何気ない風景とひとり言

寺社&石仏巡り、小さな旅、散策...ふと目に留まった何気ない風景...切り取って大切な想い出に!

和歌浦天満宮-(1) (和歌山)

2020年07月05日 | 寺社巡り-和歌山

【和歌山・和歌山市】平安時代の康保年間(964~968)、漢詩人で参議の橘直幹が大宰府から帰京する途中に和歌浦に立ち寄り、菅原道真追慕の念を深くし、この地に社殿を建てて道真の神霊を勧進して祀ったのが始まりとされる。
道真は延喜元年(901)、左大臣藤原時平の讒言により筑前太宰権師に左遷され、大宰府に向かう途中、荒れる海を避けるため和歌浦に停泊した。 海が穏やかになって大宰府に向かう際、船上から和歌の浦を望みながら2首の歌を詠んだ。
橘直幹建立の社殿は、天正十三年(1585)の豊臣秀吉の紀州攻めの兵火で焼失した。 主祭神は学問の神・菅原道真。 和歌浦天満宮は通称で、正式社号は天満神社。

海岸通りのバス停「権現前」に着くと、眼前に天神山の麓に御手洗池公園が広がる。 御手洗池の中に島が浮かび、島の東西に朱塗りの擬宝珠欄干付き平橋が架かっている。 平橋の上や島からは、天神山山腹の樹林の中に鎮座する和歌浦天満宮が遠望できる。
石造り鳥居から境内を眺めると、まず、正面の古びた石垣と石段、その上に建つ楼門と廻廊に目がいく。 石垣と石段は約400年前の江戸初期の造営で、傾斜地に張ったものを含めた石垣は野良石積、そして各段が歪んでいる急峻な石段は、壊れはじめているようにみえる。 また、ズームアップした楼門の写真を見て驚いた。 楼門と廻廊の屋根の数か所の瓦が破損しており、楼門の瓦の一部が廻廊の屋根に落下していたのだ。 訪問は2018年11月だったが、多分、同年の台風21号の猛威で破損したのだろう。
急峻な石段を上って楼門へ。 一間一戸で丹塗りの楼門は、軒が少し深く、また禅宗様式を取り入れていて趣がある。
楼門を通して透塀に囲まれた社殿が見え、拝殿と本殿の大棟に右三巴の神紋を配した檜皮葺屋根とが重なっている。 拝殿は平唐門の造りで、紙垂と多くのしめのこをつけた注連縄が張られている。 透塀の隙間から本殿の撮影を試みたが、連子子の間隔が狭いため断念。 唯一拝殿を通して本殿を拝観したが、絢爛豪華に飾られた向拝と身舎の軒下が素晴らしい。
拝殿左の透塀前に奉納されているたくさんの学業成就・合格祈願の絵馬をみていて、道真が立ち寄った地であることを実感した。
 
△天神山の麓に広がる御手洗池....池と周囲は御手洗池公園になっている/池の中の島に架かる平橋から遠望した天神山中腹に鎮座する和歌浦天満宮

△天神山中腹に樹林を背にして鎮座する和歌浦天満宮

△鳥居を通して眺めた境内....石造りの明神鳥居は明治三年(1870)の造立

△鳥居から眺めた下段の境内....社務所と手水舎が建ち、神使の牛像が狛犬として鎮座

△江戸初期造立の石垣と急峻な石段の上に建つ楼門....石垣は傾斜地を含めて野良石積
  
△入母屋造桟瓦葺の手水舎/手水舎内に置かれた賽銭箱、自然石を用いて造られた手水鉢そして屋根の千木を乗せた小さな祠

△石垣と石段は紀州藩主浅野幸長が再興した慶長十一年(1606)に造営された

△入母屋造本瓦葺の楼門(国重文)....慶長十年(1605)の建立で、この種の楼門としては最大級の規模....楼門の一部の屋根瓦(大棟、平降棟、掛瓦、隅降棟の鬼瓦の鳥衾など)、廻廊では大棟の瓦の一部が破損

△一間一戸の丹塗の楼門の左右(東西)に一軒疎垂木の廻廊を附設....神社建築に禅宗様式を取り入れた最初の建物とされる

△軒廻りは二軒扇垂木、組物は三手目が尾垂木の三手先で柱間に2つの詰組、腰組も三手先....上層の廻縁は親柱には逆蓮頭を乗せた高欄
 
△楼門の東西に附設された入母屋造本瓦葺の廻廊....楼門は大棟に鳥衾を乗せた鬼瓦、拝は三ツ花懸魚、妻飾は分からず....廻廊の拝に猪目懸魚、妻飾は板張りの素式/楼門前の手水鉢の脇で本殿を向いて鎮座する牛像

△楼門を通して眺めた拝殿、透塀そして本殿の屋根

△本殿境内は本瓦葺の透塀で囲まれて鎮座している
 
△切妻造檜皮葺の平唐門が拝殿になっている....本殿と拝殿の大棟などに右三つ巴の紋章を配している/唐破風の拝殿の兎毛通は猪目懸魚

△入母屋造檜皮葺で大きな千鳥破風を乗せた本殿(国重文)....慶長九年(1604)、紀伊藩主浅野幸長により再興された

△周囲に庇を設けた本殿は桁行五間・梁間二間で、装飾性の富んだ桃山建築

△大棟両端と千鳥破風に外削ぎの千木と千木傍に各1本の堅魚木が乗る
 
△拝に猪目懸魚、妻飾は虹梁大瓶束、虹梁下に彩色された花の彫刻を配す/本殿境内に立つ石燈籠

.△拝殿を通して眺めた本殿の向拝、向拝柱は身舎の円柱に対し面取柱....向拝や身舎の梁や組物などが絢爛豪華に飾られている....写真では脚間に動物の彫刻を配した蟇股が素晴らしい

△東側の廻廊から眺めた社殿全景....拝殿西側の透塀前に奉納された多くの学業成就・合格祈願の絵馬

△西側の廻廊から眺めた拝殿と本殿....本殿後方に浅野幸長再興時の石垣が見える

△天満宮の社殿境内の奥(東側)に末社などの境内社が鎮座している
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする