けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

本当にピークカットの役に立つのか?(太陽光発電の買い取り価格に関する情報開示)

2012-05-02 23:36:38 | 政治
忘れた頃の話題で恐縮である。既に1週間ほど経過してしまったニュースであるが、再生可能エネルギーの全量買い取り制度の買い取り価格について、経済産業省の調達価格等算定委員会が、太陽光発電の買い取り価格を1kWh当たり42円(期間20年)とする委員長案を提出していた。これからパブコメの意見聴取を行い、その結果を受けて最終決定される見通しだそうだ。

なんとも微妙な決定である。再生可能エネルギーの普及と、関連した産業の発展と世界シェアの獲得は国家として重要である。そこまでは間違いないのであるが、液化天然ガスや石油などの価格の高騰で電気料金の値上げが話題となる中で、多分、再生可能エネルギーが普及する(本当は喜ばしいはずの事態)ことになれば、これまで以上の電気料金の値上げをもたらす決断なのだと思う。普及のための大盤振る舞いは、これで一発儲けてやろうと目論んでいる人たちには良いのだろうが、国民にとってどうなのかというのは微妙なところである。
まず言えるのは、太陽光発電とは発電量が非常に不安定なエネルギー源なのである。蓄電技術が発展すればよいだろうと言われるかも知れないが、本気でそんなことを言っているのであろうか?私は専門家ではないから間違っているかも知れないが、とてもそんな簡単な話だとは到底思えない。

まず、現在の太陽光発電のコストの議論は、蓄電池を前提とはしていないはずである。何故なら、蓄電池はそれ自体の単価も高いが、その寿命が意外にバカにならず、時間とともに蓄電量が低下し、ある程度の期間が過ぎたら交換を余儀なくされる。例えば、友人に聞いた話では、プリウスなどのハイブリッドカーにおいてもバッテリーの寿命とその交換費用の高さはバカにならないという。高々、ハイブリッドカーに求められる蓄電量と今必要な蓄電量は桁が違うのだから、寿命を考慮した上での蓄電池のランニングコストはそう安価であるはずはない。従って、蓄電池による電力の平滑化は殆ど非現実的であり、太陽光発電をエネルギー戦略の中で重要な役割を与えようというのであれば、その際の前提条件は(殆ど蓄電池の利用を前提としない)晴れて日の出ている時間だけ発電できるという単純な条件であろう。天気が良ければ計画通りの発電ができる一方、天気が悪ければ発電量が大幅に減ることになる。

この様に聞くと、ある人はこう答えるかも知れない。「今問題なのは夏場のピークカットである。であれば、大電力が必要な気温が高い日の日中には天気が良いので当然ながら発電量が多く、天気が悪く発電量が低い日、ないしは太陽の沈んだあとの夜間はその分気温が低いから発電量が低くなっても帳尻があうはずだ・・・」、と。一見、これは理にかなっているように見えるが、本当にそうなのだろうか?一般家庭の屋根に設置される太陽電池パネルを想定すれば、基本的に地産地消の原則に法っており、上述の大電力が必要なときには天気が良く発電量も多いという前提がある程度成り立つかも知れない。しかし、この問題を考えるとき厄介なのは、どっかの社長さんのように、これで一発儲けてやろうと目論んでいる人たちがいることである。

太陽光発電の場合、その素材の発電能力に対する寿命や発電面の汚れによる劣化、部品交換を含むメンテナンス、初期投資としての(一般家庭であれば屋根の上への)設置費用など、様々なメンテナンス費用および初期投資は、小規模な一般家庭の屋根であれば比較的割高であり、それを前提としてもペイできる価格を考えると1kWh当たり42円という高価に設定せざるを得ない。しかし、土地の価格が安く、且つ比較的年間日照時間が長い好条件の場所を日本中から探し、そこに大量の太陽電池パネルを設置する大規模太陽光発電施設の場合には、初期投資の設置費用も安くメンテナンスの効率も高い。効率的な運用で、一般家庭の場合よりもより儲かる条件が生まれる。

今後の制度がどうなっているのか分からないが、現在の太陽光発電では、一般家庭の電力買取条件は自宅での消費電力分を太陽電池による発電量から差し引いて、それでも余った余剰電力のみの買取を前提としている。電力会社からの供給される電気の料金は買取り価格の半額に相当する20円前後だから、発電した電力を自宅で消費してしまうと、その電力に関しては1kWh当たり42円の価値はない(その約半額の価値になる)。現在検討されている制度がこのルールのままであれば、各家庭においては旨味が小さい半面、上述の大規模太陽光発電設備は発電量の全量を1kWh当たり42円という高価で買い取ってもらえることになる。

つまり、一般家庭を基準にして買取り価格を想定するのかも知れないが、色々な意味でそれよりも遥かに条件の良い大規模太陽光発電施設では、十分に純粋なビジネスとして成り立つことになる。だから、そこに大量の業者が進出する可能性が生まれ、地産地消の原則が更に輪をかけて崩れるリスクが生じる。気が付けば、何のための再生可能エネルギーなのかが分からなくなってしまうかも知れない。

この様に考えれば、最低でも一般家庭用の買取条件と、その他の買取条件には大きな差を付けてしかるべきだと思われる。実際、ドイツでは太陽光発電の電力の高額の買取り価格の見直しが既に始まっているという。そうでないと、電気料金の高騰に国民が悲鳴を上げるからである。物分かりの良い日本人だから、原発をなくすためであれば電気料金の値上げは仕方ないという考えで料金値上げを認めようという理解が得られるかも知れないが、普及すれば普及するほど料金は跳ね上がることになる。今は「まあいいか・・・」と思えても、10年後に一体幾らになるかを知った上で、それにまで同意している訳ではないだろう。工場などではその値上げ額は利益を圧縮して経営を圧迫するからさらに問題は深刻である。しかも、そこまで高い電気代の多くが一部の人々の権益(金儲けの手段)と成り下がる危険性もはらんでいるのである。

あまりネガティブなことばかり言うのはどうかとも思うが、やはり、地産地消の原則を前提とした制度でなければ国民のコンセンサスは得られないと思う。例えば、1年以上前に神奈川県の黒岩知事が提唱した方式であれば良いかもしれない。ここでは県が各家庭の屋根を間借りして、県が設立した基金が出す費用で設置した太陽電池で発電し、発電量の全量を電力会社が高価で買い取ると言うものである。初期投資費用を償却できるまでは太陽電池パネルは県または基金の持ち物であり、余剰電力に限定されずに全量を電力会社が買い取る。このため、償却完了までの期間も見積もりやすい。そして早期に償却できたら、その後は無料でその家庭に設備を払い下げることになる。そこから先は、設置した家庭は発電した電力をタダで利用し、余剰電力は買い取ってもらえるのであるから文句のつけようがない。一方で、何処かの業者が限定的に潤うという制度ではないので、電気料金の値上げがあっても国民の理解は得やすい。地産地消の原則が保たれるため、エネルギー制作的にも条件が良い。

とまあ色々書いたが、本当は地熱発電などの様に、天候などに左右されずに安定的に発電を見込める発電方法に注力すべきである。風力発電については詳しくは知らないが、洋上に設置するなどすることで風量が安定した場所を選び、発電量の時間変動が統計的に無視できる条件を作り出せるなら、風力発電でも構わないかも知れない。海流などの安定した波力を利用できるならそれでも良い。ランニングコストと初期投資が妥当な価格で、且つ安定的な発電量を確保できる方式であれば、多少の電気料金の高騰は許容しよう。しかし、不安定な電力であるならば、そこに膨大な価格の買取保証を行うのは将来に対して禍根を残すことになる。

先日のニュースにはあまり詳しいことが書いてなかったが、何処まで冷静な議論がなされているのか、情報の開示を経済産業省にはお願いしたいところである。

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