けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

実現可能なアプローチを示す気があるのか!

2012-09-08 23:58:11 | 政治
一昨日のニュースであるが、民主党のエネルギー・環境調査会は、40年廃炉を厳格に適用した上で新規増設も認めず2030年代に原発稼働ゼロを可能にするという、原発依存からの脱却に向けた方針を政府に提言したという。先日の討論型世論調査でも、政府の思惑が外れて2030年時点の原子力発電依存度で「0%」が46.7%と最も多く、「15%」が15.4%、「20〜25%」が13.0%と続いていた。根拠はないが、今回「0%」の支持をした人の多くは、鳩山元総理がCO2排出量削減と言った時にはCO2削減のために原発増加という方向性に賛成していたのだろう。しかし、3.11以降はその振り子が逆方向に大きく振れた。振り子の妥当なポジションが何かは別として、ここまで振り子が大きく振れたらこの様な判断も致し方ないというのは分からなくもない。しかし、このニュースには当然ながら続きが有り、原発を代替する再生可能エネルギーの普及に「具体的な計画と不断の検証が必要」とし、普及状況次第で目標を修正する余地も残しているという。早い話が、責任を取るつもりがないから、適当に調子の良いことを言っているように見える。この手の進め方は悪い進め方の典型である。

一般受けする人気のある政策をブチ上げ、ドサクサに紛れて選挙の票をがっぽりと頂く。しかし、実際にはうまくいかない可能性が高いから、その時の言い訳を仕込んでおき、選挙に勝ったら放っておく・・・という、前回の2009年の衆院選で民主党がとった戦略そのものを繰り返そうとしている。しかし、もし本気でこの様なことを実現しようと思うなら、別のやり方を模索するはずである。

まず第一に、この政策が進められると、電気料金が大きく跳ね上がることになる。一般家庭では1.5倍から2倍の電気料金に跳ね上がるから、月1万円の家庭で言えば、年間で6万円から12万円に値上げである。節電で対応しても、5〜10万円の支出増は避けられない。しかし、家庭の方はまだ良いが、当然ながら製造業における電気料金の値上げのインパクトはさらに大きい。電気料金が上がれば製造コストも大きく上がるが、当然ながらデフレ脱却に苦しんでいる日本で直ぐに事態は好転しないから、製品の価格にこれを転嫁することは厳しい。給料が大幅にカットされたり、工場が国外に移転して職を失ったり、収入の大幅な減少に繋がる家庭は少なくない。仮に職だけは失わずとも、例えばデフォルトが深夜勤務となる企業が増えたりすると、その影響で健康に被害が出たり、家庭での親子・夫婦の生活時間の不一致が、新たな社会問題を産むかも知れない。

この様な価格高騰の原因は二つあり、LNGや石油を使う火力発電の発電コストが原子力よりも高いことと、再生可能エネルギー普及のための膨大な買取り価格の設定、このふたつが発電コストを押し上げそれが料金に跳ね返ることになる。しかし、東電の原発事故の賠償に絡んで、関東地区限定で僅かに値上げをしただけでも大騒動になったのだから、全国規模で膨大な値上げになったら何が起きるのだろうか。短絡的な政治家は、まずは太陽光発電などの買取価格を大幅に引き下げるだろう。この結果、再生可能エネルギーの普及が大きく減速することになる。必然的に、当初目論んでいた再生可能エネルギーによる発電量は達成できなくなり、電力不足になり再び原発再稼働が話題となる。

この様なシナリオは簡単に描くことができる。ズルイ政治家からすれば、首相官邸前のデモ隊と議論しても意味ないから、黙って事態を見過ごして、彼らが困るような事態になってから手を打てば良いと考えている。今回の民主党の決定にも、その様な匂いがプンプンしている。では、もし本気で原発依存度を下げようと思ったらどうするのか?それは、原発を止めることに重きを置くのではなく、原発が結果的に止まっても困らない状況、及び原発を稼働させない方が結果的に得となるを作ることに重きを置くべきである。まずは短期的には、電力不足のリスクを急激に解決することが不可能であることを意識して、原発の安全性を国民が実感できるほどに改善する点に的を絞る。そして、長期的には原発を利用しない方が得な状況を作れば良い。

例えば原発を稼働する場合には、原発一機単位で国が運営する原発保険への加入を強制的に義務付けるのである。原発保険の掛金は、公平中立な評価機関に格付けさせ、そのランク次第で掛金が大幅に変わるようにすればよい。出来るならば、しがらみのない海外の機関に評価を依頼したり、不可能かもしれないがIAEAの業務の中に、世界の原発の格付け業務を担わせる提案をしても良い。そのための費用は日本が肩代わりしても良い。福島で世界に迷惑をかけた、せめてもの罪滅ぼしである。結果的に安全な原発の方が電力会社にとっても都合が良いから、ランクの低い原発から止めにかかるだろう。この保険金額を膨大なものにする代わりに、税制などで調整してキャッシュバックを行い、現時点での発電コストが急激に高くならないようにするのである。この調整措置は時限的なもので5〜10年で打ち切れば、安全性向上と原発を止めるモチベーションとなる。

一方、原発の代替えエネルギーを安く且つ確実に高めるための工夫は必須である。しかし、まともな方法でやっていては解決できる訳がない。だから、そのための方法を示すことでその本気度を国民に示すのである。

まず、電力の買取価格を高くする理由は、太陽電池パネルの価格や設置コストが高止まりしているからである。過去のブログ「本当にピークカットの役に立つのか?(太陽光発電の買い取り価格に関する情報開示)」でも書いたが、太陽光発電は夏の暑い日に電力消費量が多くなるほど発電量が比例して多くなった方が都合が良いから、田舎の広大な土地に膨大な発電施設を作るより、各家庭の屋根に設置する方に重きを置いた方が筋が良い。例えば一般家庭に限定して、日本国内で生産した太陽電池パネルは費用の半額を国が補填するなどという滅茶苦茶な政策を5年程度続ければ、設置時のコストの低下から太陽光パネルの需要も生まれ、それを供給するために国内に大きな雇用も生まれる。これが非関税障壁と外国から言われるならば、国内への太陽電池パネル工場の新設に関しては、その費用を国が無担保で貸与し、その生産量や雇用創出などの効果を評価して、条件を満たせば30年間無利子で貸与するとしても構わない。国が捻出するお金を最小にするならば、他にも例えば福島県内に特区を作り、ここに太陽電池パネル工場を誘致し、ここに再生可能エネルギー関連の業種にに限定し、更に高齢者限定で「最低賃金の大幅に引き下げ」を行い、安い労働力を確保することで価格競争力を高めて安価な太陽電池パネルを供給できるようにしても良い。これに合わせて、出稼ぎ高齢者の宿泊施設を国が確保し、この施設に医療機関を併設して集中的且つ効率的な健康管理と回数限定で帰省費用を援助すれば、規模はどの程度かわからないが年金受給年齢の引き上げなどに対する高齢者対策と、福島の再生のためのお役にも立てるかも知れない。

この様に、かなり無茶なことをやりながら、雇用の創出と価格低下の両立の筋道を作るのである。これらに合わせて、電気料金についても戦略的な設定をするのである。この夏も話題になったが、一般家庭では太陽が照る昼間の時間を相対的に高めに設定し、それ以外の時間の価格を抑えれば、売電するより自宅で消費した方がお得となる。今年は選択可能なメニューとして提示されたが、昼間の料金の割増額を抑え目にする代わりに、すべての家庭に強制的に導入するのである。電気料金が2倍になるような耐え難いインパクトを避けるためなら、一部の家庭で料金が若干値上がりするのは致し方ない。それでも死活問題となる低所得の家庭に対しては、別の対処方針で望むしかない。

ついでに言えば、廃炉ビジネスで世界で儲けることができるような技術を確立することも忘れてはならない。これは世界で儲けるための新たな産業の創出であるとともに、今後の廃炉コストを低減するためにも役に立つ。現在はフランスが世界のダントツかも知れないが、福島は(言葉は悪いが)丁度よい実験台になる。福島にこのための研究施設を設立し、将来的な廃炉のハードルを引き下げることも、脱原発依存の実現性を高めることになる。

これらの具体的な提言の有無が、その政党の本気度と政策実現性のバロメータになる。一見、一時的には原発再稼働につなげるから、反原発の人からは賛同する選挙票が得られないかも知れない。しかし、見る人が見れば20年後、30年後の実現性としてどちらに軍配が上がるかは一目瞭然である。

政治とは結果責任である。それと同時に、有権者側の責任は、結果責任を覚悟している政党を見切るところにある。まやかしのマニュフェストに騙されてはいけない。

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