月曜日の夜6時からって、けっこう辛いものがありますが地下鉄霞ヶ関駅ドトールの店先でサンドイッチかじって参加。
副題「権利条約批准に向けての国内法整備の第一歩として」の「あるべき障がい者基本法」についてのシンポジウムでした。
1.開会挨拶・・・我妻崇日本弁護士連合会副会長「12月17日に障がい者制度改革推進会議の
第二次意見とりまとめがあった。同じ日に日弁連は『
障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案』を発表した。」とのこと。
1.5.そこで急遽「第二次意見とりまとめ」について制度改革推進会議の構成メンバーである尾上浩二さん(JDF)から報告があった。
(1)大きなポイントが2つ。
①保護(福祉)の客体から権利の主体へ、
②障がいの概念について医療モデルから社会的モデル(インクルーシブ社会(共生社会)へ)への転換
(2)障がいの定義について
従来の「固定的」な定義から「周期的または断続的」な状態として認める
(3)差別の定義
合理的配慮の欠如
(4)基本理念は、地域社会で生活する権利(「機会を与えられる」だけではない)。
(5)女性やこどもの問題、さらには労働や教育
(6)モニタリング制度
2.担当大臣のご挨拶・・・岡崎トミ子内閣府特命担当大臣(障がい者政策担当)
3.基調報告「日弁連・障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案について」・・・黒岩海映(くろいわ みはえ)
(1)障がい者基本法改正について
第1 基本法改正の意義
1 全ての施策の根本
障害者基本法は障害者法制の憲法。
2 障がい者権利条約批准のための国内法整備の第一歩
障がい者総合福祉法、障がい者差別禁止法へつながる基本法を!
3 内閣府障がい者制度改革推進会議第1次意見(2010年6月)
「障害者基本法の抜本的改正」→個別法の整備、という工程
4 第2次意見と法案化作業への期待
日弁連として、第1次意見の方向性を重んじつつ、さらにこれを前に進めたよりよい要綱案を策定。
第2 あるべき障害者基本法改正案の骨子
1 名称
「障がいのある人の権利と施策に関する基本法」とすべき。
2 前文
権利条約批准を見据えた抜本改正である以上、改正の趣旨を明確にするために前文を置くべき。
3 総則
(1) 目的
障がいのある人の権利主体性と権利条約におけるインクルージョンの概念を法の目的として明記すべき。
(2) 定義
定義規定としては、
①包括的な「障がい」の定義、
②権利条約のインクルーションの概念を法文化すべく「共生社会」の定義、
③差別の一類型である「合理的配慮(の欠如)」の定義、
④言語の定義、
⑤コミュニケーション手段の定義、などが必要。
(3) 基本理念の明確化
基本法において強固かつ明確な内容の基本理念を定めることで、具体的な諸施策を正しく方向付ける。
内容としては、
①尊厳の保障、
②法の下の平等、
③地域で生活する権利、
④自己決定権、
⑤コミュニヶ-ションに関する権利、
⑥アクセシビリティを定める必要。
(4)差別禁止
差別の3類型(直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如)を前提とした差別禁止条項を置く。
(5)その他
他にも、障がいのある女性、障がいのある子ども、国際協力、国・地方公共団体の責務、事業者の責務、国民の理解、施策の基本方針などの条項を置く。
4 各論
以下の各論につき、権利規定(1項)と施策義務規定(2項以下)を定めていく必要。
(1)地域社会における自立生活
(2)自己決定
(3)アクセシビリティ(公共施設等の利用可能性)
(4)コミュニヶ-ション(意思及び情報の受領等)
(5)家庭及び家族の尊重
(6)教育
(7)労働
(8)医療、健康等
(9)所得保障
(10)司法の利用等
(11)政治参加
(12)文化活動等への参加
(13)国際協力のための施策
5 推進及び監視のための機関設置(障がい者政策委員会)
(1)権利条約33条で規定される促進・監視機能を担う機関を設置し、関係大臣に対する勧告権も含めた諸権限を持つ機関とする。(33条が求めるパリ原則に基づく機関は別途必要)
(2)構成員の過半数は障がいのある人とする(中央も地方も)。
(3)市町村も、地方障がい者政策委員会を設置する義務を負う。
(4)地方障がい者政策委員会も、首長に対する勧告権限をもつ。
(2)障がい者基本法の位置づけ~障がい者権利条約と国内法整備に向けて~
【図;省略】
(3)障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案の提言
2010年(平成22年)12月17日
日本弁護士連合会
提言の趣旨
当連合会は,内閣府障がい者制度改革推進会議で議論されている障がい者基本法改正案をさらに良いものとするべく,別紙の「障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案」を提言する。
提言の理由
2009年9月に民主党政権が発足し,同年12月に内閣府の下,全閣僚で構成される障がい者制度改革推進本部が設置され,その下に障がい者制度改革推進会議が設けられた。同会議は,日本が国連の障がいのある人の権利条約を批准するに当たって国内法整備を進めていくためのエンジンとして位置づけられた。
同会議は,本年に入って以降,議論を重ね,本年6月には第1次意見をとりまとめるに至った。同意見においては,障がい者基本法の抜本改正が掲げられ,2010年内に取りまとめられる第2次意見を踏まえ,2011年の通常国会へ法案提出するとのスケジュールが示されている。
今回の障がい者基本法改正は,これまでの改正とは異なり,障がいのある人の権利条約批准のための国内法整備の第一歩という極めて重要な位置づけであり,ここで十分な内容の改正を実現することで,続く総合福祉法,虐待防止法,差別禁止法等,重要な個別立法制定へつなげていくべきものである。
改正法においては,まず法律の名称を「障がいのある人の権利及び施策に関する基本法」と変更するべきである。そして第1次意見で述べられているとおり,基本法において障がいのある人の人権を規定し,これを確保するための諸施策を規定する必要がある。また制度の谷間を生まない包括的な障がいの定義,合理的配慮を提供しないことが差別であることを含む差別の定義,手話その他の非音声言語が言語であること,障がい故に侵されやすい基本的人権などを総則で確認し,障がいのある人の権利条約の実施状況の監視機能を担い,関係大臣に対する勧告権等も有する推進機関の設置を規定しなければならない。ただし,本改正要綱案で示す推進機関は,障がいのある人の権利条約33条に定められるパリ原則に基づいて条約上の権利の「促進・保護・監視」の任務を担う組織ではないのであり,これについては今後の立法による設置が望まれるものである。また基本法改正に引き続いて,他の個別法の改正が期限を定めて速やかに行われるべきことが附則等により定められることを要請するものである。
このような時期にある今,タイミングを逃さず,推進会議で議論されている改正案をさらに良いものとするべく,当連合会としての改正要綱案を発表することとした次第である。
日弁連の「障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案」については、WAM NETの
「第29回障がい者制度改革推進会議資料(平成22年12月17日開催) 」のページを参照のこと。
3-2.「
障がい者基本法改正に関するJDFの見解」森祐司日本障害フォーラム(JDF)政策委員長
【資料】障がい者基本法対照表(現行)(内閣府規定ぶりイメージ)(JDF改正障害者基本法(案))の3つを比較し(論点)を付した対照表→残念ながらこの電子ファイルはまだネットで見つけられませんでした。
4.シンポジウム
(パネリスト)
・山崎公士(神奈川大学教授)
はじめに-研究者として、障がい者制度改革推進会議構成員として
1.基本法の性格と限界
2.基本法における理念・権利規定
-障害者権利条約を踏まえ、理念・権利規定をどこまで基本法に盛り込めるか?
3.第二次意見と基本法の改正
-前者はどこまで後者に盛り込めるか?
4.推進会議が政府に求める事項と省庁コメントの本旨
-権利条約の国内法化という基本法の意義を見失ってはならない。
結びにかえて
-障がい者制度改革推進本部(本部長;内閣総理大臣)の政治的意思・決断の重要性
・久松三二(全日本ろうあ連盟常任理事・事務局長)
1.行政の「できない」という基本姿勢が目立った
2.全日ろう連は署名・パンフ普及運動を行っている。
それによって・・・
→国民の推進会議に対する関心を高める
→国民の聴覚障害者問題に対する関心を高める
→われわれ当事者(聴覚障害者)の自覚も高まる
→推進会議任せでなく、仲間の力で基本法を改正しようという気運を高める
3.文科省の会議に初めて3名の当事者が参画した
→3名は少ないけれど親の選択権を認める動きにつながった
4.モニタリングには当事者が関係することが大切
5.情報・コミュニケーション問題については、視覚障害者・知的障害者の情報・コミュニケーション問題への広がりがあった。また、手話言語学会やコミュニケーション学会からの期待も受けた。
・森 祐司
・黒岩海映