて、障害者権利条約にあるように言語やコミュニケーションの定義を盛り込み、自ら必要とする言語やコミュニケーション手段を選択できないことは合理的配慮をしないこと、すなわち「差別」であることを明記することが必要である。
 障害者基本法、差別禁止法を含めた法制度を整備する際に、ろう者、難聴者の場合に限れば
(1)手話を言語として定義し、日本語と同等の地位(公用語)とする。
(2)障害者があらゆる生活の場で使用するコミュニケーション手段を障害者権利条約のコミュニケーションの定義と同じように定義化する。
(3)言語およびコミュニケーション手段を選択する権利を有する。
(4)言語およびコミュニケーションの形態、手段、様式による情報の保障と、政治、司法、選挙、医療、生活、教育、放送等あらゆる場面での必要な情報およびコミュニケーションを保障する。
(5)通訳士(手話・筆記)資格を国家資格レベルに格上げする。
(6)専門性が求められる分野での通訳業務は通訳士(手話・筆記)の独占業務とする。
(7)市町村レベルでの通訳養成、通訳派遣、通訳設置を義務化し制度化を図る。
(8)手話を言語として認知しその言語文化を守り啓発活動を行っていくこと
などを第二次意見書に反映されることを期待したい。
 情報・コミュニケーションに関する法制度を整備することは、ろう者や難聴者、盲ろう者だけでなく、言語障害者、視覚障害者、知的障害者、発達障害者にも必要ではある。障害者権利条約に明記されている情報アクセス権や平等に情報サービスを受ける権利は、障害者全体の権利として広く認知されなければならない。わかりやすく伝える、わかりやすい言葉を用いる、図記号を使用してコミュニケーションの円滑化を図ることも情報提供に必要なことであり、国民の権利として認識されるようにしなければならない。そのためには第二次意見書に向けて積極的な提言が行えるよう、障がい者制度改革推進会議の下、「言語・情報・コミュニケーション」に関する作業部会の設置が必要である。

 こうした要望が実際の会議の進め方に反映されるようになるためには、「We Love コミュニケーション」パンフを普及し、「意見はがき」をたくさん寄せていただき「国民の声」を示すことが大切になってくるでしょう。

 さて、今後の進め方は、こんな風になっています。

 これを見ると年末には「第二次意見」がまとめられて、制度改革の重要方針が決定されてしまうことになっています。
 だから聴覚障がい者として方針に盛り込んで欲しいことは「今」声を大きくして言わなくてはならないわけですね。

東京都手話通訳問題研究会創立30周年記念集会(その6)

2010年09月19日 16時20分04秒 | sign language
基礎的な知識が足らなくて、久松さんのお話しを振り返って「We Love パンフ」の普及の必要性を訴えようにもさっぱり話が進まない私です。
さて、障害者基本法を見直そうというのが第一のテーマだというのは分かったけれど、障害者基本法を読んだだけでは久松さんがおっしゃった「権利性を考える」というのはどういうことか、やっぱりピンと来ない。
そこで今回の障がい者制度改革の元となった国連の障害者権利条約の内容を確認しておきたい。
「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について(第一次意見)」の鏡文には”「障害者権利条約」の締結に必要な国内法の整備のための意見書なんだ”と書いてあったし、
その3で書いた「久松委員提出意見」にも”「障害者権利条約の目的を達成する」を盛り込みたい。”ってなってましたね。
そもそも全国ろうあ者大会in島根でも散々勉強したはずなんですが、やっぱり「障害者権利条約」がキチンと頭に入っていないのが最大の問題点ですねぇ~。
そこでまず

みんなちがって みんな一緒! 障害者権利条約」(日本障害フォーラム(JDF))500円」を読みました。
この冊子では第一部で障害者権利条約の概要が分かるようになっています。
さらに第二部では条文ごとのポイントが書かれています。
JDFのサイトから【もくじ】を転記させていただきますと・・・さらに黒字で書いてあるのは私の「要約」です。
はじめに JDF代表 小川榮・・・・・ 4~5
コラム  条約は何語で書かれているのですか?・・・・・ 6
→国連公用語6カ国語(①アラビア語、②中国語、③英語、④フランス語、⑤ロシア語、⑥スペイン語)
第一部 権利条約って何?・・・・・7~16
Q1 障害者権利条約ってなんですか?
2006年12月13日国際連合の総会で決議(採択)された国際条約。中華人民共和国、サウジアラビアも含む20ヵ国が批准し、2008年5月3日に発効。2010年8月25日現在の批准国は90カ国。日本はまだ批准していない。
Q2 障害者権利条約はどんな内容ですか?
Q3 障害者権利条約が目ざしているのは、どのような社会ですか?
Q4 障害者権利条約に定められているポイントをいくつか挙げてください。
●「障害」とは何か。「障害者」とは誰か。
→その人が持っている性質(「聞こえない」など)だけでなく、社会の仕組み(偏見や制度、建物など)にも問題があり、社会と人との関わりから「障害」が生じるとしている。
●「差別」とは何か?
→①直接差別(例.障害があるから学校に入学させない)
 ②間接差別(例.音声会話で面接できないから合格できない)
 だけじゃなく、
 ③「合理的配慮」を行わないことも差別である!
●「合理的配慮」とは?
→障害者一人一人の必要を考えて、その状況に応じた変更や調整などを、お金や労力などの負担がかかりすぎない範囲で行うこと。(例.聴覚障害者の面接試験には手話通訳や要約筆記を付ける)

Q5 障害者権利条約で決められたことを各国が行うために、どんな仕組みが設けられていますか?
各国の政府の中に、条約で決めたことを行うための部署を置くことを定めている。
また、条約で決められたことが行われているか監視するための仕組みを設けることも定めている。この監視作業には、障害者が必ず参加しなければならない。

Q6 障害者権利条約が作られるまで、民間の障害者団体などが果たした役割はなんですか?
Q7 わが国が障害者権利条約を結ぶために、何が必要ですか?
批准するためには、国内の法律や制度を、条約の考え方に合うよう変えていく必要がある。
Q8 障害者権利条約の考え方を実現するために、私たちにできることはなんですか?
第二部 権利条約をもっと知りたい人のために・・・・・17~42
 前文―みんなちがってみんな一緒【前文】
 すべての障害者のための条約―条約の目的と障害者―【第1条】
 障害に基づく差別とは【第2条】
 合理的配慮とは【第2条】
 コミュニケーションと言語【第2条】
 条約の原則【第3条】
 一般的義務や平等・非差別【第4・5条】
 女性障害者・障害のある子ども【第6・7条】
 障害者に対する意識向上【第8条】
 アクセシビリティ【第9条】
 法的能力と司法のアクセス【第12・13条】
 条約と強制医療【第4・14・15・17・25・26条】
 地域であたりまえに自立して暮らす権利【第19条】
 情報へのアクセス【第21条】
 視覚障害者の移動と情報保障【第20・21条】
 盲ろう者と権利条約【第20・21条】
 知的障害者の情報アクセス【第21条】
 権利条約によって変わるべき日本の教育【第24条】
 労働及び雇用に関する権利【第27条】
 政治的及び公的活動への参加【第29条】
 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加【第30条】
 国際協力と国際開発【第32条】
 国内での実施・監視のしくみ【第33条】
 条約の実施【第33・34・35・36条など】
コラム  権利条約の推進に向けて「地域フォーラム」の開催・・・・ 31
障害のある人の権利に関する条約(条文タイトルのみ)・・・・・ 43
日本障害フォーラム(JDF)について・・・・・ 44
権利条約をめぐる経過とJDFの活動 ・・・・・ 46
監修および執筆協力者      ・・・・・ 48

それでもって久松さんがお薦めしていた

障害者権利条約で社会を変えたい(福祉新聞社 発行、500円)」で実際の条文ひとつひとつをチェックするのが良いと思います。
このパンフレットを読むのをこの連休の課題の一つにしたいと思います。
なお、こちらのパンフレットはこんな構成です。
このパンフレットを120%活用していただくために
 「障害があっても、当たり前に地域で社会生活を送る権利がある」。日本でも繰り返し言われてきたことです。しかし、学ぶ、働く、住まう、家庭を持つ、自分の意見を堂々と述べるーどれを取っても、現在の日本の状況を見ると、障害のある人たちが満足できる環境が整っているとは言えそうにありません。
 そんな中、障害者権利条約が2008年5月3日、国際法としての効力を発しました。長く取り残されてきた「障害者の人権の確立」が、ようやく実行段階に入ったのです。日本政府はこの条約をまだ批准していませんが、2007年9月28日に署名し、批准する意思を国内外に明らかにしました。

 では批准に向けて、日本にはどのような課題があるのでしょうか?
 条約が出来たからといって、山積する障害者問題は自動的に解決していくのでしょうか? いま、それらを真剣に学ばなければならない時にあります。
 そのために福祉新聞社は、なぜ障害者権利条約が重要かを考えてもらおうと、このパンフレットを作成しました。

 パンフレットは、大きく分けて「連載編」「解説編」「資料編」の3部構成になっています。

 「連載編」は、2007年10月から2008年5月まで、福祉新聞の第1面に連載した「障害者権利条約で社会を変えたい」をまとめたものです。連載は、条文・キーワードごとにテーマ設定してあります。第1回から最終回まで「総論」「各論」「まとめ」という流れで並んでいますが、毎回読み切りなので、まずは興味のあるテーマの回から読んでみても良いでしょう。
 連載を読み進める前に、「そもそも条約って何?」という素朴な疑問にぶつかる人もいるかもしれません。そこで

 「解説編」では、Q & A形式でまとめた解説を掲載しました。これは福祉新聞2007年9月3日号で組んだ特集を再収録したものです。基本情報をおさらいしたい時や、よく分からない専門用語が出てきた時など、このページを参考にしてください。

■解説編:障害者権利条約のポイントが知りたい(福祉新聞2007年9月3日号)
 Q1 条約は、条例や法律とどう違うのですか?
 条例は、自治体の議会で立法する約束ごと。法律は、国会で立法する約束ごと。そして条約は、主に国と国との間で取り決める約束=国際法です。
 国際法は、憲法よりは下位にありますが、一般の法律よりも上位に位置づけられます。つまり、国が守らなければならない法律の優先順位は、高い方から順に憲法、条約、法律、条例という構図になります。すると、国内の法制度は条約に拘束されることになります。このため、条約を締結する(締約国になる)には厳重な手続きを踏むのです。

 Q2 締約国になるには、どんな手続きをしますか?
 この条約を締結するには、①「署名」してから「批准」する、または②「加入」する、の2つの方法があります。どちらの方法で締結しても国際法上の効果は同じですが、署名する・しないの違いがあります。
 署名とは、国が条約の趣旨に賛同する行為です。署名するだけでは、法的にはまだ拘束されません。しかし署名すると、条約の内容に反する行為をしないことが当然期待されます。
 国内に効力を発生させるには、署名した後、批准をしなければなりません。批准とは、国が条約に拘束されることへの最終的な同意を表明する行為です。批准する時、政府は国会に諮り承認を得なければなりません。批准して初めて締約国となります。
 また、障害者権利条約の場合は「開放条約」といって、いつでも署名・批准することができます。署名していない国も、加入すれば締約国になれます。加入する時は、批准と同じように国会の承認を得なければなりません。
 なお、障害者権利条約は2007年3月30日に開放されました。初日の署名式典では81力国と欧州共同体が署名し、うち1力国が批准しました。日本政府も批准する方針で、07年9月28日に署名しました。

 Q3 条約に拘束されると、どんな変化がありますか?
 影響を受ける可能性があるのは、条約と国内法との関係です。条約は、憲法と一般の法律の問に位置づけられます。ということは、締約国は、条約と一般の法律との間に整合性を持たせなければなりません。
 障害者権利条約の第4条には、「締約国には、条約に書かれた権利を実施するため、すべての立法措置、行政措置をとる義務がある]ということが書かれています。既存の法律や制度の中に障害者差別となるものがあれば、修正・廃止する必要があります。それでも解決できない問題が残る場合は、新しく法律を作って対処する必要もあるのです。
 ただし、国内の法制度を点検してみて、政府・国会が「条約に違反するものはなかった」と判断した場合は、法改正などをせずに批准・加入する場合もあります。

 Q4 この条約は日本語で書かれていなかったのですか?
 Q5 ほかにも国際人権条約があるのですか?
 Q6 なぜ障害者権利条約を作る必要があったのですか?
 Q7 この条約を作った人は、各国政府の集まりですか?
 Q8 策定にはどれくらいの年月がかかりましたか?
 Q9 障害者に特別な権利を新しく作ったのですか?
 Q10 障害者権利条約のいう差別とは何ですか?
 第2条に「障害にもとづく差別」の定義があります。意図的な区別や排除、制限はもちろん、意図しなくても結果的に不平等になることも差別に当たるのだと書かれています。
 さらに「合理的配慮の否定も差別に含む」と書かれています。受験を一例に挙げたように、現実に起こるのは誰から見ても分かりやすい形の差別ばかりではありません。だからこそ、この条約は「合理的配慮をしないことも差別だ」と明確に定義したのです。ここが障害者権利条約の最大の目玉です。
 しかし日本には、何が差別かを定義し救済手段を明示した法律がありません。「障害者差別禁止法を作らなければならない」との議論が今後大きくなりそうです。

 Q11 どういう人が障害者だと定義されていますか?
 障害者権利条約は第2条で様々な定義を設けていますが、「障害」「障害者」の定義はありません。
 国によっては知的障害や精神障害のある人を障害者に含まない国もあります。また、日本では国内の法制度によって定義が異なります。こうした複雑な事情があり、すべての国が納得できる定義は作れませんでした。
 しかし定義に近い書きぶりは第1条に見られます。この文章は、医学的な機能障害がある人に限定しないことを意味しています。個人的な障害だけでなく、障害と社会環境との相互作用によって社会参加できない人のことも含むとされているのです。「含む」という表現で書かれているのは、特定の障害が排除されないための工夫です。
 この文章の重要なところは、日本の法制度における障害の概念よりも条約の方が広く規定されているという点です。
 ちなみに、英語の正文を見てみると、障害者は「Persons with Disabilities」と表現されています。「人」という単語が強調されているところが特徴です。

 Q12 アクセシビリティって、どういう意味ですか?
 「アクセシビリティ」とは、建物の中に入れること、乗り物で目的地まで到達できること、道具が使えることなどを意味する単語です。
 障害者権利条約の第9条について見てみると、障害のある人が障害のない人と同じように交通機関や施設を利用できるかどうかだけでなく、情報やコミュニケーションサービスを得られるかどうかも問題にしている点が特徴です。
 このほかの条文でも、「アクセス」「アクセシブル」という言葉が随所に登場します。労働や司法手続きなどの場面でアクセスを重視しているところにも、[社会への完全参加を保障しよう]という障害者権利条約の精神がよく表れています。

 Q13 条約は「地域移行」を後押しするでしょうか?
 Q14 教育については、どんな方向性が示されましたか?
 障害者権利条約の第24条で最も重要なことは、「完全なインクルーションに向かう」「合理的配慮をする」「個々人への必要な支援措置を提供する」とうたっていることです。
 これまで日本では、障害のある子が地域の普通学校へ行くことを希望しても、特別支援学校(養護、盲、ろう学校)の方へ行くよう指示されたり、「特別支援の用意がない普通学校をあえて選ぶのだから」と親が付き添いを求められたりしてきた歴史があり、条約の規定をどう生かすかが課題です。[インクルーション]という単語には「包含」の意味があり、こうした考え方に基づく教育をインクルーシブ教育と呼びます。子どもは一人ひとり違った性格、関心、能力を持っています。異なった家庭環境の中で様々な困難や課題も抱えています。教育は、そうした個別の学習ニーズを持つ子どもすべてを包み込みながら、一人ひとりに目くばりできるものでなければなりません。障害だけが他め困難から分離されなければならない理由はないのです。

 Q15 労働分野には、どんな影響があるでしょうか?
 雇用について、募集や採用、雇用条件などの差別を禁じています。したがって、事業主は合理的配慮をしなければなりません。障害に応じた設備が用意されるなど、受け入れ環境が整うことが期待されます。
 今後、事業主がどの程度の負担なら「過度・不釣り合い」と考えないか、折り合いを付けていくことが課題となりそうです。
 一方、日本の障害者の労働状況を見てみると、一口に「働く」といっても、授産施設や作業所で働く場合、環境・待遇は企業とはまた異なります。労働法規が適用されず最低賃金を保障されていない人、工賃では生計を立てられない人もたくさんいるのが実情です。こうした課題をどう整理し、条約との整合性をはかるのかも重要な検討項目です。

 Q16 モニタリングって、何をするのですか?
 「モニタリング」とは、監視、観察して記録することを意味する単語です。国際人権条約の文脈では、締約国が条約を誠実に守っているかどうかを監視する意味で使われています。
 障害者権利条約の第33条は、国内のモニタリング制度について定めています。監視する中心的機関を政府内に指定し、その機関が政府内の調整をし、条約内容の実施を促したりします。どの省庁に監視機関を置くのか、どのくらいやNGOがモニタリングの過程に参加できるのか、などが今後の検討課題となります。

 Q17 どうやって全締約国に条約を守らせるのですか?

 「資料編」には、障害者権利条約の日本語仮訳を全文おさめました。条約をすみずみまで読んだこと、ありましたか? パンフレット作成にあたり日本障害フォーラム(JDF)の協力をいただき、①日本政府による仮訳②川島聡さん・長瀬修さんによる仮訳③JDFによるコメントー-の対照表を掲載することができました。中身の伴った批准をするには、「条約にはどのように書いてあるのか」という基本を正確に押さえなければなりません。条約は障害者の人権を考える上でのバイブルだと言っても良いかもしれません。ですから、何度でも条文を引いてほしいと思います。

 そして、もう一つの見どころは、「連載編」「解説編」「資料編」それぞれの扉に印刷したページいっぱいのカラー写真です。どの写真も、障害者権利条約を作る協議が行われたニューヨークの国連本部で撮影したものです。

 ところで、このパンフレットをどのように使えば、120%活用したことになるでしょうか。たとえば、パンフレットを教材にしてグループ学習会を開く。地元の県議会議員や市議会議員にパンフレットを手渡して、「我が街にも、この条約の精神を具体化した条例を作ろう」と働きかけるー。そんな使い方もありそうです。
 パンフレットを読んでいるうちに、障害者権利条約のイメージが「遠い世界で起きていた何か」から「私たちが暮らす社会をより良くするための道標」に変化していったら幸いです。
                           福祉新聞社