けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

燃料電池バス導入推進政策の波及効果

2014-11-29 23:54:18 | 政治
先日、自民党と民主党の政権公約の読み比べを行ったが、実は個人的に力を入れて欲しいと思っていた記述が自民党には少しカスった形で記載され、民主党には記載がなかった。キーワードは燃料電池だが、ちょっと一捻りが必要な話である。今日はこの点についてコメントしたい。

まず、両党の公約の中から「燃料電池」に関する記載のある部分を抜き出してみる。

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【民主党】
●省エネルギー社会、地産地消の分散型エネルギー社会を実現し、地球温暖化対策をさらに進めるため、「分散型エネルギー推進基本法」を制定し、地域の中小企業を支援し、地域活性化・雇用創出を実現します。太陽光・風力・バイオマス・地熱・水力・海洋資源などの再生可能エネルギーを拡大し、燃料電池・蓄電池・スマートグリッドなどの省エネルギー技術を飛躍的に普及させます
---------------------------
【自民党】
○バス・タクシー等の交通サービス整備や次世代自動車(運転支援システムの高度化・燃料電池車等)導入の着実な推進を図ります。
○水素を燃料とする燃料電池(燃料電池自動車、家庭用燃料電池等)の導入や、水素供給システムの構築に向けた技術開発を推進すること等により、将来のエネルギーの新たな選択肢を創出します。
○電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・燃料電池自動車等の次世代自動車の導入拡大に向けた環境整備に取り組みます。

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単に文字数だけで見ると大して差がないが、実は民主党の公約に関しては文章の大半は燃料電池とは関係ないことが書かれていて、実質的に燃料電池に関しては「燃料電池・・・などの省エネルギー技術を飛躍的に普及させます」としか言っていない。一言で言えば中身はゼロである。しかし、自民党の公約を見れば、(1)燃料電池車の導入の推進、(2)水素供給システムの構築、(3)電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池車等の多様な選択肢の実現、を意味する内容が記載されている。(1)と(3)は誰もが思いつくが、燃料電池車を推進するには(2)の政策の充実が避けて通れない。言い換えれば、成功するか失敗するかは(2)にかかっている。そこで、そのための解決策を提案してみたい。

それは、特に都市部を中心として「燃料電池バス」の推進をするのである。実は、これはなかなか奥が深い話である。先日、トヨタが商用の燃料電池車の販売を発表したが、言うまでもなく、水素ステーションがなければ燃料電池車はただの鉄の箱である。だから、水素ステーションの普及は燃料電池車の生命線になる。しかし、常識的に考えてその様なものが普及する理由など何もなく、トヨタやホンダの車が徐々に売れるのを待ってからの普及になるのは目に見えている。しかし、水素ステーションがなければ燃料電池車を買おうというモチベーションは弱く、余程の大金持ちが趣味で買うしか考えられない。そこで登場するのが「燃料電池バス」の推進である。

まず、燃料電池車の燃費についてみてみよう。下記のサイトに情報があった。

燃料電池.net 「燃料電池車の燃費

これを見ると、水素の燃料電池車の1km当たりの燃費を円に換算すると10~14円である。ガソリン車は14~17円となっていて、条件的にはリッター10kmの車の例を引き合いに出している。トヨタやホンダの燃料電池車並みのガソリン車の燃費がリッター10kmというのは妥当かどうかは微妙だが、最近のガソリン車の燃費向上の技術を考えれば、燃料電池車の燃費も今後向上は期待できるので、取りあえずの参考値とはなる。次に、ディーゼル車とガソリン車を比べる。最近はディーゼル車もガソリン車並みの燃費の車が出てきているので、ディーゼル車とガソリン車の燃費は単純に軽油価格とガソリン価格の比較で代用できる。その価格を比べると、大体、0.86倍ぐらいの値だから、軽油車の燃費係数を上記のガソリン車に掛け合わせると、概ね12.0~14.6円ということになる。バスの場合の燃費で比較していないから分からないが、燃費自体は現時点でも良い勝負である。そして、先ほどの情報によれば、「現状では『1Nm3(ノルマルリューベ)あたり110~150円』とされていますが、経済産業省資源エネルギー庁では2030年を目安に『1Nm3あたり40円』を目指しているとの発表がありました。」とのことで、今後は更に燃費が1/3倍程度まで下がれば、大きな元が取れる計算になる。

この様に、長期的視野で見ればバス会社が燃料電池車を導入するメリットは十分にある。そして、バス会社は多くのバスの基地に相当する営業所をある程度の間隔で設置し、そこで夜間の駐車、整備点検、燃料補給などを行っている。バスは定期的に燃料を補給しなければならないから、いわばそこがバス会社のガソリン・スタンドになっている訳である。当然、そのガソリン・スタンドはバス会社専用だから一般車両は入れないが、水素の燃料電池バスが導入されればそこにバス会社の水素ステーションが出来る訳で、国からの補助を受けて燃料電池バスを推進するなら、バス会社に水素ステーションの一般車両向けのサービスの解放の協力依頼をすれば、トヨタやホンダの自家用燃料電池車の普及推進のハードルであった水素ステーションの普及を短時間で実現する解決策となり得るのである。

この水素ステーションの普及の意味は大きい。先程の資料によれば、トヨタ FCHV-advが1回満タンにして走れる距離は830km(10・15モード燃費からの算出)、ホンダ FCXクラリティも620km(同上)である。1回満タンにすると、250km位のエリアの往復に耐えられるから、バス会社の営業所レベルの水素ステーションがあればそれ程不自由はしない。最近は地震が多く、災害時の電源確保でハイブリットカーや電気自動車を薦める向きもあるが、その様な電源確保的な意味では直接発電する燃料電池車は効率的にも電気容量的にも雲泥の差である。地球温暖化対策でのCO2排出量制限にも効果的で、国家レベルではその普及の意義は大きい。石油や天然ガスなどの化石燃料は必ず何処かで資源が尽きるので、そうなる前に化石燃料以外のオルタナティブを持つことはリスク分散にもなる。

この様に、燃料電池バスが積極的に導入されると、その後の展開は雪崩(そんな大げさな勢いはないが)を打ったように流れる可能性も十分に有り得る。というか、この様なアプローチでもしないと、燃料電池車という選択肢は消え去る可能性も否定できない。これは国家レベルで行う一大プロジェクトである。トヨタやホンダはバスなど作っていないので、国が動かなければ燃料電池バスに手を出す人はいない。しかし、国が大々的に旗を振り、トヨタやホンダなども協力・参入して大都市圏共通の燃料電池バスの開発を進め、5年後ぐらいを目途に導入を開始すれば、2030年には爆発的に普及しているシナリオも十分に考えられる。最近では大都市圏で共通化された低排気ガスのバスが運用されているが、マーケットの規模は最初から計算ができるので、売れるか売れないか分からない車を開発するよりは確実に精度の高い経営計画が練れる。それに合わせてトヨタやホンダは燃料電池車の市場投入計画を立てれるので、トヨタやホンダにとっても協力する価値は高い。まさにWin-Winの関係である。

以上、色々書いたが、是非とも政府は燃料電池バス導入推進政策を具体化して進めて欲しい。

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慰安婦問題反撃の準備を整えろ!

2014-11-28 23:51:58 | 政治
昨日の産経新聞の朝刊に面白い記事があった。

産経ニュース2014年11月27日「米政府の慰安婦問題調査で『奴隷化』の証拠発見されず…日本側の主張の強力な後押しに

記事の書き出しはこうである。

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米政府がクリントン、ブッシュ両政権下で8年かけて実施したドイツと日本の戦争犯罪の大規模な再調査で、日本の慰安婦にかかわる戦争犯罪や「女性の組織的な奴隷化」の主張を裏づける米側の政府・軍の文書は一点も発見されなかったことが明らかとなった。
===============

この調査結果は、以前私のブログ「マイケル・ヨン氏をケネディ大使に会わせることは出来ないだろうか?」で取り上げたマイケル・ヨン氏の調査活動の一環で明らかになったものであり、2007年に米国でまとめられた「ナチス戦争犯罪と日本帝国政府の記録の各省庁作業班(IWG)米国議会あて最終報告」に関するものである。時期的には安倍総理が2007年4月に訪米した頃にまとめられており、この時にブッシュ前大統領との間で安倍総理が謝罪したとかしていないとか話題になった時期である。その年の7月、米国下院では「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議」が採択される。時代の流れ的には、人権の観点から慰安婦問題は日本に謝罪させて決着を見ようという流れが米国内でも大勢を占めており、その様な人々に不都合な真実は暗黙のうちに闇に葬られていた。実際、報告の序文でIWG委員会の委員長代理が証拠が見つからなかったことに「失望」したとしており、バイアスがかかった調査であることが明らかとなっている。しかし、バイアスをかけても見つからなかったというのがこの報告書による事実であり、その結果はマイケル・ヨン氏の独自の調査結果とも符合している。勿論、日本政府との主張にも合致する。しかし、IWG委員会は日本軍の悪行の証拠が見つからなかった理由は「当時、慰安婦は当時の日本において合法な売春制度の延長であり、米軍が徹底的な調査を行っていなかったからだ」と説明して勝手に納得している。しかし、この主張は日本政府の立場の正当性を主張するためには「存在しないことを立証する、所謂『悪魔の証明』」をしろと言っている様なものである。一方で「存在することを証明する」ことは簡易なはずだから、韓国もアメリカの親韓派(反日派)の人も、その様な簡単な証拠を長年追い求めているはずだが、未だにパキッと決着をつけられる証拠が出てきていないことを考えれば、通常であればマイケル・ヨン氏の結論に到達できるはずである。

ただ、今回のこの報告書の存在が明らかになったことの意義は大きい。前述の通り、この報告書は米国の下院決議の直前にまとめられたものであり、本来は米政府が大々的に行った調査結果だからその結果は下院決議の前に吟味する対象になっても良いはずである。しかし、その様な客観的な情報を排除して決議に至った経緯を考えれば、非常に恣意的に政治的な流れが作り出されていたことが分かる。

問題はこの後の戦略である。この手の話は反日派の人達を相手にしても仕方がない。泥仕合になるのは目に見えているから、ピンポイントでニュートラルな人を選んで集中的にこの客観的事実を伝えるべきである。つまり、この結果は河野談話の前に行われた日本政府の調査結果と一致しているし、韓国側の主張する証拠の中に裏取りが可能な1次証拠で日本軍の組織的な悪行を証明する明白な証拠が見つかっていない事実とも整合することを「客観的事実」として説明するのである。そして、それはマイケル・ヨン氏の様な日本にも韓国にもしがらみがない客観的な第三者を通して行われると、より効果的である。彼が自身で進めている調査結果の発表も間もなくあるだろう。ニュース・バリュー的にはマイケル・ヨン氏がキャロライン・ケネディ大使に面会し、この調査結果を紹介し、そのタイミングで報道発表に踏み切ると話題性は大きくなる。更に訪日ついでに維新の党の橋下共同代表とも会談し、橋下氏のかっての問題提起はマイケル・ヨン氏の調査結果と矛盾しない点を紹介し、橋下氏の国際的な名誉回復も合わせて行えれば好都合である。こうなれば橋下氏とサンフランシスコ市議会との対立も和解可能になるので、その後に橋下氏が訪米すれば一連の流れの中でのニュースとしてアメリカ国内でも少しはニュースになるかも知れない。少しづつ、少しづつ、外堀を埋めながら本丸に迫るのである。

だからこそ安倍総理には、様々な人的コネクションをフルに活用し、日本政府による直接的なアプローチというのではなく、水面下でニュートラルな米国人の仲介者を介してマイケル・ヨン氏にキャロライン・ケネディ大使との面会を提案し、本人をその気にさせて欲しいと感じる。フリーのジャーナリストが気合を入れて調査をしているのだから、その結果発表をセンセーショナルにするための舞台作りは本人も吝かではないはずだ。

反撃の狼煙があがる日が今から待ち遠しい。

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自民党と民主党の政権公約の具体的読み比べ

2014-11-27 22:23:35 | 政治
先日のブログでは民主党のマニュフェストを取り上げたが、自民党も同様に「自民党重点政策2014」としてマニュフェスト相当の公約を発表した。今日はこの二つの比較をしてみたい。

まず、それぞれの公約は下記の場所で見ることができる。

自民党ホームページ2014年11月24日「自民党重点政策2014」(PDF版
民主党ホームページ2014年11月24日「政権政策Manifesuto」(PDF版


それぞれをパッと見た瞬間分かるのは、具体的政策部分(後半の文字部分)の記述量の分量の違いである。自民党の重点政策の方は約2万4千文字もの長さであり、一方の民主党の政策は約8千6百文字程度である。単純に3倍近い記述があることに驚かされ、実際に読んでみると「長い、長い・・・」と気が滅入ってしまう。そこで、政策の詳細は興味ある方に読んで頂ければということで、最初の部分に安倍政権のこれまでの2年間の成果を端的にまとめている。これに対して民主党はどうかと言えば、最初の前半部分では「如何に自民党政権では駄目だったか」に的を絞り、ここでは具体的な解決策は殆ど示していない。後半部分には具体的な記述もあるが、先日の私のツッコミのブログ「『民主党の重点政策MANIFESTO』へのツッコミ」にも書いたが、「自民党では駄目」と言いたいのは分かったが、「では何を具体的にするの?」という質問に対する答えとしては不十分であった。一方、民主党側は枝野幹事長が民主党のホームページで自民党の公約を下記の様に批判している。

民主党ホームページ2014年11月25日「自民党マニフェスト『無責任、中身ない』枝野幹事長が批判

ポイントを幾つか挙げれば、「安倍政権下では実質GDPが1.7%程度しか増加していないが、民主党政権下では5%も増加している」「自民党の公約は中身がない」「集団的自衛権と言う言葉を隠している」といったところである。

まず、ひとつめの実質GDPについてであるが、確かに民主党政権下では5%の実質GDP増加が確認できる。ただ、下記にGDPの推移が記されているのでそれを確認してみよう。

世界経済のネタ帳「GDPの推移

政権が交代した2009年の実質GDPの約489兆円から2012年の517兆円と確かに約5%増加している。一方の安倍政権では517兆円が2013年の525兆円であり1.7%程度である。ただ、このグラフの読み方は少し注意を要する。明らかに見て分かる通り、リーマンショックの起きた2008年よりも2009年の方がGDPは低下しており、リーマンショックの負の影響をすべて含んだのが自民党政権終焉の2009年のデータである。ただ一方、自民党の麻生政権下では経済対策を行い、更には「選挙目当てのばら撒き」と揶揄された現金の支給などもあり、ある程度のタイムラグを経て2010年ごろからその効果が見え始める。2008年のデータと2010年のデータは518兆と512兆と概ね一致し、一時的な落ち込みが回復していることが見て取れるので、アメリカをはじめとする諸外国のリーマンショックからの立ち直りを加味すれば、寧ろ2008年の518兆円を元々の日本のポテンシャルと見るべきかも知れない。リファレンスを518兆円、ないしは512兆円とすれば、2012年の民主党政権の終わりの517兆円は概ね横ばい、ないしはマイナス成長ということになる。一方、安倍政権の今年は消費税増税による短期的な落ち込み要因があり、今年の評価は微妙であるが予測では530兆円となっている(ただ、このグラフでは7-9月期の落ち込みを織り込んでいないだろうから微妙だが、2014年も1年を通せば若干の増加を予測している)。この様に消費税を増税してもこの増加傾向があることを考えれば、枝野氏の発言はあまりにご都合主義的な論理的な合理性に欠けた言い分と見ざるを得ない。

次に、「自民党の公約は中身がない」の部分を見てみよう。この主張の根拠は理解できなくもない。大体、答えが選挙前に分かっていれば、そんなこと、とっくの昔に実現しているはずだから、蕎麦屋の出前的な記述が多くなるのはその通りである。「何時何時までに議論して、早急に答えを出す」とか、「問題に対して適切に対処する」的な表現は、実効的にはゼロ回答に等しい。民主党のマニュフェストは酷かったが、自民党にも同様な傾向があるのは否定しない。

ただ、では自民党も民主党も同じかと言えば、それは私の言うところの「目糞、鼻糞、本当の糞」で、自民党の内容は「目糞、鼻糞」でパッとしないかも知れないが、民主党の内容は「本当の糞」並みである。目糞も鼻糞も汚いが、それを指先で弾いて飛ばす人がいても「おい、汚いなぁ、まったくもー」と言う程度で済むが、本当の大便を部屋にまき散らす奴がいたら「人間性を疑う」事態になる。その差は歴然としている。たとえて言えば、民主党のマニュフェストは「選挙になった!さあ、皆で有権者が喜びそうな提言をまとめよう!」と言って作ったようなものである。それに対し、自民党の公約は「選挙になった!さあ、皆が日頃から議論している内容をまとめて有権者に訴えよう!」という内容である。既に議論が始まっており、とても役に立ちそうな答えまではたどり着いておらず、概念的な説明しかできないが、それなりに細かいところまでブレークダウンされたところまでは書けるという内容になっている。全ての内容を比較することはできないが、例えば農林水産業に対する対策を、民主党のマニュフェストの記述毎に、それに相当する自民党の記述(厳密には対応していなくても、概ね共通点がある部分を併記)を探し出してまとめてみた。少々長いが色を付けて引用しているので、個別に比較をしてもらいたい。

【民主党の記述】●[民主]農林水産業の再生
【自民党の記述】○[自民]強い農林水産業を
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●[民主]米価の大幅下落に対応するため、農業者戸別所得補償制度を法制化するとともに、日豪EPAをにらみ、畜産・酪農所得補償制度の導入を検討します。
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○[自民]価格低下等による収入減少時のセーフティネットとして、収入保険制度の導入を検討します。燃油高騰が続いている施設園芸において、ヒートポンプ等の省エネ設備の導入や燃油価格が一定以上になると補填金を支払う「燃油価格高騰緊急対策」を着実に推進します。
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●[民主]6次産業化などによって農家所得の安定・向上、農村の活性化を図り、新規就農者を増やします。多面的機能を評価する声が高まっている都市農業も振興します。
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○[自民]平成26年産米の価格下落等に対して万全の対応を行うとともに、米の生産調整の見直しや飼料用米等の本作化を進め、一層の水田のフル活用を図ります。米の生産コストの低減、安定的な取引の拡大、輸出の加速化等により、農業者の所得増大に取り組みます。
○[自民]関係事業者が連携・結集して地域ぐるみで収益性の向上を図る畜産クラスター(高収益型畜産体制)の構築、国内飼料生産・利用の拡大等を進めることにより、生産基盤を強化し、畜産・酪農分野の競争力強化、成長産業化を実現します。
○[自民]農商工連携・地産地消・6次産業化を推進します。国内はもちろん、拡大する世界の食市場も取り込むことにより、2020年に6次産業の市場規模を10兆円(現状約2兆円)に拡大し、わが国農林水産業の成長産業化と農業・農村の所得倍増を目指します。
○[自民]「国別・品目別輸出戦略」に基づいてオールジャパンでの輸出拡大を着実に進め、2020年の農林水産物・食品の輸出額目標1兆円(現状5500億円)を達成した上で、更に大きく伸ば7していくことを目指します。
○[自民]各都道府県に新設された農地中間管理機構(農地集積バンク)をフル稼働させて、今後10年間で、全農地面積の8割を担い手に集積・集約化します。再生利用可能な耕作放棄地のフル活用を図るとともに、農地中間管理事業と併せて農業農村整備事業を推進します。
○[自民]経営のレベルアップ等につながる法人化を推進し、法人経営体数を2010年比約4倍の5万法人にします。青年等の新規就農・雇用就農を倍増(年間1万人から2万人に)し、世代間バランスがとれ、地域農業を維持・発展させるための取組みを強化します。
○[自民]農地の大区画化、汎用化、畑地かんがい等を加速化し、農業の生産性の向上、高付加価値化を図るため、農業農村整備事業を推進します。
○[自民]農林水産業の成長産業化を技術革新で先導するため、ロボットやコンピュータ技術等わが国が得意とする最先端技術を活用しつつ、農畜産物・食品の高付加価値化、生産体系における大規模化・省力化、ニーズに応じた業務用野菜等の品種開発等の研究開発を強化し、地域や担い手の所得増大に貢献します。

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●[民主]路網整備、森林施業集約化による国産材の利用促進を図ります。
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○[自民]施業集約化や路網整備等森林整備加速化・林業再生対策を進めるとともに、森林組合、林業事業体、自伐林家等多様な担い手を育成し、強い林業経営を確立します。
○[自民]CLTと呼ばれる新しい木材製品の普及加速化、木質バイオマスの利用促進、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会での木材利用等新たな木材需要の創出による国産材の利用の拡大により、林業の成長産業化を実現し、中山間地域の雇用と所得を増やし、山村の振興を図ります。

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●[民主]漁業者所得補償制度や省エネ・省コストな漁船導入支援などにより、漁業経営の安定化を図ります。
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○[自民]農山漁村における雇用の確保、地域のコミュニティ機能の維持、都市と農山漁村の共生対流を進め、農山漁村の所得の向上を図り、地域ににぎわいを取り戻します。
○[自民]住みよく美しい活力ある農山漁村を実現し、若者や高齢者が安心して生き生きと暮らしていけるようにするため、「農山漁村計画法(仮称)」の制定に向けた検討を進めます。また、「山村振興法」を延長し、支援の充実を図ります。
○[自民]「浜の活力再生プラン」の策定・実施を進め、持続的な漁船漁業や養殖業の展開、漁村地域の活性化を図ります。
○[自民]燃油価格の高騰等に左右されない力強い漁業経営の確立に向けて、収入安定対策・担い手対策、燃油高騰・省エネ対策を実行します。

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●[民主]外国人漁業規制法等の改正による罰則強化を通じ、徹底した取締りを行い、水産・海洋資源を守ります。
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○[自民]資源管理の推進、多面的機能の発揮対策、消費・輸出拡大等生産段階から販売段階までの総合的な施策を講じます。
○[自民]鯨類をはじめとする水産資源の持続的活用の方針を堅持し、商業捕鯨の再開を目指します。

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以下は自民党公約のみに記載があり、民主党には記載がなかったものである。

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○[自民]食料自給率及び食料自給力(農地・農業用水等の農業資源、農業技術、農業就業者等)を維持向上させます。
○[自民]人々の安全や農林業、生態系に深刻な被害を及ぼすシカ・イノシシ・サルの生息数等を今後10年間で半減させることを目指し、市町村に設置される鳥獣被害対策実施隊を中心とした取組みを推進します。
○[自民]家畜伝染病や病害虫の侵入・まん延防止を徹底し、安心できる営農環境を守ります。
○[自民]農業・農村が果たしている多面的機能の発揮を促進するため、法制化された「日本型直接支払い制度」を着実に推進します。その中で、中山間地域等直接支払い制度について次期対策の充実を図ります。
○[自民]間伐等の森林整備・保全による森林吸収源対策に積極的に取り組み、地球温暖化防止に貢献します。

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繰り返すが、民主党のマニュフェストに記載の内容は全て引用してある。農林水産関連の部分の100%同士の比較である。自民党の公約も詰めが甘いものが多く、結局、それを実現するにはどの様にアプローチするのか分かり難いものが多いが、しかし、それでもこれだけの分量の記述はその場の思い付きではなく、個別に何らかの議論をした形跡は窺える。核政策に対するその本気度の違いの差がそのまま表れていると言っていい。

例えば、農業に対する民主党お得意のアプローチはばら撒きであり、自助努力に基づく政策は少ない。しかし、金を与えてじり貧になった実績がモノを言い、民主党の政策では農家が消滅する歩みを少しだけ遅らせるだけである。しかし、自民党の基本理念は農家が一本立ちできるための政策を目指している。例えば、減反政策の見直しなどは、減反で金を渡して農地を休眠状態にするのではなく、飼料米の生産にシフトする形で「自分で稼げる」環境を作り出そうとしている。また、飼料価格等は先物取引や外国の気象変動などで価格の乱高下も多々あり、飼料の国内生産化とその効率化で安価で安定的な飼料の供給ができれば酪農農家へのアシストにもなる。バター価格の高騰などが話題になるが、その様な背景も酪農農家の採算割れと後継者不足である。さらに上記の政策が成功すれば、直接的に自給率の改善効果も期待できる政策である。勿論、日本での飼料米が現時点で価格競争に勝てないことは事実としてあるだろうが、現状の問題を根本的に解決しようという意気込みは見て取れる。乗数効果的に、ひとつの政策の恩恵が次の課題に連鎖的に有効に影響するところなどが期待でき、これらを株式会社化して高効率化を図るなどして、今後の展開を期待してみたくなる程度の内容は含まれている。

その他にも、最後の自民のみの政策には、シカ・イノシシ・サルなどの鳥獣被害対策であったり、森林西部を「森林吸収源対策」と位置付けたり、「日本型直接支払い制度」なるものにも言及している。私は日本型直接支払い制度というものを知らなかったが、下記の様な精度らしい。

くまにちコム「【ニュースとことん知り隊】「日本型直接支払い」って? 農業の多面的機能支える

このサイトの下の方に「農業の多面的機能の例」の図があるが、農地には「空気をきれいにする」「気温の調整をする」「山崩れや土砂崩れを防ぐ」「水をためて水不足や洪水を防ぐ」等の機能があり、単なる農家の保護だけではなく、これらの多機能性を意識した政策を取るというものである。少々大風呂敷を広げた感はあるが、これは日頃から議論している証拠ともいえる。民主党からは出て来得ない政策である。

以上、部分的な比較でしかないが、これだけ見ても内容の充実度は歴然としており、自民党の政策が満点ではないのは認めるが、民主党とは雲泥の差があることは否めない。

最後に「集団的自衛権隠し」について補足すれば、これは「言葉遊び」に他ならない。言葉として「集団的自衛権」を議論するより、個別の事象に対して現行憲法のもとでの自衛隊による対処の可否を議論するのが自民党にとっての本質であり、「かって、集団的自衛権とも呼ばれていた事象」であることを理由に政府にネガティブ・キャンペーンを仕掛けるのは「言葉遊び」である。何故なら、実際の事象に関しての結論は、大局においては与野党で大差がないのだから・・・。であれば、野党の「言葉遊び」に与党も「言葉遊び」で応える必然性はなく、「中身で勝負」とするのが筋である。政策から集団的自衛権の文言が消えたのはその様な背景であろう。

以上、色々と説明してきたが、野党は「イメージ戦略」で自民党を批判しているが、実際にはまやかしの批判であることは多い。有権者が誤解することを期待するのではなく、もう少し「中身で勝負」をしてもらいたいものである。

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「民主党の重点政策MANIFESTO」へのツッコミ

2014-11-25 00:34:13 | 政治
民主党がマニュフェストを発表した。下記の民主党のホームページに記載されている。

民主党の重点政策MANIFESTO『今こそ、流れを変える時。』

余りに酷いのでちょっとツッコミを入れさせて頂く。

まず、ポスターのキャッチコピー。

■「今こそ、流れを変える時。」
→前回の民主党政権の無残な結果に対し、国民がNoを突きつけて2年前に政権が交代した。その時のキャッチコピーであれば非常に的を得た合言葉である。その流れを変えて、株価は倍増し、日米同盟は俄然強固になった。尖閣問題で日本を鼻先で扱い、日中首脳会談に付き合ってもらえなくてヘイコラ、ヘイコラ頭を下げていたのが、中国の方が「条件を聞かねば会談はしない」と言っていたくせに無条件会談に応じざるを得なくなった。韓国も李明博大統領に好き放題にやられたが、現在は攻守が全く逆転し、日本は韓国など相手にしなくなった。朴大統領の方から会談を打診する始末である。安全保障の法的整備は着実に進み、沖縄の普天間飛行場の辺野古移設も逆風は凄まじいが、手続き的には一応は進展した。完全に流れが変わったのは疑いようがない。その流れを変えるなら、その方向が「昔の民主党政権時代の方向」なのか、それ以外の方向なのか、それがなければ意味不明なキャッチコピーである。

次に、個別の課題を確認する。

■「実質賃金が15か月連続マイナス。働く人はますます苦しく。」「増え続ける非正規雇用。」「GDPが二期連続マイナスに!アベノミクスは期待はずれ。」
→民主党政権時代にどうだったのか?実質賃金どころか、失業率の高さは明らかに流れが変わった。非正規が増えているというが、非正規すら働けない時代よりは全然改善している。好景気への流れの中では、必ず通る道が現在の状況である。今後、再度不景気に逆戻りの可能性はあるが、民主党政権が好景気に導くという政策はない。
■「集団的自衛権の閣議決定。秘密保護法案の強行採決。」
→安全保障上の不備が原因で、尖閣問題で日本は中国に好き放題やられたのは民主党政権時代である。時代が昔とは大きく変わり、その変化に対応した政治が求められている。過去のままで良いというロジックは「私は無策」と宣言していると等価である。
■「国産米農家に廃業の危機!」
→危機感は分かるが、農家へのばら撒きは何も事態を改善しなかった。根本的な改革が求められているのだから、問題を認識しているなら具体的な「解決策」を示すべき。
■「安易な原発再稼働」
→「安易な再生可能エネルギー」で大問題になっている現実に対する答えを示せ。自らの政策の失敗で、今、日本中が困っているのだから、それに頬かむりで原発だけ「安易」と糾弾するのは余りに勝手すぎる。
■「2年たっても議員定数の削減は実現せず。」
→選挙制度改革は全政党の賛成が基本。自ら譲歩しなければ進展しないのは自明。与党だけに責任を押し付けるのはおかしい。
■「社会保障充実の予算が半分に減らされた!」「『要支援切り』で介護サービスが低下。」
→こちらは一理ある。ただ、色々な事情があっての流れであるので、単に「要支援切り」で介護サービスが低下というだけでは不十分。結局は社会保障充実には「財源は何処にある」という命題が付いて回る。この答えを出せなかったのが前回の民主党政権。
■「『厚く、豊かな中間層』を復活させる」「未来に繋がる成長戦略」
→「行き過ぎた円安」というが、これは「行き過ぎた円高」が是正されて、以前の円ドルレートに戻っただけ。その当時に「行き過ぎた円安」との認識はなかったのだから、適正レートの根拠を示さないと不毛な議論。個人的には1ドル110円位が妥当だと思うが、定量的な根拠もなしに主観的な議論しても不毛である。また、「未来に繋がる成長戦略」というのは安倍政権のカーボンコピーであり、思い付きで分野を幾つか列挙しても、言うだけなら誰でもできる。安倍政権も同様のことは言っているだろう。
■「一人ひとりを尊重し共に生きる社会をつくる」
→抽象的な話をし出したら終わり。結局は「財源は何処に」という話。以前の様な「バラマキ感、満載」の表現をソフトにしただけでは?
■「地域の声に耳を傾け、ふるさと再生」
→これは安倍政権のカーボンコピー。だったら積極的に協力をしろ!!
■「専守防衛と平和主義を堅持する」
→安倍政権も全く同じことを言っているが、イメージ戦略で安倍政権を「戦争好き」と貶めようとしている。安全保障の効果が向上するアプローチがあるなら、その具体論を示すべき。しかし、細かく読めば「アジアの安全保障環境が変化する中、近隣諸国との信頼醸成と関係改善を進め、戦略的な外交を展開します。」など、安倍政権の積極的平和主義と何が違うのか?
■「身を切る改革を断行する」
→「議員定数を削減します。一票の較差を是正します。」というが、民主党が積極的に妥協して着地点を探そうという動きはこれまでに見えなかった。多分、これを言うなら「第三者委員会に任せるべき!」ぐらいのことを言わなければ実現しそうな気がしないが、そこまでいう気はあるのか?

以上、こんなところだろうか?

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正論だけなら政治家はいらない

2014-11-24 00:55:53 | 政治
土曜日の日テレ系の「ウェークアップ!ぷらす」では、沖縄の翁長次期知事がテレビ出演し、森本元防衛相やケビン・メア氏などと意見を交わしていた。沖縄県知事選は忙しくてあまりフォローは出来ていなかったが、翁長次期知事の主張にいささか驚かされた。今日はこの点についてコメントしたい。

まず、司会の辛坊治郎氏が「現実問題として、普天間の危険性除去をどの様に実現されるつもりか?」と問うたところ、「その上から目線は納得できない。今まで、沖縄は自ら基地を提供したことはなく、常に押し付けられてきた。今回の選挙で民意は明らかになった。しかし、本土の自治体に移設を打診したときに『受け入れは出来ない』と言われただけでそれを納得し、一方で沖縄には『受け入れは出来ない』と言われても押し付ける。これが民主主義か!!」という論調で反論し、結局、普天間の危険性除去についてはノー・アイデアであることを実効的に公言した。

朝日新聞的にはこれでOKなのだろうが、それは無責任な偽善者の主張である。ケビン・メア氏は繰り返していたが、現在、尖閣の問題で中国との対立の矢面に立っているのは沖縄県であり、その沖縄県が安全保障上、日本政府の足を引っ張ることは沖縄を窮地に陥れることにならないかと問えば、「過去に中国の脅威が問題となった時、沖縄に米軍基地がある故に中国からのミサイルが沖縄に飛んでくるのではないかと危機感が高まり、結果的に観光客が相当減ってしまた。米軍基地があるからこそ緊張が高まっているという現実があるだろう!!」といった趣旨で反論した。森本元防衛相が日本政府の活動により沖縄の米軍基地の一部返還の動きがあるなど、様々な形で負担軽減のために努力している現実を伝えても、「所詮、返還される基地の面積は日本全体の米軍基地で言えば1%にも満たず、その程度のことを沖縄は強化などしていない」との趣旨で反論された。終いには、「沖縄に外交権や安全保障のことでの米国との交渉権などを与えて貰えもしない」との愚痴までこぼす次第で、完全に感情的な議論に終始していた。

もし子供の喧嘩であれば、正論だけで全てを突っぱねることも出来るだろうが、国家と国家の安全保障問題ともなるとそう単純ではない。例えば、一般家庭で隣家とトラブルがあった時、正論だけで全ては片付かない。生まれて間もない赤ちゃんがいる家からの赤ちゃんの泣き声という騒音に対し、「あなたは、私に対して騒音で迷惑をかけない様に、完全な対策を打つ必要がある」と強弁しても、それが無理難題であることは明らかだ。騒音を出さないよう最大限の努力義務はあるのだが、社会が子供を育てる精神がなければ国家は滅びてしまう。現在の住宅事情であれば、ある程度「お互い様」とか「持ちつ持たれつ」といった現実をわきまえた精神は必要である。それは「正論」と「現実」の狭間での「選択可能な範囲で実効的に有意義な対策」を見出すことを意味する。
フィリピンの様に米軍が居なくなった途端に中国が島々を占領し、その周辺の漁民や住民に危害が加えられたとして、その際に最も困るのは沖縄県民であり、その危険性除去の最大の責任は内閣総理大臣であり、沖縄県知事も同様の責任を負うはずである。しかし、翁長次期知事の言葉にはどの様な責任感は全く感じられず、「赤ん坊の泣き声で眠れずにエライ迷惑をしてるんだ!!」と声高に叫ぶ声だけが聞こえる。それは正論かも知れないが、物事の解決には導かない。アパートの隣室であれば住人を追い出せば勝ち誇ることができるかも知れないが、一軒家の持ち家の住人を追い出すことは出来ない。結果、その後に自分が何かをして迷惑をかける時、隣人は助けてくれなくなり、泥沼の裁判劇で結局、住みにくい環境になる。翁長次期知事の発言は、この様な事態に沖縄県民を導く発言であり、結果的に普天間周辺で死亡事故による犠牲者を生むことになるかも知れない。

政治とは、単純な一面だけで物事が判断できるものではない。もし普天間が県外に移設できるなら、民主党政権でそれは実現されていたはずである。鳩山政権下では最大限の努力をしていたはずだから、もし可能であるならばそこで実現できていたはずである。それでも出来なかった現実を踏まえれば、民主党政権よりもより現実路線の安倍政権で実現できる訳がない。少なくとも、向う20年計画位を覚悟しなければ、県外移設など不可能である。しかし、もし辺野古への移転が実現できれば、5年ほどで普天間の危険性は除去できる。20年計画での危険性除去で満足するか、5年先を選択するかの問題である。しかし、10年先ですら翁長次期知事は知事職を務めていないだろうから、結局、その責任を問われることはなく、今回の行動の責任は有耶無耶にされる。結局、彼が生き残る道は「政府からの追加支援の勝ち取り」でしかなく、「最後は金目でしょ!」と沖縄県民に悟られてしまう未来が見えている。

この様に、正論だけで物事が回るならば政治家などいらないのである。官僚がいれば十分なのである。しかし、その様な官僚の正論だけでは解決できない複雑な問題が山積しているから、決断力のある政治家が求められているのである。今回の沖縄知事選は、民主党政権誕生時以上のポピュリズム選挙となってしまった。結局、正論が空回りした民主党政権がどうなったかを考えれば、沖縄が無駄に費やす日々は短くないだろう。その時になって気が付いても遅いのだが、その責任は(民主党政権を生んだ責任を日本国民が取ることと同様に)沖縄県民が取ることになるのだろう。

沖縄にとって耐えがたい不幸な現実であることは十分に承知しているが、人生では苦渋の決断を迫られることは一般社会では多い。鳩山政権での挫折を経験した以上、その様に現実を受け止めることも必要なのではないだろうか。

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「天下分け目の関ヶ原」は次の参院選である!!

2014-11-23 00:34:33 | 政治
衆議院の解散と前後して、面白い現象が起きている。みんなの党が解党し、その一部が民主党と合流した。生活の党も、その2名が離党して民主党から出馬することが決まっている。元社民党で、前回は日本未来の党から出馬して最終的に無所属となった阿部知子氏も民主党から出馬することが決まった。一部では、民主党を軸にした「野党の再編」と銘打って、民主党が大幅に躍進するとの予想も出ているが、この流れは実は自民党にとっては「これほど好都合なことはない事態」と言っていいだろう。

というか、民主党は「何故、2年前に政権を手放したのか」についての答えを未だに得ていない様だ。民主党が崩壊した理由は誰もが知る通り、個利個略の烏合の衆が「数を頼り」に集まって党を作ってきたことにある。それ故、政権党でありながら右へ行ったり左へ行ったり見苦しい限りであった。まだ政権の魔力に取りつかれていた間は良かった。党の中で多数派を占めれば、国会議員の全員の中では少数派であっても権力を手中に収めることができたから、小沢一郎氏は鳩山元総理を操り人形のように上手く使い、幹事長という極めておいしいポジションで「札束で人の顔を叩く」様なことを好き放題やっていた。その後、主流派/非主流派が逆転し菅元総理が実権を握って以降野田政権まで、小沢一派の議員たちは「そのうちに再度主流派/非主流派の逆転をしてやろう」と思ったのだが劣勢が続き、しかも国民の民主党離れが続いて魔法が解け、次々と離党するに至った。最終的には衆院でも過半数ぎりぎりになり、選挙後には100議席を大きく割った。

今回の民主党への合流話は、このままでは選挙で劣勢の議員が選挙協力という形では折り合いが付きそうもなく、仕方なしに「当選のための合流」をしたに過ぎず、本来優先すべき自分の政治的志向と民主党の選挙公約の方向性の一致を確認してのことではない。というか、その様な議論をした形跡もなければ、民主党はまだ選挙公約の方向性の様なものを示している訳ではない。見るからに「烏合の衆」を臆面もなく続けている訳で、仮にこの政党が政権などを取ろうものなら、日本が今度こそ崩壊するのは間違いないと大半の人が確信している状況である。「私は反省していません!!」と公言している様なものだから、少なくとも民主党が選挙の台風の芽になることは有り得ない。大体、海江田万里代表で選挙を戦おうとしている時点で、無党派層が民主党に一票入れる訳がないのである。

つまり、自民党が怖いのは維新の党である。橋下共同代表が出馬する様な事態があれば、どの様な予想外の事態になるかも分からないから、民主党の票を大きく維新の党が奪っていく状況は予想できる。そこに前原誠司氏や細野豪志氏などが合流すれば、政治的志向性も比較的近い者同士で固まるので、明らかに烏合の衆ではなく、政治的理念に基づいた一大野党勢力になることは予想できる。自民党に満足できない人々の投票の受け皿にはなり得るので、これは自民党が最も恐れるシナリオだろう。しかし、当の本人たちにはその様な離党の気持ちはなく、民主党の旗のもとに野党を結集すべきと考えている様だから、実際にはその様な一大勢力は(少なくとも今回は)実現することはなさそうである。

であれば、野党が勝利するためには民主党と維新の党などとの選挙協力しかない。実際、個別の地方では政治理念を超えての選挙協力が期待できる場所があるという。しかし、大局的には維新の党の橋下共同代表はその様な下劣な談合を好まないから、ローカルな選挙協力以上には発展しない。橋下共同代表の出馬は自動的に今年二度目の大阪市長選を意味するから、3月に市長選を行ったばかりで大阪市民に説明が付くわけがなく、反橋下派の連中は大挙して「勝てる選挙」に注力するだろう。したがって、凄まじく魅力的な代理の候補を立なければ相当の確率で市長の座を維新が手放すことになる。これは「大阪構想の断念」に他ならない。橋下共同代表は大義と結果責任を重視する人だから、ここでの国政の出馬は相当ハードルが高い。大阪構想のとん挫が確定するまでは、大阪を離れることができないのが現状である。多分、前原氏も細野氏もその様な流れを読んで、今は政局を仕掛ける時期ではなく「耐え忍ぶ時期」と割り切り、離党に躊躇する状況なのだろう。

この様に考えると、天下分け目の関ヶ原は今回の衆議院選ではない。明らかに、次回の参議院選が天下分け目の合戦になるのである。もし政局に明るい方なら、(野党サイドにとっては)真の意味で政治的影響力の向上を目指すなら、今回は「捨て石」とすべき選挙であることは明らかであろう。その様な状況で「迫力ある勝負」は出来ない。自然と民主は惨敗し、その大半を共産党と維新の党が分け合うのではないかと思う。

参議院選後の最終的な姿としては、左から右に共産党、社民党や民主の左派系(分党)、公明党、民主右派系議員を取り込んだ維新の会、自民党、次世代の党と並び、政治的な色が比較的分かり易く整理されることになる。この時点では、橋下共同代表も参院選に参戦し、国政の場で暴れまわるだろう。そうなると、案件ごとの是々非々の議論が成立し、反対のための反対ではなくパーシャル連合的な流れが強まり、政治的にはそれほど不安定にはならないだろう。

多分、マーケットはその様な安倍政権の長期的安定性を評価しているのだろう。実際、7-9期のGDP予測値のショックをものともせず、株価をじわりじわりと上向きにしている。この傾向は選挙戦にも有利に働く。結局、議席は多少は減らしても安倍総理は勝負に勝ち、続けてデフレ脱却にも勝利していくことになるのだろう。

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安倍総理が見ている世界~「法の下の支配」の意味~

2014-11-21 23:57:47 | 政治
今日、衆議院が解散し、長い選挙戦が始まった。私の予想は大外れだったが、多分、マスコミの誰もが触れていないし、私もつい最近まで気が付かなかった重要なポイントにふと気が付いたので、今日はその点について言及してみたい。

まず枝葉の問題から少しコメントしておく。安倍総理の解散宣言以降、マスコミは解散の大義を問う声で溢れている。思い出せば幼い子供の頃に、友達と喧嘩した後で親や先生に喧嘩の原因を問われた時、必死になって「言い訳」を考えて、相当無理筋の屁理屈を捏ねて「それではいけない」と諭されたことがあるが、今のマスコミの論調はその時の恥ずかしい屁理屈に似ている。安倍総理が解散を宣言した当日のTBSラジオの荻上チキSession22のポッドキャストを聞いていたら、ジャーナリストの青木理氏が暴言を吐いていた。それは、解散を受けて安倍総理が各テレビ局に出演したりして「単独インタビュー」を受けていたのだが、青木氏はこれが「ケシカラン」ということらしい。以前であれば、総理は単独インタビューなどせずに、共同記者会見やぶら下がりで応えていたが、安倍総理が「単独インタビューはしない」という歴代総理の慣習を破り、一方的に単独インタビューを開始したと非難していた。当日は各テレビ局で引っ張りダコだったから、そこで自分の都合の良い「主義主張」を吠えまくるのは卑怯だというのだ。説明などしないが、彼は自分の言っていることが如何に無理筋の屁理屈であるかが分かっていないらしい。そこまで酷くはないにせよ、他のマスコミも「解散の大義などない!」という論調を張って、「安倍政権、ケシカラン!」の一大反政府キャンペーンを盛り上げていた。

ここで、「解散の大義」の有無を議論する際に、「ある」という答えにしろ「ない」という答えにしろ、そのほぼ100%が自分の設定した前提の基で、その物差しでの評価結果を語っているのだが、当然、その前提が異なれば結論は異なるので、あまりこの議論には生産性を感じない。明らかなのは、マスコミがここまで「解散すべきではない!」という論調を張るということは、それだけ「野党にとって不利」な解散であることの証明でもある。実際に与党が勝つか負けるのか、ないしは勝つと言っても常識的には議席減らすのは避けられないだろうから、それを勝ったと言っていいのかどうかも分かり難い。しかし、そんな話はそれ程問題ではなくて、「消費税増税を延期することの是非と、解散の大義との間の議論において、忘れてはならない重要な視点がある」ということを明確にしておきたい。

順番に説明しよう。まず、今回の消費税増税の議論の基になる法律を見直しておこう。

==================
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律
附 則
 (消費税率の引上げに当たっての措置)
第18条  消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2  (中略)
3  この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前2項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
==================

問題となっているのは附則第18条の3項の、所謂「景気弾力条項」である。詳しくは時事ドットコムの1年ほど前の記事だと思うが、下記に説明がある。

時事ドットコム フォーサイトPOLITICS「法律が『不自然』なのはなぜか

ここには景気弾力条項による消費税増税の延期措置の条件として、「名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認」して判断するとあるが、その定量的な条件は示されていない。同附則の1項には「平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度」と定量的な数字があるが、条件は「平成23年度から平成32年度までの平均」だから、平成26年度の現在においてこの目標と現状が乖離しているか否かは判断できない。そもそも、それだけ明確に条件を示せるなら、こんな附則ではなく本則に書けばよい話で、その本則に書けなかったという事情がある。一般には附則はグリコのおまけであって、努力目標の様なものである。これに雁字搦めに縛られる必然性はないので、民主党内の増税賛成派と反対派の綱引きの中で、お互いが都合の良く解釈できる文言を時限爆弾として仕込んだのである。この様な時限爆弾は増税反対派が主導したもので、烏合の衆である民主党は、全くベクトルの異なる人達が、「今は自分が意図しないことを(民主党党首が総理大臣たる)政府が決断しても、そのうちに主流派/非主流派が逆転すれば、卓袱台をひっくり返して好き放題できる」と思い込み、党内での権力争いを激化させていた。増税反対派は、不景気の中で景気弾力条項を無視して増税すれば「景気失速は(その時の)民主党主流派の責任だ!」と時の党首を引きずりおろすことが出来るし、その時点で自分たちが主流派に返り咲いていれば、景気弾力条項を根拠に(程々の好景気でも)消費税増税を停止できると考えていた。しかし、この文言を読めば、その様な恣意的な判断を容易に許すような文章にはなっておらず、実際には「リーマンショック並みの不測の事態」にのみ発動可能な条項になっている。なぜなら、10年平均の半ばで10年目標を達成できないと断定できる事態であることが求められる訳だから、アベノミクスが腰折れ状態程度の現在の状況がこの条件に合致しているとは読めないのである。

しかし、当時の民主党の非主流派のご都合主義的な解釈に実は多くのマスコミも毒されていて、今回の安倍総理の判断に対してALL野党が「先送り賛成」と言い、マスコミもほとんどが賛成と言う。しかし、例えばオウム事件の際に法律が恣意的に運用され、マスコミの追跡を逃れるためにUターン目的で某ビルの駐車場に車で入り込んだことを「住居不法侵入」で懲役刑にするような事態に、「賛成多数」だからと言ってそれが許されて良いはずがない。産経新聞の加藤前ソウル支局長の起訴についても、韓国国民がALL賛成であれば、言論の自由の権利を奪っても良いはずがないのと同じである。法律の卓袱台返しは、それほど重い重い政治決断であるべきである。

したがって、「景気弾力条項があるから、今回の消費税増税の延期判断は『法的に正しい』」という命題に対し、誰もが疑問を抱かずに「Yes」と答えるのであるが、本当の答えは「No」ではないかと私は解釈している。「そもそも論」的には法律の条文に照らし合わせて判断すべきであり、「経済政策としての正しさ」はその後でついて来るものである。しかし、経済は生き物だから、国家、国民のため、国益を最優先に「税制」という政治の最重要案件の法律を卓袱台返しするのは選択として十分許されるべきだが、しかしその際には「国民の信を問う」ぐらいの覚悟が必要なほど、重いものとして受け止めるべきである・・・という原理原則は、政治家は忘れてはいけないのだと思う。あまりにも、ご都合主義の未熟な政治家を見慣れてしまったがために、そのポイントを忘れてしまったのではないかとさえ思う。

今思い出せば、消費税を5%から8%に上げる際に、(私は毎年1%づつの増税を主張していたのだが)既存のルール(法律)から外れたこと(増税時期延期やアップする税率の変更等)をする実行に移す際に必要となる「政治的なエネルギー」は膨大で、竹中平蔵氏などもその政治的なエネルギーの浪費を考慮すれば「8%への延期は諦めざるを得ない」と説明していた。少なくとも、与党の強行採決などで済むような単純な話ではない。国会だけではなく、国民や世界やマーケットに対して十分な説明責任が求められ、記者会見を数回やれば済むような話ではなかったのだろう。今回も同様で、その政治的なエネルギーの浪費を避けるためには、安倍総理は「国民に信を問う」のが政治的コストとして最も効率的だと判断したのかも知れない。

ちなみに話は逸れるが、集団的自衛権の行使容認に関しても、それが「憲法の解釈改憲」であるならば当然、国民に信を問うべき内容である。集団的自衛権の行使容認自体は2012年の衆議院選の自民党の選挙公約には含まれているのだが、法的に実質的な「改憲」であるほどの変更であるならば、それは「信を問う」べき変更である。しかし、安倍総理はその説明の中で明言しているが、「現行の憲法解釈の基本的考え方は、今回の閣議決定においても何ら変わることはありません。」「日本国憲法が許すのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置だけです。外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行いません。むしろ、万全の備えをすること自体が日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく大きな力を持っている。これが抑止力です。」であり、「外国の防衛それ自体を目的とする武力行使」は認めないから、「国民を守るための自衛の措置だけ」を許す現行憲法を逸脱するものではないとしている。つまり、数学的に言えば「個別的自衛権」と「集団的自衛権」という集合は重なり部分を持ち、その積集合部分を「集団的自衛権とも呼べるからNG」ではなく、「そもそも個別的自衛権は現行憲法で許されるから、集団的自衛権との重なり部分の積集合部分の自衛権行使も現行憲法では認められているはず」という確認をしたのが本質で、これは解釈による「改憲」ではない。ただ、これまでは「集団的自衛権」という言葉だけで「タブー視」されてきたが、そのタブーを取り除き、そもそも論的に「個別的自衛権」であれば「集団的自衛権」がかすっていても、それを理由に「躊躇はしません」と宣言したようなものである。法律の正常な解釈を、マスコミなどの反政府勢力が恣意的い解釈を捻じ曲げ、「さわらぬ神に祟りなし」的にタブー視していたのを正常に戻しただけである。これは、法律論的には筋が通っている様に見える。それが違うと言うのであれば、裁判を起こして最高裁で勝利を掴んでくれれば良いだけの話である。
一方、特定機密保護法案に関しては、前回の衆議院選では自民党は公約とはしていなかった。ただ、これは解釈が分かれるのだが、スパイ防止法などの様な法律は選挙を経なければ実現できないような法律ではなく、当然、あって然るべき法律である。選挙公約になくても、必要に迫られれば時の政権が立法作業を進めるのは当然である。集団的自衛権もそうだが、特定機密保護法案も不満に思うなら、次の選挙で反対勢力に投票すれば良い話である。

・・・と、最後の方では話が逸れてしまったが、法律というのは本来重たいもので、それを軽視する政治家やマスコミの方が本来は責められるべき対象なのだが、現状はそこに大きな歪みが存在する。歪んでいることを前提とするのではなく、歪みのない真っ当な世界を基準に考えると、正しい道は意外に違うところにあるのかも知れない。安倍総理は中国を念頭に「法の下の支配」という言葉を良く口にするが、これを自分の身に当てはめると、このような結論になるのかも知れない。

今回の解散は、そんなことを気が付かせてくれた事件であった。

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予想が外れた理由の振り返り

2014-11-18 23:55:14 | 政治
正直、完敗である。昨日のブログの予想の結果が1日で出た。大ハズレである。安倍総理の見ている世界と私の見ている世界は違うらしい。特に、消費税増税に際しての景気弾力条項の削除は私にとっては全くの想定外であった。参った・・・。少しは反省して、何故外れたかを考えてみることにしたい。

まず、私の予想は大ハズレだが、巷で言われている尤もらしい話が安倍総理の真意を突いているかと言えば、それもどうかは相当怪しい。このままじっとしていれば、じり貧でドンドン敗色が濃厚になるから、敢えて今のうちに解散して勝負に出るというのは相当嘘っぽい。政界は一寸先は闇の世界だから、2年も先のことは読めない。もし仮に、今後はジリ貧で敗色濃厚と言う説が正しいのであれば、再来年夏の参院選は敗色濃厚ということになるが、そんなはずはない。衆参の捻じれがどれほど日本にとって不幸かは痛いほど分かっているから、参院で負けても衆院だけは過半数を確保し続けようなどという姑息なことを考えるはずはない。だから、衆参ダブル選挙で白黒はっきりつけて、仮に負ければ勝利した新与党が衆参共に過半数を確保するという潔さはもっているはずである。

では、何故、解散をこのタイミングでしなければいけなかったかと言えば、思いつくのは公明党が衆参ダブル選挙を嫌ったことが原因ではないかと思う。公明党は強固な選挙基盤を持つから、その限りある基盤を有効に回すためには、選挙運動に過剰な稼働がかかることを極力嫌う。統一地方選挙と国政選挙が重なるのは殆ど禁止行為だし、衆院と参院のダブル選挙も同様に禁止行為らしい。山口代表などは、憲法の精神との兼ね合いでNGとも言っていた。同様に、半年に複数回の選挙が集中するのも嫌うし、そうなると1年半後の参院選の前、半年間は禁止期間に相当する。勿論、参院選の半年後には衆院の任期満了なので、ここでの選挙は公明党も否定はできないが、解散のタイミングを逸した最後の半年はレイムダックになり易いので、参院選後の半年間も自民党的には禁止期間となる。一方で、来年春には統一地方選があるから、逆算すると、衆院選の禁止区間を外すと解散可能な日程は、来年の秋から年明けにかけての数か月に絞られることになる。となると、この時期に選挙が出来る環境にあるかどうかが判断の分かれ目になる。

まず、来年になれば集団的自衛権の本格審議が始まるし、原発再稼働も実際の行動が始まる。朝日新聞などの反政府キャンペーンは来年春から夏にかけてピークになるので、秋から冬までの期間で落ち込んだ支持率を回復するのは厳しい。今現在がこの様にデフレ脱却の成否の分かれ目でうろうろしている状況なので、たった1年で本格的な好景気まで回復するのは期待薄である。多分、早くても次回の参院選頃までは時間を要すると考えるのが常識的判断だろう。となると、公明党の反対を押し切って衆参ダブル選を強行するしか残された手はないが、集団的自衛権の行使容認など、相当、具体的な法案に落とし込む際に公明党の譲歩を引き出す必要があるから、その中で選挙の日程だけは禁止期間を避けて欲しいとせがまれた時、それを突っぱねるのは厳しい。結果的に、今から2年間の間で衆院選が出来るのは今だけということになる。やはり、参院で単独過半数確保が出来ていないのは、相当、政権にとっての縛りは大きいのだろう。

次に、もう一つの大きな疑問である消費税増税先送りにおいて「景気弾力条項」の削除が判断された理由である。まず、常識的な路線では、1年半の増税判断先送りと景気弾力条項の維持が尤もらしく語られていた。常識的に考えて、この景気弾力条項を削除するのは余りに政治的リスクが大きすぎて、財務省が思いっきり抵抗しているのは良く知っているが、それでも財務省の言い分を突っぱねて景気弾力条項を維持するものと信じていた。しかし、よくよく考えてみるとこれは理にかなていることが分かった。

まず、1年半後の4月に再度、増税判断を行うとした場合を考えてみる。今回の衆院解散の大義は消費税増税先送りの是非を問うことにあったから、1年半後に再度先送りを判断するためには「もう一度、衆議院を解散して信を問う」ことが足かせになる。これは公明党も参院選の3か月前の選挙を嫌うだろうし、この時期に再延期を判断するとなれば、今度こそ「アベノミクスの失敗」と烙印を押されかねない。これに反論することは不可能に近くなる。しかし、景気が停滞しているのにもかかわらず増税を宣言したら、今度はその様な経済感覚をもつ政権への信頼が揺らぎ、市場にも見切りをつけられて参院選で惨敗することは目に見えている。だから、どうせ先送りするなら2年先まで先送りすればよいと思うのだが、消費税8%への増税判断と当初の10%への判断時期は概ね1年間しか間隔がなかったので、今回の見送りで2年先というのは「如何にも、アベノミクスの失敗の印象を与えかねない」と判断し、1年半がギリギリのところだったのだろう。こうなると、1年半後に再度解散を迫られない様にするためには、このタイミングでの増税判断を見送り、最初から2年半後にデッドラインを引いた方が筋が良いことになる。ちなみに、このタイミングで景気回復が芳しくなく再延期の必要に迫られたら、今度は安倍総理自らは責任を取って自民党総裁を辞任し衆院を解散し、新しい自民党総裁のもとで総選挙を戦えば大義名分は立つだろう。少なくともそこまで2年半はあるから、安倍総理も一通りのやりたいことは出来るはずである。それで成果を上げられなければ退陣も止むを得ない。

なお、ここで解散総選挙で勝利すれば、来年秋の自民党総裁選での続投の確率は一気に高まる。つまり、この衆院選で4年間の任期を勝ち取れば、6年の総理在職期間を全うできる可能性が高まる。別に安倍総理は総理在職期間に拘りはないだろうが、やりたいことをやり抜くには時間が必要だから、総裁選などに無駄な労力を割かずに済ませる手立てがあれば悪い話ではない。

とまあ、この様に考えたらそれなりに納得も出来なくもないことが分かった。ただ、やはり最後にもう一度愚痴を言わせてもらえば、「どうしても、公明党は衆参ダブル選挙は駄目なの?!」と言いたい。解散権は憲法で保証された総理大臣の専権事項だから、連立与党の代表と言えど、その権利を拘束することを意図する様な発言は、それこそ「憲法の精神に反する」と思うのだが・・・。

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安倍総理が解散しない理由

2014-11-17 23:57:41 | 政治
昨日今日と、2重で衝撃的なニュースがあった。言うまでもなく、ひとつはGDPの7-9月の速報値が-1.6%であったこと、もう一つは沖縄県知事選での辺野古移設反対派の勝利である。結論は、この結果、解散総選挙は遠のいたということである。

これは間もなく答えが出る話なので私の「大ハズレ」かも知れないが、元々安倍総理は衆議院を本気で解散するつもりもなかったのだが、意図的に解散風を利用していたのだと私は解釈している。以下、細かく考えてみたい。

まず、安倍総理が意図的な解散風を吹かしていた直近の理由は、沖縄県知事選での仲井真弘多現知事支援があったのだろう。自民党の党本部としては仲井真知事を応援していたが、自民党の沖縄県連が辺野古移設に異論を唱え、本来は自民党員への票固めに奔走すべきはずの人々が、ワザと煮え切らない態度を取ることでポピュリズム的に有権者のウケ重視の行動を取ろうとしていたところ、「本気でやらないと選挙では公認を認めないぞ!」と半ば脅しをかける意味もあり、解散カードをチラつかせたのだと思う。ただ、実際にそれが功を奏したかと言えば結果が明らかに示している通りで、あれだけの大敗は自民党員の締め付けが大分緩かったことの証拠だと思う。勿論、沖縄の左派系新聞は徹底的な反政府キャンペーン、反仲井真キャンペーンなどを張っているから、それが浸透した効果は絶大だったし、それ以前の問題として、基地問題の不満がここまでくすぶっているという表れでもある。しかし、仲井真知事が辺野古への移転を承認したときも、実際に沖縄に行って声を拾った人の話を聞けばそこまで極端な偏りはなかったと聞くので、これはキャンペーンの絶大な効果と、自民党の結束の乱れ(党本部と県連の乱れ)が明らかに影響している。というのも、現在の沖縄県選出の自民党議員は、この辺野古移転の逆風の中で選挙をやれば、「辺野古移設推進賛成」と発言した時点で落選が目に見えて来るから、解散をちらつかせて締め付けようとすれば締め付けようとするほど、結果的に「辺野古移設推進賛成」とは言い難い状況を作ってしまったのだと思う。こちらは既に知事選は終わったので、これ以上、解散風を吹かせる理由は無くなった。一方で、この直後に解散をしたら、沖縄選出の自民党員は帰って来れないので、その数名の議席をすべて失う覚悟でなければ解散は出来ない。寧ろ、沖縄での議席を確保したいなら、翁長氏がポカをして普天間の固定化が印象付けられる1年半、ないし2年後の方が勝算は高い。沖縄的な視点で言えば、今現時点での選挙は相当マイナスである。反政府キャンペーンにはこの沖縄からの風は逆風として大きいから、集団的自衛権などの議論を本格的に行う前に沖縄での完敗(国政での議席も失うこと)となるのは是が非でも避けたいところだろう。

次に、ここ1週間ほどで、野党連中はほぼ全てが消費税増税見送りに賛成を表明した。その賛成の言い訳が見苦しいのだが、それは「アベノミクスが失敗したから、消費税増税はすべきではない」という理屈である。これは、「良くもまあ、日本経済をあれだけ破壊した民主党が言えるものだ!」と思うのだが、民主党以外にはその様に言える政党もあるので、一笑に付す訳には行かない。そんな中でのGDPの速報値であるのだが、大方のエコノミストは+0.8~2.5%と予想していたので、まさか、4-6月期よりも悪化が進むとは完全な想定外であった。安倍総理は4-6期の落ち込みを「想定内だが、想定の中では最も悪い」と解説していたが、この期に及んで同じようなことを言えるわけがない。だから、俄然として野党の主張の「アベノミクスの失敗」の正当性が俄かに信じられるようになってしまったのである。勿論、安倍総理も8%への消費税増税はやりたくなかったのだが、谷垣前総裁と野田前総理、山口代表の三者合意が思いの外足かせとして強く、逃げるに逃げられなかったという状況はある。今更であるが、だから「毎年1%増税」にしておけば良かったと思うのだが、それも後の祭りである。ただ、この様な背景を考えれば、消費増税の影響が思いの外厳しくて、景気回復の足を引っ張っているのは「安倍総理の責任」というには余りに可哀想すぎる。だから、その様な中で良く頑張っているという評価が妥当だと思うが、しかし、マスコミの反政府キャンペーンはその様に政府に同情的ではない。「一気にここで息の根を止めてやる!」ぐらいのつもりでいるだろうから、このタイミングで選挙に打って出るのは相当リスキーな状況である。実際、今日の株価の暴落はその危険性を示している。明日以降の展開は不明だが、選挙戦で自民党が苦戦すれば、選挙後の政治の不安定化を見込み、株は続落するのは目に見えている。株が下落すれば「アベノミクスの失敗の印象操作」には好都合だから、雪だるま的に政府の支持率は下がる。閣僚の辞任などの問題もあるので、この様なマイナスの外的要因の中では、とても選挙を戦える状況ではない。

逆に、ここで消費税増税先送り法案を無風で通してしまえば、相当、政治的エネルギーの消費が予想されていた指し当たっての政権の不安定要因は解決してしまうので、マーケットはそれに好感を示すだろう。解散が先送りされ、政治の不安定化が払拭されれば、それも好感に繋がる。その様な株高が続けばデフレマインドは再度払拭され、今度こそ、本当の果実が実になる時期が来るかも知れない。その可能性は高まるのである。それまでの時間を待たない理由などないと思う。

また、このアベノミクスの失敗説のもう一つの根拠は、円安政策が実は国民の首を絞めているという論調があるのだが、これは1ドルで115円を超えて円安が進む状況を見ると、流石に説得力を持ち出すのである。やはり、輸入原材料の高騰による中小企業のダメージは大きいから、「弱い者いじめ」的なニュアンスは漂わせ安い。安倍政権を攻める側からするとここがウィークポイントと攻めて来るだろう。安倍政権も、コントロールの聞かない環境での連鎖的な円安は望まないから、そこで苦しんでいる姿が目につくと、「失敗感」は増幅されていく。しかし、更なる円安の進行を制御する材料がある訳ではないので、この辺はサイコロを転がすような感覚だろう。博打を打って政権を失っては元も子もない。安倍総理は第1次安倍政権の失敗の敵討ちの様な政権だから、それだけの危ない橋をここで渡れる訳がないと考える。

以上、色々書いたが、現時点では「当初の解散風を吹かせた理由」は概ね完結していて、今更、これ以上の解散風を吹かせて本当に解散する理由は無くなったと考える。一方で、解散できない理由は急激に増えている。もちろん、折角の解散風だから、ここで全否定する必要はないのだが、思わせぶりで年内を乗り切り、年が明けてほとぼりが冷めた頃に「解散なんかしてる場合ではないでしょ!あなた達は何を言っているの?」とバックれるのが正攻法の様に思う。

如何だろうか?

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朝鮮半島の南北統一のシナリオと「核」問題

2014-11-15 19:49:37 | 政治
興味深い記事があった。

アゴラ 2014年11月14日山田高明「『統一韓国の核武装』という悪夢

私も1年以上前のブログ、「今のうちから北朝鮮崩壊後の朝鮮半島非核化プログラムを日米韓で合意せよ!」で触れていたが、朝鮮半島統一時にどさくさに紛れて韓国は必ず北朝鮮の核を手に入れようとするであろうリスクを真面目に考えなければならない。今現在では、北朝鮮との戦争において在日米軍は命綱だから、韓国に弱みがあるうちに今の内から雁字搦めの約束を日米韓で結んでおくべきだという考えを示した。この山田高明氏の記事では、実は大部分を「誅韓論」という本の引用で構成しているのだが、そのポイントとなる部分を適切に紹介している。その中心であるのは、何故、韓国が日本を核攻撃しうるか(ないしは核を背景に日本を恫喝し得るか)についての7つの理由である。要約すると以下のようになる。

(1) 韓国は日本に対する復讐心が本質的にあり、核攻撃はその心の解放に繋がる。
(2)日本を仮想敵とする中韓同盟が築かれつつあるが、強い味方を得れば攻撃のハードルは下がる
(3)南北統一で韓国経済は危機的になるが、人心の不満を逸らすには好都合
(4)新羅の時代より何度も日本を侵略した実績がある
(5)韓国は既に日本に非正規戦(嘘八百で日本を国際的に陥れる謀略)を仕掛けている実績がある
(6)韓国は現在、日本を想定した軍備増強をしている事実がある
(7)統一後には核を手に入れることが可能

この本の主張は(確認はしていないが文脈から)、この様な理由があるから韓国を「相手にするな」と無視するのではなく、積極的に天誅を与えろということのようだが、そこまでは山田氏は賛同していない。山田氏の主張は、韓国国内にも本当に限られているが、僅かながらに良識のある人がいるのは事実なので、その様な人々が韓国人の目を覚まさせることに期待するとのこと。現実的には誰もが不可能と考える様な内容で、何とも祈るような気持である。
さて、この説明は非常に説得力があり、つまり韓国はどさくさに紛れて本気で核を手に入れようとするであろう、その背景となる部分を説明している。しかし、私は最終的にはその様に核を手に入れる可能性は低いと思っている。勿論、(例えば1%であるとして)その1%という確率は低いだろうが、韓国が核を手にするリスクが1%と言うのであれば、それは無視できるような確率ではない。だから、この1%を0.0001%ぐらいに出来るように手を打てと言っているのである。

ところで、この様に韓国が核を手にしようとしたとき、上記の記事では「国際世論が韓国に制裁を加えることは期待できない(何故なら、西側諸国に制裁を下すことはないだろうから・・・)としているが、何も国際世論が制裁に同調する必要などはない。中国は韓国が核を持つことを絶対に許さないから、韓国が核を持とうとした瞬間に韓国に経済制裁を発動するだろう。それは世界の歩調を待つまでもなく、間髪入れずに中国政府は制裁を発動するはずである。元々、北朝鮮の貧しい地域を併合して、国家全体の経済力が落ち込んでいる所だから、そこで中国との貿易が断ち切られたら韓国は生きてはいけない。だから常識的な政権が国を司っていれば、中国の意向を無視して韓国が暴走する可能性は低い。しかし、韓国というのは論理的な常識が通じない国だけに、何が起きるかは完全には予測できないのである。

そこで、素人ながらに南北統一がどの様に統一されるかを考えてみた。

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【シナリオ1】
北側が南を挑発する小競り合いが局地的に起き、その状況から北の(核を含む)ミサイル攻撃基地の動きが慌ただしくなったところをアメリカの偵察衛星が察知し、核を使われる前の先制攻撃として一気に北を叩き、その戦況を受けて北の兵士のモチベーションが一気に下がり、総崩れになったのを見て金正恩が中国に亡命し、韓国が圧勝のもとで南北統一を達成する。
【シナリオ2】
上述のように南北の小競り合いが起き、早い段階で金正恩がソウルなど韓国の主要都市をミサイル攻撃(核は必ずしも使用しない)を行い、韓国側に甚大な被害が生じた後でアメリカ軍が反撃し、双方に大きな被害が出ながらも、北が最終的に劣勢になって金正恩が中国に亡命し、韓国主導で南北統一を達成する。ただし、韓国の蒙る経済被害は莫大であり、戦争には勝利しながらも時の政権は国民の指示を失い、極右(又は極左)的な政権が取って代わる。
【シナリオ3】
南北がある程度自制しながら小規模な局地戦が続く。一気に戦局を決めるべく米軍は作戦行動を起こすが、それを察知した中国が北に援軍を送り、米中の激突の危険が高まる。しかし、米中の対話により全面戦争は回避され、中国が金正恩に亡命を促し、中国の息のかかった政治勢力が北朝鮮を支配する。この勢力と韓国が合意し、両者が50%/50%で企業の対等合併の様に南北統一が図られる。
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例えば、上記の様な3パターンを例とすれば、1の様に韓国圧勝の場合には、折角、韓国経済が打撃を受けずに統一を果たしたのに、無理をして核を手に入れて国内経済が破滅的な被害を受けたのでは割に合わない。同様に、中国との合意の上での統一であれば、中国の意向を無視して核を手にすることは有り得ない。しかし、シナリオ2の様に話が展開し、軍部などのクーデターが起きて政権が転覆すると、後先を見ずに何をするかは分からない。韓国経済は致命的な被害を受けるが、元々致命的な被害を受けているので、時の政権は言い逃れができる。この様なケースでは何が起きるか分からない。特に韓国国内の国民感情的には、疲弊しきった国家において唯一の希望の光が「核による日本の殲滅」であれば、今のこの苦しみに耐えて(どうせ、戦争で焼け野原になったのだから・・・)来る日に日本を占領して経済復活を成し遂げよう・・・というシナリオは、それなりに受け入れられるかも知れない。怖いのは、かの国でこの様な感情のままに国民が暴走する状態である。

ただ、シナリオ2ではアメリカ軍が戦争勝利に絶対的な貢献をしているので、軍事担当者レベルでも事前に繰り返し繰り返し「朝鮮半島の非核化」の約束をしていれば、仮にクーデターを起こした政権であっても、アメリカの反感を買いながら核を手にすることはできない。だからこそ、事前の固い約束が重要なのである。多分、かの国は「隙あらば」核を手に入れようと悪だくみをするはずである。その隙を如何にして防ぐのか、その課題にもう少し本気になった方が良いはずだ。

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世界大恐慌を回避するために中国でのエボラ大流行を阻止せよ

2014-11-13 23:58:18 | 政治
今日も日経平均株価が高値を更新した。更新の理由は衆議院の解散風が強くなり、消費税増税の先送り確率が高まったことを市場が好感したとの解説が一般的である。変な下世話な例え話で恐縮だが、裸の女性が堂々と道を歩いている姿を見るより、超ミニスカートの女性が(スカートの中が)見えそうで見えない状態を見ている方が性的刺激を感じる様なもので、総理が突然「消費税増税を先送りします」と断言してもその影響は1日限定で現れるのに、今回の様な思わせぶりでそれでいてスカートの中身がチラリと見えている状況の方が、末永く好況を継続するかの様な状態であろう。これを安倍総理が意図しているとは思い難いが、結果的には好循環につながっている所は面白い。

ただ、この様な好景気の背景には、その他にも幾つか理由があるのだろう。ひとつには、イスラム国の一時期の爆発的な脅威の増大が最近では少しサチッてきて、危険度は徐々に飽和状態で上限が見えてきた感がある点であろう。相変わらず危険なことには違いはないが、一時期の勢いは凄まじいものがあったので、現在の状況は一息ついた感が大きい。しかも空爆によりイスラム国の指導者が負傷したという噂もあり、大規模な地上軍を投入しなくても、シリアとの対立の均衡により双方が消耗する理想的な状態に近くという、コスト的に無限の投入のリスクは大幅に減ったといえる。

もうひとつのエボラ出血熱のパンデミクス危機にしても、一時の指数関数的な倍々の死者数の増加が少しずつ鈍化してきている感があり、何度か発生したアメリカ国内での患者の発見にしても、2次、3次感染を抑え込めた安堵感があり、これらの失敗を教訓として対策の強化が図られたことも欧米での安心感につながっているかも知れない。日本でも、何例かの疑われるケースはあったが、結局は陰性ということで事なきを得て、その間にノウハウが徐々に蓄積され対策が打たれているというのも幸運な状況である。

この様に、一時期の最悪の状況を脱した感があり、その中での消費税増税見送りは市場にとって今年最後の好材料という感じなのだろう。この傾向はそれはそれとして続くのだろうが、今、私が最も気にするのは中国国内でのエボラ出血熱の大流行である。言わずと知れた、中国はアメリカへの投資大国であり、国連での票を買うことを目的に、アフリカでは金をばら撒きまくっている。しかも、中国の特徴はばら撒いた金を現地の人々に還元する意思はなく、中国人を送って中国人がそのばら撒いたお金を回収するというエゲツないやり方をしている。現地の人々にはノウハウも溜まらず、ただ、箱ものや道路だけがポンと作り出されて終わりである。このやり方の是非は色々あると思うが、今回はその点は横に置いておく。問題は、このアフリカでエボラ出血熱に感染した人が出た時、何をするかが問題なのである。

中国と言う国は、電車の中で子供が大便や小便をしても親が咎めることもなく、しかも後始末をしないような国だから、倫理観が極端に欠如している傾向は全国民に共通である。その様な倫理観の欠如した人がエボラ出血熱に感染したら、当然ながら最初にするのは中国への帰国、ないしはアメリカなどの治療のノウハウを持った国への脱出である。発熱していても発熱を隠して飛行機に搭乗し、吐き気を催しても、それを隠して渡航する可能性は高い。サーモグラフィなどの監視はあるが、例えば冷えたタオルで顔などを冷やして検査場所を通過すれば、検査に引っかからずに脱出できる可能性はある。とにかく、医療環境の悪いアフリカで治療を受けたり死にたくはないだろうから、アフリカだけは脱出しようとあらゆる手段で試みるのは想像に容易い。その様にして機内に感染者が広まった時、それらの人が中国本土に広がり、気が付くと手が付けれない可能性がある。例えば北京や上海などの都市では医療体制も敷かれているだろうが、地方に行ったら全くエボラに気が付かず、病院の相部屋で入院する可能性もある。免疫が低下した人は直ぐに発症するだろうから、爆発的な大流行に発展する可能性は高い。しかも、その様な危険を感じた人は北京などの都市の大病院まで移動して高度な治療を受けようとするだろうから、その移動の際の感染もリスクは高い。

経済大国故に、ありとあらゆる国との人の行き来が激しい中国故に、中国からの感染を各国は水際で防ぐことは困難である。しかも、感染者数は指数関数的に増えるだろうから、人口のそれほど多くないアフリカよりもパンデミクスのリスクは大きい。そして、この中国での大流行が確認されると、ただでさえバブルの崩壊前夜と言われる中国経済にトドメを刺し、中国発の世界大恐慌が起きるかも知れない。中国が保有するアメリカや日本の国債が手放されれば、それだけで日本もアメリカも経済に与える破壊力は大きい。

幸いにも現時点ではその兆候がないから良いのだが、この様なリスクは何処まで行っても消えることはない。指し当たっての対策としては、アフリカ中の空港にエイズ対策費を大量に投入し、疑わしき人々が飛行機に搭乗できない様にするシステムと、37度以上の発熱の人は登場できても渡航先の政府にその情報が通知され、国家的にエボラ要注意人物としてマークできる体制を構築することだろう。そこまでの情報が通知されれば、中国政府も手を打ちやすくなる。元々人権意識のない国だから、その様な人物を強制的に拘束するぐらいのことはやるだろう。つまり、エボラ対策費の使い方は、その医療施設や治療費などの直接的な使用以外にも、疑われる人のアフリカ内への閉じ込めと渡航先での追跡調査のための情報網構築などもあり得るのである。

まずは中国人をメインターゲットに、アフリカ内での対策の強化を進めて欲しい。

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またまた少々物騒な話・・・(戦争の様相が変わるまでの20年を乗り切れ)

2014-11-12 23:52:06 | 政治
以前のブログ、「少々物騒な話・・・(非核型攻撃ミサイルについて)」にて、コンベンショナル・ストライク・ミサイル(CSM、非核型攻撃ミサイル)という話題について触れたことがある。日本は核装備を目指すのではなく、非対称に核戦争に対する防衛能力を備える選択肢があるとのことだったが、更に次のステップに進んだ記事があった。

PB Press 2014年11月10日「世界の軍事バランスを劇的に変える新技術

先の非核型攻撃ミサイルよりは分かり易い答えで、簡単に言えば「レーザー兵器」についての記事である。イメージ動画で衛星搭載のレーザ兵器で核ミサイルを破壊したり、その攻撃衛星を攻撃するレーザー兵器を搭載した衛星とか、頭の体操的には誰でも考える話である。実際、機動戦士ガンダムなどではその様なビーム兵器での戦闘の世界が描かれていた。アニメの世界では当たり前すぎる世界だ。それが実現しなかったのにはそれだけのエネルギーを集約できるレーザーが実用化できずに実現できなかったということである。それが今回、「最新の技術情報によれば、ポーランドで遠距離到達も可能な極めて高出力のレーザー衝撃波を生成することを可能にする技術突破がなされた。」とのことである。

解説によれば、これまで数十年にわたり研究開発が続けられながら、高出力レーザーの実用化が進まなかった最大の原因は、大気中でレーザー光が散乱し伝達されるエネルギーが減衰することにあったという。大気の影響を最小化する目的で、ボーイング747に空中発射型のレーザー兵器を開発していたこともあるが、レーザーの威力は最大数十キロしか届かず、その範囲にミサイルが通過する前提で防衛網を築くことは非経済的で話がぽしゃった。

今回、そのレーザー光を約12×10-15秒という極めて短いレーザー・パルス状で生成し、その短時間にエネルギーが集約されて100億キロワットに相当するという。この高エネルギー故に衝突する大気中の原資が瞬時にイオン化されてプラズマ状になり、これが大気中でのエネルギーの分散を防ぎ、遠くまで到達可能となる。私の理解で若干補足すると、元々、レーザーには自己収束という性質がある。これは、レーザーは通常の光と比べてエネルギーが高く、入射光強度が強いために伝搬する媒質(空気)中で光の中心部分とその周りの屈折率に差が出来、それが大雑把にいえばレンズ的な効果を有していて一点に収束して拡散を防ぎ、エネルギーの分散を抑えることが出来る。これは通信で用いられる光ファイバーでも同様の原理を利用していて、自己収束型光ファイバーではコアの部分のガラスの屈折率を中心から周辺に向かって連続的に低くなるように変化させることで、レンズのような効果を持たせて長距離伝送を可能としている。上述の今回の技術では、高エネルギーで屈折率の傾斜が高まり、プラズマのファイバーが空間上に綺麗に形成され、それにより散乱・分散が抑えられるということらしい。間違ていたらご指摘をお願いしたい。

ところでこの技術が可能になると、このレーザー兵器を航空機や衛星上に搭載する必要もなく、幾何学的に見通しがつく範囲なら地上からのミサイル迎撃が可能になる。しかも、迎撃の成功失敗は一瞬で判断できる上、相手のミサイルの速度に依存して迎撃確率が変わるミサイル防衛よりも遥かに精度は高く、ミサイルの軌道さえ正確に把握できればほぼ確実に核弾頭の起爆前に破壊して、被害を最小化(核物質の散乱による被ばく被害は避けられないが、起爆による被害に比べたら桁が何桁も違う)することができる。この点は弾道ミサイルも巡航ミサイルも同様である。

この記事の特徴は、この技術がもたらす影響を評価している点である。この技術は核抑止力を概ね無効化する技術であり、現在の核保有による軍事バランスは一瞬で崩れることになる。また更に、戦争の様相も大きく変わると予言している。基本的に物理的に大型の飛翔兵器であるミサイル、砲弾などはレーザー兵器での破壊が可能となり、結果的にこれらも無力化する。大型の戦闘機も、戦闘機対戦闘機などの空中戦になる以前にレーザーで破壊可能だし、携帯式小型レーザーが出来れば、戦車などもあまり意味がなくなるだろう。攻撃する側には不利に働き、防衛側には有利に働く。敵を特定できれば勝負はつくので、ゲリラ戦や接近戦など、古典的、アナログ的な戦争が再び主流になるかも知れない。その際、大規模な軍隊ではなく小規模な戦闘やゲリラ戦、テロ等が実質的な脅威となる。また、生物・化学兵器の重要性は高まるかも知れない。これらの戦闘は、従来の大規模な戦闘と異なり規模が小規模化するので、交戦開始のハードルは下がり、局所戦の発生確率は高まるかも知れないとしている。

ただし、日本の場合には専守防衛であり、且つ四方を海で囲まれているために、陸続きで隣国と接する欧州などよりも防衛は圧倒的にし易い。この防衛網を破り攻撃するためには、多分、潜水艦で日本の沿岸まで深く侵入し、隙を突いて核ミサイルで攻撃するというスタイルが予想されるが、潜水艦の能力は日本は非常に高く、一方で中国の潜水艦は機関の騒音が酷くて探知が容易であるというから、それなりの監視体制を組めば接近を阻止することは可能であろう。尖閣などでの局地戦のリスクは高まっても、それが全面戦争へと発展する可能性が低ければ、それほど恐れることはない。ハイテク技術が勝敗を決するので、物量よりも特定の分野の技術力(高性能な潜水艦などもその一つ)が重要となる。戦地を拡大しても勝ち目がなければ、敵はおのずと兵を引かざるを得ず、海洋国家と言う日本の特徴は非常に有利に働く。

この様に考えると、20年後の世界は今とはがらりと変わってきているかも知れない。しかし、上述の技術は軍用と民生用の差が小さい領域に入ってきており、日本の技術力は中国に対しては有利であるのは間違いない。それまでの年月をどう乗り切るのかが日本の課題である。

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APECの総括と解散風の行方

2014-11-11 23:51:23 | 政治
北京で開催されたAPECが閉幕した。

終わってみれば、習近平国家主席とは時間が限られる中で日中首脳会談を開催し、偶発的な衝突を避けるための海上連絡メカニズムの実施に向けて協議を進めていくことで一致するに至った。首脳会談前の握手のシーンでは完全に無礼な態度を見せられたが、安倍総理は記者からの質問に対し「それぞれの国の事情があるのだろう」と指摘して大人の対応を示し、更には続くビジネス諮問委員会の会合の場で習主席から「初めて会ったときは他人でも、2回目からは友人になる」と温かい言葉をかけられたことを披歴(暴露?)し、結果的には中国の思惑を完全にいなすこととなった。海上連絡メカニズムの確立は日本では最優先課題であったので、少なくとも日本からすると得たものは十分に大きい。

さらには韓国の朴大統領ともAPEC首脳の夕食会で隣の席となり、ここでまざまな懸案について意見交換するに至った。各国首脳が英語の国名のアルファベット順に着席するルールでJとKで隣通しになったためだが、結果的に韓国の主張する条件付きの会談ではなく無条件での会談が成立するに至り、オバマ大統領に対して「韓国との前向きな関係改善のポーズ」を示すことに成功し、この点でも得たものは大きい。

一部では、中国との間で交わした「日中4点合意」が日本外交の敗北と見る筋もある。門田隆将氏は自身のブログの中で、「尖閣の“致命的譲歩”と日中首脳会談」として中国共産党にしてやられたと「致命的」な失策と評価している。問題は第3項目目の記述で「双方は、尖閣諸島など東シナ海の海域で近年緊張状態が生じていることに異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで、意見の一致を見た」となっていることの解釈である。実際、中国共産党機関紙の「人民日報」系の環球時報が「歴史的な勝利」と宣言しており、完全に中国の思う壺と評価しているのだが、この辺の解説は下記の記事に詳しく書かれている。

The Wall Street Journal 2014年11月10日Japan Realtime「日中、どちらが譲歩したのか-日中の英語翻訳に微妙な違い

実はテレビで宮家邦彦氏が指摘していたが、通常の外交文書は日本語・中国語がそれぞれ正式な文書で、報道向けにその共通の英語訳が日中共同で作成されるのが一般的である。しかし、今回の場合には、日本語版、日本語版の英訳、中国語版、中国語版の英訳の4つのバージョンが存在する。このウォールストリートジャーナルの記事の最初の部分に解説があるが、面白い背景があるようだ。

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合意声明の中国語版と日本語版を細かく検討してみると、それぞれ国内向けのために可能な限り好都合になるよう、周到に言葉を選んだことが明らかだ。日本当局者によれば、日中双方は当初、合意のためのたたき台として中国語の声明を使用し、その後それを日本語に翻訳した。当局者によると、日中双方はまた、それぞれ別個の英語の翻訳を作成した。これは中国が準備した英語版に日本側が同意しなかったためだったという。
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つまり、正式に共通の合意がなされているのであれば共通の英訳が存在するはずだが、その共通の英訳が存在しないということは非常に特殊で、つまり「合意ではない」という合意がなされたことを明示している。表現的には、日本語では「(異なる)見解(views)」とされているのが中国語では「(異なった)立場(positions)」としている。さらに戦争の歴史については、中国側は二国間関係における「政治的障害」を克服するため日中双方が「若干の合意に達した(reached some agreement)」とし、日本側は「政治的困難(political difficulties)」を克服することで双方が「若干の認識の一致(shared some recognition)」をみたとしている。共通の英語の合意文書が存在しないこととの整合性を考えれば、そこに「some agreement」など存在せず、諸問題を解決する必要性という「some recognition」を共有しているが「合意は出来ていない」と考えるのが世界標準の考え方だろう。

幾ら中国国内で評判が良くても意味がないし、日本国内で評判が良くてもそれも意味がない。世界がどう認識するかが重要で、その認識を4つのバージョンという特殊な状況を生み出して世界に示した点で外交の勝利と言える。

以上、終わってみればプーチン大統領とも会談したし、何らかの揚げ足を取られることもなかったので、この点で安倍総理の評価は高いと思われる。更に、国内では安倍総理の不在を利用して解散風が吹き荒れるに至っている。一説では消費税先送りを理由の解散とするとの話だから、野党は政治的な対立軸を明確にしたければ「消費税見送り反対」とすべきだが、これでは選挙は戦えないので、消費税見送りに前向きな発言をせざるを得ない状況に追い込まれた。その様なスタンスを明確にすれば明確にするほど、安倍総理は消費税先送り法案への野党の協力を取り付けやすい。どうせ臨時国会中には先送り法案は審議されないので、12月に入っても野党は消費税延期の踏み絵を迫られることになり、踏み絵を踏めば消費税を先送りし、踏み絵を踏まなければ(先送り反対)解散に打って出れば良いので、非常にやり易い状態になった訳である。

多分、野党は一斉に先送りに賛成するだろうから、安倍総理は解散の必要性が無くなり「解散見送り」という結果に至るだろう。国内でもAPECでも、戦略が完全にツボにハマった感じである。

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人民解放軍の手綱を強く引いた習近平国家主席

2014-11-09 23:51:59 | 政治
面白い記事があった。日中首脳会談に関するウォールストリートジャーナルの記事である。

ウォールストリートジャーナル2014年11月8日「日中対話の再開、喜ばないのは中国軍だけ

まず、日中首脳会談の開催のニュースを「意表を突く」と形容しながら、「アジア太平洋地域の外交がまだ機能していることを示している」とかなり評価している。そして、「ほぼ全ての関係者がこの展開を喜んでいると思われるが・・・」と切り出し、中国経済界も中国政府もこの進展を「喜んでいる人々」と分類する一方、その喜んでいない例外が唯一「中国人民解放軍」としている。その解説として、東シナ海、南シナ海で領有権紛争のリスクが高まった時、中国共産党が「弱腰外交」をすることは有り得ないので、ここで強硬路線を進めれば進めるほど軍事的な優位性の重要性が増すので、軍事費の増加や人民解放軍の存在意義が高まるとして、一連の混乱の受益者たる人民解放軍が国際政治の場で存在感を増していたという。今回の日中首脳会談の開催は、日本側は全く譲歩をしない中で首脳会談開催に繋がったため、「アジア太平洋地域の外交がまだ機能」し、今後、軍事的リスクが緩やかに低下していく可能性を示唆したものとなっている。

昨日のブログでも引用した「異常接近の裏に『原潜隠し』あり」では、軍事的リスクは中国に対して日本、フィリピン、ベトナムなどの東アジアの諸国だけではなく、全面戦争ではないにせよ、局地戦的には中国とアメリカの間でも突発的な事態が起きうることを示したものであった。この中国軍機の米軍機の異常接近の事件は8月19日に起きており、それ以降、習政権も過剰なリスクを嫌い始めた感がある。勿論、人民解放軍の単純な暴走とは考えにくいのであるところまでは中国政府も容認していたのだろうが、習近平国家主席もアメリカと事を起こすところまでは考えていなかっただろうから、何処かで自分が人民解放軍の手綱を確実に握り続けたいと考えていて、具体的な行動を起こし始めたのだろう。上述の記事には次のような一節がある。

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習近平国家主席は6日、人民解放軍の会計検査署の所属を総後勤部から習氏率いる中央軍事委員会の直下に移すと発表した。この1週間前、習氏は中央軍事委員会の主要会議に出席。司令官らの前で、共産党は中国軍に対して「絶対的指導力」を保持していると強調した上、軍は「腐敗を罰し、より厳しい規律を保つよう」さらなる措置を講じる必要があると述べた。
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つまり、習主席は腐敗撲滅を大義名分にして人民解放軍を揺さぶり、「会計検査署」を手中に収めることで「煮るのも焼くのも私次第」というブラフをかけ始めたのである。この様に人民解放軍の手綱を思いきり引きながら、日本に対して秋波を送り始めたのであろう。
この背景は単純で、中国経済が「弾ける!弾ける!」と言われて弾けずに誤魔化し続けてきたが、そろそろ本気でヤバくなっているのは間違いない。このタイミングで人民解放軍が暴発して海外からの中国国内への投資が激減すると、「馬の背を折る一本の麦わら」になりかねず、誤魔化しが効かなくなり国内で暴動が起きかねない。暴動が起きれば軍部がクーデターを起こして政権が転覆する可能性も皆無ではないから、経済のことが分かっている李克強首相辺りが「今、無茶をすべき時ではない」と進言し、一気に勝負に出たのが会計検査署の所属異動なのかも知れない。

実際のところは分からないが、それなりに説得力のある解説である。このまま行けば、習主席は国内経済への悪影響を排除する程度に日本との会計改善を図り、安倍政権が何処かでつまずくのを待つ持久戦に舵を切ったのかも知れない。そうなれば、ある程度までは「撃ち方やめ!」の大号令が流れ、歴史問題の追及のトーンが少しづつフェードアウトすることになるのかも知れない。その時の韓国の慌て様は様相に容易い。

色々と話はあるのだが、要は「中国主導で物事が動いている」のではなく、「中国は確実に選択肢が絞られている」ということの証である。言うまでもなく、(派手さはないが)安倍政権の外交的勝利ということを暗示している状況である。

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マイケル・ヨン氏をケネディ大使に会わせることは出来ないだろうか?

2014-11-08 23:39:06 | 政治
最近、中々ブログを書く時間が確保できなくなってお休みが続いている。そんな中で、幾つか興味深い記事があったので紹介してみたい。

産経ニュース2014年11月1日「古森義久 慰安婦問題、米から支援の声

ひとつめの記事は、米国のフリージャーナリストのマイケル・ヨン氏が最近、慰安婦問題の国際的な報道内容に疑問を持ち、自ら取材した結果が「慰安婦問題での日本糾弾は特定の政治勢力の日本叩(たた)きだ」というもので、この内容の調査報告を近く米国系のメディアに公表予定であるというものである。基本的に、直接証拠能力を持つ1次資料を当たり、そこからバイアスのかかっていない真実を追求するという手法を取ることから、言ってみれば当然の帰結とでも言える内容だろう。韓国側や日本の似権団体などの手垢に汚れた資料は避け、「テキサス親父」で知られるトニー・マラーノ氏などが指摘する米国の公文書図書館などにある資料などを参照すれば、血のつながった親や同じ朝鮮民族の人々に貶められて不幸な人生を送った女性が多数存在することは当然ながら認めるとしても、少なくともグレンデール市で起きている様な事態が正気の沙汰ではないことは容易に到達できる。まさに、最近の安倍政権の姿勢をなぞる内容になっている。そして、「現在の日本ほど人道主義、民主主義、平和主義に徹した国は全世界でも珍しい。米国にとっても貴重な同盟国だ。であるのに米側が慰安婦問題で日本を叩くのは敵性勢力を強め、友邦を弱めることに等しい」と結論付けており、アメリカの外交方針の見直しを迫っていて、安倍政権には追い風の内容である。

次なる興味具界記事はこれである。

産経ニュース2014年11月7日「米国の最重要パートナーは『日本』、『中国』大きく上回り順位逆転 米国民対象の対日世論調査で

これは、外務省が行った米国民を対象にした対日世論調査の結果に関する記事で、下記の様ポイントを抜粋すると下記の様に記載されている。

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アジアにおける米国の最も重要なパートナーとして「日本」「中国」「韓国」「ロシア」「それら以外の国」を選択肢として提示したところ、一般人の46%が「日本」と回答し、26%の「中国」を大きく上回った。有識者(政官財、学術、マスコミなど)でも「日本」(58%)が「中国」(24%)の倍以上に達した。
 昨年は一般人、有識者とも日本は中国を下回っていた。日本がいずれもトップになるのは平成21年以来となる。外務省によると、中国が後退した理由について、米国の有識者は「安倍晋三政権下の相対的な良いニュースに比べ、中国からは悪いニュースが多かったのでは」と分析しているという。
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正直、この記事には驚いた。平成21年といえば2009年で、自民党政権から民主党政権に代わった年である。リーマンショックが2008年で、日本ではその前年までの緩やかないざなみ景気が後退し、再び不況の度合いが強くなりだした時期に相当し、完全に日中の経済力が逆転し、その後日本のGDPが中国に抜かれて世界第三位となる。もちろん、ルーピー鳩山の影響も多大にあると思うが、基本はこの様な経済的な時流を反映したものとして、米国人が中国をパートナーに選ぶという流れが出来ていたのだと思う。この中国の経済力は最近は減速傾向でいつバブルが弾けてもおかしくないと言われるが、それでも「弾ける!弾ける!」と言われて弾けずに誤魔化し続けることが出来る中国の底力(強引さ)は周知のものであり、一方でアベノミクスで景気の潮目が変わり始めたと言われながら、今年になってからは完全に波に乗れていない現状もあることから、経済力の再逆転を期待しての日本の高評価ではないことは明らかである。未だにニューヨークタイムズなどは、慰安婦問題や歴史問題に対する反日姿勢が続いており、ことある毎に安倍政権叩きを繰り返しているが、その様な中でのパートナー意識の逆転の意義は大きい。つまり、アメリカ・中国によるG2、2大国による世界支配に対して「中国人は信用できない!」という意識が急速にアメリカ国内に芽生えているという兆候である。多くはウクライナやシリアでの醜態が原因だろうが、オバマ政権の中国に対する弱腰の外交姿勢なども、中間選挙での消去法的な共和党支持にも繋がったかも知れない。明らかに中国に対する懐疑的な意識が高まっているのである。

なお、上述の世論調査は夏に行われているので時系列的に世論調査結果には影響は全くないが、例えば下記の様な事件は中国の一方的な国際ルールを無視した防空識別圏設定と同様に、この様な中国に対する不信感を増幅する効果があるのだと思う。

産経ニュース2014年9月10日「異常接近の裏に『原潜隠し』あり

これは、「8月19日に中国・海南島東方約210キロメートルの南シナ海=中国の排他的経済水域(EEZ)内=で監視活動に当たっていた米海軍P8対潜哨戒機に対し、中国空軍のJ(殲)11戦闘機が米機から約6メートルの至近距離まで異常接近した」という事件を報じるものである。日本に対してはそれまでも頻繁に報道されていたが、その牙が反日を超えてアメリカにまで向かっていることを示す証左である。つまり、ビジネスパートナーにはなり得るかも知れないが、少なくとも軍事的にはパートナーではなく敵対する関係にあり、その結果外交的にも「何をしでかすか分からない存在」と位置付けて臨まざるを得ない関係であることがあきらかになった。

そんな流れの中で、韓国の中国への歩みよりはアメリカにとっては裏切り行為に他ならない。盧武鉉政権での反米むき出しの外交姿勢は、アメリカ国民にとっては(その当時は)実効的には「痛くも痒くもない程度」の事柄だったかも知れないが、今回のあからさまな中国朝貢外交は、アメリカの世界戦略における明らかな反逆である。有識者であればあるほど、朴槿惠大統領のポピュリズムに満ちたアマチュア外交・政権運営に対してアメリカとして嫌悪せざるを得ない状況であることは明らかである。

つまり、潮目は明らかに変わっているのである。

そんな潮目の変わる中で、中国、韓国が「最近、やるべきことを急にきちりやるようになった日本」を叩きまくる様を見るにつけ、何となく腑に落ちない感覚を覚える人が出始めた証拠がマイケル・ヨン氏の動きなのだと思う。このマイケル・ヨン氏の調査がいつ頃から始まったのかは分からないが、河野談話の作成過程の検証報告などの対外発信は、少なくとも日本の誠意を印象付けるものであったはずである。何となく腑に落ちない感覚を覚える人が出始めるこの様なタイミングでの積極的な対外発信は、予想以上に効果が大きそうである。

指し当たっての私の提案としては、このマイケル・ヨン氏がキャロライン・ケネディ大使に合う段取りを、誰かが付けてやるべきではないか感じる。まずはオバマ大統領を直接責めるのではなく、外堀から埋めていくのが定石だろう。

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