けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

どこかで見た風景?(韓国朴新政権は大丈夫か?)

2013-02-27 22:01:08 | 政治
先日、韓国では朴槿恵新大統領が就任した。読みようによっては女性蔑視と取られそうなことを書かせていただくが、本人としては決してその様な意図を持つものではないことを最初に断っておく。
北朝鮮との非常に緊張状態にある現状で就任する隣国の大統領には、国民の生命財産に関する非常に重たい責務が背負わされている。朴大統領の経歴は筆舌に尽くしがたいものがあり、その様な中で敢えて政治家という道を選んだその覚悟からは、韓国国民が大統領に選ぶに値する何かを備えていることは彼女の情報をあまり持たない私でも容易に予想できる。だから、以下の危惧が単なる思い過ごしであって欲しいと願うのだが、やはり少々心配なので書かせていただく。

実は、下記の記事を読んで、何か記憶の奥底で引っかかるものを感じた。

産経ニュース2013年2月26日「朴韓国新政権 候補の疑惑噴出 閣僚就任に遅れ

その引っ掛かりが何であったかは簡単に思い出すことが出来た。そう、民主党政権で3人の総理が犯した過ちに何処か似ているのである。まず、日本でも閣僚を任命する前には事前に身体検査を行うのである。第1次安倍政権が短命に終わった理由のひとつには、自殺した松岡元農水相の任命があった。明らかに、それは駄目でしょうと誰もが思う人事を行い、それが問題となっても更迭の決断が出来ず、本人を自殺にまで追い込んだ。その後も、その失敗は続いた。これと同様に、民主党政権でもあまりにも酷い人選が行われてきた。民主党の中では結構まともな野田総理ですら、田中元防衛相や山岡元消費者相など、ありえない人事を行っていた事実は拭い去れない。野田総理の場合、消費税増税に前のめりの彼にとって、防衛相や消費者相は当時の輿石幹事長にお任せで良いポジションだったのかも知れない。しかし、今回の韓国では首相という国家のNo.2の人選なのである。大統領は熟慮に熟慮を重ねて選んだはずである。さらに日本とは異なり、大統領選から就任までのタイムラグが大きいことを考慮すれば、多分、調査するための時間もそれなりにあったはずである。実際、12月末に当選してから首相指名までは1か月もの余裕があった。ところが、首相候補に指名されてからたった5日で首相指名を辞退に至った。裁判官在職中の不動産投機疑惑、2人の息子の兵役忌避疑惑などが原因であるが、ほんの僅かな間にマスコミが簡単に指摘できる程度のことを、彼女はそれなりの調査機関を使っても事前に把握できなかったということになる。結果として、自分の大統領就任に首相の指名が間に合わなくなってしまった。それはあまりにもノー天気すぎるお幸せな人柄と言っても過言ではないだろう。

また、閣僚人事についても同様である。閣僚人事が役職に求められる過去の経歴の条件に合致しないなどが原因で、現時点で組閣をすることが出来ていない。詳しくは知らないが、省庁再編を目指している中で関連法案が成立せず、閣僚の任命にも支障が出るなどの背景があるようだ。結果、大統領が変わったにもかかわらず、李前政権の閣僚が留まった状態で国家が運営されている。国家を動かすためには、法律ないしは慣習ともいうべき様々なルールというものを熟知した上で、その権限とその根拠となる理由(例えば法律)を十分に把握して様々な命令を行わなければならない。しかし、どうも朴大統領はその様な能力には長けていないように見えるのである。

これまた何処かで見た景色である。民主党政権での菅元総理は、総理大臣に就任するまで自分が自衛隊を指揮する最高権限者であることを知らなかったという。東日本大震災の際には、全ての命令の前提となる緊急事態宣言の重要性も全く理解できないでいた。また、思いつき&口頭で手近な人に指示を出しまくり、それが指示通りに動かないからと回りに文句を言いまくっていたという。例えば、自衛隊を動かそうと思えば、その指示を法律に照らし合わせて明文化された状態で所定の指揮命令系統で伝達されなければならない。途中をすっ飛ばして「なあなあ」で物事が動くわけがない。これが民主主義、文民統制のとれた国家というものである。普通であれば、官僚が首相の意を汲み取って、その足りない行間を補うアドバイスを総理に対して行うのであろうが、「官僚なんて大馬鹿者ですからね!」と自慢げにプライドの高いエリート集団をけなしまくっていたのだから、困った時に助けてくれる人がいない。自業自得なのだが、自分のまいた種とも言うべきその状況を打開する責任は自分にはないと信じ込み、全て他人のせいにしていた。結果、見るに見かねた細野現幹事長が、長島昭久氏に間を取り持つようにお願いし、彼がすっ飛ばした手続きをフォローして何とか自衛隊が動くことが出来た。この様に、国家の最高権力者たる人は法律であったり慣習、ルールというものを熟知し、何かミスがあればフォローしてくれる味方(官僚・ブレーン)を自分の回りに結集しておかなければならない。しかし、今回の報道を見る限りでは、朴大統領にその様なものが見えてこない。

さらには、あれだけ挑発的な北朝鮮に対しても、比較的寛容な様に見て取れる。国民感情を意識してのことだろうが、本来軍事的に重要なはずの日本よりも中国に重きを置き、(女性ということもあるのだろうが)ニコニコしながら温和な雰囲気を振りまく姿は、失礼極まりないと怒られそうではあるが、鳩山元総理に通じる何かを感じてしまう。私の頭の中にかなり潜入観念が入っているからだけなのだろうか?安倍総理が選挙に勝利して以降、表であまり笑みを見せないのとは対照的である。少なくとも、北朝鮮に隙を見せないためにも、政治の空白期間をゼロにして、安倍総理の様なロケットスタートを余儀なくされているはずの韓国において、今の彼女の振る舞いはあまりにもノー天気過ぎると私の目には映ってしまう。

その前の自民党政権も末期的ではあったが、民主党政権で壊れた日米同盟の絆、その結果として中国、韓国、ロシアから付け込まれる隙を見せたことは、東アジアのパワーバランス、安定を乱すものであった。これは、単に日本だけが損をしたという話ではなく、アジア全体が迷惑を被った話である。今回、韓国が北朝鮮に大きな隙を見せれば、それは東アジア全体、アメリカ、及び世界中に対してもその影響が及ぶ。韓国にはしっかりしてもらわなければならないが、どうも心もとない。

おりしも、イタリアの選挙結果は「それみたことか!」と言いたくなる様な結果であった。欧州の通貨危機がきっかけとなり、それが世界各地に飛び火することは十分に予想できる。日本も同様に厳しい状況ではあるが、幸いにも適切な対処能力を持つ指導者及びそのブレーンの下で、それなりの舵取りをすることは期待できる。しかし、韓国という国は98年の通貨危機のような危機を、それ以降も大統領が交代するタイミングで定期的に迎えている。昨年の李前大統領の竹島上陸で日本と衝突し、現在は通貨スワップ協定の枠拡大の時限措置が終了した状態にある。少々大袈裟に言わせて頂けば、韓国は自賠責のみの無保険車に乗って運転している状態に等しい。であれば、欧州の通貨危機と北朝鮮からの軍事的威嚇のダブルパンチを受けた時、韓国がどの様に転ぶのかは私には予測できない。現時点では危険な兆候はないのであろうが、あまり悠長なことは言っていられないのが本当のところではないのだろうか?

多分、現在の韓国の政権が過去の民主党政権に通じるところがあるのであれば、この様なことを誰かがアドバイスしても聞く耳を持たないだろう。しかし、それは自殺行為に等しいのである。

私が感じた「どこかで見た風景」が思い過ごしであることを祈るばかりである。

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将棋の「永世名人」と「総理大臣」の関係

2013-02-25 23:56:20 | 政治
私は株をやらないので、あまり株価が気になったりはしないのだが、先週金曜日の午前中に11,200円を割り込み、為替もここ最近より円高に振れていたので「マーケットは気まぐれだなぁ・・・」と感じていた。午後には大分株価を持ち直していたのだが、私はそれを知らずに今日の株価と為替レートを聞いて、思わず「おぉ~」と唸ってしまった。一番の鍵は次期日銀総裁のニュースが駆け巡ったことだろうが、TPP交渉参加表明に目途がついて、参院選での勝利の先に長期政権が見えてきたということを感じ取ったのかも知れない。この手の話はボロが出るのでここで止めるが、この次期日銀総裁の話題に連動して株価が跳ね上がったことを考えれば、少なくとも民主党は同意人事に反対してそれを受けて株価が下がろうものなら、それこそ国民から厳しい罰を受けるのは間違いない。民主党が事前に宣言した日銀総裁の条件に照らし合わせてそれほど外れていないことを考えれば、既にこれも「勝った同然!」なのだろう。自民党は、あまり野党との事前のネゴを意識せずに、国会での質疑で適正を判断してもらう戦略に出るようだが、この辺も正攻法で好感が持てる。気が付けば、全てが安倍総理の思った通りに事が運ぶところは恐ろしい限りである。

さて、そんな中で今日コメントしたいのは、安倍政権のひとつの特徴でもある総理経験者を活用した外交についてである。総理経験者の外交と言えば、「ルーピー鳩山」の顔を最初に思い浮かべる人も多いかも知れない。中国やイランなど、国益に多大な損失を与える行動を平気で取りながら自分に酔っている。この様な政府の方針と異なる外交は2元外交と呼ばれ禁じ手の代名詞であるから、その意味では森元総理や麻生元総理を活用することには疑問の声もあった。それは、国際社会は総理経験者の言動は単なる特使であったり副総理であったりする以上の意味を感じ取るから、非常に危険な「両刃の剣」と多くの人が感じるからである。私もその一般論には賛成であるが、しかしやはり固有名詞をあげた各論になると話は別である。最も重要なのは、その人が時の総理大臣の意を汲んで、過去の名声を捨ててひとつの「将棋の駒」に成り切れるかなのである。

話は少しそれるが、私の記憶が正しければアメリカでは大統領は職を辞した後も国民から「大統領」と呼ばれると聞く。イマイチ記憶が定かではないが、海外ドラマの「24(Twenty Four)」の中でジャックバウアーが元大統領のことを「大統領」と呼んでいて、非常に違和感があった。多分、将棋の世界での「永世名人」の様に、名人位を失ってもその後も「名人」と呼ばれ続けられる様な尊敬の念を「大統領」という役職にアメリカ人は認めているのではないか?(もし、私の記憶違いだったらご容赦を)

この様に考えれば、日本の総理大臣も世界の中で見れば永世名人的な意味で「永世総理」という見られ方をするのかも知れない。これを中国に悪用されるという隙を鳩山元総理は繰り返してきた。しかし、例えばG20での麻生元総理(現財務大臣)の振る舞いは、その場にいる各国の代表は如何にも「格が違う」「役者が違う」というオーラを振りまいていた。ギャングスタイルとして話題にもなったが、アベノミクスも含めて非常に世界の注目を集めている「主役」を演じていることを象徴的に示していた。今回の彼の役割は、自信を持って「お前ら、散々、記入緩和で為替操作をしまくっていたのに、全く同じことをやっている今の日本に文句を言うな!」と言い切ることにあったし、それに雰囲気的に変な説得力を持たせることが最大の使命であった。これには「永世総理」の肩書は非常に好都合なのである。

森元総理にしても同様である。総理になって最初の外遊先がロシアであった彼からしてみれば、北方領土問題の解決はライフワークであり、過去のブログ「人は見かけによらないか?(その向こうにある希望)」でも書いた通り、森元総理とプーチン大統領の関係は我々の予想以上の親密さである。その森元総理が、「永世総理」の肩書でプーチン大統領と「タメ」の意見交換をするならば、日本からしてみれば都合の良い話には飛びつけば良いし、都合の悪い話に関しては「単なる議員を引退した一民間人が言ったこと」となかったことにすることもできる。安倍総理が直接「『引き分け』ってどういう意味?」などと聞ける訳がないが、この様なことを聞くには彼は適任なのである。今後もこのカードは大いに活用されるだろうと期待する。

この様に、物事はケースバイケースなのである。悪い見本も散々見てきたし、その逆の良いお手本も見せられた。重要なのは、一度は頂点を極めた人に対しても「この人のために一肌脱ごう!」「将棋の駒になっても構わない」と思わせる人間関係を事前に築いていることなのだろう。だからこそ、両刃の剣が機能しているのだろう。我々は良く分からないが、橋下共同代表にも惚れ込まれた安倍総理には、(一見、ビジネスライクにも見えるが)その様な魅力があるのではないか?実は、オバマ大統領もそれを感じた一人なのかも知れない。

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そろそろ、選挙制度についても考えてみたい

2013-02-24 23:56:39 | 政治
日米首脳会談で大きな成果を上げ、内閣支持率は多くのマスコミで70%を超えた。慎重な報道機関の中には党内の反対派の説得ができるのかが疑問との見方もあるが、アメリカの大統領を動かすところまでやっておきながら国内でもたもたしては63%にも達したTPP参加賛成派を敵に回しかねないから、既に勝負はついた話である。1週間後には決着しているのだろう。これからは、如何にタフネゴシエータを選抜して交渉に臨むかが見所だろう。

ちなみに、ここでの早期決断の意味は実は非常に大きい。自民党政権にとって最初の判断タイミングであるから、それを一発で見事にものにしたということは、参加のタイミングが遅れて日本の国益を主張するチャンスをみすみす棒に振った責任の全てを優柔不断な民主党に負わせることができる。これで、(個人的な感覚として)参院選に向けた最も大きなハードルを越えたから、参院選でねじれが解消することはほぼ手中に収めたも同然だろう。

そこで今日は、少し話題を変えて選挙制度について少しコメントしてみたい。

ここ最近の大きな問題として、衆議院と参議院のねじれ現象による国政の停滞が注目されて久しい。ねじれ現象というものが、ある意味では与党の暴走を止めるブレーキとしてはたらき得るが、結果的には反対のための反対が横行し、アクセルを踏むべき時にも一方でブレーキをベタ踏みして動きを封じていた。もともとは、貴族院のように異なるバックグラウンドを持った人達によって構成されていたり、戦後であっても学者や有識者を中心に議員を揃えたことで良識の府とまで言われ、それぞれの役割分担的な意味があった。しかし、現在はあまりその様な役割分担の意義が失われ、衆院選で落選したから次の選挙の参院選に出馬するとか、参議院議員を辞職して衆院選に出馬したりと、その垣根は既に無くなっている。

だから、選挙制度改革を考える場合、現状を前提とする継ぎ接ぎ的な対応とは別に、そもそも論に照らし合わせた時にどの様な議論が出来るかということも合わせて考えるべきと考える。あまり細かい話はできないが、結論的な提案を最後にしてみたい。

まず参議院では、任期は6年でありながら3年おきに選挙が行われる。更に衆院選も加えると、期待値的には2年程度の周期で何処かで国政選挙が行われることになる。選挙が近いと、選挙目当ての政策が前面に出されたりするから、あまり人気のない政策を腰を落ち着けて議論するためには非常に都合が悪い。もともと、参議院は解散の恐怖を意識しなくてよいように、任期を6年と長く設定すると共に解散がないというルールとなっている。しかし、第1次安倍政権以降の政権が短命に終わったのは参議院の議員数の構成の影響を強く受けたことからも、議員個人の当落とは別に、政権の浮沈を決める選挙として参議院選が機能してしまっている以上、人気のない政策を腰を落ち着けて議論するのに役立っているようには見えない。だから、この任期、解散の有無というところも見直しの対象となるべきである。

次に、政策的な視点からも見ていこう。少し話題がそれるが、現在、イタリア選挙の真っ最中である。イタリアを散々な状態に陥れたA級戦犯のベルルスコーニ元首相などが、小沢一郎も真っ青というこれ以上ないポピュリズム選挙を仕掛け、これが意外に国民に受けているという。殆ど自殺行為なのに、それが分かっていても止められないほど、ポピュリズム選挙というのは根が深いのである。また、これまた話は変わるが、先日、報道ステーションを見て絶句してしまったシーンがある。自民党の衛藤征士郎議員が、地元九州の高速道路新設予算を要求し、その要求額以上の配算があったと誇らしげにテレビで語っていた。地元の関係者との間でも、「とにかく、多め、多めで予算を要求しましょう!」と本音を平気で語っていた。本当に必要なところに、必要最小限の割り当てを行いながら、一番効率の良いところを追求しましょうというのが国家の方針であるにもかかわらず、とにかく自分の選挙区の有権者だけ得をすれば良いというエゴ丸出しの発言である。常識的に言えば、この様な映像が流れれば次の選挙で致命的なはずだが、それを堂々とテレビにさらけ出すというのだから、余程、善悪の区別がつかなくなっているのに違いない。先の衆議院選挙でも多くの自民党議員が農業票欲しさにTPP絶対反対を掲げて当選した。これは安倍総裁の「聖域なき関税撤廃を前提とする限りは参加に反対」「国益を最優先に判断する」「基本的には自由貿易を推進する」とは似ていて非なるものである。この様に、選挙となると党の方針よりも自分の都合という個利個略を前面に出す議院が横行しかねない。

2大政党制を目指して導入された小選挙区制度だが、盆踊りや冠婚葬祭に奔走するという変な習慣が根付いている日本にはあまり適していないのではないかということを、ここ最近の選挙で我々は勉強してきたところである。将来、多分、それは30年や50年という先だろうが、いつか選挙における民主主義が成熟したところで小選挙区制に戻る可能性はあるが、当面は小選挙制は単純に振り子を大きく振らせるリスクを大きくするだけで、堅実な主張をする議員を拾い上げるのには適していない様に思える。

細かい議論は他の人に任せるとして、まず衆議院選挙に関しては、私は故三宅久之氏の提唱する「全国共通、3人区×100選挙区制」というものに共感する。この制度の意図することは、2大政党であれば1議席を与党、2議席目を野党第1党、残りの3議席目を中小政党と与野党第1党が奪い合い、その3議席目をどの様な配分で分け合うかで政権が決まるというものである。さらに私の提案は、故三宅久之氏の提案に追加して、参議院は全て100%比例代表制にし、且つ、非拘束名簿式比例代表制の様な個人名での投票を廃止するのである。あくまでも個人に対する投票ではないから、当選した後で離党して他の政党に合流することはできない。極端な話、通常国会や臨時国会のたびに、政党側が議員の入れ替えを行っても良い。そこまでいかなくても、党員資格停止中は同時に議員資格も停止され、その間は別の代理の議員が国会に出席するようにしても良い。この様にすることで、少なくとも参議院では、政党が前面に打ち出す政策を全面的に支持する議員を優先的に議員とさせることができる。また、この様にすることで、参議院は既に現在の様な議員とは異なる概念で捉えるべきかも知れない。

衆議院は、振り子の振れ方の影響を受けやすく、支持率に反する議席数になる可能性が高いが、提案のように政党名で投票する100%比例代表制を採用すれば、参議院は正確な支持率を反映した議席数になる。我々は、一度、悲惨な経験を経ているのだから変なポピュリズムに対する免疫ができている。責任ある与党が責任を果たす限り、参議院選挙での無茶なポピュリズム政策は排除しやすい。さらに、衆議院選挙でも3人区制を採用すれば、主要政党であれば同一選挙区から複数の候補者を擁立することになる。この同一政党の候補者が異なる自分に都合の良いことを言っていれば、結果として有権者はその矛盾に気が付くことになる。党内でもそれは議論になり、無茶なことを言うことに対するブレーキとして働くことが期待できる。だから3人区制になれば、現在の様に「小選挙区で公認を得てしまえば何でもアリ」というようにはいかなくなる。

後は、如何にして選挙の周期を長く設定するかである。安定政権を築くためには、あまりにも選挙の周期が短いと問題である。しかし、あまりにも間隔があきすぎると、一旦下された民意の賞味期限が切れても、その現在を反映していない民意で現在の政権の足を引っ張ることになりかねない。この辺は少し議論が必要であるが、一つの例としては、現在よりも衆議院の優越性を高めるという選択がありうる。これは、任期4年の衆議院が最重要であり、参議院選挙は衆議院選挙で勝つための単なるツールに成り下がるというものである。ないしは、先ほどの様に参議院議員の存在は、議員個人というより党勢を表すものと考えるなら、いっそのこと任期を1年ないし2年(1年ごとの半分ずつの改選としても良い)としてしまうのも良い。選挙の間隔は短くなるが、選挙に勝利した効力が短くなりさえすれば、無茶なポピュリズムを提示して議席を獲得しても、その賞味期限が短ければ簡単にその見直しを行うことが可能になる。逆説的ではあるが、衆議院は正統派の4年任期を維持するが、任期の短い参議院は殆ど公の「世論調査」的な意味合いを持つようになるから、下手な小細工をして1、2年限りの議席を稼ぐより、参議院選で真面目な政策を提示することで国民の支持を取り付け、次に来る衆議院選での議席獲得を目指すモチベーションが湧くようになる。議員個人の選挙活動を前提とすれば、1、2年の任期はあり得ない選択肢であるが、個人の政治家が選挙活動をするのではなく、政党が中心となる選挙活動であるから、ぎりぎりのところでの許容範囲であろう。全くの逆転の発想である。また、少々強引であるが、衆議院と参議院は常に同時に改選するという考え方でも良い。つまり、参議院にも解散(衆議院との連動)を導入するのである。

最後の幾つかの選択肢は、色々、その他の制度との整合性などで考えようがあると思うが、ここまでドラスティックな変更を行うのであれば、その制度改革のついでに議員数の定数削減もやり易い。多分、ここまで大きな変更には5年以上の長い議論が必要だと思うが、参議院選挙が終わった後で構わないから、ゼロから選挙制度を組み立てるつもりの議論を開始して欲しい。

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次のキーワードは「法の下の支配」

2013-02-23 23:58:01 | 政治
日米首脳会談のニュースが昨日から入ってきた。報道からの評価は概ね予想以上の成果というところだろう。私のブログでは楽観論を示していたが、下馬評ではオバマ大統領が「聖域なき関税撤廃がTPP交渉の前提」ではないことを明確に示してくれるとは思えないという予想の方が高く、結果的に交渉参加の決断には更なる時間を要するだろうと思われていた。しかし、現在では全てのマスコミが安倍総理帰国後直ぐの参加表明を信じて疑わない。この変わり方が、会談の成果の大きさを物語っている。ただ、現在の国際情勢を見ていれば容易に予想できる(と、私が勝手に思っているだけだが)から、その結果自体にはそれほど驚かなかった。しかし、この結果を受けて、私は安倍総理の戦略性の高さを改めて思い知った。

今朝のテレビに出演していた橋下共同代表も言っていたが、組織をまとめるための手続きを着実に進める手順、段取りの組み方が今回の場合素晴らしいものがある。一見、選挙公約で高めに設定したかのように思えるハードル「聖域なき関税撤廃がTPP交渉の前提である限り、交渉参加には反対」をクリアし、その成果を引っ提げて「交渉参加の判断は政府の専権事項」という原則を前面に出し、政府への一任を求めるのである。これで政府への一任に反対するためには、党の掲げた選挙公約が不適切であったいうことにしなければならない。3本の矢の成長戦略を実現する上でTPPへの参加が必須であるという外堀も埋めながら、上手くかじ取りをしていた。

実は昨年の自民党総裁選の前、ないしは衆議院選挙の前に、私は「聖域なき関税撤廃がTPP交渉の前提である限り、交渉参加には反対」という説明を聞いて、勿論、「前提が撤廃されれば参加OKじゃないか!」とは思いながらも、「何をぬるいことを言っているんだ!みんなの党や日本維新の会の様に、明確に交渉参加を打ち出すべきだ!さもないと、選挙に勝っても民主党と同様に、TPP反対派に押し殺されてしまうぞ!今から方向性を示すべきだ!」と感じていた。しかし、TPP反対派の議員の多くは、自分が論理的な思考を行って反対に辿り着いたのではなく、選挙での支援団体がNoというから選挙で勝つために反対という結論に辿り着いたものが多い。それは選挙に勝って単に議員にしがみつきたいという以上に、政権与党の旨味を思い切り味わいたいという欲望に繋がるから、一旦政権与党になってしまえば、自民党を崩壊させてまで、つまり政権与党の椅子をかなぐり捨ててまで自らを犠牲にしてTPP潰しを行おうと考える者は少ない。ましてや、これだけアベノミクスが世界で注目され、円安が進み株価が一気に上がり、デフレ脱却の期待が国民の間にこれだけ高まった状態で、その梯子を外す行動(自民党を崩壊させてまでTPPを阻止すること)を取れば孫子の代まで国賊と罵られても仕方がないことは痛いほど感じているだろう。

どこまで読み切っていたかは分からないが、安倍総理は総選挙の後にアベノミクスへの期待で円安・株高が進み、北朝鮮が核実験を行い、中国が弾けた行動を取り、アメリカが対中国包囲網をより強固にしようと本気で考えたときに何をすべきか、そして最大のアメリカの国益追求と矛盾のない日本の戦略として、TPPでの例外品目の容認を勝ち取れると、ある程度確信していたのではないか。そうでなければ説明ができないほど、あまりに物事がうまく進み過ぎている。先日ブログにも書いたが、運命論の様なものを感じる背景にはこの様なことがある。
さて、ここからが実は本題なのだが、TPPなどとは比較にならないほど難しい対中国への対応方針についての戦略性が更に素晴らしい。先日からも報道にもあるように、アメリカは決して日本と中国の対立の激化を望んでいない。だから、日本には中国に対して軍事的には抑えた行動を望んである。これを称して中国の新華社は「日本の指導者は尖閣で冷遇された」と言ったのであるが、実際には真逆である。これまであまり日中関係に口を出さなかったケリー国務長官から岸田外相は「尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲にあり、日本の施政を害しようとするいかなる行為にも反対する」という言葉を引き出した通り、日米同盟復活を世界に印象付けたのは事実だろう。では、軍事的には抑えた行動を取りながら、中国を制するための戦略とは何か?答えは日米共同声明にも含まれているが、先日の下記のニュースからも伺い知れる。

産経ニュース2013年2月20日「中国が仲裁手続拒否、フィリピンは法廷闘争継続

つまり、領土問題というものは2国間で解決を図ろうとすると武力による衝突につながるのは常識である。だから、法のもとで秩序を保ちながら、平和的な解決を図るしかない。これを具体的に焼き直せば、国際司法裁判所での裁判というのが正しいやり方だろう。しかし、上述のニュースにもあるように、中国は裁判に持ち込むのが死ぬほど嫌なのである。戦争で解決すれば勝てるものを、公平な裁判で負けたら国内での地位を失うのが目に見えているからである。これは韓国も同様である。だから、この様な提訴を拒否せざるを得ないのである。これと関連してか、共同声明の中でも沖縄県の尖閣諸島に関連して安倍総理は、「日米両国が協力して、自由な海を守り、力ではなく法に基づいた秩序を構築していくことで一致した。法の支配をしっかりと守っていくことが重要だ」と語っている。軍事的には抑えた行動を取りながら、相手の非道な行為を公開することで相手の過激な軍事行動を抑制し、一方でフィリピンなどの様に領土問題を抱える国々が同時に法の下での解決を唱えたならば、中国はますます国際社会で孤立するだけである。

勿論、TPPについても同様である。中国もいずれ、TPPに参加せざるを得ない時期が来るであろう。その時、2国間であれば中国がルールーメーカーとなることを主張し、ルールもへったくれもない事態に陥る可能性があるが、公正な手順を踏んで作られたTPPに後から参加するためにはそのルールを飲まなければならない。そのルールは、今まで中国が知っていた不条理なものではなく、公平・公正なルールなのである。それでは中国の強みを当然生かせるわけがないから、国際的・経済的な地位は低下せざるを得ない。

これからは、あくまでもルールにのっとって全ての解決を図るという「法の下の支配」が対中国のキーワードとなっていくのだろう。実は、その点をオバマ大統領と確認できたことが、今回の首脳会談の最大の成果なのだと思う。

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中国国防省と中国外務省は仲が悪いのか?

2013-02-21 22:22:54 | 政治
昨日、凄いニュースが飛び込んできた。中国人民解放軍の秘密部隊がアメリカを中心とする世界各国の政府機関や企業、インフラなどに対してサイバー攻撃を仕掛けているということを公開し、米国の報道官が中国を名指しで非難したというニュースである。また面白いことに、中国がこの非難に対して間髪いれずにこの件を否定し、逆にアメリカを非難するということになった。この辺について、少しばかりコメントを加えてみたい。

まず、中国の否定の声明を聞いて疑問に思った点から書かせて頂く。私はネットワークのセキュリティの専門家ではないが、少しはこの辺の事情についての知識は有しているつもりである。思い違いがあればご指摘を頂きたい。

では順番に見ていこう。最近では日本でもインターネットを介した成りすまし事件があったから、他人のIPアドレスで悪事を働くことができるということが知られるようになった。だから、中国国防省側から「IPアドレスの情報をつなぎ合わせただけでハッカー攻撃が中国から行われたと結論づけており、技術的証拠に欠けている」と言われて納得する人が多いと思う。私の予想では、中国国防省は中国外務省に対して、「これは大変だ!とにかく一方的に否定しろ!」とだけ指示し、細かな言い訳の方法については指示しなかったのではないかと予想している。だから、「盗んだIPアドレス」という説明をすれば、誰もが理解してくれると中国外務省報道局は考えてしまったのではないだろうか。しかし、ここには明らかな矛盾がある。アメリカのセキュリティ機関が上海の秘密部隊を名指しで非難するのは、100件以上のサイバー攻撃の足跡を辿ると、その殆どが所定のサブネットに所属するIPアドレスに行き着くという事実があるからである。勿論、海外のサーバを何回も経由したり匿名化や成りすましなどの技術を駆使し、自分のIPアドレスに辿り着くまでの作業を複雑化させているのであろうが、少なくともスパゲッティ状に世界中のサーバを介しながら、そこがサイバー攻撃の起点か単なる経由地かは別として、上海のある一点に収束し、しかもそのIPアドレスが中国の秘密部隊に紐付けられたIPアドレスであったということは、ふたつの可能性のいずれかであることを意味している。ひとつは自らが攻撃を行ったということ、もうひとつは完全にネットワークが乗っ取られ、他人のサイバー攻撃の踏み台にされながらそれに気がついていなかったということである。

細かい説明の前に、少し補足を加えておく。「盗んだIPアドレス」という言葉の意味を報道官はどの様に理解したのだろうか?PCに詳しい人であれば、IPアドレスをDHCPで自動設定する場合と手入力で設定する場合があることをご存知だろう。しかし、適当なIPアドレスを設定すると、接続されたルーターで弾かれて、ネットにアクセスすることが出来ない。ルーターにしても同様で、好き勝手なアドレスを設定して運用することは出来ず、より上位のルーターとのアドレス的な整合性が取られたIPアドレスでなければならない。各ルーターは、世界中のネットワークとつながっているから、悪意を持った個人が勝手にネットワークに不適切なIPアドレスを設定して世界とつながることは不可能であり、世界的に承認されたルールに基づいて設定されたIPアドレスを用いて初めてインターネットアクセスを行うことが出来るのである。

だから、「盗んだIPアドレス」の意味するところは勝手に人のIPアドレスを盗用できるというのではなく、通常は先日の日本の成りすまし事件のように、他人のPCにウイルスを仕込ませて、それを遠隔操作するなどの操作でそのウイルスに感染したIPアドレスで何らかの悪事を働くのである。つまり、「盗んだIPアドレス」とは、誰かからウイルスを仕込まれるなどにより乗っ取られたPCのIPアドレスであり、そのIPアドレスはその様な被害にあったPCの持ち主を特定する証拠となるのである。であれば、今回の中国の秘密部隊のPCがIPアドレスを盗まれた被害者だと言うのであれば、そのPCの持ち主は数年間にも亘り何百件ものサイバー攻撃に利用されてきたことを意味する。これは、セキュリティ管理能力が皆無であることをさらけ出すようなものである。多分、利用されたIPアドレスはひとつではないだろうから、そのPCを所有する組織が組織としてセキュリティ管理能力がないことを示すことになる。しかし、中国国防省の配下の組織でその様な無防備な状態などあるはずがない。このことから、私からしてみると「盗んだIPアドレス」という言い逃れは、逆に自分の首を絞める稚拙な弁解でとしか言いようがない。多分、中国の秘密部隊の担当者でなくても、多少の知識を持った担当者ならばこの程度のことは直ぐに思いつくであろうから、今回の中国外務省の報道からは、国防省側からは弁解方法について何らアシストしてもらうことなしに外務省側で独自に弁解する必要に迫られたことがうかがい知れる。この辺の足並みの乱れから、今の中国の隙が見えてくる。

次に、先日のFCレーダ照射事件との関連でコメントさせて頂く。中国外務省からの強烈な否定、批判声明の映像を見て、「あれっ?」っと思った人もいるのではないだろうか。先日のレーダ照射事件の際には、中国外交部報道局の(相対的に物腰の柔らかそうな)女性の副局長の華春瑩報道官が対応した。これまでは中国外交部報道局の報道官はその性別によらず如何にも性格が悪そうな高飛車な人が多く、少し前までは洪磊報道官がメインで登場し、日本に対して超キツイ発言を行っていた。私は先日、華春瑩報道官がシドロモドロにレーダ照射を報道で始めて知ったという失態をさらけ出し失脚するのではとも思ったが、その後も登場してレーダ照射を全否定したりしていた。だから、本来であれば今回も華春瑩報道官が対応するのが筋ではないかと素人ながらに考えるが、実際には超高飛車な洪磊報道官が対応した。それなりの理由があったら私の早合点であるが、今回の間髪を入れないサイバー攻撃の否定と報道官がソフト路線の女性から強硬路線の男性に代わったことからだけでも、中国の置かれている立場を表しているように思う。

多分、背景は次のようなものだろう。サイバー攻撃は、流石に軍部でも違法行為という自覚が強くあり、イザというときにはシラを切り通さなければならないという共通認識があったのだろう。場合によっては、マニュアルの様なものもあったのかも知れない。だから、指摘を受けた中国国防省は直ぐに何のことかを理解し、当然の対応として事実の否定に走った。今更、何も根回しや確認作業などをする必要もなく、全てを把握できていたから対応も早かったのである。蛇足ながら、FCレーダ事件では背景の把握だけであれほど時間がかかったということである。それだけFCレーダ事件は根が深い。しかし、それでもあの相対的には物腰の柔らかそうな女性報道官を用いるのだから、中国は日本を始め諸外国との軋轢・対立を出来るだけ回避しようという意思が透けて見える。ついでに言えば、先日私のブログで話題にした丹羽前中国大使の暴言を中国国内の新聞であれば喜んで取り上げそうなものだが、調べた限りではその様な報道は現時点で見つからなかった。あまりことを荒立てず、有耶無耶に終わらせたいという気持ちの表れだろう。しかし、今回のサイバー攻撃では超高飛車な男性報道官を起用して強烈にアメリカを非難したのだから、それだけ否定に対して躍起になっていることが伺い知れる。
以上は中国サイドに関するものの見方なのだが、アメリカサイドでものを見るとどうなるだろうか?先日の日本国内での中国の外交官のスパイ事件を見ても明らかなように、外交官には外交官特権があるから実際の逮捕は不可能である。にもかかわらず公安当局が調べ上げた証拠を暴露するとなると、これまた情報収集能力をさらけ出すことになるから、出来ることならこの様な情報を公開したくはない。外交官の追放に際しては、この様に出来れば公にはしたくない背景があるものの、今後もズルズルと情報が漏れることを回避しなければならないから、タイミングを見計らって情報を公開したのだと思う。ただ、今回のアメリカを中心とするサイバー攻撃では、軍などの中枢機関が攻撃され情報が漏洩した訳ではないからそれほどの緊急性がない一方、相手が中国国防省であるのだから公開に当たってはホワイトハウスとの調整が事前になされたのだろう。とすれば、その公開のタイミングはなるべく効果的なタイミングが好ましい。

今回のタイミングは、先日のFCレーダ照射事件で中国の非道ぶりが明らかになった直後であり、しかも日米首脳会談の直前にもあたる。こうも連続で、中国軍部の非道ぶりが明らかにされる一方で、毎回同じように「知らぬ、存ぜぬ!」「我々が被害者だ!」というフレーズを繰り返すと、これは世界中に対する宣伝効果は抜群である。しかも、その直後に日米で対応を協議し、日米の共同声明で何らかの要求を突きつければ、中国もこれ以上は無茶が簡単には出来なくなる。北朝鮮の核実験に対する制裁への協力を求める際にも、その対応如何によってはより強行に中国を名指しで批判する可能性をチラつかせれば、プレッシャーとしては十分に有効なものとなるだろう。ここまで考えるかどうかは別として、TPPでもこれまでは全ての品目をテーブルに乗せろと原理原則を言ってきたが、対中国への包囲網形成のために多少は日本に譲歩することも已む無しという空気を醸し出すきっかけにもなるかも知れない。少々楽観的な感想だが安倍総理には非常に良い追い風になるかも知れない。

なお中国の言い分の、「我々もアメリカから攻撃されている」ということも事実だろうが、個人(ないしはアノニマスの様な集団)のハッカーが個別に仕掛ける攻撃と、軍が関与して組織的に仕掛ける攻撃とでは全く意味が違う。個人の場合には、その国の国内法でも逮捕して罰することはできるが、中国の様なケースでは逮捕して罰則を与えることは不可能である。苦し紛れのボヤキであることは分かるが、これでは誰も相手にする気が起きないだろう。

やはり、日米同盟を強固にし、歩調を合わせた行動が如何に大切かを思い知らされる。日米同盟をズタズタにしたA級戦犯の鳩山元総理なら、この状況を見て何というのだろうか?高い授業料ではあったが、良い勉強であったかも知れない。

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民主主義が成熟する過程の悲しいステップ

2013-02-19 23:44:41 | 政治
ブログでも書こうと思って今日のニュースを確認していたら、丹羽前駐中国大使の暴言のニュースが目に入った。数日前には加藤鉱一元官房長官の暴言も報道されていた。この様な暴言が許されるのは日本が民主主義国家だからに他ならない。

多分、彼らは揃って自分の発言がどれだけ日本の国益を損ねているのかに気が付いていない。同時に、中国や韓国に対して、どれだけかの国の国益に対して便宜を図っているかにも気が付いていない。丹羽前大使に関しては、多分、自分の近しい親族が中国人から喉元にナイフを突きつけられ、こめかみにはリボルバー式拳銃の撃鉄を起こして引き金に指をかけられても、「助けて!」と叫ぶその親族に対して「騒ぎすぎだよ!」「その程度のことで相手を非難してはいけないよ!」と諭すのであろう。ないしは、大昔の出来事である人から親族がレイプ犯と騒がれた時、当の親族が私は無実と言っている中で、親族が犯人とする証拠の確認もせず、相手の言い分だけを一方的に伝えられてその自称被害者に質問することすら許されず、それでも「とにかく、謝っちゃえよ!そうすれば、相手も許してくれるから!」と言うのだろう。どちらの場合にも、盲目的に身内を庇うのが良いとは決して思わないが、フェアな立場で議論できるよう、お互いに歩み寄ろうという立場を主張すべきである。相手の言い分を盲目的に聞くのが大人の対応だという主張は単に身内を不幸にするだけではなく、そこで良い思いをした相手がつけ上がり、更なる不幸な事態を導くきっかけになるかも知れない。目先の利益炊きを考える短絡的な思考ではなく、長期的な視野に立つ論理的な思考で対応してもらわねば世界中が不幸になるのである。

なお、この様な暴言に対してけしからんと意義を唱えるのは言論封殺と言う人がいるが、それは「けしからん奴を殺してしまえ!」というようなことを言う人たちに対する話である。民主主義の国では、好き放題のことを言う権利は認めるが、言った以上はその発言に責任を持つ義務がある。しかし、その責任の取り方が確立していない。結果的に、その責任を負わせることができないのである。一番タチが悪いのは、本人にその意図があるかないかは別として、要職を退いた後でその要職時代の肩書を利用して自らの発言に重みを持たせ、脚光を浴びている場合である。

私の個人的な意見であるが、少なくとも総理大臣、官房長官、外務大臣、防衛大臣、(駐在大使は微妙かも知れないが・・・)あたりは外交上、防衛上の国際的な影響力という意味から、役職を退いた以降も国益を守る義務がある。しかし、この義務も責任も本人の自覚に頼るのであれば、今回のような事態は次から次へと起こるであろう。この様な自らの存在感を示すための欲望を制することができない人々に、義務及び責任感をどうやって自覚させるべきか?少々乱暴だが、私は次のような提案をしてみたい。この様な提案は非常に不本意であり、この様な制度が存在しない世界に私は生きたいが、この際背に腹は代えられないという思いである。

さてその提案であるが、これらの人の発言が国益に対してどの様な影響を与えるのか、その経済効果を金額として算出してもらうのである。例えばオリンピックの誘致などは、その経済波及効果がどれぐらいという計算は必ずどこかで算出している。この辺のノウハウが腐るほどあるのだから、例えば丹羽前大使の発言が国益に与える影響がどれほどの損失になるかを算出するのである。具体的に言えば、あの発言で中国は益々過激な行動をとるようになるかも知れない。その次は本当にミサイルが飛んできて、高価な日本のイージス艦が1隻撃沈されるような事態も想定される。しかし、その1隻で即全面戦争となるかと言えばそうではなく、極めて緊張感が高まった状態が継続する中で、アメリカも巻き込んで対話の重要性が高まり、有耶無耶な状態で決着を図ろうということになるかも知れない。大韓航空機の撃墜もその様な道を辿った。その緊張状態で投入される軍事費やイージス艦の損失などを計上すれば、損失の金額がある程度算出できる。また国際的には、中国が危険な威嚇をしたという日本の主張に疑問を抱く国が現れるかも知れないが、それをロビー活動でリカバーしようとしたときに、どれだけの金を投入しなければならないかは算出できる。この様な経済損失を計算すれば、その人のその発言の責任の重さがいか程であるかが良く分かるはずである。ある種の役職を経験した人に対しては、この様な経済損失の見積もりを許すという暗黙のルールを確立するのである。勿論、当の本人には弁解の場を与えられてしかるべきだろうし、その弁解に対する反論もあって良い。複数の見積もりを行うことで、世間一般ではその失った国益の大きさを客観的に評価し、少なくともその人にその責任の重さがどれ程のものであるかを思い知って頂くしかない。

決して私はこの様な事を喜んで書いてはいない。民主主義が成熟する過程の悲しいステップの一つだと思っている。しかし、日本はあまりにも国益に対して無防備であり、その辺を要職に就く人は今一度考え直す時間が欲しい。

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山本五十六連合艦隊司令長官が中国にいたならば・・・

2013-02-18 22:32:32 | 政治
今日はコメント欄で面白いご指摘を頂いたので、その記事について考えてみたい。

毎日新聞2013年2月13日「木語:戦場英会話の演習=金子秀敏

この記事によれば、FCレーダ照射に代表される中国の海軍の行動に呆れ果てて、中国空軍が恥じも外聞も捨てて海軍を諌めようとしているということの様である。我々の歴史の中でも、太平洋戦争開戦に際して軍部の中でも意見が割れ、帝国陸軍側はイケイケどんどん的な発想であったのに対し、帝国海軍の山本五十六連合艦隊司令長官などは、1年間であれば思う存分戦って見せるが長期戦となったら勝ち目がない、と冷静に見切っていたと言われる。この見通しは非常に正確なものであったが、個別の戦闘で勝利が続く間に生じた軍部の自惚れが彼の戒めを押し殺し、結果として日本を敗北へと導くことになった。この様に、どの国においても比較的短絡的な発想に陥りやすい職業軍人であれば、一枚岩とはならずに様々な考え方の人間が力を持つことがあり得る。上手くシビリアンコントロールが効けば問題ないが、中国の様な民主主義が十分に発達していない国家では、弾けた将軍が何名かいたとしてもおかしくはない。

その様な中で、中国国内ではこれまで地味な存在であった海軍が、最近ではこれまでの第1列島線までを視野に入れた戦略から、太平洋に繰り出して第2列島線までを制覇しようという拡大路線に変わってきた。空母までも導入し、アメリカと比較すれば極めて見劣りする貧弱なものではありながら、形だけはアメリカに追いきつつあるように思わせるものである。だから今現在、中国海軍が有頂天になっていることは十分に予想できる。一方で、比較的エリートが集まる空軍では、浮き足立った海軍を覚めた目で見ながら、余りにも弾けた行動でそのとばっちりを受けないように警戒する動きがあることも予想できる。だから、この記事が示す内容が真実である可能性は十分にある。

ただ、細かく見ていけば微妙にニュアンスは違うのかも知れない。森本前防衛相などは繰りテレビで発言していたが、今回のFCレーダ照射を(明示的か否かは微妙だが)指揮したのは一介の艦長レベルではなく、もう少し上層部であるだろうとのことである。この点では、この記事の推察するトカゲの尻尾きりが出来ないという内容と合致するのであるが、私の個人的な見解は少し微妙で、可能性としてはふたつのケースがあると考えられる。ひとつは上層部が明示的にその様な威嚇行為を指示したというケース、もうひとつは弾けた艦長が好き放題にやり始め、それが噂として別の艦長にも伝わり、一種のゲーム感覚で弾けた艦長同士が競って威嚇を行っていたことを、上層部がその事実を知りながら放任していたというケースである。

青山繁晴さんの情報によれば、海中においても中国の潜水艦が日本の潜水艦に極端に接近し、魚雷を装てんし注水音に続き魚雷発射口を空ける音をわざと聞かせるというこれまた非常に危険な威嚇行動も確認されていたり、民主党政権時代にも何度かFCレーダが照射されていたであろうことが明らかにされていたそうである。仮に上層部が直接的に関与していてもいなくても、これだけ危険な威嚇行為が頻発していれば、上層部の耳に噂話として入っていなければおかしい。上層部が明示的な威嚇の指示をしている場合には、この問題が話題になった時点で「何が悪い!」と開き直る幹部が現れ、比較的短時間で中国政府からの公式見解が発表される可能性が高い。しかし、実際に時間を要したことからは、その様に明示的な威嚇の指示をするような幹部がいないために、直ぐに答えが出なかったのではないかと予想される。多分、無謀な威嚇が横行しているという噂話を聞いた上層部が「これではまずい!」と考えれば、その様なことを慎むような明確な指令を発するであろうが、唯でさえ「愛国無罪」という雰囲気がある中でブレーキをかけるのに躊躇して放任したのではないかと私は予想する。しかし、これを放任していたとすれば、それはそれで上層部の責任問題につながるため、この微妙な案件にどの様な対応をするかで喧々諤々と議論があり、公式見解までに3日を要するに至ったのではないだろうか?

ただ、海軍と空軍の話については少し微妙だとも感じている。というのは、1月中旬にはスクランブル発進と称して日中中間線付近を飛行中の米国の電子偵察機を執拗に追い掛け回してみたりもしているから、これは海軍だけではなく空軍の中にもその様な弾けた将軍がいたとしてもおかしくはない。また新聞記事に記載されている赤軍と青軍の空中戦演習に関して言えば、どちらも中国軍機なので、この中国の新聞記事の意味することは「アメリカに負けた」というニュアンスとは少々異なる。ただし、演習において仮想的な敵国と自国を色分けするならば、選抜した1軍を赤軍(自国)にして能力の劣る2軍を青軍(敵国)とするだろうから、例えて言えば、WBCの選抜チーム(侍ジャパン)が広島相手に0-7で敗れたことを報じたようなものである。たった1試合で一喜一憂するのは不適切であるが、あの緊張感のなさそうな山本浩二監督では、選手を戦う集団として纏め上げられないのではないか、という批判の声が上がってもおかしくはない。この結果、「日米と戦争を行う準備はまだ十分ではない!」、「急いではいけない!」という引き締めのニュアンスをかもし出すことは可能である。しかし、あくまでもこれは空軍が行った演習だから、海軍の連中はこれを読んでも「空軍の恥さらし!」と言い返すのは目に見えている。だとすれば、海軍を諌めるために空軍を使ったという説には少し無理がある。この意味では、(中国では何と呼ぶか知らないが)統合幕僚長の様なさらに上位の幹部が山本五十六長官の様な良識を持ち合わせていて、「空軍も海軍も弾けた奴がおるが、お前ら隙だらけじゃないか!こんな状態で戦争なんて10年早い!今回の件は俺が有耶無耶に幕を引いてやるから、今後は勝手に弾けるんじゃない!」とたしなめているのではないかと予想する。そのぐらいの上位の幹部の指示でないと、あの様な記事は禍根を残してリスクが大きいと思う。

なお、ここから先はおまけであるが、記事の中で少し引っかかる部分いついては少しだけコメントしておく。FCレーダというのは私の推測では非常に指向性の高いレーダ用のアンテナを用いて照射するため、その指向性方向に対しては高い信号利得を確保できるのだろうが、角度が少しずれると急激に信号の強度が落ち込むのではないかと予想される。そうでなければ、誰かがFCレーダを照射した途端にその空域にいた多くの戦闘機においてそのレーダ波を拾ってしまい警報音が鳴ってしまうことになるから、この指向性は相当なものなのだろう。実際、小野寺防衛相はそのFCレーダのアンテナが艦船のどの部分についていて、そのアンテナをレーダ信号受信時に目視したところこちらを向いていたのを確認(つまり撮影もしている?)しているとテレビで発言していた(補足すれば、アンテナの指向性は電子的に制御できるのだろうが、粗方の方向だけは物理的に合わせるのだと思う)。これに対し、北朝鮮の核実験に備えてアメリカ軍なども空中警戒中であったというが、このFCレーダ照射事件は尖閣の北方100km程度の日中中間線付近で起きているから、北朝鮮に対する警戒を意識して偵察活動を行っていたというのであれば、その偵察機などはこの場所から相当距離が離れた場所に位置していたことになる。であれば、FCレーダを直接照射された日本の艦船以外では、その信号を受信して「あっ、やったな、こいつ!」と把握するのはかなり困難ではないかと考える。その意味では、「周辺のアメリカ軍も含めてバレバレであるのに、トカゲの尻尾切りが出来ないから知らぬ存ぜぬと突っぱねた」のではなく、中国側が証拠で身動きが取れなくなる可能性は十分に低いから、強気な否定発言をしたに過ぎないのではないかと思っている。というのも、動かぬ証拠とは自衛隊がある程度の解析能力をさらけ出す返り血を伴うことを意味する。仮にそこまでの証拠を出されても、裁判の様な証拠に基づき白黒をはっきりさせる場がない以上、動かぬ証拠を示してもしらを切り通すことは可能である。この辺は、世界に中国の危うさを示せればそれで良い日本と、国連憲章などを盾に国際レベルでの警告が発せられさえしなければそれで良いと考える中国との考え方の違いである。しかし、日本は十分に上述の目的を達成しているから中国がしらを切り通そうとどうでも良い話ではある。

ということで、あくまでも私の勝手な解釈であるが、中国軍の良識ある上級の幹部は尖閣をめぐる局地戦レベルでも戦争のリスクの大きさを熟知していて、今回の様な日本からのメッセージを読み解き、それをさり気なく部下に対して諭しているのではないかということで、日本としては備えだけはしっかり行うが、あまり中国との戦争を意識する必要はないのだと思っている。

その平和の維持のためにこそ、隙を見せない毅然とした態度、世界に対する情報発信力が重要なのだと感じている。

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北朝鮮の推理ドキュメント「張成沢」を気取ってみた・・・

2013-02-17 21:36:48 | 政治
まず最初に、今日のブログは単なる読み物だと思って読んで欲しい。話が飛んで恐縮であるが、2週間ほど前に見たNHKスペシャル「沢木耕太郎 推理ドキュメント 運命の一枚~"戦場"写真 最大の謎に挑む~」では、長い年月を超えて隠された真実が明らかにされた。非常に感動させらる内容であったが、今現在リアルタイムで起きていることに対しても、実は裏ではこんなことがあるのかも知れない・・・というお話を、私の思い込みで書いてみた。

さて、長い前置きの話からさせて頂く。私の趣味のひとつに風景写真撮影というものがあり、若い頃は旅先で風景写真を撮るのが好きだった。当時はデジカメなどないから発色の良いリバーサルフィルム(ポジフィルム)を大量に持って旅に出かけ、気まぐれに写真を撮りまくっていた。私は止まっている被写体を撮るだけであったが、写真つながりでロバートキャパの存在を知り、写真展などに訪れて、単なる写真に写真以上の意味が込められた作品を見ながら、命を削り、この様な写真のために戦場に赴くキャパの人生に思いを膨らませた。変な話であるが、昔の時代劇などを見れば、生きるか死ぬかの真剣勝負でありながら、正義の味方がばったばったと敵を切り倒すシーンからは「生」と「死」を意識させる極限状態の緊張感は伝わってこない。しかし、最近の戦争映画の中には、イメージ的には自分の頬の横をかすめるように銃弾が飛んでいく臨場感を感じさせるものがある。真実の戦争とはこれほど恐ろしく、土豪や建物などの物陰からたった一歩前に踏み出すだけで、どれほど精神がすり減らされるかがこれらの映画から伝わってくる。戦場の彼らは国の為、家族の為、ないしは兵隊という職業を選んでしまったから、好きでもない戦場で命をすり減らさなければならないのに、なぜキャパは無謀とも思えるノルマンディ上陸作戦に参加できたのか、中々、理解に苦しむものがあった。しかし、この沢木耕太郎さんの執念が、科学的な解析を駆使して何十年もの時を経て、(あくまで推測ではあるが)その背景の非常にショッキングな真実を全て解き明かしてしまった。そんな、隠れた真実の様なものが日常の世界の中に実は隠れているかも知れないという思いで物事を見ると、殆ど脚本家感覚でストーリーを作ってみたくなってくる。以下のお話は、殆どその様なレベルのお話である。

さて、長い前置きであったが、今日のお話も先日からの続きで北朝鮮の核実験にまつわる話である。

はっきり言って今となっては負け惜しみであるが、私は北朝鮮が核実験を行う日程を12日と読んでいた。負け惜しみというのは、もし自信があればブログで書いていたはずなので、自信がないから後になって偉そうに言っているだけで、誰でもその程度のことは予想できるのである。そして、その理由は言うまでもなく、オバマ大統領の一般教書演説にぶつけるのが目的である。だから、事前に北朝鮮が中国とアメリカに核実験実施の事前通告を行ったというニュースを聞いても、最初のうちは特に何も感じなかった。

しかし、よくよく考えてみると何か腑に落ちないところがあることに気が付いた。それは、中国には事前通告するのは当然にしても、アメリカに事前通告する必要はないだろうという点である。私の思い描いたストーリーは、北朝鮮とアメリカでは時差があるから中々難しいところがあるが、一般教書演説の直前に核実験を実施し、アメリカがその対応でバタバタして醜態をさらけ出すことを狙うというものであった。直前に核実験が行われながら、一般教書演説に北朝鮮への非難が含まれなければ、それはオバマ政権の対応能力の低さを世界的に印象付けることができる。アメリカを出し抜こうと思ったら、色々な策を巡らせることができるはずである。しかし、事前通告を行うということは何を意味するのか?それが私には分からなかった。

勿論、この手のことを考えるときに、日本やアメリカの立場でものを考えると見落とす点が出てきてしまうので、北朝鮮としてのメリットがあるかということも考えるのだが、中々、思い当たるものがない。北朝鮮の究極のゴールは、アメリカが北朝鮮の軍事的な脅威を認め朝鮮戦争の終戦協定を結び、その流れで国際的な地位が今よりも高まり、さらには軍事技術をもとに外貨を稼ぎ、国を富ませて最終的に北朝鮮主導での朝鮮半島統一という夢を見ているのであろう。ここでは中国ですら、現在のアメリカと日本程度の見かけ上の対等な関係であることを期待するのかも知れない。しかし、そのために事前通告が何か意味があるかと言えば、全くメリットになりそうなものがない。この様な状況はそれはそれとして認めた上で、では結果的に事前通告を行うということがどの様な効果をもたらしたかと言えば、通告前に既にアメリカのマスコミに通知されていた予定稿にはほとんど記載がなかった北朝鮮への非難が最終的な演説原稿には加わり、世界中に「アメリカは本気だ!」というメッセージが伝わるに至った。このことの良し悪しは別として、結果論で言えば、北朝鮮はわざわざオバマの一般教書演説に北朝鮮の非難を加えさせるために、あのタイミングで事前通告を行ったとしか考えられないということに気が付いた。

では、オバマ大統領の一般教書演説で取り上げられるのと取り上げられないので何が違うのであろうか?例えば、北朝鮮を非難する国連決議を行うためにアメリカや日韓の担当者が国連を舞台に活動しているシーンがニュースになっても、私にはイマイチその本気さが伝わってこない。勿論、国際政治の専門家であれば、手続き的に最初からオバマ大統領が国連に乗り込んで派手なアクションなど取るはずもないということも常識なのかも知れないが、しかし、気迫という意味では常識的な手順ではインパクトは非常に小さいものになる。しかし、テレビの報道番組を通してしか知ることができない私の様な素人を相手にすれば話は別であるが、実際の担当者レベルでは一般教書演説に非難が加わるか否かで何も変わるものがない。だから、その様な差分を考えた上で、敢えて一般教書演説に北朝鮮の非難が加わった方が都合がよい人が北朝鮮国内にいたからこそ、事前通告をわざわざ行ったのである。

しかし、では誰にとってどの様に都合がよいのかと言えば、そのシナリオを描くのは難しい。アメリカと韓国が本気になれば、より強硬な対応を取ることが目に見えている。しかし、若い金正恩からすればアメリカ、韓国から強硬な態度を示されて黙っていては示しが着かないから、軍事的な反撃を余儀なくされる。アメリカ、韓国は、ズルズルとこのまま北朝鮮の脅威が増すことは許容できないから、半ば軍事的なアクションを起こしてでも事態の改善を一気に図りたいと思っている可能性があるから、この際には本格的な戦争に発展する可能性が否定できない。核をミサイルに既に搭載済みであればどうか分からないが、先制攻撃も含めて考えれば、通常兵器では北朝鮮に軍事的な意味での勝ち目はない。中国が助けてくれる可能性はあるが、ギリギリ中国に助けてもらうのでは益々中国に頭が上がらなくなるから好ましい事態ではない。幾ら若いとは言え金正恩にはその程度のことは分かっているだろうから、延坪島の様にピンポンダッシュ的な威嚇が北朝鮮にとっては精一杯なのである。つまり、相手を怒らせておきながら、本気で相手が怒り出したら「おいおい、落ち着いて、落ち着いて・・・」と消火作業をするのが一般的な戦略であろう。ないしは、サイバー攻撃などの実際の軍事的手段を用いない攻撃しか考えられない。

しかし、この様なピンポンダッシュ的な戦略であれば、一般教書演説にわざわざ北朝鮮非難を載せてもらうメリットはないはずである。逆に、一般教書演説で本気度を示してしまったら、アメリカ側も上げた拳を簡単には降ろせないので過激な制裁につながることが予想できる。ますます、北朝鮮が軍事的に追い込まれる事態が予想される。

となると、この様な状況を好ましく思う北朝鮮の人とは誰だろうか?思いっきり飛躍した予想であるが、それは北朝鮮のNo.2である張成沢、その人ではないかと私は予想した。実は以下の報道がある。

産経ニュース2013年2月16日「核ミサイルと距離置く陰の実力者、張成沢氏の対中動向が鍵

現在の北朝鮮のNo.2の張成沢氏は、この記事の中にも記されているが、先月末に行われた朝鮮労働党・細胞書記大会の中で、金正恩の発言中にそっぽを向いてふてぶてしい態度を示している映像がニュースの中で流れていた。神格化されたお殿様のような立場の金正恩に対しては、いつ何時でも大の大人がワザとらしく大げさに賞賛の意を示すのが常識の北朝鮮であるから、この様な姿は非常に異様であり私も違和感を感じて見ていた。一方で、これだけ世界中からも核実験の成功を報道され有頂天になりがちな北朝鮮の中で、一人だけ冷めた目で距離を置いて見ているというのも異様である。この人物がもし仮に「金王朝」よりも北朝鮮という「国家」の存続を重要視したならば、生き残りのために寧ろ核を放棄するという戦略を選択する可能性がある。中国と同レベルの一党独裁を維持する範囲での民主化であるならば、金正恩をスケープゴートに仕立て上げ、核を放棄して食料や燃料などの資源を外国から援助してもらい、国を富ませて発展の道を歩む方が国家としての未来は十分拓ける。ボンクラの跡取りが出てきて国を危険な状態に陥れるのではなく、集団指導体制を築き上げれば、より長く国家を存続させる道が開ける。このためには金正恩に思いっきり弾けてもらい、中国も怒らせると共にアメリカを本気にさせ、戦争の一歩手前になった時点で中国が金正恩の排除に動き出すタイミングで核放棄カードを示せば、多分、中国もアメリカも韓国も文句は言わないはずである。完全な核査察の受け入れを認めれば、韓国との関係改善も進み、経済発展の可能性が更に高まる。拉致問題が解決すれば、日本からの援助も引き出せるかも知れない。ミヤンマー型の発展を期待することができるのである。中国への依存度が高いのは当然であるが、韓国や日本とのコネクションは中国からのその後の譲歩を引き出すにも役に立つかも知れない。一時期は失脚の憂き目を見たこともある張成沢氏であれば、今後も現在の地位を保てるか否かは定かではなく、国の為、自分の為、何らかの博打を打つことは考えられなくもない。

となると、これまでの私のブログでも北朝鮮内のクーデターの外部からの誘導の話を書いてきたが、実は、既に外部からの揺さぶりではなく内部からその動きが始動している可能性があるということである。実際問題としては、半ばイケイケ状態の北朝鮮の中でその様な動きがあるとは考えにくいが、ひょっとするとひょっとするかも・・・という思いは拭いきれない。

単なるお話ではあるが、それなりにはストーリーとして筋が通っているような気はする。

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ドラ息子に接する際の正攻法とは?

2013-02-15 23:51:48 | 政治
前回までのブログでは、北朝鮮の愚行に対する制裁・対応策について書かせていただいたが、北朝鮮を軸に物事を考えるのは少々短絡的なように感じている。今日はその点について考えてみたい。

まず、例え話からしてみよう。ある家のドラ息子が悪さばかりをしていたとする。恐喝や窃盗などを繰り返し、手に負えない状況であったとしよう。更にややこしいことには、そのドラ息子の親が企業城下町の有力企業の社長であり、息子を警察に突き出したり頭をぶん殴って成敗しようものなら、その親からの反撃があるかも知れない。その親は権威があるから他人に対しては滅法厳しいが、自分の息子は甘やかしまくりである。そんな時、そのドラ息子に対する直接的な制裁を如何に加えるかに頭を悩ませてもあまり効果は期待できない。最も効果が期待できるのは、その親に対して対等ないしはそれ以上の優位な立場で接することが出来る環境を構築し、「これ以上、あなたの息子が悪行をし続けたら、あなたの立場も危うくなりますよ!」と保護者の立場から息子に対して厳しい、そして効果的なアクションを取るように促すことだろう。小学校であれば、校長を筆頭に教員が一丸となり、さらにはPTAや教育委員会も味方につけるなどの取りまとめを行うことが必要だろう。場合によっては、その企業のライバル企業の社長の力を借りたりして、ドラ息子の親に対する包囲網を確立することが、結果的には問題解決の近道になるのである。

この問題を北朝鮮問題に焼直せば、北朝鮮の保護者である中国は貿易を停止する兵糧攻めで北朝鮮を締め上げる手段を持ちながら、結局、形だけの対応で殆ど何もしようとしない。厳しい国連決議ですら最後のところで賛成しない一方、北朝鮮以外の国に対しては滅法厳しいのであるから、ドラ息子に甘い成金親父の姿、そのままである。この様に考えれば、中国に対して戦略的に如何に接するかを考えることが、北朝鮮に対する対応の近道であったりする。勿論、直接的な北朝鮮への対応と合わせてパラレルで行動を起こすべきであるが・・・。

この様に考えるとき、如何にして中国の外堀を埋めて、身勝手な行動を自由にはさせないようにするのか、これがポイントである。このアプローチとしては、当然のごとく、軍事的な対応、国際政治的な対応、経済的な対応、その他の対応を駆使して最大の効果に導かなければならない。これを順番に見ていこう。

軍事的な対応とは日本としては日米同盟の深化に他ならない。民主党政権でズタズタになった日米同盟を再度強固なものにし、一心同体で一枚岩で事に臨む姿を見せつけるのである。クリントン国務長官が尖閣は日本の施政権下にあり、日米安保の対象であることを明確にしたように、中国が軍事的なアクションを取る場合には、日本とアメリカを同時に相手にしなければならないことを明確にする。その逆に、アメリカが攻撃を受けた場合に対する手段的自衛権の発動についても日本が公式に認めるなど、国際社会の常識を明示的に示す必要がある。加えて、自衛隊法などの改正でポジティブリストからネガティブリストに移行するなど、世界標準に自衛隊も近づけていかなければならない。日本版NSCの創設もその一つだろう。ただ、韓国や中国が勝手に言い出しているような、日本の核武装は(議論はしても良いが)日米同盟を揺るがしかねないから実際には選択肢にはない。

次に、国際政治的な対応とは、東南アジア諸国など中国と領土紛争を抱える国との協調や、先日明らかになった日本、アメリカ、オーストラリア、インドを結ぶ民主主義国家によるセキュリティ・ダイアモンド構想などを意味する。日本経済の再建を最重要課題と宣言して始動した安倍政権であるが、実は非常にしたたかに堅実な歩みを見せている。更には、FCレーダー照射事件などの中国の悪行を世界に公開し、如何なることにも是々非々で毅然とした態度を見せることを示すことも重要なアプローチである。

この様に、軍事的、政治的なアプローチは既に及第点であろう。では次の経済的な対応はどうか?第1にはデフレ脱却による日本の経済力の回復があるのだろうが、当然ながらそれだけでは中国に対する包囲網を構築することはできない。言うまでもなく、日本のTPP参加による中国の囲い込みが実はこの営みの中での最重要なアクションであると言える。おりしも来週から日米首脳会談が行われる。先日の北朝鮮の核実験を受けて、安倍総理からの申し入れでオバマ大統領との電話会談が行われたが、日本とアメリカは対中国の視点から、このTPP問題を扱わなければならないことを再確認したのではないだろうか?オバマ大統領は戦略的な視点からコメなどへの「例外なき関税撤廃」の条件緩和を確約する声明を出し、安倍総理はそれを受けて衆議院選挙での政権公約と矛盾しない形でTPP交渉参加を宣言するのではないかと考えられる。変な言い方で恐縮だが、私は「運命論」というものを信じるタチで、安倍総理は何らかの強運の持ち主ではないかと感じている。笹子トンネルの崩落事故は、国土強靭化計画の追い風に繋がった。北朝鮮や中国の現実的な脅威は、戦略的な見地からアメリカを中心に日本参加のハードルを下げ、TPPの交渉参加への追い風に繋がるのではないかと信じて止まない。農業団体などが反対を表明するのは仕方がないが、2月という早い段階での交渉参加表明は参院選までの間に攻めの農業振興策を示す時間的な余裕になる。結果的に参議院選挙でのマイナスの効果は最小限に抑えられるのではないだろうか。

そして最後のその他であるが、これは例えば教育などの見地からの対応である。中国が日本に強く出る背景には、国民の政府に対する不満を「反日」と言えば逸らすことができることにある。韓国も同様である。愛国心とは名ばかりに、結果的に近隣諸国への対抗心を煽る教育の存在が無謀なナショナリズムの火に油を注ぐのである。だから、この愛国教育の行き過ぎを禁止する規定を国連憲章に追加するなど、教育的な視点からの対応も非常に重要な課題であろう。

とまあ、様々な方面からの複合的な囲い込み戦略で中国を追い込むことが重要である。次なる一手はTPPである。来週からの日米首脳会談に期待したい。

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本当のところはどうなのだろうか?

2013-02-14 23:02:19 | 政治
北朝鮮の核実験を受け、世界各国で北への制裁の動きが活発化している。この制裁については当然必要な話ではあるが、実際のところ、この核実験の結果の影響をどの様に解釈すべきかというのは微妙である。というのは、各国政府や国防省(自衛隊)などの思惑により、真実とは異なる誤解を与えるように意図的に報道(ないしは漏れ伝わる情報)が捻じ曲げられている可能性があるからだ。もちろん、日本で言えば首相官邸の中枢の専門化が真実を理解し、この真実に基づき政府が正しい判断を行えば当面はそれで良いのだが、その真実とは異なるところで踊らされる一般国民や報道関係者というのも悲しいものがあり、それなりに真実を見抜く目を養うよう日々、訓練しておく必要がある。それが、裏を返せば政府が適切な対処を実施するように強いる監視の目に繋がるからだ。

先日、私は青山繁晴氏著の「救国 超経済外交のススメ」という本を読んで目から鱗状態となった。この本を読めば、(特にレベルが低い)日本の報道をそのまま受け取っていては真実を理解できないことを思い知らされる。その一例として、北朝鮮の2回目の核実験の後の報道を例に引いてみよう。巷の報道によれば、北朝鮮の核実験は失敗であり、その時点では北朝鮮は核保有国からは程遠い存在であると決め付けていた。これは、政府レベルで見れば都合の良いストーリーである。世界が北朝鮮を核保有国と認めれば、それを前提とした交渉が必要となる。アメリカからすれば、あまりにも北朝鮮がアメリカに対して挑発的な行動を繰り返せば、「先制攻撃という形で軍事制裁を加えるぞ」と脅しをかけながら、交渉を有利に進めたいと考えるだろう。しかし、仮に相手が核を保有しているとなれば、その先制攻撃で全ての核を殲滅できなければ、その反撃で韓国、日本、米国の何処かは分からないが、核攻撃の報復を受けるリスクがあることになる。それを前提とすると先制攻撃するぞという威嚇は非現実的となり、半ば手も足も出ないことになりかねない。さらには、北朝鮮は核やミサイル技術などを反米国家に提供することで外貨を獲得したいところであるが、より完成度が高ければ付加価値が高まり、より多くの国が大金を叩いて技術を求めてくることになる。この核の拡散だけは絶対に許せない訳だから、世界的には「北朝鮮の核開発の技術は大したことがない」という認識があった方が都合が良い。だから、実際に達成できた破壊力が目標とする破壊力の半分以下であれば、「それは失敗だ!」と声高に叫び、北朝鮮は核保有国ではないというそれまでの評価を維持したくなるわけである。しかし、現実問題はどうだろうか?過去の事実を参考に「タラ・レバ」の仮定の話をさせてもらえば、第2次世界大戦中に広島に落とされた原爆が中途半端な失敗作であったとして、破壊力が現実の30%でしかなかったとしても、日本として「この程度で良かった」と胸を撫で下ろせるようなものではないはずである。たった30%の失敗作でも、第2次世界大戦を終結させるだけのインパクトは同様にあったはずだ。だから、この例を参考にすれば真実としては「北朝鮮は、第2回目の核実験の時点で既に他国に対して脅威となる核兵器の技術を有していた」と見なすべきなのである。実際、アメリカの次期国防長官に指名されたヘーゲル元共和党上院議員は先月末(つまり3回目の核実験前の時点)、国防長官就任の可否を判断するための上院軍事委員会公聴会に出席し「北朝鮮はもはや脅威という段階を超え、現実の核保有国だ」と述べていた。対外的な建前とは別に、内輪の本音を語らねばならぬ場では正直な評価を漏らしていた訳である。

この様に、日本・アメリカなどの民主主義国家であろうとも、政府は政治的、軍事的な視点から情報にフィルターをかけたりバイアスをかけたりして、情報操作を行っているものと理解しなければならない。一時期、報道界において話題となった「真実」と「事実」の違いというのは興味深い。具体例としては、湾岸戦争で米軍はハイテク兵器を用いて敵基地をピンポイントで破壊した。テレビでは、巡航ミサイルや航空機に搭載されたカメラで撮影した、目標を捕らえたミサイルがその目標に向かってまっすぐ飛行し、まさに狙った場所に命中する映像を流しまくった。これは「事実」に基づく映像である。しかし、これを見た国民は米軍の兵器はこの様に高精度の兵器であり、誤爆などはありえないと勘違いしてしまうが、実際には小学校や病院など、なんでこんなところを攻撃するのか?と思ってしまう場所が誤爆された。この背景には、ハイテク兵器は全体の兵器の1割程度であり、残りの9割は古典的なローテク兵器だから誤爆が起きても当然であるということがあったと聞く。つまり、「真実」とは「米軍もミスを犯す」なのであるが、限定された「事実」を繰り返し見せ付けられることで、「真実」とは全く違う何かを植えつけられてしまう可能性があるのである。

この様な観点から見返すと、今回の北朝鮮の核実験の結果はどの様に解釈すれば良いのか、単純に巷の報道からは読み取れない可能性がある。もちろん、少しは情報を持った報道のスペシャリストもミスリードされうるのだから、私などが正しく判断できる可能性は限りなく低いが、疑問を呈することで何かのヒントになるかも知れない。だから個人的に疑問に思ったことをここに書かせて頂こうと思う。

とまあ、大分前置きが長くなってしまったが、私の見方は以下の通りである。間違っていてもご容赦願いたい。

まず、今回の核実験の前と後で、何が変わったのかを考えてみたい。厳密なところは知る由もないが、今回の核実験は目標の50%を軽くクリアする破壊力を実現できただろうから、その意味では大成功である。だから、反米勢力から見たときの技術の付加価値は非常に高まったのは事実であろう。しかし、中国も含めて核の拡散は望むところではないから、厳しい取締りで核の拡散が現実のものとなることはある程度防ぐことが出来るだろう。一方、核の小型化が出来れば既に開発済みのミサイルに搭載することが可能になり、これは近隣諸国に非常に脅威となる。報道によれば、韓国、日本を射程に治める中距離ミサイルのノドンにはこの核兵器を搭載できる可能性があるが、米国を射程におさめる先日発射に成功したテポドンミサイルには搭載できないから、日本にとっては今回の実験結果を受けて脅威が非常に高まったとしている。しかし、素人考えではあるが、大型のミサイルと小型のミサイルを比較すれば、爆薬を搭載するミサイルのペイロード部分の許容量は大型のミサイルほど大きいだろうから、テポドンには搭載できてもノドンには搭載できないというのが実際なのではないかと予想した。この仮説が正しければ、日本にとってはノドンを想定するかぎり核ミサイルのリスクは今回の核実験結果によっては大きく変わらなかったことになる。ではテポドンはどうか?テポドンの射程は1万kmといわれており、ロサンゼルスなどの西海岸が射程に含まれる。しかし、これはワシントンやニューヨークまでを射程にはしていない。アメリカの立場に立てばロサンゼルスが射程に入った時点で脅威ではあるが、北朝鮮の立場に立てばワシントンを直接核攻撃できなければ、米国との交渉能力として不十分であると考えるであろう。それは、北朝鮮は米国民を多く殺すことが出来てもオバマを殺すことが出来ないのに対し、米国は金正恩を殺すことが確実に出来るからである。もう少し言えば、北朝鮮が米国からの先制攻撃の後に核ミサイルを温存できるためには、移動型の発射設備を用いて発射可能なミサイルに核が搭載できる必要がある。テポドンとノドンでは大きさが異なるから、移動型の発射設備を用いて発射準備の形跡を知られることなく意表をついたミサイル攻撃を行うことができるのは現時点ではノドンだけであろう。であれば、ノドンに核が搭載できないと思われる今後数年間に限定すれば、仮に北朝鮮が核保有国であろうと、アメリカと北朝鮮で相互に皆殺しにつながる「核の対象性」は破れた状態にあり、アメリカの優位は依然として保たれていることになる。

以前の私のブログ「少々物騒な話・・・(非核型攻撃ミサイルについて)」にも書いたが、米国は非核型攻撃ミサイルの開発に成功し、地下10mにも及ぶ格納庫内に設置されたテポドン発射台であっても、ほぼ破壊できるだけの先制攻撃能力を備えていることが知られている。興味があれば、「非核型攻撃ミサイル」というキーワードで検索してみれば良い。この様に、アメリカにはそれなりの先制攻撃能力があるから、核がテポドンにしか搭載できなければ、アメリカは核攻撃を受けることなしに北朝鮮を叩くことができる。やはり切り札のカードとしてはアメリカ側がスペードのエースを握っているのは間違いない。

であれば、もし仮にオバマ大統領が本気であれば、金融制裁などで北朝鮮を最後の一線を越えるところまで思い切り追い込む可能性がある。こうなると若い金正恩は、年寄りの軍部の重鎮に対して威厳を保つためには「アメリカに舐められて黙っていられるか!」と弾けざるを得ないだろう。もちろんアメリカは、イランなどの中東での緊張状態があるから、長期的な2正面作戦は許容できない。予想できるのは、中国との裏取引で、核関連を中心とする軍事施設を限定的に破壊する代わりに北朝鮮への軍事進行までは行わない、その代わりに中国はアメリカの先制攻撃を容認する、そして金正恩体勢が崩壊した後の北朝鮮に中国の傀儡政権を樹立することをアメリカは容認する、といったシナリオだろう。もちろん、この先制攻撃は実際に実施されなくても、この様な脅しで金正恩が恐れおののき中国に亡命でもする事態になれば、表向きには平和的な手続きで上述の様な事態に推移させることが出来る。先日のブログではないが、独裁者が自分の身の危険に際して疑心暗鬼になれば、その先の崩しはそう難しくはない。

この様に考えると、ノドンに核を搭載できるか否かは非常に大きな分岐点になる。現時点でノドンに核を搭載できなければ、今回の核実験の前後では実効的にはあまり大きな変化がなかったことになるし、核を搭載できるということになれば、朝鮮半島を中心とする東アジアが非常にハイレベルの緊張状態に陥ったと考えるべきかも知れない。この差は非常に大きいが、この答えはかなりの軍事専門家でなければ出来ないだろう。ただ、今現在はノドンに核を搭載できなくても将来搭載できるようになるのは時間の問題だろうから、我々に残された時間が如何に短いかが再確認させられた事件と理解すべきだろう。

そう考えると、これからの制裁措置とは単に「約束を破って核を持ったことへのペナルティ」ではなく、これ以上の小型化を阻止するための実効性を伴う制裁である必要がある。そして単に制裁をすれば良いのではなく、様々な制裁措置が時間軸上で見たときに意義があるのか否かを冷静に判断しなければならない。もし金融制裁などで短期的な効果を上げることができなければ、その時はアメリカは本当に先制攻撃を仕掛けるかも知れない。勿論、中国との裏でのネゴを伴って・・・。

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北朝鮮への効果的な対応法の提案

2013-02-12 23:56:48 | 政治
今日のトップニュースは北朝鮮が3回目の核実験を実施したことであろう。報道番組では、森本前防衛大臣をはじめ多くの軍事専門家が出演し、如何にして対処すれば良いかについて解説を行っていた。しかし当然ではあるが、どの様な人からもこれまでと一線を画して効果が期待できるような提案などはなく、アメリカも中国も北朝鮮に振り回されているという状況が繰り返し確認されるに留まった。

日本からも独自の制裁が発動されるようだが、それが本気で効力を持つのであればとっくの昔に拉致問題の解決に利用されているだろうから、それほど画期的な策などある訳もなく、それはロシア、韓国にしても同様だろう。唯一、中国が兵糧攻めに参加すれば北朝鮮が音を上げる可能性も無い訳ではないが、中国からすれば対日本、対アメリカの対立が深刻化する状況で、北朝鮮が崩壊して日米韓の軍事同盟との間に緩衝地帯がなくなってしまうのは好ましい状況ではない。さらには北朝鮮の地下資源は喉から手が出るほど欲しいので、中国と北朝鮮の間に楔を打つような制裁に対しては、表向きは賛同しても裏ではなし崩しの対応を行い、決してアメリカ側に有利な形での制裁参加となることは期待できない。

この様に考えれば、従来型の交渉術では事態が進展するとは期待できず、今までとは違う何らかの戦略を練る必要性に迫られている。思い出せば、1年前にミサイル打ち上げを失敗した際には北朝鮮の技術レベルの低さを物語る情報が幾つも表に出てきたが、先日のミサイル打ち上げにしても今回の核実験にしても、結構、着実に仕事をこなしている感が強い。金正日の妹の夫である張成沢が影の実力者として権力を掌握して以降、昔の旧日本帝国陸軍などのように根性論で全てが片付くような旧タイプの人材が一掃され、論理的な思考のもとに着実な仕事ができる実務者が徴用され、結果的にまるで別人のように高いレベルでの成果を達成できるようになったように見える。だから、北朝鮮の軍事的な地位が高められた状況で世界的な評価が確定する前に、何らかの実効性の伴う行動を急いで起こさねばならない。

では、どの様な戦略があるのであろうか?この手の物事を考えるとき、一つのアプローチとして、相手が最も嫌がることをネチネチと攻めるのが正攻法であろう。以前のバンコデルタアジアに関連した金融制裁もその一つであったが、現在の状況はその当時よりも急を要するものと感じる。であれば、それ以外の戦術も併用する必要があるだろう。では、金正恩の最も嫌がる攻撃は何か?それは、北朝鮮内でのクーデターである。身内が自分の首をアメリカないしは中国に差し出すのではないかと疑心暗鬼になるような、その様な揺さぶりが本当は嫌なはずである。そのためには、例えば、アメリカは金正恩体制が仮に崩壊しても、核放棄を前提とするならば中国側の傀儡政権を容認するといった保証を中国側に与え、その様な条件下での許容できる落としどころとなる様々なシナリオを模索するのである。その幾つかのシナリオについては中国側に提示し、中国側にも旨味のあるシナリオをちらつかせながら、北朝鮮に対して言うことを聞くように説得を行うのである。

現在の政権移行期の習近平体制にしても、北朝鮮はいつ暴発するか分からない危険性をはらんだ地雷のようなものだから、これ以上コントロールできない状態が続くのは許せない。特に、社会主義・共産主義において世襲制度は相容れ難いものがあるから、兎に角、金一族を排除しながらもう少し中国と連携可能な政権が樹立されることが望ましい。北朝鮮がアメリカ側の手に落ちたら習近平政権は崩壊するから、そのリスクがないことをアメリカに担保してもらいさえすれば、交渉の余地は十分にある。

そして、この手の揺さぶりの面白いところは、実際にそのための具体的なアクションを取らなくても、金正恩がクーデターに怯えだして疑心暗鬼になれば、有能な張成沢の様な人物よりも、何でも自分の言うことを聞くイエスマンを徴用するようになり、自然と張成沢などは失脚して追放されるだろう。こうなれば、作戦は半分は成功したも同然で、少しは今後の時間も稼げるようになるかも知れない。

もはや北朝鮮と中国には、正攻法では効果を期待できる対応を探し出すのが困難である。であれば、少々ずるいやり方ではあるが、相手の嫌がる攻撃で積極的に攻めまくるというのが定石である。最近流行のサイバー攻撃で、張成沢が金正恩を出し抜こうとしている証拠に見せかけた情報を北朝鮮の政権中枢のどこかのPCに埋め込む様な意表を突いた攻撃でも良い。もっと内部からの崩壊を促す攻撃を仕掛けるべきである。

もちろん、アメリカと日本が連携しながら・・・。

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微博から読み解くFCレーダ照射事件

2013-02-11 23:35:27 | 政治
本当か嘘かは知らないが、以前、ソ連のクーデターでゴルバチョフ大統領が行方不明になった時、当時のソ連の大使館に勤務いていた佐藤優氏がかの国のありとあらゆる地方新聞を読み漁り、ゴルバチョフ大統領が生存し且つ何処に潜んでいるかを言い当てて日本の外務省本省に連絡を入れたという。今で言えば、新聞に加えてTwitterも合わせて読み漁り、何が起きているのかを解析することが重要なのだろう。

当然、素人には中国語の新聞や微博(ウエィボー)など読める訳もないが、尖閣国有化時の反日デモが吹き荒れたとき、中国の新聞はかなり過激なものが多かったが、もっとも国民の本音を反映する微博にはこの反日デモを批判的にとらえ、良識ある反応が結構多かったと聞いている。しかも、それに関連した有識者(大抵は現or元中国人)の解説では、「マスコミは政府の意向を汲んで過激に反応するが、あれが中国国民の本音だと思うと違いますよ・・・」ということだった。それは「なるほど」と思わせるものであり、短絡的な人であれば話は別だが、論理的な思考ができる人ならば、愛国無罪と叫べば略奪行為も許されるという風潮に対し、ナショナリズム的なバイアスがある程度はかかっても「流石にそれはないだろう!」という結論に辿り着くのは容易に予想できる。

だから、このFCレーダー照射の件に関して中国国内ではどの様な記述が多いのかが気になり、色々と調べてみた。結論としてあまり信憑性がある記述は見つからなかったが、反日デモの様に中国政府やマスコミの主張に懐疑的な記述というのは今回は極端に少ないのではないかと感じた。今後の情報次第で私の現時点での感触が間違っている可能性も大いにあるが、何となくその違いは納得できるような気がする。

まず国営メディアなどでは、意図的か無知なだけかは知らないが、攻撃用の射撃レーダと航海用の探査用レーダーの区別がつかなくなっていて、「船舶がレーダーを使うなんて当たり前だ!」、「日本の自衛隊からもレーダ波を多数受信している」とFCレーダーの使用を正当化しているものが多い。もう少し良識のある人であれば、軍隊であれば当然ながら他国軍から常識を逸脱した威嚇を受けたとすれば反撃することは許されて当然であり、段階を踏んで最終的に砲撃を加えるにしても、その前段にFCレーダーの照射という手順が当然あって然るべきという論調になる。勿論、ここまでのロジックは間違っていない。問題は、その威嚇の内容が国際的にも深刻な挑発と見なされてしかるべきものなのか、両者がギリギリのところで毅然としながらも抑えた行動の結果なのか、の解釈なのである。

尖閣をはじめ領空、領海などを巡ってこれだけ緊迫化した状況にあるのだから、それぞれが艦船や航空機などでギリギリの駆け引きがなされて当然である。その暗黙の微妙なバランスの平衡点の様なものに対し、反日教育を受け続け、日本のことを「小日本」と侮蔑を込めて言うのが常態化した人々からすれば、両国の微妙なバランス自体が耐え難いもので、許し難い深刻な威嚇・挑発であると考えるのは予想に難くない。この様な前提の上で、日本が中国の領土を侵害するために挑発を仕掛け、それに対する正当な防衛手段としてFCレーダーを照射するとなれば、流石に微博でも「おい、おい!」と待ったをかけるのはハードルが高いのかも知れない。

多分、中国の報道機関も元軍関係者などを中心に取材をするのであろうが、彼らが意図しているかいないかは不明であるが、結果的には中国国民がこの様な誤解をすることにマスコミが積極的に加担したことになっている。この意味で、良識ある中国国民がブレーキとして機能することはあまり期待できないのかも知れない。ただ、ではこれが中国政府の意図するところかと言えば、少なくとも中国外務省の報道官などの発言の中には(単にレーダー照射を否定するだけに留まらず、仮に照射したとしても)FCレーダーの照射を正当化するような発言はないから、世界的に見れば現在の状況はFCレーダーの照射を正当化できる状況にはないことは自覚しているようである。

なお、日本の報道では中国の外務省報道官が「(レーダー照射を)報道で知った」とか「照射した事実はない」との回答まで3日もかかったと回答した背景に、「日本の防衛相も1週間近くかけて詳細に解析したのだから、中国も詳細に調べたという形跡として3日間が必要であったのではないか?」と解説するところが幾つかあるが、中国の微博ではこれがすこぶる評判が悪いらしい。1日ぐらいならまだ調査に時間を要するという可能性もあり得るが、中国というお国柄を考えればそれ以上の時間を要する理由は理解に苦しみ、外務省(及び政府)の醜態の様に映ったようである。これは、極めて妥当な感覚だろうから、中国政府が「たかだか小日本相手に手をこまねいている」と国民が感じるような対応を選択的に行うのは考えにくい。だからこそ、あれだけ時間をかけざるを得ない何かがそこにあったというのが事実だろう。

ちなみに話は変わるが、前回のブログでも書いたが小野寺防衛相が「日本の抗議以降、中国の公船の侵入が起きていない」と発言したことに対し、中国からのメッセージと書いたが、今日になって中国の海洋監視船が尖閣周辺の海域を航行しているとアピールしだした。小野寺防衛相が「メッセージは受け取った」と発言し、中国の自粛の必要性がなくなったことに対するものだろう。「だったら、小野寺さんはそんなこと言わなければ良いのに」という見方もあるが、物理的な信号の解析能力のみならず、政治的なメッセージの解析能力もあることを見せつけるのは有益であろう。

なお、以下はあまり重要ではないが、現在、民主党のホームページでは野田前首相がレーダー照射の報告を受けながら公表を避けたとの報道を否定する声明が掲載されている。小野寺防衛相は、何処まで報告が上がっていたのか、何処まで検知出来ていたのかの情報も機密情報であり、防衛省レベルで把握していたか否かも回答できないとしていた。その前には何処からか岡田前副総理などが関与したとの報道もあったが、小野寺防衛相の模範解答をテレビで見て慌てたのかも知れない。

軍事力も大事だが、外交力、政治力、解析力も重要である。何処まで先を見通して先手を打つか。その結果に対する解析と更なる対応の能力が、政権の能力のバロメーターである。民主党政権は悪夢の3年3か月だったが、それが反面教師となって数々の反省の上に立って現在の安倍政権があるのかも知れない。見方によっては、民主党政権にも存在意義があったのかも知れない。

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小野寺防衛相の能力を侮ってはいけない!

2013-02-09 23:55:27 | 政治
この週末、テレビでは様々なキーマンが出演してFCレーダ照射問題について言及していた。今日は、その辺をピックアップしてコメントしたい。

まず、BS朝日の「激論!クロスファイア」に出演した石破幹事長が面白いことを言っていた。誰もが感じていることであるが、習近平政権として致命的なことであるが、現状は軍部に対する文民統制ができていな可能性が高く、その背景には、江沢民のころまでは軍部にとって共産党の幹部は「一緒に国の為に戦った同志」という認識が強かったが、現在はその様な認識から大分乖離している可能性があるということである。つまり、習政権は日本と戦争をするつもりなど皆無だが、中国は意外に周辺国と局所戦を平気で行う国だから、軍部が局所戦ならいいだろうと暴走する可能性は完全には否定しきれず、その様な事態に対処する法整備、様々なシナリオに対するシミュレーションなどの準備は喫緊の課題であるという。

また、中国の軍幹部は日本の国会議員よりも数倍、日本の自衛隊法の詳細を熟知しているという。過去にもこのブログでも取り上げたように、日本の自衛隊は「あれとこれはやって良い」というポジティブリストで記述されるが、世界標準は「あれとこれはやってはいけない(裏返せば、それ以外はやって良い)」という記述になっており、ややこしい事態になった時に対処できない可能性が日本の場合には高い。問題が起これば所謂「特別措置法」を次から次へと作りまくり、その全てを熟知する指揮官がとっさの時に「あの法律に照らし合わせて、この判断を選択する」という速断を正確に行えることを期待している。しかし、どう考えてもこれは現実的ではない。これらの法制上の不備を中国側は熟知し、安倍政権はそれらへの対処を速やかに行うであろうから、中国は準備が整う前に色々仕掛けたいところであり、日本側はその前にスピードアップして対処しなければならないと言っていた。なお、当然と言えば当然のことであるが、どの国でも交戦規程の詳細は機密事項であり、ここで「この様なアクションを起こした時、相手がどの様な対応をするか」が事前に漏れることは圧倒的に不利である。だから、「こうなったらどうする?」と質問しても、石破幹事長はぬらりくらりと回答していた。しかし、自衛隊法に明文化された記述から、交戦規程がどうなっているかある程度の推測は十分できるから、石破幹事長も「兵器を守るための武器の使用は認められる」などとわざと反撃の可能性を匂わせた回答をしており、その辺の駆け引きというのが微妙なのだろう。

ただ、これは不幸中の幸いではあるが、もし自衛隊の交戦規定が米国同様で「FCレーダ照射を相手の戦闘行為と見なす」規定になっていると世界が認識していたら、今回の日本の行動は「腰抜け」と評価される可能性もなくはない。だから、中国の挑発に乗らないことが重要な日本にとっては、相手が発砲するまで撃ち返せないという状況は寧ろ都合の良い状況なのかも知れない。ただ、忘れてはいけないのは、それは最前線の自衛官の危険と引き換えの都合であることも忘れてはならない。

次に、今朝の日テレの「ウェークアップ!ぷらす」には、小野寺防衛相がテレビ出演をして興味深い発言をしていた。彼らしい、非常に抑えた発言ながら、ポイントを抑えた情報発信を行っているところが評価できた。まず、日本政府としてはギリギリのところでFCレーダー照射の証拠を公表する方向で検討中のようである。あそこまで言うのだから、多分、そう遠くないところで公表に踏み切るのだろう。同じテレビに出ていた何処かの大学の評論家は、「レーダー照射の事実の公表で、折角、期待された日中首脳会談が確実に遠のいた。民主党政権ではギリギリのところで水面下で処理していたのに、今回にはその様な判断ができなかったのか?」と暗に批判をしていたが、辛抱キャスターが即座に「それは公開するのが正しかった。隠しておけば良好な関係が維持できる訳じゃないですからね」とフォローしていた。小泉政権の例を引くまでもなく、対話は重要だが、こちらから頭を下げてお願いしてまで首脳会談を開く必要はないと毅然とした態度をとる方が、結果的には首脳会談が近づく可能性もあるということだ。ちなみにこの評論家は、日本政府が証拠を公開することに対し「証拠を出して中国を追い詰めれば、レーダー照射自体が正しいと肯定的に国民に対して宣伝し、より反日運動が加速しかねない」と食ってかかっていたが、これも宮崎哲弥氏が間髪をいれず、「今回の日本政府の対応は、毅然としていながら非常に抑えた対応をしていた」と評価しており、日本の報道番組にありがちな自分の立ち位置をわざと隠すような不誠実な対応と異なり、誤った判断をジャーナリストとして正す責任を忘れていなかった。

ところで、この番組で私がポイントと感じた点を取り上げておく。小野寺防衛相曰く、日本がFCレーダー照射の事実を公表し、中国に抗議を行って以降、中国の公船が尖閣周辺で領海侵犯することがなくなったのだという。この領海侵犯(統計は接続水域へ侵入かも知れないが)の回数は、尖閣を国有化した9月以降、9月が80回(隻?)台、10、11月が120回台、12月に政権が交代すると80回台に落ちて、この1月は50回台だったという。つまり、毅然とした態度により中国は口先だけは強がるかも知れないが、対外的には抑えた行動に繋がっているのだという。また、今回のFCレーダー照射の否定と日本への逆切れ非難は中国は国家として行っているが、一方で国内のマスメディアに対する統制を行い、安倍総理が中国に対して誠意ある対応を求める旨を発言して名指しで批判したことなどは全く中国の新聞に掲載されていないという。だから、中国が野蛮な行動を取った時、それを国際社会に日本が訴えることは、中国政府が中国国民に反日感情を高めさせようとする行動に繋がるリスクがあると捉えるのは間違いであり、逆に中国在住の邦人を守りたければ積極的に対外発信することが正しいことがこれで分かる。

なお、先ほどの中国の公船の領海侵犯がなくなったという事実は、中国政府から日本へのメッセージだと私は理解した。これまでは、習政権は軍部に対して意識的な統率を行わず、半ば現場(軍幹部)の判断で今回の様な行動を起こすことを許容していたが、習政権側はそれではヤバいという自覚を持つようになり、「(FCレーダー照射の事実を認めると国際的に非常にまずい事態になるから)否定はするが、日本の言い分に対してはある程度の理解を示していますよ・・・」と暗に情報発信しているのだろう。ただ、日本側はこれまでの長い長い経緯があるから、「本当に分かっているのだろうな?分かっていなければ何処まで日本が追い込む気なのか、その本気度を少しぐらいは実感してもらおうか・・・」ともう少し、中国を追い込むことをするのだろう。これは逆に、小野寺防衛相から中国への逆のメッセージなのだと私は感じた。以前から私は小野寺さんを復興大臣に推薦していたが、どうして中々、防衛大臣としてもその才能を発揮できそうである。

なお蛇足ではあるが、例えば尖閣での漁船衝突事件の際には温家宝首相などが積極的に前面に出て日本を非難していたが、今回は中国は外務省の報道官や国防省のホームページなど、インパクトのないところでの反論に終始している。中国の政府要人が何か発言すれば後々、そのとばっちりを受けかねないから、誰も表に出たがらない感じがしている。この一連の行動を見れば、この問題を日本と中国のどちらがうまくコントロールしているか、どちらが追い込まれているかは一目瞭然である。民主党政権との違いが浮き彫りになり、多分、明日あたりに公開される内閣支持率調査は一気に上がるだろう。

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すべてがブーメランのように返ってくることを世界は知っている

2013-02-08 23:57:55 | 政治
中国によるFCレーダー照射問題が面白い展開になっている。中国国防省が全面的に否定し、原因は日本側が中国艦船を執拗に追い回すという挑発が問題の原因だと非難した。中国の政府系新聞では、軍関係者と同様に些細なことを大げさに騒ぎ立てていると非難し、これまた日本の責任としている。外務省の報道官は、日本は情報操作で中国を貶めるような行動をとらず、小細工をやめ、対話で問題を解決するという道を模索すべきと語った。

ここで思い出して欲しい。一昨年の3月、中国国家海洋局所属と見られるヘリが中国の東シナ海において、海上自衛隊の護衛艦に対して最短で90mの距離まで接近したという事件があった。今回のレーダー照射の距離は、艦船と艦船の距離だから単純に比較はできないが3�の距離であった。当然、視認できる距離であるが、衝突コース上になければ違和感はあるが最近の日本と中国との小競り合いの中では異常な距離ではない。しかし、90mというのは多分感覚としては目と鼻の先であり、現実的にはあり得ない接近距離である。更にこの1月にも、中国軍が(対日本だけでなく)米軍機を執拗に追い回し挑発するという問題が話題になった。情報が定かではないが、報道の記述からすれば航空機の後方(必ずしも真後ろとは限らない)から追尾するのであるから、意図的に挑発しているのは明らかである。

また、中国の解放軍のどこかの少将は、日本側が尖閣周辺の日本の領空に接近した中国の航空機に曳光弾を使用することを検討すると発言したとかしていないとこの報道に対し、「これは宣戦布告の1発だ!曳光弾を撃たれたら、中国は別の種類の砲弾で日本に反撃せよ!」と発言していた。この曳光弾というのは、国際法的にも領空侵犯への適切な対処法として、無線や併走などで退去の指示を出し、それでも退去しない航空機に対して併走した前方、すなわち必ず曳光弾が当たらない方向に対して発射するという手順が取られるらしい。つまり、警官が空か地面か、相手と全く異なる方向に威嚇の発砲をするようなもので、現時点では危害を加える意図がないことを明示的に示す行為である。発砲の有無の差はあるが、相手にとっての緊張の度合いで言えば明らかにFCレーダーの照射の方が深刻である。実際、イラク戦争ではレーダーを照射された米軍はレーダー基地を爆撃したし、ベトナム戦争時の米軍の交戦規程ではFCレーダ照射に対抗して攻撃することが認められていたという。だから、これが些細なことだと言うのであれば、曳光弾の使用などさらに些細なことになる。

また、日本が情報戦を仕掛けるという話も2003年に改正された「中国人民解放軍政治工作条例」に「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」の実施を明確に規定している。この世論戦を仕掛けようと推奨している中国は、これまでも様々な形で世論戦を仕掛けてきており、これら全ては中国にブーメランのように返ってくる。ここでの問題は、推定無罪を勝ち取る戦いではなく、中国のマーケットからの外国資本の流出にどの様な影響を与えるかの議論だから、明らかに中国は語れば語るだけドツボにはまりつつある。中国国内向けにはこれで良いのだろうが、この結果国際社会の監視の目が厳しくなり、尖閣に対して中国が強硬な手段を取れば、それを全世界が非難する土壌が出来つつある。この状況では中国は益々無茶な行動を取り難くなるから、日本は現状の冷静な対応を続ければ良い。

なお、素人ながらの感想として、FCレーダー照射の証拠は、部分的にではあるが公開出来るのではないかと思っている。中国国防省の主張の監視用のレーダとFCレーダーは周波数が異なるし、360度を回転しながら照射し続ける監視用レーダーと一定方向に狙いを定めて照射するレーダーは明らかに異なる。多分、アレーアンテナなどで到来方向を明確に推定し、その方向に存在する船舶が日本の艦船の監視用レーダのデータ、航空機による監視、衛星写真などの情報を総合して中国のフリーゲート艦しかないこと、波形が中国軍のFCレーダーの波形と同一であることなど、様々な情報を総合した結果なのだろうが、それらのごく一部の切り出しとして、受信した信号の周波数や受信レベル、時間情報によりレーダー受信が分単位で継続的であったことを限定的に示せば、それ以上の情報は伏せても欧米のメディアは納得するだろう。さらに、米軍に対しては全てのデータを開示して解析を行ってもらい、米軍からも「FCレーダの照射と確認できた」と発言してもらえば良いのである。軍事機密ではあるが、やり方は幾らでもあるはずだ。

なお、森本前防衛相曰く、今回の行動は艦長よりも上のレベルでの指示だということだそうだ。実は、このFCレーダー以外にも、(FCレーダーの照射なしに)軍艦の砲身をワザと向けてみたり、海中では中国の潜水艦が日本の潜水艦に500m程度の距離まで接近してワザと魚雷装てんし、魚雷発射口を開けて注水音を聞かせて日本の潜水艦を威嚇するなど、相当なレベルの威嚇行為を続けているのだという。これら一連の行為は一貫性があり、日本の正当防衛の原則を知った上で、軍の上層部が指示している可能性が高いということである。しかし、あれだけ慌てて中国が全否定していることからも、事の深刻さを習政権は理解しているということが伺い知れる。これらを総合すれば、それだけ深刻な事態を外務省の報道官が知らなかったと言うとおり、習政権内部では状況を把握しておらず、軍の掌握が全く出来ていないことは明らかである。

今後、軍と習政権の綱引きは続くだろうし、隙を見せまくることが予想される。日本は着実に中国の失点を世界に公表し、相対的にこれまでの失点を挽回すべきである。丹羽大使の車の国旗を奪い取られた事件や反日暴動など、過去を振り返って追求しても良い。攻め時ではあるが、抑えながらも効果的な攻撃を戦略的に進めて欲しい。

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FCレーダー照射のニュースは良いニュース!?

2013-02-06 23:55:23 | 政治
昨日、中国のフリーゲート艦から海上自衛隊の艦船にFCレーダーを照射した問題が明らかになった。その後の展開を見ているところだが、今日はこの問題にコメントしてみたい。

まず、既に多くの専門家がコメントしているところだが、FCレーダの照射は例えて言えば、銃社会のアメリカで、ある日いきなり路上で中国人が日本人に向けて銃を向けて引き金に指をかけた状態を数分間に渡り継続したようなものである。しかも、アメリカ国内で中国人が「日本人を見たら殺してしまえ!」と騒いでいる最中に起きたようなものである。この事態に陥ったのが常識的なアメリカ人なら、懐から銃を抜いて撃ち返す行動をとるだろう。裁判になっても、多少の過剰防衛との判断はあるが、基本的には正当防衛が認められ、実刑判決は確実に回避できるものと思われる。それだけのことを中国はやっていた訳である。しかも、その10日ほど前にもヘリコプターにも照射された事実もあり、既に確信犯という状況である。

私は素人ではあるが、素人ながらに読み取れるポイントがある。まず、誰もが何故、何度も照射されながら1週間ほど経ってから公開するのかという点である。あくまで予想ではあるが、最初にヘリコプターに照射された事実は即座に首相官邸に報告され、官邸からは多分、次にレーダ波を受信したら即座にその電波を受信してそのデータを記録し、その証拠を残すようにとの指示であったのだと思う。2回目に艦船照射された際には、多分、受信した信号をサンプリングして波形データを記録する機器を搭載し、その後、そのデータを詳細に解析したのではないかと思われる。中国側が、「それは周辺の艦船や漁船などを捕捉する航海用のレーダだ!」と言い逃れしてくることを予期し、グウの音もでない動かぬ証拠を捉えるよう心掛けたのだろう。例えば、先ほどの銃を用いた例え話で言えば、中国人が手にした銃をタオルで巻いて隠した状態で銃口を向けていたとしても、それを警察に訴えても誰もまともに相手をしてくれない。だから、それが銃であるという証拠をその中国人を追跡して確かめて、動かぬ証拠をつかんだ状態で警察に訴えたような状況なのだろう。多分、この状態に中国側は相当焦ったに違いない。その証拠に、昨日、日本政府が抗議を行ったのにもかかわらず、即座に反応をすることができなかったのであるから。

次に、話によればこの中国軍からのFCレーダ照射は尖閣の国有化以前から行われていたのだという。それも時の民主党政権では、それを公にすることで中国との関係悪化を恐れて非公開にしていたのだという。しかし、ならば今回の安倍政権が公開するという判断で日中関係の悪化の兆しがあるかと言えば、現時点では全くない。つまり、前回のブログでも書いたが、民主党政権内には中国親派が政権中枢に陣取っていて、本人たちが悪意を持っているかどうかは別として、中国の国益に叶う判断を多数行ってきた。さらに先ほどの例え話を引き合いに出すなら、日本人が自己防衛するための選択肢として、(1)日本人は自衛の為、絶えず銃を携行しているとアピールすることと、(2)日本人は意図せぬトラブルを回避するために、絶対、銃を携行したりはしませんとアピールすることと、どちらの方が有益なのかを考えれば分かる。(1)であれば、中国人も返り討ちを警戒して無茶な威嚇を慎むようになるだろうが、(2)であればますます威嚇がエスカレートし、そのうちに体に当たらなければいいだろうと銃を撃ってくるかも知れない。これは議論するまでもない話である。だから、民主党政権の判断は明らかな誤りであり、安倍政権の対応が圧倒的に正しい。

この安倍政権の対応の評価できるところは、アメリカとの連携で、間髪をいれずにアメリカ側の報道官からも中国を非難する声明が出されたことである。更には、米国防総省も合わせて声明を出し、次に挑発したらどうなるか分かりませんよ!という中国への警告と、世界に対して「中国はならず者国家」としてチャイナ・リスクを新たにアピールすることに成功した。これは日本側の発表の直前ではあるがアメリカ側にも事前通告したのが功を奏したのだろう。この辺の対応は、少なくとも中国の政権中枢において非常に予想外であったものと思われる。これをきっかけに、「日本が中国に因縁を吹っかけている!」と逆切れしたいところだが、これは海外の資本の更なる中国離れを招き、中国経済をさらに冷え込ませる結果になるからそんなことはできない。また、習近平政権の関与を疑るメディアもあるようだが、中国外務省の報道官が「報道があるまで事実を把握していなかったと理解して構わない」とまで言うのは異常であり、プライドの高い中国のエリートが、自分のコントロール下にある軍部に対してコントロールができていないかのように嘘をつくことは考えにくく、聞かれたことにどの様に対応すれば中国の国益に叶い、つじつまが合うかのコンセンサスをまとめ上げることができず、ある種、開き直ったとも取れる発言をしたと見るのが妥当だろう。だから、これはますます習近平政権が追い込まれていることを意味する。

しかし、面白い報道が一方でされている。中国の軍関係者からの発言だそうだが、「日本側はこの問題を過剰に騒ぎ立てて問題にしようとしている!」と日本を非難しているということだ。これは裏を返せばそのままであるが、中国にとって、特に軍部にとってもこれは都合の悪い事態であると認識したことを自ら暴露したことに等しい。つまり、ある程度、弾けた軍部の指揮官が日本の自衛隊に威嚇・挑発せよと命じたのであろうが、それに対して中国共産党からの締め付けがあり、慌てて問題を抑え込もうとして取ったのがこの様な発言なのだろう。外交の世界では常識であろうが、(中国の様に仮想敵国ともなろう国に対しては)相手が嫌がることをチラつかせながらプレッシャーをかけ、相手が無茶なことができないように多くの選択肢を封じて、詰将棋の様に自らの有利な方向に導くのが筋である。現時点では、その戦略は非常に上手く機能している。

では、この先はどうすべきなのか?最大の攻め手は、「愛国無罪」「反日無罪」に対する中国側の見直しへの働きかけである。今回の事態は少なくとも中国側は政権側の関与を否定しているので、軍部の独断での犯行というスタンスを示している。しかし、先の例え話の様に、とても許されるべき話ではない。これを中国政府が放任するのであれば、これも一種の「愛国無罪」「反日無罪」の肯定の結果だと訴え、仮に軍部が更に挑発をエスカレートしても「愛国無罪」「反日無罪」のスタンスを貫くのか、それとも「愛国無罪」「反日無罪」という考え方を見直して、日中関係の改善の道を模索するのか、その何れであるかを中国側に迫るべきである。相手は嫌がるだろうが、これを徹底的に国際社会に訴え続ければ、チャイナ・リスクは増幅されるから中国はボディブローの様に体力を奪われ続けることになる。いつしか中国は、尖閣問題を平和的に解決するしかないと悟るようになり、国内向けの言い訳のために国際司法裁判所に訴えるようになるのではないだろうか。当然、証拠ベースで戦えば日本の勝訴は間違いない。その結果、尖閣がらみの衝突は徐々にフェードアウトし、真の意味での戦略的互恵関係を模索する時代が来るかも知れない。

だから、今回のニュースは私にとっては非常に良いニュースであったと認識している。

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