観るも八卦のバトルロイヤル

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「山桜」待ちに待った藤沢周平作品

2009年02月17日 | 映画・ドラマ
 再婚して不幸な結婚生活を送る磯村野江(田中麗奈)は、叔母の墓参りの帰り道、山桜の木の下で、手塚弥一郎(東山紀之)と出会う。
 前夫が他界後、再婚前に野江を見初めてくれていたのだが、野江は磯村へ嫁いだのだった。山櫻の咲き誇る中で対面し、そして、その後も会う事も無く、淡い思いを抱きながら、それぞれに定められた人生を過ごす、「蝉しぐれ」を彷彿とさせる切ないストーリ。
 藤沢周平原作で「たそがれ清兵衛」、「隠し剣 鬼の爪」、「武士の一分」、「蝉しぐれ」に次ぐ映画化で、これまた、日本の自然を美しく映像として織り込んでいる。そして静かに物語が進む。
 主演は田中麗奈で、東山の出番は少ないのだが、江戸後期の海坂藩を舞台に、一身を投げ出して農民を救おうとした手塚弥一郎として、見せ場のたてのシーンはお見事。
 それにしても、藤沢周平という作家はどうしてこうまでも、切ない女性心理を表現できるのだろうか。
 監督の篠原哲雄は時代劇初挑戦ということだが、それでだろうか、前記ほかの藤沢周平原作より、いいいか悪いかではなく、スマートさが感じられた。
 でも、手塚弥一郎の裁きはどうなったのだろう…気になる。藩主が帰省してからの裁きということで、ラストバックグラウンドミュージックの中、藩主らしき大名行列が映るのだが、「やっちゃった」。例え、どんな貧乏藩だとしても、一国の主があの駕篭は無いだろう。一瞬、弥一郎がどこかに流される駕篭かと思えたくらいだ。それにしては中間とかいるからおかしいなとか…。
 そして、弥一郎と野江との関係は? 弥一郎の母(富司純子)を尋ね、一緒に料理するシーンが、こちらもラストであったが、嫁ぎ先の義母(永島暎子)との確執の深さと野江の苦しみをここで改めて表しているのだろう。本来は、こんな幸福な人生を送れた筈だった…。
 ほかに、篠田三郎、檀ふみ、富司純子、高橋長英、永島暎子、村井国夫らベテラン陣が脇を固める。