けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

既にプーチン大統領は「損切り」を行ったのか!?

2014-03-31 23:56:28 | 政治
相変わらず混沌としたウクライナ情勢であるが、ロシアやウクライナ問題と言えば日本での第一人者は元外交官の佐藤優だと思い、ウクライナ問題について語っているサイトを探してみた。その中で、「文化放送『くにまるジャパン』3月7日放送分〈佐藤優〉ウクライナ問題」で、佐藤優氏がウクライナ問題について語っており、さらにこの内容をルビーさんとい方の「太平洋戦争史 Plus シルバーバーチ」というサイトで文字お越しをしていた。以下がそのページである。

ウクライナ問題・ロシアのクリミア併合(1 / 3)【佐藤 優】
ウクライナ問題・ロシアのクリミア併合(2 / 3)【佐藤 優】
ウクライナ問題・ロシアのクリミア併合(3 / 3)【佐藤 優】

細かいところをここで要約するつもりもないので、今日は幾つか個人的に気になった点、ポイントだけをピックアップしてコメントしてみる。私の過去のブログ、「ウクライナ情勢を再考してみる(1)」「ウクライナ情勢を再考してみる(2)」でも書いた通りで、ウクライナ暫定政権に含まれる極右勢力が気になり、それが元でウクライナの内紛が気になっていたのだが、佐藤優氏の上記のサイトでもその辺の事情を詳しく説明していた。佐藤氏曰く、第2次世界大戦ではウクライナは、30万人がナチス・ドイツ側につき、200万人がソ連側に付いて戦ったという。ナチス側の人々はバリバリにユダヤ人虐殺に関与し、ポーランド人やチェコ人を殺害しまくったという。西ウクライナ側にはこれらの勢力が多くいて、終戦後も反ソ連闘争を続けていて、ソ連の支配を嫌った人々がカナダに渡り、現在ではウクライナ系のカナダ人が120万人いるという。これらのウクライナ・ロビー勢力の影響を受けて、カナダ、イギリスなどが強硬なロシア制裁を主張しているのだという。西ウクライナの暫定政権の勢力の中には、この様な反ユダヤ、ウクライナ民族至上主義の人達が少なからず含まれていて、これらの勢力を称して佐藤氏はウクライナを「毒サソリ」と呼んでいる。クリミアに侵攻したロシアを「毒ヘビ」と呼ぶならば、まさに毒ヘビと毒サソリの戦いだから、一方にノー天気に加担することのリスクは推して知るべしということらしい。

また、ティモシェンコ元大統領も一部では持て囃しているかも知れないが、所詮は汚職などで腐敗したウクライナのお家芸の継承者であり、結局はお金で右にも左にも行くということらしい。だから、ヤヌコビッチ元大統領が失脚してバラ色の未来が約束されたのではなく、単に毒ヘビが毒サソリに代わった程度の差でしかなかったりするのである。更には、ウクライナ人、ロシア人、クリミア・タタール人などの民族間の問題は非常に根深いものがあり、ウクライナ人はイスラム教系で、その中にはアルカイダの勢力も存在するという。だから、この民族紛争のリスクが非常に高まっており、一旦、民族紛争が着火するとどうしようも手が付けられなくなり、その点がロシアにとっても全く同様に「リスク」であるという。これはロシアと我々日本との共通の利害であり、佐藤氏的にはこの辺を共通認識することで問題解決に繋げるというのがポイントの様である。この様な視点で見れば、佐藤氏的には現在の日本政府の対応は十分に及第点を与えられる内容であり、評価できるとのことである。

とまあ、手前味噌ではあるが漠然と私なりにブログで書いていたことは概ね外れていなかった様である。ただ、少しだけここには記されていないことに気が付いた。私は過去のブログ「安倍総理はオバマ大統領に、ウクライナ問題の「損切り」を早期に促せ!」で、例えば今後起こり得る同様の事案に対するルールの確立を求めたり、クリミア自治共和国の住民投票の公平性を担保したりと、何らかの許容できる妥協点を探し、早期に損切りを行うことで事態がこれ以上悪化することを避けるべきだと書いてきたのだが、実際には事態はもう少し先に行っていたのかも知れない。と言うのは、ウクライナの西ウクライナと東ウクライナでは上述のように民族や宗教や様々な意味での対立があり、本来であればロシアは欲を出せば東ウクライナの一部も手放さずに済んだのかも知れない。しかし、その欲は民族紛争に繋がるリスクがあり、今ここでロシアが直接介入するのはマイナスの要素が高いのだと思う。勿論、東ウクライナにもロシアに繋がりの深い軍事産業があったりするから、その手の機密事項の漏えいなどは十分なリスクではあるが、それを何処かで見切りをつけて、最低限確保したい利益としてクリミア自治共和国の軍事施設のみに的を絞ったと見ることができる。つまり、ロシアのプーチン大統領はウクライナに対する損切りを早期に行い、その見返りにクリミア自治共和国を手に入れたのである。明らかに決断力が高く、リスク管理の意識が高いと言わざるを得ない。さらに言えば、所詮はウクライナは汚職天国の国だから、数年後には再度、同様の混沌とした状態になる可能性があり、天然ガスの価格を暴騰させたりすれば、ウクライナ国内での国民の鬱憤が溜まり、その際に振り子が逆に振れれば親ロシア政権ができるかも知れない。そこで一発逆転を狙った方が、よっぽど安全で確実な対応なのである。

つまり、オバマ大統領がやるべきことをもたついている間に、既にプーチン大統領はそれをやってしまっているのではないか?私にはその様に見えてきた。今後の展開はまだ見えないが、佐藤氏の見立てを参考にすれば、この辺の状況を安倍総理とドイツのメルケル首相がオバマ大統領にどの様に諭すかがポイントになるのかも知れない。

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内心、心臓がバクバクな朴槿恵大統領~Part II~

2014-03-29 23:59:41 | 政治
それが何を意味するのかは完全には良く分からないのだが、明らかに何かが変わったことは間違いないと思わせる記事が幾つか続けて聞かれるようになった。習近平国家主席のあからさまな日本批判のことである。

産経新聞2014年3月24日「安重根記念館、習主席『私が建設指示した』朴大統領に 中国主導で日韓にくさび

これはオランダ・ハーグでの日米韓首脳会談の直前に、同じくハーグを訪れていた習近平国家主席と朴槿恵大統領が会談を行い、中韓連携で日本を貶めようという結託を確認し合った会談の中で出てきた話である。習主席が「私が記念館建設を指示した。両国国民の(安重根への)思いを強め、(中韓の)重要な結び付きとなる」と切り出し、朴大統領が「両国国民から尊敬される安重根義士をしのぶ記念館は、友好協力の象徴になる」と応じたという。加えて、「さらに習氏は、日本統治に抵抗した朝鮮人部隊『光復軍』を記念する石碑が近く、部隊の拠点があった中国・西安に完成すると説明した。朴氏は『意義深く思う』と述べたという。」とあるように、求められる以上に答えた形である。

また更に、下記の記事なども注目を集めている。

産経新聞2014年3月29日「『日中戦争の悲劇、鮮明に記憶』中国主席、ドイツで対日批判

先日もロイターの記事「アングル:中国が『反日宣伝』を強化、習主席訪独で第2次大戦に焦点か」を引用したが、中国が反日宣伝にドイツのホロコースト記念館を利用しようとしたがドイツに拒絶され、仕方がないのでベルリン市内での講演の中で反日批判を繰り広げたという。お得意の日本の軍国主義による死者3500万人とか、南京大虐殺で被害者30万人とかいうプロパガンダを繰り返した。ドイツという国が東西分断の悲しい歴史があったり、中国や韓国が目の色を輝かせるホロコーストという究極的な非人道的な暗い過去が、日本と同一視させようとする彼らに好都合だから喜んでドイツを利用しようとするが、ドイツは当然ながら胸を張れる歴史ではないので、そんなことをしないで欲しいと迷惑千万なのだが、調子づいて結局反日宣伝を繰り広げたという訳である。

これらの流れはちょっと前までとは雰囲気が異なっていて、短絡的な思考しかできない朴大統領からしてみればどうでも良い話だが、習近平国家主席からすれば自らの取り得る選択肢、カードの数を少しでも制限しないようにするために、反日宣伝は自分よりも下の部下にやらせておいて、自分は少し高い位置から仲裁役に買って出て相手(日本)に恩を着せる選択肢も残していたはずである。という以前の話として、安重根という建前上は独立運動の活動家のテロ行為を正当化すれば、新疆ウイグルやチベットの独立運動の正当性にも繋がってしまうから、安重根記念館などの動きに対しては少し距離を置いて高みの見物をするのがセオリーであったはずである。最低でも、その判断の決断には関与していないというポジションが必要だと思うのだが、それが最前線で「私が指示した」とまで言うのだから、これは相当なリスクを伴う話だと私は感じている。
では、これは誰に対するどの様なメッセージなのだろうか?

私の理解では、これは朴大統領への「あなたは、既にルビコン河を渡っているのですよ!分っていますか?」というメッセージなのだと思っている。つまり、アメリカが強く主張する、日米韓の3か国の強固な関係で北朝鮮にも中国にも対峙するという基本姿勢に対し、中米韓を基軸とする関係の上に立ち、過剰にアメリカに軸足を置いたりせず、寧ろ多少の距離を維持することを強要するものである。これまでも韓国に対して恩を売った経歴はあるが、オランダ・ハーグでの日米韓首脳会談の直前と直後にこれだけあからさまなことをするのだから、相当、朴大統領は焦ったのではないかと思う。穿った見方をすれば、朴大統領がオランダで体調不良でオランダ国王主催の晩餐会を欠席したのも、その衝撃が大きくて心穏やかではなかったり、今後の対応に追われていたのが原因ではないかとすら感じてしまう。そう考えれば、首脳会談で終始苦虫を噛み潰していた朴大統領のあの顔つきの背景には習近平国家主席への配慮があり、テレビカメラが消えて油断したところで笑顔で安倍総理と握手したところを写真に撮られたのは、韓国国民に対してマイナスではなく、韓中関係にマイナスと捉えるべき事件なのかも知れない。

過去にも書いたが、やはり朴大統領の内心はバクバクものなのではないかと改めて感じる。この窮地を脱するには中国が日本を歴史問題で叩きのめしてくれることに期待するしかないが、ドイツでの反応を見ても、それほど成果が上がっている様には見えない。例えばロイターやウォールストリートジャーナルには関連の記事は見つけられなかった。韓国はこれから1か月が正念場である。オバマ大統領の要求を拒否して反日を継続するのか、要求を呑んで日本との協力関係の構築を目指すのか・・・。どちらに進んでも、針の筵であることには違いないはずである。

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遅ればせながらの日米韓首脳会談の振り返り

2014-03-28 23:59:37 | 政治
日米韓の首脳会談が先日開催され、それなりに色々な報道がなされた。日本の新聞はそれなりに大きな扱いを見せたが、韓国の新聞はどちらかといえば控えめな扱いであった。今日はこの辺のコメントをしてみたい。
まず、韓国とアメリカの報道を少し比較してみたい。

中央日報2014年3月27日「安倍首相、韓国語のあいさつに…朴大統領“無表情”
ウォールストリートジャーナル2014年3月26日「日米韓首脳が会談、北朝鮮問題で連携強化へ

比較的韓国の報道は淡白で、「会談はしたけど実りは小さい」「会わないよりはまし」という論調が多い。そんな中では中央日報の記事が比較的多くの紙面を割いていたので参照してみた。ただ、こちらにしても淡々と事実を掲載しているにすぎず、安倍総理の韓国語での挨拶を朴大統領が無視した事実には触れているが、外交上の失礼さなどを指摘することはなく、「冷却した日韓関係を象徴した出来事」という認識を示したに過ぎない。なお、その他の新聞などでも、この日米韓の首脳会談の記事というよりは、これを肴に「だから日本は反省しなきゃならんのだよ」的な上から目線のこれまで通りの主張や、「日本がベタ降りすれば関係改善につながる」的なご都合主義的な論調が続く。

一方のアメリカはどうかと言えば、ウォールストリートジャーナルの記事を見る限り、会談の実りの小ささよりも「会うことがまず大事」という部分に着目し、それなりに意義深いものであるとの論調である。というより、もう少し正確に言えば、今回の会談に至った背景にはオバマ大統領の熱心な働きかけがあり、そのオバマ大統領の成果として評価しているという感じだろうか?会談での内容は、当然と言えば当然の当たり前の内容であり、それ自体に何も目新しいものはないが、4月の訪日、訪韓での更なる追加の成果を予感させるひとつのきっかけとして期待感が表れている。この辺は少しノー天気な感じは否めない。ただ、これがアメリカの立場というのは分かり易い内容である。

もう少し韓国の話題に戻るなら、直接首脳会談とは関係ないが、朝鮮日報では下記の様な記事もあった。

朝鮮日報2014年3月28日「統一で韓日が協力すれば、歴史和解の転機に

ポイントとしては、韓国主導で朝鮮半島が統一されれば今後も日韓関係の劣悪な状態が続くが、日本と韓国が共同して半島統一にこぎつけられたなら、それは日韓関係の改善にも繋がるかも知れないという内容である。類似の記事で、以下のものもある。

朝鮮日報2014年3月28日「南北統一で最大の利益を得るのは日本

この「利益を得るのは日本」との発言は日本人が行ったようだが、それをわざわざ取り上げている。この辺の事情が意味することは何か?それは、韓国が北朝鮮問題で八方ふさがりの中、日韓関係はどんどんと冷え込み、中国との二股外交でアメリカからも愛想を尽かされ、現実的には軍事的衝突が起これば致命的な被害が避けられない韓国において、いよいよ崩壊も近いとアメリカが分析している北朝鮮を暴発させないためのアプローチとして、これまでの毅然とした態度や威圧による北朝鮮側からの譲歩を待ち望む戦略から、損得勘定をより前面に押し出し、「絶対、統一した方が得だよ!」「統一のために、協力した方がお得に違いないよ!」とアピールしている様にも見える。それは、朴大統領のリーダシップから期待するものではなく、周りの外野、例えば日本政府の方から申し出る形でなし崩し的に上手く行くことを期待しているような感じである。それが出来るなら、何年も前に既に統一が成し遂げられている筈という議論を抜きに・・・。

それと、あまり本質的ではないが、最初の中央日報の記事の中でオバマ大統領が朴大統領を「朴首相」といい間違えたことが記されている。何でこんな記事が・・・と思いもするのだが、推測としては「オバマ大統領からは、自然に『朴大統領』との呼びかけが出来る関係ではなく、呼び慣れていないような関係」というニュアンスを感じ取り、それを暗に批判的に紹介したのかも知れない。映像で見る限り、安倍総理がオバマ大統領と親しげに、TPP等を含めて突っ込んだ会話(核論という意味ではなく、単なる挨拶以上の会話という意味)をしているのと対照的だという意味を込めて・・・。また、記事の最後に不愉快な記述があり、「安倍首相はこの日、スーツのジャケットに北朝鮮拉致日本人団体を象徴するバッジを付けて登場した。この日の会談の核心議題が北朝鮮問題であることを勘案した計算されたジェスチャーだという解釈が出ている。」と物知ったように解説している。しかし、日本人なら知っていることであるが、安倍総理はスーツで表舞台に出る時は必ず、ブルーリボンのバッチを身に着けている。私は、公の場でこれを身に着けていない姿を見たことがない。だから何ら特別な意味はなく、いつも通りのことをしているだけなのだが、とにかくイチャモンを付けたいということらしい。

さて、最後に日本の報道について加えておく。既に国内では目にしている通りで、今更具体的な紙面を示して説明することもないからこの辺は省略する。しかし、明らかに日本の報道では何よりも朴槿恵大統領の無礼さに注目が集まっている。安倍総理が韓国語で丁寧に挨拶の言葉を語りかけたが、朴大統領は苦虫をかみ殺すような顔つきでそっぽを向いて無視を決め込んだことを受け、流石にそれはないだろうというニュアンスが強い。その後も新聞記者から握手を求められたが、こちらも無視を決め込んで握手をしなかった。少し遡れば、日米韓の首脳会談の開催の発表も、通常の大統領府からの発表ではなく、外交部からの発表ということで1段格を落とすかのような扱いをしており、全く持って「嫌々会談」のオーラを全身で出し続けていたという扱いである。それらの記事を見て、やはりそうなるのだな・・・と個人的には納得していたのだが、昨日の報道ステーションの中ではその会談の後、一般の記者団のいない場所(少数の社のカメラマンのみ同行が許された場所)ではニコニコ顔で朴大統領は安倍総理と握手をしていた証拠写真が紹介された。私は他の記事などではこの写真を見ていないので、一体、テレビ朝日がどの様にその写真を入手したのかが疑問だったが、明らかにその写真は先ほどの首脳会談の雰囲気とは異なるものであった。あくまで推測なのだが、あのおばさんは極めて打算的で、表の顔と裏の顔がある二重人格的な指導者であると感じる。もし、意志が強く筋を曲げない毅然とした指導者であれば、裏舞台でも安倍総理に冷たくすれば良い話である。しかし実際はどうかと言えば、テレビの前では笑顔で握手などしたら支持率が下がってしまうので無礼な態度を取りまくる一方、カメラの無いところに来ればオバマ大統領に媚を売ったり、困った時には日本に助けてもらいたいと思うから、笑顔での安倍総理との握手も厭わない。上述の損得勘定で半島統一に協力して欲しいという声は、この様な朴大統領の態度ともリンクしているように思う。ちなみに、韓国ではこの笑顔の握手の写真に関する報道はなされていに様である。

話を戻せば、多分、その明らかに表と裏のある態度は、オバマ大統領にも「信用できない人間」という印象を与えたのではないかと私は予想する。数年前、日本にもその様な信頼できない指導者がいた。そのことをオバマ大統領は覚えているに違いない。この様に考えると、今回の首脳会談は安倍総理にとっては収穫だったのではないかと思う。これは4月のオバマ大統領訪日に繋がる展開だろう。

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第3の矢の成否とクリミア併合の再来の関係

2014-03-25 23:58:22 | 政治
数時間後には日米韓の3か国首脳会談が予定されているが、朴大統領は体調不良だということで、何とも怪しい空気が流れている。まさか仮病で休む小学生じゃあるまいか・・・と思えるほど、何ともだらしない感じがまた良かったりする。結果が出たらまたコメントしてみたいが、今日は手短に中国との関係についてコメントする。

昨日もオバマ大統領と習近平国家主席の会談の話題が紙面を賑わせていたが、ウクライナ問題に関連しては結局煮え切らない状況で、対ロシア制裁に同調もしないがロシアとも組しないということで良くも悪くも大した動きがなかった。この辺の事情は前日のブログでも「中国というパラメータに過剰に反応する必要はない」と書かせて頂いた。ただ、多くのマスコミなどはロシア問題を上手く解決できないと、中国が尖閣を奪取しにくると考えているようだが、その可能性は限りなく低いと個人的には考えている。その背景を示唆する記事が下記の記事である。全く関係ない話だが、こんなところが需要なのだろう。

産経新聞2014年3月25日「ロシアからの資本流出、1~3月で7兆円に 制裁でさらに加速も

タイトルを読んで字のごとくの記事であり、ウクライナ問題を受けた不安定要因に嫌気を指して、欧米の資本がロシアから引き上げられているという話題である。7兆円という額がそう馬鹿にならない数字なのは言うまでもなく、今後もこの様な動きが加速すると、ロシアと欧米との兵糧攻め状態に陥ることになる。ただ、プーチン大統領は意外にも冷静で、何処かで引き返せる可能性を残すために、欧米の制裁とのバランスを取りながらの制裁合戦を行うはずで、市場マーケットの反応に対して制裁を科すことは出来ない。というか、そんなことをすれば逆効果なのは目に見えているので、死守するべきところを死守しながら妥協点を探っているのかも知れない。ただ、プーチン大統領がこの様な駆け引きが出来る状況である背景には、この資本の流出が10兆円規模で済んでいるからである。

これが中国の場合には事情が全く異なる。横道に逸れれば、先日のブログにも書いたが、中国が保有するアメリカ国債の残高は100兆円を優に超える。日本も同じく100兆円を優に超えるのだが、そんな無茶はしない日本と違い、中国の100兆円超の保有は十分に脅しとしては効果がある。アメリカが、習近平国家主席からの求めに応じて新しい大国関係の呼びかけに答えるのは、この様な背景から無視できない、怒らせてはいけない相手として捉えているからである。

では日本と中国はどうかと言えば、国債を介したブレーキは相互にないのでアメリカの様な事態にはなっておらず、その意味では相互の経済依存度が高いと言えど、第1次世界大戦当時のドイツと英仏の様に戦争に陥ってもおかしくはない。少なくとも、尖閣をめぐる局地戦的には争いが起きても何ら不思議はないはずである。実際、習近平国家主席も含めて過激な対応を取っているので、軍部が暴走することは十分に有り得るはずである。しかし、ここで中国が戦争を始めたら何が起こるのか・・・。現在の中国は、シャドーバンキングにまつわる問題が深刻で、何時、どのタイミングでバブルがはじけてもおかしくない状況である。昨年上旬頃から、直ぐにバブルがはじけてもおかしくないと言われて1年近くが経ち、現在もそのリスクは変わらない。不動産バブルは既に崩壊の声が徐々に聞かれており、一方でリコノミクスも大きな改革を進めることも困難なようで、その様な経済の不安定要因を最大限、取り除きたいのが中国の指導部の位置した意見だろう。習近平国家主席が汚職の撲滅に必死になるのも、国内の不安定要因の除去が目的であろうし、その様な中で国内要因はおろか、海外の投資家に対しても不安を極限まで煽るような戦闘行為に手を染めれば、今回のロシアからの資本の流出とは比較にならないインパクトが訪れ、そのインパクトが国内問題の暗部をえぐり、ドミノ倒し的に連鎖して大混乱に陥るリスクが無視できない。その様な大混乱は、少なくとも現政権の存続に対しては致命的であり、それが軍部によるクーデターなのか民衆によるクーデターなのかは別として、現在の悠々自適の生活を一変させる変革に繋がることは間違いない。実際問題は、その様な足かせが、中国指導部の暴走に対するブレーキになっているのだろう。

その意味では、それ程のインパクトを日本経済が受けることになれば安倍政権も吹っ飛ぶだろうが、それを回避するための足腰を強める政策がアベノミクスである。尖閣有事の際の経済ダメージの大きさを比較したとき、その様な事態への耐力を強めることは結果的に中国のブラフの効力を弱め、それは(軍事的ではなく)経済的なチキンゲームに陥った時の勝敗を決める要素となる。現状の日本に中国が攻めこめない理由は、明らかに民主党政権時代の日本経済からの復活が原因であり、尖閣漁船衝突事件における中国の強気な対応と現状との差がそこに見られる。

ウクライナ問題は我々に幾つかの教訓を与えたと思うのだが、その一つには、表立った制裁よりも実際には市場マーケットの動向というパラメータがその後の各国の行動を支配し、何処かで妥協点が見出されるとすればその様な結果が織り込まれた後で、落ち着くところに落ち着くということなのだろうと思う。その市場マーケットの動向が見切れないウクライナ周辺では、実験的な試みから今回の様な事態を招いたが、意外に日本と中国の間には、その様な実験をする余地がないということなのだと思う。ただ、この状況が有効なのは、少なくとも日本の国力が上向きである間だけであり、アベノミクスが失速したらどうなるか分からない。中国の国内問題が短期的に改善する訳がないと思うが、アベノミクスの失速の可能性はゼロではない。

その意味では、第3の矢の成否がクリミア併合の再来の有無を左右すると考えるべきかも知れない。

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ウクライナ情勢を再考してみる(2)

2014-03-23 23:57:21 | 政治
昨日に引き続き、ウクライナ情勢についてコメントを続けてみよう。

昨日のブログでは、欧米側(ウクライナ暫定政権を含む)の言い分とロシア側の言い分について、あまり色眼鏡をかけずに公平に見るならば、多少の優劣の差はあるにせよ、双方の言い分にはそれなりに瑕疵があり、一方的に片方が悪いとはとても言えそうでないということを書かせて頂いた。

もう少し言わせて頂けば、今回、クリミア自治共和国にばかり目が行っているが、これから3年後に何が起きるかという予測をするならば、(それが起きるかどうかは確率的な議論でしかないが)場合によっては今回の逆パターンが起きてもおかしくはない。具体的に言えば、例えばロシアがウクライナへの天然ガスのパイプラインを止める行為に及んだとすれば、少なくともガスの備蓄がある訳でもないウクライナとしては、即座にその状況に対応できないであろう。ドイツなども慌てるだろうが、まだ、戦略物資である天然ガスの輸入先に対する変更の耐性はましであろう。しかし、百貨店に行ってお買い物をするのとは異なり、エネルギー資源の扱いはそう簡単には切り替えられない。例えば液化天然ガスであれば、船で輸送したLNGを液体のまま保管する施設がないことには輸入することもままならない。陸揚げしても保管できなければ、結局、そこから先の国内津々浦々まで安定的に供給することも出来ず、現在やりくりできる範囲で1~2年ぐらいはやり過ごさなければならない。ウクライナにまで融通を効かせる余裕などないから、そのとばっちりを最も受けるのはウクライナである。ただでさえデフォルトの危機であるのに事態はさらに深刻になり、欧州諸国もウクライナに対して痛みに耐えることをより強く求め、その結果、ウクライナ国民のストレスは益々溜まることになるだろう。そんな中、暫定政権の極右勢力が調子づいて更に過激になると、暫定政府側も一枚岩とは行かなくなり、政権の基盤は益々弱まることになる。人々の暮らしが厳しくなれば、ウクライナの伝統ともいうべき汚職が政権内で増殖し、それはヤヌコビッチ元大統領時代と同じだという話になる。欧州の側にすり寄ったが為に、ウクライナの政治・経済状況が更に悪化したとなれば、その時に親ロシア的な反政府勢力が決起して、大規模なデモに発展するかも知れない。そこで暫定政府側の極右勢力が暴走して流血沙汰になれば、今度は反政府勢力にロシア側が支援をして非軍事的に逆クーデターが成立してしまうかも知れない。この時、今回のクーデターを棚に上げて、欧米諸国は「クーデターなんて、非合法的な手段は許せない!」と言うのだろうが、全くもってお互い様としか言いようがない。

これは単なる思考実験だが、意外に現実味を帯びているのではないだろうか?一時期、オレンジ革命と持て囃されていた欧米よりの政権がいつしかヤヌコビッチ政権に移り変わったという史実は未来をも暗示するものである。だから、その様なブーメランを後々受けないようにするためには、とにかくヒステリックな対応をするのではなく、まずは事態の更なる悪化を避けるための対話と、相互にお互いに譲歩を求めるならば、相手が何を求めるかに耳を傾けなければならない。この様に私が言う背景には、少なくとも、そう、少なくとも現在のロシアの方が中国よりも遥かに対話が成り立つ国であるとの前提があるからである。まかりなりにも制度的には民主的な選挙制度が確立し、既に選挙で選ばれた指導者により国家が統治されており、一党独裁などではないというのは、何処かの国とは雲泥の差である。テレビ局のキャスターが、プーチン大統領を堂々と批判できる土壌があるのも雲泥の差である。国家の軍隊が、国民のための軍隊ではなく一党独裁する党のための軍隊などというのは、全くもってお話にならない。「力による現状の変更」というが、(背景に「正義の名のもとに・・・」という弁解があるにせよ)イラクへの軍事侵攻であったりアフガニスタンへの侵攻であったり、あの様な戦闘をイメージする我々にとっては「力による現状の変更」にも程度の差があり、相当なソフト路線の様に見えてしまう。さらには「ズデーデン割譲の再来」とも言われるが、歴史的な背景を見れば、クリミア自治共和国が仮にロシアに併合されずに、純粋に独立国となるのであれば、それは寧ろ正当な独立運動と見なされてもおかしくはない。だとすれば、ロシアへの編入をレッドラインと定め、軍事基地の継続的利用などを許容する条件で、クリミア自治共和国の独立性をロシアに迫ったなら、もう少し落としどころは探せたかも知れない。

しかし、実際に欧米諸国がとった制裁はどの様な物であったのだろうか?ロシアの政府高官に対するアメリカや欧州での資産凍結など、ロシア相手には到底、有効なダメージを与えることは出来ない。一方で、政治的決断を求められている政府高官の反米感情を高める効果は十分に高く、相手に「譲歩を促す」ための戦術ではなく、相手を「エスカレートさせる」ための戦術に近い。私に言わせれば、その様な制裁が機能するのは北朝鮮と日本ぐらいである。北朝鮮に対しては、バンコ・デルタ・アメリカの講座凍結が奏効したが、それは北朝鮮が世襲制という権力の正当性が乏しい世界の中で、幹部連中に美味しい汁を吸わせることで手なずけて政権を維持するというという手法を取っていたからで、その手なずけるための美味しい汁を兵糧攻めにするような戦略だったから意味があった。日本では全く意味が異なるのだが、国益よりも私利私欲で行動する政治家が多い国では、国益を損ねてでも時の政権の足を引っ張り、ないしは同一与党内ですら権力闘争に国益を無視したお遊びを利用しがちであり、その様な議員にネガティブキャンペーンを張らせるには丁度良い材料と言えるのである。しかしロシアという国であれば、少なくとも欧米諸国ほどには民主主義が徹底されておらず、一方で国益尊重の意識が高いから、資産凍結に伴う個人の損得勘定よりも国益を優先すべきとのプレッシャーの方が強いはずである。結果として、事態は単にエスカレートへと導かれることになる。当然、ロシアはロシアでこれに対抗するから、結果としてウクライナ国内での親欧州&反ロシア勢力と親ロシア勢力の対立に火に油を注ぎ、事態はますます過激になる。我々が最も意識すべきウクライナ国内での対立に対して全くケアする意識が感じられず、ますます不可逆過程の道を突き進み、行きつくところまで行きつく事態になりかねない状況である。

そもそも、(どなたかが指摘されていたが)ドイツやイギリスなどに比べてロシアの生活レベルは貧しいものであり、その様な国は経済制裁には耐性があるのだという。一方で、経済制裁合戦に至るときには、先にも書いたようにロシアは天然ガスのパイプラインを止めるという強硬策に打って出る可能性がある。勿論、その分輸出が減るので自らに思いっきり返り血を浴びることになるのであるが、軍事的衝突による損失に比べればまだまだかわいいものである。であれば、軍事衝突を避けるために敢えて経済レベルでハイレベルのチキンレースを仕掛けてくる可能性はある。本気で軍事衝突を厭わないぐらいの覚悟などできていない欧州のことを思えば、このチキンレースの勝者はおのずと知れてくる。決して欧米が勝者にはなり得ないのである。

少し話は逸れるが、では効果のある制裁とはどの様なものだろうか?例えば中国とアメリカが対立し、相互に経済的な制裁を課そうとしたとする。既に相互の経済的依存関係が強いから、表立って「制度上の明示的な制裁」を行うと派手に目立ってしまうが、例えば中国が抱えているアメリカ国債を少しづつ売却する素振りをアメリカに見せれば、多分、アメリカ国民は怯えまくって「中国と心中する気か?」と現在の政権に揺さぶりをかけるであろう。あくまでも国債の売買は商行為であり、政治的対立とは関係なしに時に売ったり時に買ったり、それは様々な動きが日頃よりあっておかしくない。しかし、その商行為に国家的な意思を感じる事態になれば、テコの原理式に僅かな売買だけでアメリカ国債が大暴落し、市場に大打撃を与えてもおかしくはない。アメリカが「テメー、コノヤロー!」と食って掛かっても、「えっ、何のこと?」と中国は開き直れるのである。明示的な動きではないから、相手には考える時間が十分に与えられ、その時間が次なる疑心暗鬼を生むのである。ちなみに、本気で大量に国債を売却すると、本気でアメリカ経済に大打撃を与え、その返り血は自らに返ってくる。だから、返り血が限定的な範囲でブラフを仕掛けるというのは丁度良いころあいだろう。この様な、実効性のある戦略が好ましいのであろうが、この様な手はロシア側のみで行われているようだ。プーチン大統領が今回の騒動の中で(僅かではあるが)ロシアが保有するアメリカ国債を売却したという噂もあるくらいなので・・・。

これに対し、イギリスなどからは「G8から永久追放!」などという声まで聞こえてくるのだが、この様な流れを見ていて、正直、「この人達は、一体、何処へ向かおうとしているのだろう?」との疑問を抱かずにはいられない。まかりなりにも一国の指導者たる人達は、戦略性のある合理的な行動を取るべきであり、その合理的な戦略があるのなら、中長期的にその後の展開を当然説明できて然るべきなのだが、見た感じでは「場当たり的」な行動ばかりが目につくのである。

最後に少し中国についてのコメントをしておこう。中国は完全に「欧米側の偏ったロシア批判とは一線を画し、あくまでも中立を貫く」と言うスタンスを示し、ロシアからは感謝されている状況である。「上手く世渡りしているなぁ」という面と、「これ以外に選択肢がなかっただけ」という見方もある。国内的な論調では、今回のクリミア自治共和国のロシア編入に際し、「これを許したら尖閣諸島を中国に取られても文句が言えなくなる」として、尖閣のことを考えれば「ロシアを非難せざるを得ない」と言いたいのだろうが、実際にはそう単純ではない。東京財団研究員兼政策プロデューサーの小原凡司氏が先日テレビでコメントした言葉は目から鱗であったが、小原氏曰く、「中国は尖閣諸島問題において、日本の方が『力で歴史的な事実を捻じ曲げて、尖閣の実効支配を試みている』と主張しているのであるが、クリミアの編入を世界は『力による現状の変更』と見ているので、中国がそれを容認すると、中国国内では『日本による尖閣の編入を認めることに繋がる』から決して認められないのである」と解説していた。マスコミ的には日本の方にとってこそ都合が悪い事態と思っていいるようだが、中国の方はもっと都合の悪い事態であるということである。この様に、中国はさりげなく思わせぶりなことを言って、ロシアをその気にさせようと試みているが、ロシアがその気になっても中国は本気にはなれないという背景があり、中国というパラメータに過剰に反応する必要はないのである。

まあ、色々書いてきたが、現状はアメリカも欧州もロシアもウクライナ国民も、全てがヒステリー状態に陥っている。今必要なのは火に油を注ぐことではなく、登場人物の精神状態をクールダウンすることである。特に、ウクライナ国内の内乱を平和的に収束に向かわせるためには、欧米とロシアの対立を収束に向かわせる必要がある。頭に血が上った人たちを何とかするには、冷静な人が間に割って入る必要があり、今、その役割を求められているのは安倍総理なのだろう。オランダ・ハーグで開かれる核安全サミットにて、何らかのアクションを期待したい。少なくとも、短絡的な「欧米によるロシアへの一方的な非難」の場にしてはいけない。

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ウクライナ情勢を再考してみる(1)

2014-03-22 23:52:43 | 政治
ここ最近、本業の仕事の方があまりに忙しくて、全くブログを更新することができなかった。それでも世の中はドンドンと動いていて、日米韓の首脳会談が決まったり、一番大きく動いたのはウクライナ情勢であろう。今日は、少々、私の予想に反して過激な状況に発展してきているこのウクライナ情勢についてコメントしてみたい。

書いているうちに、結構な長文になりそうなので、内容の要約を先に書いておく。

まず最初に色々と論点はあると思うのだが、どうも、欧米諸国の動きや報道の在り方など見ていると、明らかに欧米の価値観で物事が議論されている。その根底にあるのは「力による現状の変更」とか「ズデーデン割譲の再来」との視点によるのだが、あまりに安倍政権に対する「歴史修正主義者のレッテル張り」的なステレオタイプの論調にうんざりしているものの立場としては、そう短絡的に受け入れる気にはなれない。これはロシアの行動を肯定しているのではなく、そう単純に物事を判断すべきではなく、少しでも着地点として好ましい状況に近づけたいと思うなら、現在のアプローチは余りに稚拙ではないかという主張である。色々とこの後説明は加えたいと思うのだが、私が感じる最大のポイント、現状の最も憂慮すべき点はロシアと欧米の対立ではなく、ウクライナ国内での同一国民間の親欧州派と親ロシア派の対立であり、半ば内戦・内乱の様な状況が起きている。その動きは日に日に過激になり、化学で言うところの不可逆反応の域に達している。そして、その様な動きは局所的な現象から全国的な動きへと変化し、その様なエスカレーションを助長する動きを、欧米とロシアが率先してやっている様な印象を受ける。結局のところ、それで困るのは誰かと言えばウクライナ国民であり、特にアメリカやイギリスの決断は自己満足でしかないのでは・・・というのが私の評価である。

以下、順番に考えてみたい。

まず、今回の問題が「国際法に照らし合わせて、明らかに違反している」と言い切れるのであれば、ロシアに対して法的な議論を徹底的に戦わせれば良いはずである。国際司法裁判所に提訴するなり、「法の下の支配」をロシアに求め、双方が公式な公開書簡で論理的に応戦するなどすれば良いはずである。欧米の主張の根拠と、ロシアの主張の根拠を正当に戦わせ、何度も何度も立論と反駁のサイクルを回していけば、もう少し平和的に解決する道を模索できるはずである。しかし、実際にはその様な論理的な議論ではなく、国連安全保障理事会にクリミアの住民投票の無効を訴える程度にとどまっており、それはつまり相手国の批判合戦でしかなく論理性の戦いではない。欧米は多数決の原理的に押し切ろうとするし、ロシアは常任理事国の特権を利用して拒否権を発動するだけである。

では、論理的に議論とは何なのか?それは、「善」「悪」というのは思ったほど単純ではなく、異なる価値観や異なる基準で論理を組み立てれば、真逆の結論も論理的に組み立てることは出来る。この対立の根底にあるのは、ウクライナ暫定政府の正当性を認めるところからスタートするか、認めないところからスタートするのかの差である。「ロシアの行為は明確に国際法に違反する!」というのはウクライナ暫定政府の正当性の上に成り立つものであり、その正当性は本来は「合法的な手続きで政権を奪取したか否か」が判断材料になるべきである。しかし、合法的で民主的な手続きである選挙で選ばれた政権ではなく、建前上は明らかにウクライナの国内法に照らし合わせれば違法な手続きで樹立された政権と言える。問題は、クーデターにより政権の転覆が起きたとき、そのクーデターというのは国際法的にどの様に正当性を評価されるのかとところにある。この辺の知識を持ち合わせていないので正確なことは言えないが、法律なりルールなるものはシステムの安定化を大前提に体系化されるものであり、素人ながらに常識的に考えれば、大腕を振ってクーデターを正当化するロジックが国際法の中で共通認識になっているとは考えにくい。特に軍事クーデターであれば国際社会はこれを拒否するのが一般的である。問題は非軍事クーデターであり、アラブの春などにおいては国際社会はこれを好意的に見ることが多いのだが、それは国際法的にその裏づけがあるからではなく、法的な議論を思考停止させ、一旦、正当性の議論をリセットすることでリセット後の議論のみに法的議論を集中するという暗黙の了解があるから成り立つ話である。当然ながら、今回のようなウクライナのケースでは、そこに利害関係がある欧米とロシアとでは、足並みを揃えてそのリセットに合意することはない。我々、欧米側の人間には「リセットの合意」をついつい前提としがちだが、本来であれば、合意がなされていなければ「リセットの正当性」は否定されて然るべきだ。であれば、現状のウクライナ暫定政府は現時点でも非合法となり得る訳で、この辺がロシアの主張に他ならない。勿論、では旧政権であるヤヌコビッチ政権に正当性があるかといえばそこまではいかないが、しかしそこから「ヤヌコビッチ政権に正統性がなければ、ウクライナ暫定政府に正当性がある」という結論を見出すにはいささか論理の飛躍がある。欧米の諸国はこの点に誤解があるのだと思う。

変な例え話をすれば、某暴力団の組織内でクーデターがあり、元々の組長率いる守旧派は警察からその組織としての正当性を否定されているのだが、であればクーデターを起こす(暴力団内では革新系の)組長が警察からその正当性を認定されるかといえばそんなことはない。両者ともに正統性がないという解はあり得るのである。この時、ウクライナ暫定政府が「ロシア系住民が多数を占める地域でも、公用語からロシア語を排除する」というロシア系住民への弾圧とも取れる行動を取るならば、先ほどの暴力団の例でいえば「暴力団の守旧派(例えば旧ヤヌコビッチ政権)と革新派(ウクライナ暫定政府)の間に割り込み、住民に飛ばっちりが及ばないように警察の機動隊(プーチン大統領の言葉では「自警団」)が街中を警備する」という選択肢があっても成り立つ話である。問題は誰が警察役をやるかという話であるが、欧米はウクライナ暫定政府側(暴力団の革新派側)に立っているから「警察の派遣」の必要性を感じておらず、その必要性を感じたロシアが電光石火でクリミアを制圧した訳である。そこには少なくとも当初は混乱などなかったのである。

しかし、現在のウクライナはどうかと言えば、親ロシア派と反ロシア派の対立が激化し、キエフ周辺でも死者が出る事態となっており、どちらかと言えば(言葉の定義上はともかく、現実としては)内戦に近い状況にある。それは、ウクライナに侵攻したロシア軍とウクライナ軍との軍と軍の衝突ではなく、むしろ民間レベルでの対立に他ならない。少なくともウクライナ暫定政府の中には、相当過激な右翼勢力も含まれていて、親ロシア派を力でねじ伏せるためには軍事力の行使も厭わないというスタンスにあったりする。日本を始め欧米の報道によれば、ウクライナで対立が激化する際には親ロシア派に問題があるかのような捉え方をすることが多いが、確かに親ロシア派にも同様に問題のある勢力はあるだろうが、話はそう単純ではない。具体的には下記の記事にあるように、まだヤヌコビッチ政権が健在だったころにデモ隊の衝突で90人以上の死者が出た際には、当時の反政府側(現在の暫定政権側)の勢力のスナイパーがデモ隊に発砲して死者が出たのがきっかけだとも言われている。

産経新聞2014年3月6日「『スナイパーの背後にいるのは新政権だ』EU高官の電話会談、ネットに流出

ことの真偽は明らかではないが、少なくともEUなどの外相レベルでその様な共通認識を持つ程度には、暫定政府側の怪しげな存在がそこに介在している疑惑があるのは事実である。この様な勢力の主張を取り入れる形で「公用語からのロシア語の排除」などがあるのだろうが、正直、私の目には「全ての国民を分け隔てなく、公平で公正なもとで平和的に政治を進める」というポリシーをそこに感じることはできない。だから、現状の内戦的な不安定性さの原因はウクライナ暫定政府のラディカルさにあり、その様な暫定政府に白紙手形を与えるかのような欧米の行動は、先ほどの暴力団の話でいえば、暴力団の守旧派か革新派のいずれかの正当性を手放しで認めているように見えてしまうのである。だから、本来、欧米が取るべき道は、短絡的な白紙委任状をいずれかの勢力に与えるのではなく、親ロシアにしても反ロシアにしても、どちらに対しても自制を促し過激で独善的な行動を戒め、国内の融和を促すような行動を取るべきであった。しかし、その様な中立性を無視して一方の側に立てば、他方からすれば一線を越える言い訳に利用することが出来るのである。だから、紛争の初期段階において、双方が交渉の中で選択肢を示しあう際に、如何にして事態がエスカレートしていない状態での選択肢を数多く列挙し、その中のひとつに双方の妥協点を導くことで、事態がエスカレートするのを回避するかが重要なのである。エスカレートしてしまったらそれは不可逆反応であり、元に戻るには相当なエネルギーを必要としてしまうのである。上述のスナイパーの話は、事態を元に戻せない様にエスカレートさせるための術であり、この様な流れに乗せられてしまっては駄目なのである。

私の感覚では、欧州諸国はその力を利用して、現在のウクライナ暫定政府内から過激で急進的な勢力を排除するように勧告することは可能なのだと思う。その後の援助の絶対条件とすれば良いし、その様な試みを通じてウクライナ国内の過激な親欧州派と親ロシア派の対立の芽を早めに摘み取るような動きを示せば、少なくとも内戦的なリスクを抑えることは出来たのだと思う。そして、ロシア語の公用語としての継続を約束させ、クリミア自治共和国内での疎外感を緩和させれば住民投票のスケジュールを後ろ倒しにさせ、その間に国際的な住民投票の行動の監視団を送り込み、それを通してロシアからの圧力を弱める細工をすることもできたかも知れない。時間を稼ぐことが出来れば、双方が冷静になるための時間を確保することが出来、別の落としどころを模索することも可能だったかも知れない。ロシアの最大の興味はクリミア内の軍事基地の安定かつ継続的な使用であるから、その条件を担保することが出来れば違う展開も可能性としてはあった。

しかし、これらの可能性を全て捨て去った背景にはウクライナ暫定政府側の強硬姿勢があり、その強硬姿勢を前提とするならば、ウクライナ暫定政府の正当性を認める側にはロシアのクリミア侵攻を非難せざるを得なくなる訳である。ヤヌコビッチ元大統領を追放するために、欧州はラディカルな極右の暫定政府側勢力とも手を携えてしまい、それが今回の命取りであったのかも知れない。しかし、シリアであればアサド政権打倒のために反政府勢力内のアルカイダ系と手を携えることはしなかった。それは余りにリスクが大きすぎるからだが、今回は余りに無警戒に反政府勢力を信じ過ぎていたのではないかと思う。

これではロシアと論理的な議論をしたくても、論理的な議論が出来ない訳である。ロシアにも勝算など無いのだが、欧米にも勝算などかけらもないから、双方が力技での解決に走ろうとする。しかしそれは、やはり不可逆過程への道であり、取り返しがつかない道を歩み出していることに早く気が付くべきである。今となっては答えなど無いのだが、少なくとも、双方に論理的な正当性がないことに気が付くのは有益なのだと思う。そして、それをウクライナ暫定政権にぶつけてみるべきなのだと思う。それをロシアにぶつける前に・・・。

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韓国報道機関にあるフィルターを突き破れ!

2014-03-13 23:58:48 | 政治
既に1週間ほど前の記事だが、朝日新聞に面白い記事があった。

朝日新聞2014年3月8日「『韓国軍のベトナムでの性暴力、謝罪を』元慰安婦ら会見

韓国の所謂慰安婦とその支援団体代表が、ベトナム戦争で韓国兵がベトナムで犯した「ベトナム人女性に対する性暴力や民間人虐殺」に対し、「韓国政府が真相を究明し、公式謝罪と法的責任をとるように」と要求する記者会見をソウルで開いたという。記事の最後には下記の様に記されている。
=====
元慰安婦の金福童(キムボクトン)さんは「同胞が犯したことは韓国政府が解決すべきだし、知らないふりはできない」。支援団体の尹美香(ユンミヒャン)代表は「私たちが望むのは慰安婦の悲劇が繰り返されないことだ。日本政府に求めるだけでなく、我々自ら平和をつくりたい」と話した。
=====
極めて真っ当な話だが、この行動は殆ど黙殺されている。Googleで検索をかけると、この関連の記事は朝日新聞以外の日本の新聞社には見つからなかった。その他でこの記述をしているのは2日遅れで「サーチナ」ぐらいだろうか?こちらの方が少々詳しい感じがする。

サーチナ2014年3月10日「韓国の元慰安婦らが会見、ベトナム戦争時の韓国軍による性暴力問題・・・『政府が解決すべき』=韓国

この記事によれば、「複数の韓国メディアが報じた。」らしいのであるが、日本語で読める韓国記事にはそれらしきものが見当たらない。あの、反政府色が強いハンギョレ新聞ですら扱っていない模様である。サーチナの記事を見れば、結構、インパクトがありそうな内容なのだが、まったくもって黙殺された感じである。

これが韓国の実態なのだが、それと似たような指摘が幾つかあった。一つには、韓国の報道の中にウクライナ問題が見つからないというものである。

ウィーン発 『コンフィデンシャル』2014年3月3日「韓国メディアとウクライナ情勢

これだけウクライナ情勢が危機的であるのに、韓国の新聞では殆ど扱いがないという。この記事を最初に読んで確認したときもそうだったが、今でも同様にウクライナ問題を韓国系新聞で見つけるのは至難の業である。日本語記事にだけ掲載がない可能性はあるが、それにしても不自然である。先日から書いてきている通り、ウクライナのクリミア自治共和国はウクライナ本体からの独立を目指しており、過去の歴史の中で強制的にロシアからウクライナに割譲された経緯がある。その様な歴史に弄ばれた民族が独立を訴える時、日本による韓国併合を非難する韓国人としては扱いにくいニュースなのかも知れない。また、下記の様な記事もあった。

日経ビジネスONLINE2014年3月13日「『米国の怒り』を日本のメディアで知った韓国人 読者からの質問に答えて(7)

記事の内容はともかくとして、あれだけアメリカから怒り出しても全く素知らぬ顔の韓国では、国内メディアがそのアメリカの怒りを報道しないから、全くそんな話があるとは知らず、日本の報道から初めて知ったという内容から始まる。バイデン副大統領が「アメリカの反対に賭けるな!」と灸をすえても、それを誤訳だとしたり失言だとしたりして全く取り合わない。極めて大政翼賛会的な体制の報道なのである。

我々は韓国国民が非常に反日的であると嫌になっているが、それは大きく「反日教育」と「反日報道」に起因する。この二つが変わらない限り、今後もこの傾向は続くだろうし、逆に言えばこの二つが変われば明るい未来も期待できるかも知れない。この変革は韓国国内で自然発生的に生まれることは期待できないが、最初のベトナム戦争で韓国兵がベトナムで犯したベトナム人女性に対する性暴力や民間人虐殺の話題が世界的に注目されれば、少しは目が覚めるきっかけになるかも知れない。この様な情報がダイレクトに韓国国民に伝える方法はないものだろうか・・・。

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小保方氏のSTAP細胞騒動の裏側を覗く

2014-03-11 23:57:50 | 日記
今日は少々毛色の異なるお話をしてみたい。理研の小保方晴子氏のSTAP細胞にかかわる騒動についてである。

まず最初に断っておくが、私は技術者ではあるがこのSTAP細胞に関する知識を持ち合わせていないので、その真偽については技術的な議論をするつもりはない。また、小保方氏の論文にはとてもケアレスミスでは片付けられない杜撰な落ち度があり、その意味では研究論文の取り下げ&再投稿の手続きを踏まないと、後世において真っ当な評価がなされないであろうことも多分間違いないだろう。漏れ伝わる情報からすると、小保方氏はかなり若気の至り的なミスを繰り返している。その様な部分についてはそのまま受け入れるのは当然であるとして、ここでは、その様な部分を横において、その背後にある、あまり話題にならない部分について(多少の期待の意味を込めて)コメントしたい。

本題に入る前に、確か2週間ほど前だったと思うが、某ラジオ番組の中で哲学者の東浩紀氏がSTAP騒動について簡単に総括していた。既に時間が経ってしまって詳細は覚えていないが、中々鋭く的を得たコメントがあった。最大のポイントは、記者会見の中では如何にも簡単にSTAP細胞を作ることが可能であり、論文を読めば誰でも再現試験に成功しそうなようなアピールをしておきながら、実際にはSTAP細胞を作る上では秘密のノウハウが隠されていて、それを開示していないことが大きな問題だと世間から認識されているということである。ただ、その様な純粋技術的な問題であれば、(発表時もその後の疑惑報道でも)この様なフォーバーぶりはなく淡々と技術的な議論で終始するはずなのに、その技術以上に「理系女子『小保方晴子』」のプロモーションでもあるかの様な演出の仕方をしてしまっていたので、そちらの方が一人歩きして野次馬集団の餌食になっているという解説もしていた。確かに、世紀の大発見であるから多少はお洒落して発表に臨んでも良いのだが、割烹着やムーミンなど、余りにも研究に関係ないところで演出に手が込んでいたということだろう。理研の方も、政府からの研究費の補助とか、何か下心もあってその様な演出に加担してしまったのだろう。

私はこの手の生物学的な論文の常識は知らないのだが、テレビや新聞の報道などの噂で聞く限りにおいては、論文等の公表に当たって、この手の生物学的な論文ではかなり詳細な情報やノウハウの開示が義務付けられているように聞く。その様な視点からは、少なくとも小保方氏はこの情報開示義務に100%応えていないのは事実だろう。論文の記載ミスなどが五万と出てきたとしても、STAP細胞の実験がそこら中で再現していたならば、少なくともこの様にバッシングされることなく、記載ミスなどは大目に見てくれる可能性は高い。ないしは、論文の評価は地に落ちても、その大発見の評価だけは引き続き残り続けて然るべきである。それが再現実験の成功例を聞かないが為に、様々な所から非難の声が聞かれるようになった。もっと正確な情報を開示しろという要求が高まったということである。しかし、まかりなりにも別分野の技術者の端くれとして言わせて貰えば、本当にその100%の情報開示義務は正しいのかと言えば個人的には疑問に思わざるを得ない。これは小保方氏を弁護するという意味ではなく、報道機関はもう少し冷静に情報を扱って欲しいと言う意味である。

少し話は逸れるが、山中伸弥教授のiPS細胞に関しては、テレビでも色々と話題になることが多い。幾つか見た番組の中で、私は山中教授のプロフェッショナルぶりに感動を覚えたことがある。それは、研究の成果である様々な技術ノウハウは、必ず最後には特許という形で権利確保を行わなければならないのだが、この権利確保のための体制・手続きが京都大学内に完璧に作り上げられていて、完璧なサポート体制を組んで分業的に日々のデータやノウハウを取得した日時とその証拠を克明に記録していた。日本を始めとする多くの国々では、通常、特許というのは先出願主義といって先に特許庁に特許を出願した者に権利が与えられる。しかし、最近ではアメリカもその方向に移行しつつあるようだが、少し前まではアメリカは先発明主義といって、出願の有無に関係なく、先に発明をしたことが証明できれば、その人に権利が与えられるとされていた。この辺の微妙なところを防御すべく、山中教授の研究グループは日付入りの研究データの記録を徹底しており、あらゆる特許がらみの裁判で勝てる体勢を作っている。何とも恐れ入る徹底振りであった。研究者としての卓越した能力も疑いもないが、研究のマネージメントにまでも秀でていて、これこそがプロフェッショナルと呼ぶに相応しい世界的にも稀有な存在なのだろう。

しかし、通常の研究者はその様なマネージメント能力には疎いのが実際であり、確保すべき権利範囲を適切な手法で確保するのは難しい。理化学研究所がどの様な体勢で運営されているのかは知らないが、経済的にそれほど潤沢ではない研究機関であれば、特許化は研究者に任されることが多い。ワクワクするような研究とは異なり、権利化の作業は事務的な作業というべきで、第一線の研究者には退屈でしかない。だとすれば、研究の結果として世紀の大発見がなされても、それを権利化という形でサポートする体制が整わなければ、他者に権利をさらわれるリスクを残して学会発表をするような事態も十分予想される。何処かの企業に属する研究所であれば、その企業の利益を最優先するために、研究者の上司は部下の研究動向を管理し、必要に応じてサポート体制を組んだりアドバイスを行うことも可能である。権利化が十分でなければ、せっかくの研究成果を数年間に渡り発表を見合わせる指示をすることも珍しくない。実際、私もその様な道を選んだ経験がある。しかし、独立行政法人というところでは、一匹狼的な研究者が独自の研究を少人数で行い、あまり他の研究者からの干渉なしに行われているのではないかと推察する。であれば、何が起きるのか?

研究者は権利化の重要性は認識しているので、発表に際しては「情報の開示し過ぎ」を忌み嫌い、必要最小限の「論文としての体をなすギリギリ」の情報開示で逃げようと思うのが普通である。それが良いか悪いかはその専門分野のローカルルールによるのであろうが、通常は発明の明細書には、技術の肝になる部分だけは権利確保の範囲を明確にするために開示するが、付随する全てのノウハウを開示する訳ではない。つまり、それさえ分かればあまり技術のない人でも直ぐに作れてしまうという程の具体的な情報かといえばそうではない。その微妙な情報出し惜しみの駆け引きにより時間を稼ぎ、他者へのタイムアドバンテージを最大限に確保しながら、その優位的状態を少しでも長く維持することを考えるのである。

ここから先は推測の話が多くなるが、医療や製薬技術に関する特許などは、その周りに膨大なビジネスがついて回る。ひとつの発明が、膨大なお金を生むのである。だから、関連する企業や研究機関は、日々、凌ぎを削っているのである。この中では、やはりタイムアドバンテージを最大限に確保するために、権利確保に必要最低限の情報しか開示していないと推察される。例え話が適切かどうか知らないが、例えばある薬剤成分を発明し、その化学構造式を特許にて抑えたとする。しかし、構造が分かれば簡単に作れるかといえばそうではなく、製造技術に関しても相当な技術が必要になる訳である。それら全部を一度に出してしまってはもったいないので、核となる部分から順番に権利化し、付随する関連技術は少し隠し持っていたとしてもおかしくはない。STAP細胞についても、それが生むかもしれない膨大な経済的価値を考えれば、同様のことが行われるであろうことが予想できる。つまり、記者会見ではあまりにも「(お料理を作るように)誰でも簡単に作れる」と吹聴しすぎていたのだが、実際には相当なノウハウが隠されていて、そのノウハウに誰も辿りつけないので再現実験に成功していないという事態のようにも思えるのである。そんな時、競合する研究者はどう考えるのか?それは当たり前であるが、「もっと情報を出せ!俺にも一攫千金のチャンスを与えてくれ!」と思うのは当然である。だとすれば、全ての研究者が同様に再現実験が出来るほどの情報開示を小保方氏に強いるような圧力を報道機関が行っているとすれば、(それはあくまでも可能性として)この分野の主要な権利を日本で独占するチャンスをみすみす棒に振るようなことを行っているのであり、大袈裟に言えば「国益」すら損ねかねない。その辺はヒステリックにならずに冷静に対処するのが正しいはずである。

勿論、本当のところがどうなのかは神のみぞ知るという感じである。ただ、小保方氏の場合には不幸なことに、iPS細胞に関して1年半ほど前に「iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施した」という出鱈目な発表を経験しているがために、あのペテン師と同類かのような疑惑を向けられてしまうのである。多分、あのペテン師は「iPS細胞を使っただけなので、一部のマイナーなところでちょっとだけ脚光を浴びて、ことの真偽をその後に問われることなく逃げ切れる」と考えてさり気なく発表してしまったのかも知れない。しかし、常識的に考えて、今回のケースは世界を揺るがす世紀の大発見であるから、世界中をニュースが駆け巡ることは目に見えている。多くの人々が追試を試みるのは当然だし、そこで誤りであることが確定すれば、この研究の世界で生きていけないほどのバッシングを受けるのも目に見えている。しかも、理化学研究所という由緒正しい研究機関ということを考えれば、少なくとも内部的にも大々的な報道発表の前にその研究成果の妥当性を吟味していたと見るのが普通だろう。だから、どこぞのペテン師と一緒にするのは余りにも現実的でない。

かって日本では、常温核融合の発見という大失敗を経験しているが、物理現象の解釈(どの様な現象をもって、核融合と判断するかなどの基準)というようなミスが、(分野が異なるので断定はできないが)今回のケースでは入り込み難いのではないかと素人ながらには予測する。

であれば、小保方氏を筆頭とする研究グループが、その研究のマネージメントとしては余りにもアマチュアで、そのドタバタぶり故に世界中で大恥をかくのは仕方がないにしても、それがダイレクトに研究成果の否定につながる訳ではない。研究成果の価値そのものは、今後の追試によって検証されるべきである。であれば、新聞としては現時点では一喜一憂などする必要はなく、今後数年間に渡る専門家による検討結果が出るのを見守るのがスジではないかと思う。

今回の教訓として、研究能力は一流でも、その研究のマネージメントに関しては三流の日本の研究体制に対し、もう少しマネージメントのプロがサポートできる体制が必要であることを再確認したように思う。そのための予算はケチってはいけないのである。それと、もうひとつの教訓は、科学技術分野の発表を余りにも俗っぽく演出することの功罪も問われるべきなのかも知れない。

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「現状変更」「修正」は本当に悪なのか?

2014-03-10 23:58:34 | 政治
ウクライナ問題にしても日本の歴史認識問題にしても、どんどんとややこしい状況に落ち込んでいる。変な話だが、この関係のない話題の共通点について今日はコメントしてみたい。

このコメントを書こう思ったのは、実は先週、BSフジの「Primeニュース」で拗れている日韓関係を扱った番組の中に英フィナンシャル・タイムズの記者が出演していて、その記者のコメントを聞いて???と思ったことがあったことから始まる。詳細については覚えていないが、大きな話の流れの中で次の様なやり取りがあったと記憶している。フィナンシャル・タイムズの記者が安倍総理のことを「歴史修正主義者」と位置づけたことに番組のキャスターが疑問を呈し、それに対してその記者が「歴史修正主義者」の定義について語っていた。その定義とは、私の記憶では下記の内容だったと思う。曰く、「過去の歴史の中で、例えば実際の戦時中の日本軍及び日本政府の姿よりも、大分、大袈裟に暗い面をことさら強調されて他国によりイメージ作りをされてしまい、『流石にそれはないでしょう』ともう少しイメージを正しいところに近づけようとしたとしても、それが『適切な修正か、不適切な修正か?』にかかわらず、過去に定着した内容を変更しようとした者は、全て『歴史修正主義者』と見なされる」というものであった。ここが我々と、日本を非難する他国との最も大きく致命的な認識の違いである。我々の認識は、大切なことは「真実に基づく評価」だと思っているのであるが、中国・韓国はおろか、英国や欧米諸国でも同様に「真実」は重要ではなく、「定着したもの」を変える行為が非難の対象となると言うのである。

これは非常に理不尽ではあるが、欧米諸国の中ではある種、常識として受け入れられていると言って良いのだろうと思う。橋下大阪市長の慰安婦発言に対し、(私としては)「話せば分かる」と期待して信じていた多くの欧米メディアが理性を失い、感情的に「門前払い」的に議論を遮り「アウト!」の判定を繰り返す背景には、この様な共通認識があるのだと感じている。それは日本の歴史認識全般に言えるのだが、ウクライナ問題にしても同様のことが言える。私はウクライナ問題を考える時、常に中国の新疆ウイグルやチベットの問題を頭に描きながら、歴史的バックグラウンドの中で「何故、この地域がこの国に所属し続けているのか?」「本来、独立してしかるべきではないか?」という疑問を自問自答している。韓国が過去の日本の植民地支配についてこれだけ噛み付く背景には何があるのか?それは、歴史の中で様々な国や地域の中で占領や併合などが行われ、しかし、その占領や併合はその地域の人々の意図に反するものである例が多く、その様な地域や国が独立を勝ち取った時、過去の支配の歴史が否定されることになる。つまり、ここには「現状維持」が善で「現状変更」が悪というルールはない。つまり、本来は短絡的に「現状変更」が否定されるべきではない。個別のケースで是々非々に判断されて然るべきである。

しかし実際には、独立を勝ち取れるまでの間は独立運動は「非合法の反社会的・反国家的運動」とレッテルを張られる。一方、独立を勝ち取れば韓国が日本を不当に非難しまくるのと同様に、何でもアリのオンパレードとなる。結局のところは「勝ったもん勝ち!」の原理原則が残ることになる。つまり、新疆ウイグルやチベットに対して中国が強烈な人権弾圧をして運動を抑え込んだとしても、中国が強権で抑え込み続ける間は勝ったもん勝ちで西欧諸国は内政不干渉の原則の基に何も言えないことになってしまう。なにせ、独立運動は守る側にしてみればテロ行為であったりするのだから・・・。
ここで、ウクライナ問題ではロシアの軍事侵攻が伴っていたから「力(軍事力)による現状変更」という切口があるのは確かである。しかし、ならばイラクへの米軍の侵攻などはどうなのだろうか?アメリカは多くの国々に軍事侵攻した歴史がある。それに比べれば、今回のロシアは電光石火の無血侵攻であったし、侵攻先の市民からは少なくとも拒絶反応は殆どみられていない。少々乱暴な言い方をすれば、ロシア軍の進駐故に、ウクライナの暫定政権はクリミア自治協和国への制裁を思いとどまり、結果的に内戦がギリギリのところで回避できている様にも見える。この様に、現状は従来の強引な「力による現状変更」とは大きくイメージが異なる。クリミア自治協和国は民族自決的に独立を志向しているし、欧米の主張の根底にある理屈抜きの現状維持の原則がそのまま当てはまるようには思えない。

しかし、この様な複雑な事態にウクライナが置かれているにも関わらず、彼らは詳しい説明も抜きに、先ほどの「歴史修正主義者」の議論と同様の「修正=悪」の問答無用の切り捨てをする傾向がある。そこにある程度の「理」があったとしても、私はついついと身構えてしまうのである。ここ最近のウクライナに関する私のコメントはその様な背景に基づくものである。

日本の政治の世界では、民主党政権が度々、政権与党を攻撃しながらその攻撃がかっての民主党政権にそのまま当てはまり、ブーメランのようにわが身に返ってくる事象を目の当たりにした。全くもって説得力がない主張である。であるならば、理屈抜きでパブロフの犬的な短絡的な行動をし続けていると、いつの日か中国が暴走しだした時に、かっての自分たちの行動がブーメランのように返ってきて足かせとなって止めることが出来なくなってしまうのではないかと私は恐れている。別にロシアの肩を持つ必要はないが、善悪の判断、正当・不当の判断をするのであれば、「修正」「現状変更」自体を短絡的に否定するのではなく、その「修正」「現状変更」の中身の議論を丁寧にすべきだと思う。

別に安倍総理を歴史修正主義者のレッテルから解放するためではなく、ブーメランへの自己防衛のために、彼らが盲目的に信じるこの辺の問題提起があっても良いのではないかと思う。

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日韓関係問題の潮目は近い!?

2014-03-08 23:59:19 | 政治
先日のことであるが、韓国の尹炳世外相がジュネーブでの国連人権理事会に出席し、慰安婦問題の対応で日本を名指しで非難し、併せて解決に向けた対応を求める演説を行った。日本政府はこれに反論を行ったが、韓国政府は「ここが攻め時!」と決めて、一気に勝負をかけようとしてきている。今日は遅ればせながらであるが、この問題にコメントしてみたい。

さて、このニュースを最初に聞いたとき、思い浮かんだニュースがある。そのニュースの登場人物はまさに尹炳世外相であり、そしてその主役はケリー国務長官である。2月13日に韓国を訪問中のケリー国務長官は、韓国の尹炳世外相と並んで記者会見を行い、その中で尹炳世外相にチクリと釘を刺した。その時の記事が下記のものである。

日本経済新聞2014年2月14日「米、日韓に早期和解迫る 国務長官『大統領歴訪前に』

この記事の中でも発言を引用しているが、例えば「過去の問題を少し横に置いて、日米韓3カ国が連携していける道を探せるよう、米国も協力する。そのためにこれから数カ月間、引き続き努力する」「過去より今が重要だ。今、最も緊急の課題は安全保障であり、多くの人の命がかかっている問題に焦点を当てるべきだ」の様に記されている。このニュースはそれなりに話題になったので記憶にある方も多いと思うが、(話は逸れるが、ケネディ大使が安倍総理の靖国参拝に「失望」という少々異例な言葉を用いたのと同様に)ケリー国務長官は異例ともいえる表現を用いて発言している。実はこの会見の模様はアメリカの国務省のホームページで全文を読むことが出来るのだが、少しばかりその発言を原文で引用してみたい。

“So while the United States obviously has a strong interest in the relationship and in the security component of the relationship, it's up to Japan and the Republic of Korea to put history behind them and move the relationship forward.”

ここでは、「it's up to Japan and the Republic of Korea」として、次に続くことが日本と韓国次第であると指摘し、引き続き「to put history behind them and move the relationship forward」と明確に「安全保障上の重要なことの横に『歴史の話』を置いておき、両国の関係を前に進めよ(現在の混沌とした状況を前向きに動かして欲しい)」と言っている。これは、日本は少なくとも歴史の話を持ち出して事態を拗れさせてはいないので、「歴史の話を横に置け」の指示する相手は韓国である。日本に対しても、横に置きやすいように協力しろとのニュアンスはあるが、明らかに責められているのは韓国である。しかし、この発言を受けても尹炳世外相は「悪いのは日本」と頑として受け入れなかった訳で、横ではなく通り道のど真ん中に歴史問題を置き続けているのである。

また、以下の様にも発言している。「友達」という言葉を使いながらも北朝鮮と韓国を混同している辺りが笑える。

“So we urge our friends in Japan and in North Korea – in North Korea and South Korea – excuse me, in the Republic of Korea – we urge both of them to work with us together to find a way forward to help resolve these deeply felt historic differences that still have meaning today.”

こちらは先ほどの様に韓国を一方的に責めるものでもないが、最後の部分を見れば「今日でも未だに失われていないこれらの重い歴史認識の違いの問題を解決するために、我々アメリカは、我々と共に前進するための道を見出すべく行動するように、友達である日本と韓国に対し、しきりに促している」としており、アメリカも当事者として一緒にやるから、とにかく前向きに建設的な行動を取ろうと主張しているのである。さらに、記者からの質問で、4月のオバマ大統領の訪日、訪韓の際に、大統領自ら仲裁役を試みるようなことがあるかとの問いに対しては、下記の様に答えている。

Frankly, we hope that this issue will not be outstanding in a way that requires the President to do that. We need to be doing it now. We don’t want to wait until President Obama is here, obviously, to get moving in a direction that helps to deal with this.

ちょっと微妙ではあるが、「率直に言って、大統領が仲裁することが求められる様な、(4月の時点で)そんな未解決の問題となっていないことを望む。我々は、今、解決をする必要がある。オバマ大統領がここ韓国に来るまで、問題解決を待っているつもりはない。明らかに、この問題を処理するのに役立つ方向に向けて直ぐに行動する必要がある。」としており、少なくとも3月という時期に問題を悪化させる方向に動くことをたしなめた発言である。

このケリー国務長官の発言の後、日本からは河野談話の発表された経緯の検証を行うというニュースが流れた。一見、このケリー国務長官の発言とは逆向きに見えるが、検証のきっかけとなった石原元官房副長官の発言の中では、証拠の裏取すらしない一方的な証言を受けて、あたかも物的証拠があるかの様な表現に変えて河野談話を発表した経緯が触れられている。勿論多くのアメリカ人は批判的にこれを受け取るだろうが、「日韓の裏取引で、日本が譲歩することで一旦は韓国も歴史を横に置いたのに、それをまた前に持ち出したのはどちらだ?」と訴え、日本の努力の歴史をアピールする材料にもなり得る。少なくとも安倍政権はこの辺の事情の説明を裏で必死に行っているのであろう。その成果次第かも知れないが、尹炳世外相のジュネーブの国連人権理事会での演説は、ケリー国務長官の訴えたアメリカの努力を決定的に無にする「卓袱台返し」に等しい。
この様な事態にアメリカが異常に怒りまくっていることが報道されている。その主な部分は、北朝鮮問題で不確定要素の大きな中での日韓の争いが如何にマイナスであるかということから来るのだが、もうひとつの大きな理由には、相当前から指摘されていることではあるが、日本との歴史問題を言い訳に韓国が中国にすり寄る態度が許せないということが言える。この行動はアメリカに対する裏切り行為であり、昨年秋のバイデン副大統領も「アメリカの逆に賭けるな!」と灸をすえている。しかし、その様なアメリカの指摘にも韓国はどこ吹く風である。

しかし、こんな状況にアメリカ人もあることに気が付きだしたというニュースがある。これも、タイミングを逸した記事ではあるが、Record Chinaに面白い記事が載っている。出展はニューヨークタイムズということで、ここに書かれているのはアメリカ人による韓国人の評価がなされている。

Record China 2014年2月25日「キム・ヨナの銀メダルに憤慨する韓国人、勝敗やランキングに異常にこだわる姿勢は被害者意識からきている―米紙

韓国人がキムヨナの銀メダルに憤慨し、採点に不正がなかったかの調査を求める嘆願が200万を超えるに至り、その異様な執念を「劣等感からくるもの」と断罪している。少しばかりコメントすれば、金メダリストのロシアのソトニコワ選手の演技はそれほど良いとは思わなかったが、一方でキムヨナはバンクーバーオリンピックでもそうだったが(素人目では)演技としてのまとめ方の完成度の高さは感じるものの、技術レベル的にはキムヨナの演技が他の演技者(特に真央ちゃん)よりも劣るのは事実なので、ここから先は主観の問題でどの様な結果に転んでも文句の言えた筋合いではないと感じている。韓国からのオリンピックがらみでのイチャモンはアメリカには痛い思い出があり、それらと比較すれば「またかよ・・・」という気分になるアメリカ人も多いのだろう。この記事の面白いところは、この劣等感と言うのは単にスポーツの世界だけに留まる訳ではなく、政治の世界でも同様の劣等感から来る無茶な行動が見られることを暗に示した形である。つまり、これは日本と韓国との対立を観たときに、(日本に対して好意的気分は抱いてくれなくても)韓国に対して懐疑的な気持ちが少しずつ芽生えてきていることを意味する。

さて、話が逸れてしまったので本題に戻るが、この後の展望を考えてみたい。私の答えはひとつである。この状況で、アメリカが韓国に「歴史問題を横に置け!」と言っても韓国はそれを受け入れる訳がない。というか、受け入れた途端に朴政権は崩壊する。死んでも受け入れることは出来ない。同様に、これだけ理不尽なことを言われて耐え忍ぶ日本に、これまた「韓国に対してベタ降りしろ!」と言われて受け入れる訳がない。両者を比較して、TPP問題でこそ対立しているが、日米関係の再構築のためにより多くの努力を示しているのは日本である。であれば、一方的に日本に煮え湯を飲ませる形での決着はアメリカとしても逆効果である。であれば、アメリカは喧嘩両成敗的な解決策を示さざるを得ない。ではその解決策とは何か?

答えは簡単である。「国際司法裁判所での決着を目指せ!」と日本、韓国に迫るのである。この提案は、明らかに日本にとっては渡りに舟である。少なくとも、日本政府は日韓基本条約を締結しているから、国際司法裁判所による判決がなければ慰安婦への補償など行えるはずがない。負ければ補償をしなければならないが、徴用工問題に比べれば補償の額は小さい。ここで補償金を払えば韓国がこの問題でこれ以上の攻撃をすることが出来なくなるから、これ以上の言いがかりを金で解決すると思えば裁判で負けたとしても悪い話ではない。一方、徴用工問題は韓国政府も一時は解決済みとしていたのだから、明らかに日本が圧勝するのが目に見えている。この2点を解決した次には竹島問題が残っている。韓国人にとっては、少々大袈裟に言えば竹島は韓国人のアイデンティティそのものである。仮に負けたら2度と立ち直れないかも知れない。仮に勝ったとしても、韓国国民には教科書で教えられるほど領有権の正当性が明らかでないことが知れ渡るから、日本がどれほど韓国政府のプロパガンダで泣きを見てきたかが明らかになる。一連の流れは、個別の案件の勝敗で微妙な結果となるかも知れないが、少なくとも韓国政府の受けるダメージは相当なものである。であれば、日本政府は即答で「裁判での決着を受け入れる!」と反応し、韓国政府は「拒否!」を貫くだろう。

この時点で勝負はあったと言って良い。

今回のウクライナ問題でも、アメリカ政府は「国際法」に則った問題の解決を謳っている。であれば、同盟国の韓国にも同様の要求を強いるはずである。それを受け入れなければ、「何故?どうして?」と言うようにアメリカ国内の世論は動き出すはずである。それは、潮目が変わる瞬間かも知れない。それは、この3月、4月に訪れる可能性が高い。

この様に考えると、一連の流れは悪い話ではない。寧ろ望むところである。

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安倍総理はオバマ大統領に、ウクライナ問題の「損切り」を早期に促せ!

2014-03-05 23:55:56 | 政治
前回のブログでウクライナ問題について整理した。あのブログを書いた時点では、ウクライナ問題は落しどころが全く見当たらず、多くの流血の事態という極めて悲観的な事態しか予測できない状況であったが、昨日になって急激に事態が変わり始めた。今日は続編として少しコメントしてみたい。

私はオバマ大統領の力量をそれなりに買っているのであるが、残念ながらオバマ大統領は国内政局のねじれ議会の影響を受けて、殆どの自身の政治的エネルギーを国内問題に集中せざるを得ない状況にあり、外交的には中々上手く立ち回れない現実を目の当たりにしている。さらには、彼が極めて道徳的で大人の思考を持つ者であるが故に、政治的対応が正攻法でしか対応できず、それを熟知する相手は本来アメリカが得意であったヤンチャ坊主的な駆け引きが封印されていることを知った上で、百戦錬磨の策士による正攻法とは異なる戦術に嵌る傾向がある。シリア問題にしても、所詮はアサド政権を打倒しても背後にアルカイダ系の勢力が控えている状況で、オバマ大統領は正論をかざして空爆のブラフを仕掛けたが、結局は何もすることが出来なかった。それとは対極的に、シリア問題でのプーチン大統領の振る舞いはお見事であったし、結論から言えば今回のウクライナ問題に対する対応は更に輪をかけてお見事と言わざるを得ない。ちなみに、私のプーチン大統領に対する評価は比較的低く、所詮は民主主義の精神を持ち合わせない乱暴な指導者で、ただしそれなりに良識をわきまえた独裁者というところだろうか?ただ、道徳的な価値観の評価とは別に、戦略家としては高く評価されてしかるべきところかも知れない。

話は戻すが、日本も含めて西欧諸国の理屈では、今回のウクライナの政変においては、「ロシアは国際法的に見て違法な軍事侵攻を行った」ということになる。しかし、ロシアの言い分を聞けばそれはそれなりに理に適った説明をしている。まず、ウクライナの政変を国際法的に「合法的」な「(民間勢力による)革命」と見なすのであれば、当然、現ウクライナ政府は「正当な政府」と見なされるべきであり、その現ウクライナ政府が「侵攻」として非難しているロシアの行動は国際法に違反する他国への侵略行為と見なされるべきである。しかし、逆にウクライナの政変を国際法的に「違法」な「クーデター」と見なすのであれば、当然、現ウクライナ政府には正当性はなく、元の政権のヤヌコビッチ前大統領が救援を要請すればそこに救援の手を差し伸べても、(その派兵先で非人道的な虐殺が行われず平和的な活動をしている限りにおいて)国際法的には違法性はないことになる。素人なので詳しいことは分からないが、国際法的には革命とクーデターの合法性、違法性に関する明確な規定はなさそうで、ある程度のグレーゾーンを残しながら、そこで繰り広げられる事態を見ながら都合の良い(ないしは妥当な)解釈で、国際社会が自由に対応できる糊代を残した形の様に見える。であるから、(ロシア側の言い分では)元を正せば最終的なロシアの軍事侵攻の是非ではなく、革命ないしはクーデターの正当性が問われた問題と言うことができる。しかし、例えば日本を例にするならば、日本の法律で「合法的な革命の方法」「合法的なクーデターの方法」など規定されている訳がないのと同様で、ウクライナの政変はそれ以前のウクライナの国内法に照らし合わせれば、少なくとも「当時の違法な行動」により前政権が転覆させられたことには違いがない。我々からすれば、民主主義の実現という目的が正しければ違法な革命も正当だと考えるかも知れないが、目的が正しければ愛国無罪と日本のデパートに略奪に押し入っても許されるはずはなく、法的な正当性という意味では現ウクライナ政府に弱みがない訳ではない。その前の政権の汚職などの違法性を盾に革命を正当化したいところだが、裁判で前政権の違法性が断罪される前に勝手に行動を起こすのは、残念ながら「勝てば官軍」の発想であることは否定できない。それしか手はなかった・・・ということかも知れないが、手続き論的に相手を論破できるかといえばそう単純ではない。だから、今回の様な無血の軍事侵攻は極めてグレーゾーンを巧みについた攻撃であり、ロシアが口火を切る形で局所的な軍事衝突が起きない限り、一方的にロシアを非難するのが難しい状況である。

私の勝手な予想であるが、アメリカは当然の如く短期的に軍事衝突が起きるものだと思い込み、それを受けて国際社会がロシアを一斉に非難することを期待して、一足先に勇み足的にロシアを猛烈に非難しまくってしまった。世界がアメリカについて来てくれるだろうと勘違いしていたということである。アメリカからは経済制裁やG8からの追放など、相当な強気な発言が聞かれるが、欧州、特にドイツなどからは比較的、抑制の効いた対応が求められている。特に、ロシアとの貿易額で見れば、アメリカに対して欧州は約10倍の額の貿易が行われており、ロシアの首を絞めることはその反動として欧州の首を絞めることと概ね等価である。特に、原子力発電からの転換を決断したドイツにとってはロシアからの天然ガスなどは死活問題であり、ロシアが共倒れ覚悟で天然ガスのパイプラインを止めれば、ドイツは短期的には経済的に膨大なインパクトを受けることになる。ロシアも共倒れは嫌だからそんなことはしないが、権謀術数のプーチン大統領のブラフは正直者のオバマ大統領のブラフとは意味が違い、その不気味さ故にカードとしては大きな意味を持つ。仮にソチでのG8会合は流れても、ロシアがG8から追放される可能性はゼロに近いと予測する。と言うより、この問題を議論するために、結果的にソチにG8が集結せざるを得ないという結論になるかも知れない。

最近のプーチン大統領の発言に寄れば、クリミア自治共和国の独立をロシアが介入して強いるようなことはしないとのことだし、現ウクライナ政権に対してヤヌコビッチ前大統領の復権を求めることもしない。実際、クリミアの親ロシア派の人も、ヤヌコビッチ前大統領の汚職の酷さを知ってから非常にヤヌコビッチ前大統領に否定的な評価をしている。そんな状況を熟知して、プーチン大統領も「ヤヌコビッチ前大統領は政治的には既に過去の人。復権は諦めてもらう。」といったコメントをしているようである。敵?ながら、極めて妥当性の高い発言である。私はウクライナ暫定政府は大きな過ちを犯したと思うのだが、それはロシア語をこれまで公用語扱いとしてきた法律を暫定政権がいきなり破棄したことである。クリミア自治共和国では6割がロシア系で、9割がロシア語を話すらしい。その様な地域でロシア語を排除する動きは、ウクライナ暫定政府によるクリミア自治共和国の締め付けの証の様に映るのは極めて自然な感覚である。その様な中で、クリミア自治共和国の事実上の独立の是非を問う住民投票が行われれば、結果的に独立の方向に流れて行くのは目に見えている。暫定政権よりの勢力が雪崩れ込んできて独立を阻止する方向に向かえば話は別だが、実質、ロシア軍が完全に掌握している状況で力技の無茶な反ロシアキャンペーンを繰り広げるのは厳しい。プーチン大統領が余裕をかまして「軍事力の行使は最終手段」「その必要はなくなった」「クリミア自治共和国を併合する計画はない」と言うのは、概ね勝利宣言のようなものだろう。

前回のブログにも書いたが、ウクライナという国柄は非常に権力が汚職に流れ易い状況である。今現在、デフォルトを回避するためには膨大な資金援助を行わなければならないが、その条件として痛みの伴う改革をEUが強制するならば、ウクライナ国民の心はEUから離れていくかも知れない、逆にウクライナに痛みを求めなければ、膨大な支援がまた汚職により無駄に消えるかも知れないクリミア自治共和国だけは住民投票で独立させ、一方でウクライナ本体には手を下さずに天然ガス価格の割引(3割)制度を廃止するなど、これまた文句のつけようがない範囲で対応をすれば、今から5年後を展望すれば政権に対する不満も高まり、また今回と同様な親欧州vs親ロシアの綱引きが繰り広げられるかも知れない。

結局、流血事態となるような野蛮なカードをロシア側が切らなければ、欧米諸国はロシアを追い詰めるようなカードを切れずに元のさやに戻ることになる。その時、欧州は(クリミア自治共和国を失うかも知れないが)ウクライナ本体を引き寄せることに一時的には成功するから、ロシアとウクライナと欧州で三方一両損の様な大岡裁きを演出することが出来るかも知れない。しかしその時、明らかにオバマ大統領は大きな返り血を浴びたことになる。失うものばかりで得るものが全くないからだ。シリア問題だけでなく、ウクライナ問題でも振り上げた拳を誇示しただけで、何一つ具体的な行動に繋げることができないという実績を重ねてしまう。国内的なねじれ議会で実効力が疑問視される中、外交という非常に国力を占う上で象徴的な場で、その実効力が地に落ちることはアメリカにとっては致命的とも言える。

ロシアへの経済制裁がヨーロッパ経済に打撃を与えることを考慮すれば、もはや、アメリカは6月に予定されるソチでのG8首脳会合を潰すぐらいしか鬱憤を晴らす術がないのだと思う。だとすれば、そんなアメリカの面目をギリギリ保てる手立てとしては、ソチでのG8首脳会合を潰し、何処か他の国でG8会合を開催し、今後の同様の事案に対するルールについて話し合うなどと言う形でロシアを交えた「手打ち式」を企画するしかないのではないかと思う。その開催国の条件は、当事者である欧州、アメリカ、ロシアを除くG8参加国であり、当然ながら日本がその最有力国となる。例えば、クリミア自治共和国の住民投票を延期してでもその投票の前に行うことが出来れば、如何にして住民投票を公平・公正な形で実現できるかも話し合えるかも知れない。

色々考えたが、(不快に感じるか否かは横に置いておいて)今回は(今回も?)プーチン大統領の勝ちである。株に例えるなら、「損切り」を如何に速やかに行うかを安倍総理はオバマ大統領に進言すべきではないかと思う。如何だろうか?

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ウクライナ問題に対するまとめ(個人的なメモとして・・・)

2014-03-03 23:51:56 | 政治
ここ数日の最大の興味の対象はウクライナ問題である。素人には良く分からないので色々調べてみたが、結局良く分からない。しかし、折角なので何となくわかったところまでを個人的なメモがてら整理してみたい。以下、論点を絞りながら考えてみる。

(1)ウクライナ問題の本質
テレビのニュースでは面白おかしく、ウクライナがEUとロシアの綱引きに翻弄された被害者であるかの様な扱いが多いが、実際にはウクライナの自業自得的な面が否めない。当初の私の認識は、ヤヌコビッチ前大統領がEU寄りの方針を覆し、一方的にロシア寄りに舵を切ろうとしたところで民衆の反発を食らい、それに対抗してロシアへの帰属を強行しようとしてデモ隊と衝突し、これを弾圧しようとして多数の死者を出して墓穴を掘ったと思っていたのだが、事情は少々異なるようである。ウクライナという国は1人当たりのGDPで見ても世界で100位ぐらいで、基本的に貧しい国であるという。その様な国にありがちなのだが、ウクライナの政治には汚職・腐敗が長年付きまとっており、ヤヌコビッチ政権はその最たるものらしい。ヤヌコビッチ大統領が政権についてから僅か1、2年で大統領の息子が急に国内の大富豪に仲間入りするなど、相当強引な汚職が行われていて、その影響もあってか世界的格付けが急落してしまった。そんな状況を改善するためにEUからの支援を受けるための交渉をヤヌコビッチ大統領が行っていたが、その背景には支援を名目にそこで何らかの不正を行おうとしていたのだが、それが上手くいかなくなりそうになったので、急遽、ロシア側にすり寄って、ロシアがらみで不正を働こうとしたのだという。民衆が蜂起したのはEUかロシアかの2者択一で政府の判断に反対したというよりも、政府の腐敗が余りに酷くて強硬なデモが発生し、その様な背景を察してEUもデモ隊を支援したという経緯があるという。ウクライナの国民が被害者であるのは間違いないが、EUとロシアの綱引きの結果として(国家としての)ウクライナが被害者ということではないらしい。

(2)クリミア自治共和国へのロシアの侵攻の本質
世界的な評価では、プーチン大統領のクリミア自治共和国へのロシア軍の侵攻をケチョンケチョンに貶している。実際、国際法上の扱いでは明らかにロシアに分が悪い。自治共和国という、ある程度の独立性が保証されたクリミア自治共和国ではあるが、ウクライナという国の一部であることは間違いないので、ウクライナの了承なしにウクライナ国内に軍事侵攻することは国際法上はNGであるのは間違いない。しかし、歴史的に見ればクリミア自治共和国は元々、ロシアの一部であったという事実がある。クリミア自治共和国がウクライナに帰属することになった背景は、ソ連時代のフルシチョフ書記長が自身がウクライナ出身という背景もあり、1954年にロシアからウクライナに割譲したという歴史がある。したがって、元々はロシア寄りの人が多く、実際に5年ほど前に行われた世論調査では、クリミア自治共和国国内では1/3程度がウクライナからの離脱とロシアへの帰属を求めているという。人口比率的にはロシア系は6割を超えており、したがって、平和的な国民投票の実施によりクリミア自治共和国の住民が、直接的に自分たちの運命を自分達で決めるという道を選んだとすると、その結果はどの様に転ぶかは分からない。その様なリスクを恐れ、現在のウクライナ政府はクリミア自治共和国の国民投票を認めておらず、クリミア自治共和国とウクライナとの間の溝は深まっている。面白いと言っては失礼だが、プーチン大統領の抜け目のないところは、その様な事情を察してか、ロシア兵であることを隠して電光石火の如くクリミア自治共和国へロシア軍を速やかに侵攻させてしまった。この「侵攻」という言葉も微妙だが、この侵攻には軍事的な強権の行使は行われておらず、1発の弾丸も使わず、無血でクリミア自治共和国を制圧してしまった訳である。概ね親ロシア系が多いから、住民もロシア兵と分かりながら何の違和感もなく共存している状況で、オバマ大統領やEU諸国が声高に非難をしても、クリミア自治共和国の住民のスタンスからすればそれほど極悪非道ということではなく、容認されている状況である。更についでに言えば、少なくともアメリカも欧州も、自らの手を汚す形でロシア軍との軍事衝突を望んでいないために、軍事的にはこの状態がダラダラと継続する可能性が高い。ただし、ウクライナの中でも過激な右派勢力はロシア軍との衝突も辞さない態度を示しているから、何処かで暴発する可能性は否定できない。

(3)ウクライナ問題に対する中国の立場について
この問題が大きくなったところで、私が最も興味があったのは中国のスタンスがどの様な物であるかである。ウクライナ問題が起きるまでは、北方領土問題の進展などの期待もあり、安倍総理とプーチン大統領は何度も会談を繰り返しており、対中国という視点からも、戦略的に日本とロシアの結びつきを強めることは有益であったはずである。しかし、この問題が起きたことで、中国に楔を打とうとしていたロシアと日本との間の結びつきには冷や水が浴びせられ、その結果として中国がほくそ笑むというシナリオが頭に浮かんだ。国連の安全保障理事会での決議などでは、当然、ロシアは自国への非難決議に拒否権を発動するが、そこに中国が同調してロシアに貸をつくるということを考えた。中国は、対日本の歴史カードを考えるうえで、連合国仲間のロシアを巻き込んで、例えば来年の第2次世界大戦終結70周年記念などのイベントを行うことを考えているのだろうが、そこへのロシアの参加を条件にロシア側に付くという可能性が考えられたが、実際にはその様にはならなさそうな感じである。実際、中国は談話として「中国は一貫して内政不干渉の原則を堅持し、ウクライナの独立と主権、領土保全を尊重している」、「国際法と国際関係の原則尊重を基礎に、対話と協議による政治的解決を追求し、地域の平和と安定を守る」と発表している。これは最もな話で、新疆ウイグルのテロとの噂の無差別殺人が起きたばかりの中国では、ウクライナからクリミア自治共和国が独立を図ろうとしていることは、ウイグルやチベットなどの独立運動に直結する「絶対に許容できない問題」であるため、否定的な立場を示さざるを得ない。アメリカがロシアの拒否権を承知の上で国連決議の採択を強行しても、中国としてはこれに反対することは公にはし難い。結局、欧米と中国は1枚岩では決してないが、ロシア側に付くわけではないのでそれ程中国の動きを警戒する必要はなさそうである。

(4)ロシアからウクライナへの経済制裁
過去にも、ウクライナでオレンジ革命が発生し、親欧米派の政権が出来たことに対するウクライナに対しての制裁として、天然ガスのパイプラインの蛇口を占めて供給を停止したという話が合った。であれば、今回も同様の制裁をしてウクライナに打撃を与えることが出来るのかとも思ったのだが、実際にはその可能性は低そうである。というのも、西欧諸国への天然ガスの供給に際しては、このウクライナ経由のパイプラインを利用せざるを得ないため、ウクライナへの供給の停止は西欧諸国への供給停止を意味する。シェール革命以降、ロシアでは天然ガスはだぶつき気味であることから、更に自らの首を絞めるような制裁は考え難い。ウクライナのデフォルト危機に対する経済援助という札束をチラつかせることも効果がなく、天然ガスを利用した経済制裁も出来ず、結果的に軍事的な侵攻に繋がったということなのかも知れない。

(5)日本にとっての選択肢は?
少なくとも、法の下の支配を前面に押し出す安倍政権としては、国際法に照らし合わせて違法な軍事侵攻を行うロシアに対して毅然とした態度を取らざるを得ない。間違っても、安倍総理とプーチン大統領の個人的な関係や北方領土問題での譲歩を期待して、日本だけが欧米から外れた行動を取ることは有り得ない。それは、日米同盟を基軸とする日本としては取り得ない選択肢である。オバマ大統領からすれば、シリア問題で顔に泥を塗られた上に、今回のクリミア自治共和国への軍事侵攻でもメンツを潰されており、上げた拳を降ろす術を失った状況である。しかし、確実に言えるのはアメリカはロシアとの軍事衝突の様なお金がかかることは絶対にできない事情があり、アメリカにも着地点が見いだせない状況である。仕方なしにG8からのロシアの追放などの措置を考えているようだが、新たな冷戦体制にも繋がりかねないために、本音では何処かで落としどころを調整してくれる仲裁者を求めているはずである。ウクライナが元々はEUとの綱引きの中で拗れたことを考えれば、G7メンバーでロシアとの仲裁者になれる資格があるのは日本とカナダ程度である。この意味では、日本が鍵を握るチャンスは十分にあるのだが、問題は双方が納得できる落としどころを見いだせるかであり、現実は相当悲観的だと言わざるを得ない。

以上、私の調べた限りでのまとめである。所々間違っているかも知れないし、時間がないので出典も示さなかったが、あくまでもご参考までにということで・・・。

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(提案)大手新聞社・放送局も相互チェックのために定期的記者会見制度を導入しろ!

2014-03-02 21:15:43 | 政治
週末ということで、この1週間のニュースを振り返る番組などを見る機会がある。今日もテレ朝の報道ステーションSundayを見ていると、振り返りの中でNHKの籾井勝人会長が衆議院の総務委員会での質疑の中で、NHKの理事たちに日付の入っていない辞表を事前に提出させた問題を取り上げ、週間第3位のニュースと位置付けていた。今日はこのネタを基に、少し前向きな提言をしてみたい。

まず、テレビ朝日では先日もブログで取り上げたが、河野談話発表時の官房副長官である石原信雄氏の参考人招致したときには報道ステーションで取り上げもしないのに、HNK問題にはどうしてここまで剥きになるのかが疑問である。常識的に考えて、事前に日付のない辞表を提出させるという籾井会長の行動は褒められたものではない。この点は、組織のトップに立つ者として、その適性を問われるのは私も同意する。例えば下記のページでは、弁護士の立場からこの行動についてのコメントが寄せられている。

弁護士ドットコム「NHK会長が『よくある』という『辞表預かり』 一般企業で辞表提出させたら違法?

早い話が、この辞表の有効性なども問題だし、この辞表を根拠に首を切るのは問題ということらしい。ただ、そこまで踏み込んではいないが、籾井会長がこの辞表を提出させたこと自体に違法性を指摘はしていない。国会の質疑の中でも、10人の理事からは「拒否したが強制された」との発言はなく、任意での提出を求めて応じたということなのだと思う。であれば、この辞表を根拠に首を切ろうとしない限り、そこまでは違法性が発生する訳ではないのではないかというのが私の理解である。逆に言えば、この様な行動を取ったが為に、理事の首を切り難くなったというところが彼の行動の浅はかさだろう。

この様に考えると、何故、彼がこの様な愚かな行動を取るのかと考えてしまうのだが、その答えは下記のページを見れば少しだけ見えて来るかも知れない。
NHK Information会長・副会長・理事

これを見れば分かるように、NHK会長配下の副会長、理事職は全てNHKプロパーである。完全に外様の会長が他の役員と相対するとき、相当な抵抗があることが予想される。巷での評価は、朝日新聞(テレビ朝日)や毎日新聞(TBS)などと同様に反日的とまでNHKは評されることがある。この反日という表現は少々言い過ぎかも知れないが、中国や韓国の強烈なヘイトスピーチ、更にはヘイトクライムなどは殆ど黙殺し、日本のまだ可愛い部類のヘイトスピーチには過剰に反応する。しかも、ヘイトスピーチも問題だが、その団体と対立する同種の過激団体についてはヘイトスピーチへの反対勢力として肯定的に捉えたりしているから、この辺のバランスを欠いているのは事実であろう。籾井会長の記者会見や国会での答弁などを見ると、「これでもかっ!」というほど「放送法の順守」を強調しており、今となって考えてみると、現在のNHKの放送が放送法における中立性を損なっているとの考えから、その是正を意識していたのかも知れない。しかし、そんな彼の思いとは裏腹に、理事職は全てこれまでの路線の踏襲に拘りそうな人だから、真の意味での放送法の精神を実現するためには、相当厳しい理事会との対立が避けて通れないのかも知れない。その様な中で、辞表の提出という短絡的な行動に出てしまったということなのではないかと私は予想する。

ちなみに、この辞表の事前の提出は明らかに密室で行われていた話だから、10人の理事の誰かが民主党にタレこんでこの様な質疑になったのであろう。その様なタレこみも如何なものかと思うのだが、現時点では、直接的な致命傷には至っていないと思うので様子見というところである。
ただ、この様な問題がこれほど話題となるNHK会長がそれほど悪いのかと言えば、それには私は懐疑的である。私の目には、NHK会長という役職が制度的(ないしはこれまでの慣習的)に、反日的なメディア及び政治家に対して攻撃の材料を提供せざるを得ないという状況が、この様な事態を招いているのであると思う。それは公共放送だから仕方がないという側面もあるが、公共放送でなければこの様な環境に置かれなくて当然なのかという疑問も湧いてくる。実際、放送法というのはNHKだけを対象としたものではないし、放送法の精神が順守されているかを監視される対象がNHKだけというのは乱暴なところがある。勿論、遠回しながら政治の介入が許されるのがNHKというのはあっても仕方がないが、政治とは別のレベルで放送法の精神を巡視していることを監視されてもおかしくはない。同様に、大手の新聞社なども新聞再販制度という特権により、独占禁止法の適用除外を受け、新聞社側の言い値の固定価格での販売を強制する権利で守られている。書籍やCDなどが著作者に対する著作権保護の観点で価格を維持するのとは異なり、新聞の場合には特権以外の何物でもない。放送にしても新聞にしてもそうだが、ある種の特権や権利を享受しているのであるから、その見返りとしてある種の義務が伴うと考えるのは極めて自然な考え方である。

そこで提案であるが、少なくとも全国系列(ないしは資本金などの規模で分別しても可)の放送局、発行部数が一定以上の新聞社などに対し、定期的に記者会見を開き、他社や一般市民の質問を受け、それに答えなければならないという制度を導入したらどうかと思う。と言うのも、下記の記事で産経新聞は朝日新聞、毎日新聞に対して質問を投げかけているのであるが、それに対する解答が返ってこないという状況がある。

産経新聞2014年3月1日「【高橋昌之のとっておき】朝日・毎日への反論(6) 河野談話の正当性が崩れた石原証言に見解を示さないのはなぜか

先日の沖縄県石垣市の市長選をめぐり、琉球新報が著しく公正を欠く虚偽のデマを新聞に垂れ流し、防衛省より新聞協会に申し入れを行った事件があったが、この様な新聞社の恣意的な世論誘導操作に対し、我々一般市民は無防備な状況にある。この様な新聞社やテレビ局の横暴に対しては、別の新聞社であればその問題点を指摘することは可能であるが、多くの場合にはその様なことが出来ずに泣き寝入りとなる。特定秘密保護法案の一大ネガティブキャンペーンなどもその部類であろう。国民的な議論を回避させ、捻じ曲げたイメージ戦略でネガティブな印象を与えようとするのであるから議論にならない。その様な問題点に対し、上述の産経新聞などは果敢に勝負を挑むのであるが、しかし相手の方は無視・だんまりを決め込んでいる。上述の記事は、先日の石原元官房副長官の国会での答弁に対し、朝日新聞が如何に捻じ曲げた報道をしているかを指摘しているのであるが、同時に朝日新聞、毎日新聞に対して記事の正当性の「相互チェック」を申し入れているという側面がある。

私の主張は、この様な相互チェックを紙面で行うのではなく、記者会見の場で行うということを提案しているのである。勿論、訳の分からない右翼や左翼がこの様な場を荒らすのは本意ではない。であれば、例えば「日本記者クラブ」といういささか閉鎖的な組織があるのだから、その様な組織を活用し、その中で記者会見の場を設ければ良いのである。ちなみにこの日本記者クラブをWikipediaで検索すれば、「日本新聞協会、日本民間放送連盟(民放連)、日本放送協会(NHK)が共同で提唱し日本の『ナショナル・プレスクラブ』として設立された」そうなので、概ね、私の意図する組織がカバーされている。これらの主要な組織に対し、所定の条件の社に対しては例えば月に1回とか、四半期に1回とか、適当な周期で記者会見を開けばよい。また、小規模ながら上述の琉球新報の様なケースがあれば、何社かの連名で要求があった場合には、その様な小規模な会社でも記者会見の義務を伴うとすれば良い。日本記者クラブはかなり閉鎖的な組織と聞くから、その恩恵を被る以上は義務も伴うとすれば良い。

この様なルールは政治が介入して強制するのは如何かとは思うが、自主的に自浄能力を担保するためのルールとしてその様なルールを導入することをお願いしたい。当然ながら、別に日本記者クラブにはこだわらない。

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<後編>集団的自衛権の憲法解釈に関する現状を整理してみた

2014-03-01 20:35:02 | 政治
昨日の集団的自衛権にまつわる憲法解釈の変更の議論で書き足りなかった部分を、若干、補足させて頂く。ここでは残りの論点を4つに整理してみた。。

(1)集団的自衛権の行使として、容認される範囲のコンセンサスについて

以前、岸信介元総理は国会の質疑の中で、「一切の集団的自衛権を持たない、こう憲法上持たないということは、私は言い過ぎだと、かように考えています。」「他国に基地を貸して、そして自国のそれと協同して自国を守るというようなことは、当然従来集団的自衛権として解釈されている点でございまして、そういうものはもちろん日本として持っている」と発言している。つまり、集団的自衛権は保持しているだけでなく、基地を貸し与えた時点で行使もしていると解釈していたのである。しかし、現在では基地の提供は集団的自衛権の範疇ではなく、したがって集団的自衛権の行使には当たらないと理解されている。もうひとつ別の逸話としては、結の党代表の江田憲司氏は集団的自衛権の行使は否定的であり、行使容認派の橋下日本維新の会共同代表との間で決定的な差があると言われている。しかし、そんなことにはお構いなしに政治的には近い関係にあり、実際には大きな意識の差がないと解釈されている。第1次安倍政権において有識者会議がまとめられた集団的自衛権の「4類型」では[1]日米が公海上で共同訓練中などに、米艦船が攻撃され、自衛隊艦船が反撃する[2]米国などに向かう可能性がある弾道ミサイルを日本のミサイル防衛(MD)システムで撃破する[3]国連平和維持活動(PKO)などで他国部隊が攻撃され、自衛隊が駆けつけて反撃する(駆けつけ警護)[4]PKOなどで自衛隊が外国軍隊を後方支援する、があげられる。ここで、上述の類型は有識者が現行の解釈において「グレーゾーン」と位置付けているものであり、例えば[2]などは江田氏は個別自衛権の範疇と見なして現在の憲法解釈の中でも可能だとしており、日本維新の会との合流があるとすれば、この様な解釈の中ですり合わせが行われるのかも知れない。ここで、私は素人なので論点を把握していないが、例えばPKO活動なども国連決議がある場合や国連決議を伴わない多国籍軍の場合などで意味合いは異なる。集団的自衛権に関する閣議決定をする前に、それが憲法解釈と照らし合わせたらどういう位置づけかという議論はできないかも知れないが、グレーゾーン以外にもどの様な類型があり、この様な類型が憲法解釈変更時にはどちら側(自衛権行使の可否)に位置するのかを明らかにするように政府に求める議論を展開することは可能なはずである。であれば、閣議決定を待たずに野党は国会論戦を挑むことは可能なはずであるから、閣議決定前に国民的な議論を展開することが出来る。多分、政府は今年中に行われる日米ガイドラインの見直しを意識しているだろうから、この様な論戦は与野党双方にとって有益なはずである。政治家やマスコミは、ごちゃごちゃ不毛な論争を吹っ掛けるのではなく、もっと真面目で積極的に、この様なコンセンサスの基盤づくりに努力して欲しい。

(2)最高裁判決までのタイムラグをどう捉えるのか

憲法解釈に対する日本国内の最高意思決定機関は最高裁判所であることは疑いもない。しかし、制度上の問題として最高裁には抽象的な違憲立法審査権は有していないらしい。直接的な利害関係の対立がある当事者が裁判を起こすまでは、最高裁側から能動的に違憲審査をすることはないということだ。つまり、憲法解釈変更や法律の成立の後、違憲判決が出るまでにはそれなりのタイムラグが生じてしまう。そこで、一部の人からは新たに憲法裁判所を設置し、そこで合憲性の審査を行うべきという考え方がある。しかし、最初に答えを言ってしまうと、憲法裁判所の設置には憲法改正が必要であり、短期的な意味では現実的な答えではない。さらに一説によれば、現在は憲法などのスペシャリストを内閣法制局に集めているから、この様な憲法裁判所が出来るとこれらの人がここで採用され、結果として現状の内閣法制局がチェックを行う現行制度と大差がないとも言われる。勿論、内閣の管理下にある内閣法制局と、如何なる権力からも独立した憲法裁判所では異なる判断を下すことは期待できなくもないが、内閣法制局の人員が「上司の言うことには逆らえない」と気骨のない人ばかりとは思えないので、その辺はあまり差がないのではないかと個人的には感じている。ただ、この様に最高裁判決までタイムラグが避けられない状況において、確実に違憲判決が出ないと確信できる基準に徹するというのは本当にベストな選択なのだろうか?例えば、過去に規制緩和の動きがあった時、これと同様な議論があったはずである。問題が起きることを嫌って、過剰に「事前規制」を張り巡らせて身動きが取れなくなった状況があった。そこで、その状況を活性化するために規制の緩和を行った。規制緩和の本質は「事後規制」であり、実際に問題を起こした業者を選択して罰則を与え、そこまでは自由に活動させるという考え方である。例えば車の利用を例に取れば、「交通事故の危険があるから誰も車に乗ることはまかりならない」という事前規制ではなく、所定のルールで免許証を所持していれば「基本的に車に乗ることはOK」という前提があり、事故を起こした人は免許停止などの事後のペナルティを与えるというのがその考え方である。憲法と一般の事例で大きな差があることは認めるが、熱物に懲りてナマスを吹く様な内閣法制局の判断が度を越すと、時代の変化から取り残されて、いまだに尊属殺人を合憲とし続けるようなことにもなりかねない。内閣法制局はスタビライザ的な機能が期待されるが、ハンドルを真っ直ぐに固定する機能とは違うことをどの様に考えるべきか、その辺の議論をもう少し深めて欲しいと思う。

(3)統治行為論について

先程も触れたが、憲法解釈の日本国内の最高意思決定機関は最高裁判所であり、タイムラグがあるかも知れないが最終的には最高裁で決着される問題である。昨日のブログでも引用した荻上チキSession22のポッドキャストに出演した元内閣法制局長官で弁護士の阪田雅裕氏や、首都大学東京准教授で、憲法学者の木村草太氏などは、このタイムラグの後に違憲判決が出たときのインパクトを強調し、だからこそ安倍総理のやろうとしていることは間違っていると断じていた。しかし、この様な視点に立つならば、自衛隊の設置を決めたり日米安保を決めたりしたときには、この様な違憲性のリスクを少なくとも感じていたはずである。しかし、実際の最高裁判決はどうであったかと言えば、憲法判断を避けた事実がある。Wikipediaで「統治行為論」を検索すれば、「統治行為論(とうちこういろん)とは、“国家統治の基本に関する高度な政治性”を有する国家の行為については、法律上の争訟として裁判所による法律判断が可能であっても、これゆえに司法審査の対象から除外すべきとする理論のことをいう。裁判所が法令個々の違憲審査を回避するための法技術として説明されることが多いが、理論上は必ずしも憲法問題を含むもののみを対象にするわけではない。」とある。つまり、今回の憲法解釈の変更の範囲が、先ほどの類型の中で「国連決議がないにもかかわらず地球の裏側まで出かけて行って、同盟国の戦闘に協力する形で他国の領土に進行して戦闘行為を行う」までをカバーするならばどうか知らないが、少なくとも上述の類型の[1]~[3]程度の範囲であれば、最高裁は統治行為論を盾にして憲法判断を避ける可能性が極めて高いのではないかと思われる。その範疇であるならば、上述の(3)の議論として「剥きになってハンドルをロープで縛って固定するのではなく、スタビライザは有効に活用しながらもハンドル操作の自由は確保する」という考え方は成り立つと思う。

(4)「選挙で勝てば、何をやっても許されるのか!」という批判について

安倍総理は衆議院予算委員会で「(政府の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と発言し、これをマスコミや野党はこぞって批判をした。中には与党自民党でもこれに噛みつく議員もいた。これを称して朝日新聞は社説で「それでも法制局は、政府内で『法の番人』としての役割を果たしてきた。首相答弁はこうした機能を軽視し、国会審議の積み重ねで定着してきた解釈も、選挙に勝ちさえすれば首相が思いのまま変更できると言っているように受け取れる。」と主張する。ちょっと待ってほしいのは、「選挙で勝てば何をしても良い」と「(正しいと信じて行動し)その上で選挙で審判を受ける」とはベクトルの向かう先は全く異なっている。つまり、「選挙」を終ったことと捉えるか、この先に控えているものとして捉えるかの差である。経済活動で例えるなら、前者は社長になればコンプライアンスも何も気にせず何をしても良いと開き直る発言であり、後者は社長になった自分の行動をマーケットは注視しているからそれに応えるよう全力で取り組むと言っているのに近い。社長になったという事象を過去のことと捉えるか、社長になった後のマーケットの反応を未来のことと捉えるか、そんな違いである。常識的な日本人であれば、その違いは誰にでも分かることであり、安倍総理が思ってもいないことを恣意的に社説まで使って吹聴し、その結果としてこれまでに述べてきた様な上述の論点をはぐらかすのは如何にも稚拙である。

(昨日のブログを含めて)以上が、私の考えたポイントである。素人考えなので問題もあるかと思うが、せめてこの程度までは日本の政治家、ジャーナリズムも考えて欲しいものだ。

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