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極限のイメージ。

2014-05-18 23:18:38 | mathematics
x を a にどんどん近づけると、関数の値 f(x) が b にいくらでも近づく、という表現が、関数の極限の話の導入でよく用いられるが、そもそもどのように x を a に近づけているのか、近づけ方に関する言明が一切無いので、よくよく考えてみると実にいい加減な表現である。もっと厳しい言い方をすると、ほぼ無内容な言明なのである。何か言っているようで、何も言っていない。何かわかりそうで、何もわからない。ちょっと詳しく分析しようとすればすぐにその薄っぺらさが露呈してしまう。

このようなテキトーな表現から出発して、現代数学で使用される、いろいろな議論に堪えるもっとちゃんとした定義にもっていくには、どうしても発想の質の転換が必要な気がして、説明しづらいと常々思っていた。

そんなことをぼんやり考えていたとき、ふと、この妙な表現に義理立てなどせず、最初からこの言い回しを排除すれば問題がスッキリ解決することに気がついた。

代わりに、確か Karl Menger 氏が提案していたと思うが、

x が a の十分近くにあれば、f(x) の値は b にいくらでも近くなる

という、「近づける」という動的な表現ではなく、初めからこのような静的かつ定量的なニュアンスも含んだ言い回しにしておけば、エプシロン-デルタ式の定義にスムーズに移行しやすいのではなかろうか。

この改革は、高校の教員の意識改革並びに教科書、指導書、参考書の類の改訂をまって初めてなされるものである。極限を最初に習うときが一番肝心なのである。

これは建前であって、実現は非常に難しいことであろう。結局のところ、大学初年級の微分積分を教える我々のような教員が、学生のイメージを上に提案したもののように矯正していく他はなさそうである。
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